【為替操作の賜物?】韓国の外貨準備高が史上最大に
韓国銀行が発表した外貨準備統計によれば、同国の外貨準備高は史上初めて4100億ドルの大台を突破したそうです。おめでとうございます。ただ、その一方で、同国の外貨準備高を眺めていると、いろいろと不自然な点が多々あることは事実です。本稿では、韓国が4~6月の期間、「逆介入」(つまりウォン売り・外貨買い介入)を行った可能性を指摘するとともに、あらためて日韓通貨スワップに関する当ウェブサイトなりの考えを示しておきたいと思います。
韓国の外貨準備、巨額の行方不明額
「韓国の外貨準備には、どうも『巨額の行方不明額』があるように思えてならない」――。
以前から当ウェブサイトでは、こういう問題意識を持ってきました。
一般に「外貨準備」は、国自体に金融危機、通貨危機などが訪れた際に備えて、国家・中央銀行などが保有している準備金のようなものです。そして、世界の「基軸通貨」が米ドルである以上、多くの場合、その過半は米ドルで構成されていると考えるのが普通です。
国際通貨基金(IMF)が公表する『世界の外貨準備高の通貨別構成比統計(COFER)』によると、世界の外貨準備のだいたい6割少々は米ドル、2割がユーロで占められており、そのほかは日本円と英ポンド(各約5%)などの通貨で構成されています。
ただし、ユーロの割合が2割を占めている理由は、一国で1兆ドル近いユーロ建ての外貨準備を保有するスイスが、全世界のユーロ建て外貨準備を押し上げているからではないかと思います。このため、スイスを除けば、米ドルの構成割合は7割近くにまで上昇するかもしれません。
この点、韓国の場合は、典型的な「輸出立国」であり、かつ、ユーロ圏から遠く離れています。自然に考えて、彼らが主張する「4000億ドルの外貨準備」のうち、6~7割(つまり2400~2800億ドル)が米ドル建てでなければなりません。
オルタナティブ投資に振り向けている?それとも…
さて、通常の国は、外貨準備のうち9割は有価証券(とくに債券、とりわけ先進国債)で構成されているはずですので、上記「2400~2800億ドル」のうちの9割、すなわち2160~2520億ドルは米ドル建ての有価証券ではないかと想定できます。
しかし、米国財務省が公表する『TICレポート』によれば、昨年末時点で韓国が国を挙げて保有している米国内の有価証券は3800億ドル前後に過ぎず、しかもこれには韓国の民間企業など(金融機関、保険、年金基金など)が保有している有価証券も含めた数字です。
試算の前提にもよりますが、この3800億ドルのうち、韓国の外貨準備に含まれている金額は、せいぜい1000億ドルであり、逆にいえば韓国の外貨準備には少なく見積もって1000~1500億ドルの「行方不明額」があるのです。
この「1000~1500億ドルの行方不明額」に関するひとつの答えは、昨日の『韓国が外貨準備高のうち1573億ドルを「積極投資」』でも紹介したとおり、「韓国投資公社」という組織が、どうも外貨準備高を流動性のない投資に振り向けているらしい、という話題です。
ただし、残念ながら、韓国が外貨準備のうち、いったいいくらの資金を、どういうアセットクラスに投資しているのかについて、ちゃんとした統計データで確認することはできません。
たとえば、当ウェブサイトが重視している統計のひとつが「資金循環統計」と呼ばれるものですが、韓国の資金循環統計を眺めてみると、外貨準備と思しき項目が「その他の外国債権債務」という科目にすべて紛れてしまっていて、株式、債券などのアセットクラスに分解して分析することができません。
したがって、韓国の外貨準備の内訳については、あくまでも散発的な報道などを手掛かりに内容を想像・推理するしかないのです(その意味で、基礎的な統計でウソ・ごまかしが紛れている国というのは、本当に困ったものです)。
韓国の外貨準備高は史上最大に!
さて、韓国銀行は本日、2020年6月末時点の外貨準備高を公表しました。
これによると韓国の外貨準備は4107億5428万ドルで、史上最大値を更新しました(図表1、図表2)。
図表1 韓国の外貨準備(2020年6月)
項目 | 金額 | 前月比増減 |
---|---|---|
金 | 47億9476万ドル | ±0 |
SDR | 30億8011万ドル | +2億7583万ドル |
IMRポジション | 42億5222万ドル | +2億5979万ドル |
現金+有価証券 | 3986億2718万ドル | +29億0806万ドル |
外貨準備合計 | 4107億5428万ドル | +34億4367万ドル |
(【出所】韓国銀行)
図表2 韓国の外貨準備の推移(2014年6月~)
(【出所】韓国銀行)
非常に順調に伸びていますね。
余談ですが、同国の外貨準備が4100億ドルの大台に乗せたということは、もう日本が通貨スワップによる支援を与える必要は一切ない、という意味でもあります。「どうぞ自力で生きて行ってください」、という感想しか生まれません。
前月比34億ドルも増えるものですかね…?
ただ、図表1、図表2を眺めていて気付くのですが、同国の外貨準備高は武漢コロナ禍の最中の2020年3月頃には4000億ドルの大台を割り込みそうになり、そこからわずか3ヵ月で一気に100億ドルも増えているのです。年利回りに換算して10%(!)というパフォーマンスですね。
いったい何が発生したのでしょうか。
いちおう、韓国銀行の表向きの発表は、「外貨資産の運用益が発生したことに加え、ドル安によりドル以外の外貨建て資産のドル換算額が増加したため」なのだそうです(これについては韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の次の記事などもご参照ください)。
韓国の外貨