X

日テレのスポットCM37%減~コロナ第2波にも注目

コロナショックは見方を変えれば経済ショックです。そして、その影響が本格化するのは、むしろこれからではないかと思います。とくに、さまざまなしがらみで既得権益のようになっていた業界には、その大きな波が押し寄せる可能性が非常に高いと個人的には考えています。その典型的な例が、地上波テレビ局でしょう。先月の『民放の5月のスポットCMが4割減の衝撃=東京新聞』でも触れたスポットCM激減に関し、本稿では続報をお伝えしておきたいと思います。

スポットCMが4割減の衝撃

先月、当ウェブサイトでは東京新聞の報道をもとに、地上波テレビ各局において、5月のスポットCMが4割も減少した、とする話題を取り上げました。

民放の5月のスポットCMが4割減の衝撃=東京新聞

以前の『テレビ局「今すぐ事業をやめて解散した方が儲かる」?』などで、テレビ局(とくに地上波テレビ)はメインの収入源である広告市場が先細りである一方、事業を継続するためには巨額の設備投資に持つようになるなど、業界は非常に苦しい、という見通しを紹介しました。これに関連して東京新聞に土曜日、「コロナ禍の影響でテレビ局の5月のスポットCMが前年同月比4割減少した」という話題が出ていました。<<…続きを読む>>
―――2020/07/13 11:30付 当ウェブサイトより

具体的には、7月11日付で東京新聞に掲載された『民放、衝撃のCM収入減 「ステイホーム」期間中、「スポット」不振 3〜4割下落』という記事によると、今年5月のスポットCM収入は、次のとおり、未発表の日テレを除いていずれも3~4割減少していることが確認できます。

在京キー局各社の5月のスポットCM収入(前年同期比)
  • 日本テレビ…未発表
  • テレビ朝日…58.7%
  • TBS…59%台
  • テレビ東京…64.7%
  • フジテレビ…57.5%

(【出所】東京新聞)

日本テレビもスポットCMが37%減少

この報道を受け、当ウェブサイトとしては、民放各局の決算には注目したいと思っているのですが、現時点で各局のホームページを覗いてみたところ、日本テレビホールディングス株式会社が7月31日付で『2021年3月期第1四半期決算短信(日本基準)』を公表していました。

(※現時点で確認する限り、在京5局のなかで第1四半期、つまり4-6月期の決算短信を公表しているのは、まだ日テレだけです。)

さっそく確認してみると、たしかに地上波テレビ広告収入(スポット)が激減しています(図表)。

図表 2021年4-6月期連結売上高
外部顧客への売上 売上高 前年同期比
地上波テレビ広告収入(タイム) 290.6億円 ▲3.3億円(▲1.13%)
地上波テレビ広告収入(スポット) 194.5億円 ▲114.8億円(▲37.11%)
BS・CS広告収入 31.8億円 ▲3.9億円(▲10.90%)
その他の広告収入 3.8億円 ▲0.9億円(▲18.51%)
コンテンツ販売収入 168.8億円 +6.2億円(+3.80%)
物品販売収入 57.1億円 +2.3億円(+4.10%)
興行収入 4.8億円 ▲16.6億円(▲77.65%)
施設利用料収入 16.7億円 ▲61.4億円(▲78.56%)
不動産賃貸収入 5.5億円 +0.2億円(+3.80%)
その他の収入 27.8億円 ▲15.9億円(▲36.47%)
合計 801.5億円 ▲208.2億円(▲20.62%)

(【出所】日本テレビホールディングス株式会社の2021年3月期第1四半期決算短信P9~10・連結セグメント情報より著者作成)

これによると、2019年第1四半期には地上波スポットCM収入が309億円で売上高全体の3割を占めていましたが、2020年第1四半期の地上波スポットCM収入は194.5億円と、前年同期比で37%も減少しているのです。

まさにコロナショックですね。

テレビ局経営の深刻な問題点

もっとも、全体の売上高の落ち込みは20%ていどであり、また、日本テレビホールディングス株式会社は財務体質がきわめて健全・良好ですので、ちょっと売上あが落ち込んだくらいでただちに経営危機になるという話ではありません。

ただ、ここで思い出しておく必要があるのは、『テレビ局「今すぐ事業をやめて解散した方が儲かる」?』などでも報告した、米国のアクティビストファンドの地上波テレビに対する苦言です。

これによると、「▼地上波の広告市場の売上高は低迷していて将来性がない、▼地上波はこれから必要となる設備投資が高過ぎて割に合わない、▼地上波テレビは時価総額が低すぎる」――などの指摘がなされていました。

実際、日本テレビホールディングスも、2020年6月末時点における純資産は7702.59億円ですが、時価総額は3181.69億円に過ぎません。極端な言い方をすれば、あなたが今すぐ3181.69億円を投じて同社の株式を買い占め、同社を解散すれば、7702.59億円が手に入る、という話です。

(※ただし、大量保有報告の論点や、株式を買い占めはじめた瞬間、株価が上昇してしまうなどの論点、会計上の純資産は必ずしも換金価値を意味するものではない、などの論点については無視していますが…)。

そして、あくまでも当ウェブサイトなりに持っている仮説とは、スポットCMが4割減少した理由は、「コロナ禍を理由に打ち切りやすかったから」ではないでしょうか。

もともと、広告主にとって、効果がよくわからないテレビ広告よりも、ターゲット広告などで効果が得やすいインターネット広告の方が魅力的だったのではないでしょうか。テレビ広告を出稿し続けていた理由としては、さまざまなしがらみもあったのかもしれません。

この仮説が正しければ、テレビ局に対する「コロナショックの第2波」は、これからやって来ます。日テレの例でいえば、スポットCMはさらに減少するかもしれませんし、ちょうど番組改編期にも差し掛かってくれば、タイムCMにも大きな地殻変動が生じる可能性すらあるでしょう。

こうした「コロナ第2波」がテレビ局の経営にどういうインパクトをもたらすのか、楽しみ心配でなりません。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • >テレビ広告を出稿し続けていた理由としては、さまざまなしがらみもあったのかもしれません。
    地上波テレビも
    ブラックジャーナリズムまがいに、というかそのものとして
    広告出さないと事故やなんかのたびにさらに針小棒大なマイナス報道しそうですしね。
    もう死滅あるのみです。

  • 更新ありがとうございます。

    私も「テレビ業界が心配でなりません」(笑)。
    「どうなるんやろ?」(失笑)。
    東京キー局で5月のスポットCM収入がおよそ昨年比40%減。

    スポットCMはオイシイと言うか、新製品が出たら、大量のコマーシャルが出て見る側を麻痺・洗脳してましたよネ。ところがそんな闇の中に鉄砲を撃つようなマネしても、今や買い上げUPにはなりません。

    やはりネットの力というか、スマホのCMの方がタイムリーな企画が多いです。見て欲しい層をあらかじめ把握して、スマホ、パソコンのブログ、youtubeに掲載した方がタイムリー。「適人・適時・適量」とは正に、この事だと思います。

    一方、NHKは「新しいNHKらしい番組を作る提言」を2021年初春に発表するそうです。「NHKらしい」って何?偉そうな態度だな〜。相変わらず懲りてない。民放対NHK、一波乱ありそうだ〜!

    • > 「NHKらしい」

      過去に何度か書いたネタで恐縮ですが、カルロス・ゴーン氏に経営を委ねるまで、赤字を垂れ流し続けていた日産自動車という会社がありました。

      ゴーンさんは、プロパー取締役には意気地がなくてできなかった「首切り」をやりまくって、たちまちに日産の経営を立て直しました。プロパーでは人斬りするための言い訳ができないので、日本語が通じない経営者を呼んで、従業員を諦めさせたのだろうと思います。

      ---
      新しい上司は○ランス人
      ボ○ィーランゲージも通用し○い
      これはチャン○ これは○ャンス
      勉強しな○そう
      ---

      今から振り返れば、ちゃんちゃらおかしい茶番でした。人斬りの用が済んだら「背任」で追放です。ゴーンさんが立派だとは言いませんが、私の目には、他の日産経営者はさらに卑劣に見えました。

      すみません、やっと本題です。その日産自動車が、ゴーン招聘前に垂れ流していたCMフレーズが「もっと日産になる」でした。もっと日産になって、もっと赤字を増やすんですか? アホですか? と、当時の私は心の中で突っ込んでいました。

      「もっと日産」の理由は、キャッチコピーの採用基準が、顧客視点ではなく、いかに経営者に気に入られるか、という組織内営業の結果であろうと推測しました。なぜなら、当時の私は、社畜として同様の問題に直面し、懊悩していたからです。

      > 「NHKらしい」

      ついに来ました。これまで私は、NHKはまだまだ安泰であろうと見ていましたが、とうとう日産化が始まりました。だれがゴーンさんの役を演じるのでしょうね。

      • 阿野煮鱒様

        レスありがとうございます。ご返事遅くなり、申し訳ございません。
        NHKの会長って三井物産や三菱商事等超有力企業でトップ下ぐらい上り詰めた方が着かれる、凄いポストなんですね。サラリーマンの鏡だわ〜。

        前田、籾井、上田、海老沢氏ら最近でも錚々たる顔ぶれ(名前も知らなかった人もいるが)です。どちらかと言うと「不祥事」が多いような(笑)。

        今の前田氏は線が細過ぎて無理でしょう。他所から引っ張って来るなら、アクの強い一代で築き上げたワンマンオーナーかな。財界とのシガラミが薄い方が良いですね。間違ってもソフ○バン○の人はダメですヨ。ユニク○もアカン。まだ楽○はマシかな。

        正直言ってコレって言う方は思い浮かびません。

  • 日テレの決算報告補足資料も日テレのウェブにアップされています。
    その中で一番衝撃的な情報は、年齢別の視聴者シェアです。
    日テレの49歳以下の男女の視聴者シェアはおおむね他局の2倍から3倍です。全年齢層ではテレビ朝日が2位で日テレの10%から20%位小さい数字になっています。CMを打ちたくなるコアとなる49歳以下は日テレの圧勝なので、テレビ朝日はシニア向けのジジババテレビ局だと明確に言えます。テレビ朝日の1/4期の決算報告は明日ですが、CM収入の総額は日テレに比べ大きく見劣りすると思います。昼間テレビを見ていても、通販、大人用おむつ、尿漏れぱっど、健康食品などのCMばかり、こんなCMでもテレビ局にとってないよりましだろうけど、CM収入は限られているだろうし将来への展望が開けない。
    明日のテレビ朝日の決算報告がどうなることやら。期待感は高まっていますが。

  • >心配でなりません。
    の前のビミョーな空白が...
    あ、なんだ!
    だよね~

  • TVは構造的な問題もありますが、自身も景気を減速に繋がるような報道をして自分の首を絞めてもいます。

  • 業界的な問題に起因するCMの自然減であれば気にしません。
    コロナが切欠であっても、それは単なる自爆という事です。

    ですが、コロナの影響によるスポンサー企業の業績悪化が原因の場合、そちらの方が心配です。
    TVの広告はイメージ形成の意味合いが強く、商品の販売に直結しない(Web広告との比較です)傾向にありますので、企業の余力を測るバロメーターでもあります。

    単純なスポンサー離れなのか、スポンサー企業の体力低下か、この違いは大きいです。

  • 内部留保や運用資金が少ない業態から、コロナ倒産が始まっていますが、意外に思われるかもしれませんが、医療機関も、利益率・運用資金が飲食業並みに少ないのです。
    医院・私立病院を皮切りに倒産が続出すると思います。

    公立病院はもともと赤字基調が多く、税金で補填する構造で成り立っていたのですが、昨今の「経営改革」という美名の下に独立行政法人化などで、援助を減らす方向に動いたのがここ15年ほど。
    こういう「未曾有の災害」時には、公金注入しないと持たないでしょう。
    東日本大震災でも、たくさんの医院・病院が潰れました。
    医者自身は潰れてもどっかの病院に再就職は容易ですが、借金は残ります。
    それでも震災関連にはまだ公金による補助が少しはありました。その時も「遅い」と言う声がありましたが・・・。

    ステイホームで感染蔓延を遅らせるのには、ワクチンや治療薬を開発する時間を稼ぐという目的と、どうしてもタイムラグが必要な行政的な手続きの時間を稼ぐという目的もあったはずですが、医療機関に対する手当はさっぱり聞きません。
    それでいて、感染対策費用コストは増え、患者は減り、感染者が来院してクラスタが発生しようものなら、ふつうの私立医療機関なら倒産は免れないでしょう。
    心配性のおばさまの言うとおり、「アベノマスク」のコスト260億円でどれだけのことができたか。

    • 書いたそばから、「新型コロナウィルス感染症対応従事者慰労金」の通知が届きました。
      5万円だそうです。

      思わず

      「そーじゃねーだろ-!!」

      と叫びましたわ。
      ちなみに振り込み時期は未定なんだそうです。

      • 検査数の増加、無症状者への検査拡大、
        それらが4偽陽性者の増加につながる。

        コロナ陽性者の死因はすべてコロナとする。
        で、コロナ死の増加。

        なんか、「化け物の正体みたり、枯れすすき」になりそう。

        次の冬は本物の第二波が来るかもしれないので、
        現状でバタバタせずに、医療整備に努めるのが賢明のよう。

  • テレビ局をはじめオールドメディアが散々デマを流して、経済活動を萎縮させてしまったから、自業自得ですよね
    スポンサーも利益減ってるどころか赤字だし、原因はなんだと分析すれば分かる企業には分かるわけです

    twitter見てるとデマ流してテレビ局のスポンサーに株主が凸してる話も見ます

    その内に危機感持ったテレビ局などは、コロナは大したことないキャンペーンを始めることでしょう

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、私は日本マスゴミ村と違って間違う存在であると自覚してい
    るので)

     民放としては、主にスポンサー料で経営しているので、視聴率ではなく
    そのスポンサー企業のメインターゲットにどれほどアピールできたかをス
    ポンサーに示して、(スポンサー企業の)売上に、どれほど貢献できたか
    を示せれば、民放自体の利益も、すぐに復活するのではないでしょうか。
    もっとも私には、(売上貢献度を示す)その方法が分かりませんが。

     駄文にて失礼しました。

    •  すみません。追加です。
       (その番組の)キャラクターグッズ(?)の売上だけは、スポンサー企
      業の売上への貢献度を示すことができることを、忘れていました。

       駄文にて失礼しました。

  • お邪魔します

    酔ってるからごめんね

    山のガス爆発事故、報ステ「コロワイド」「レインズ」の名を全く出さない違和感
    8/5(水) 11:00配信

    デイリー新潮

    新潮だって、CMなしじゃ食えないだろ。
    今この時、貴重な金主様に、忠義を尽くすときでしょ。

    こんな記事ひと昔前には、想像もできなかった。
    こんな意見、せんず〇だと思ってた

1 2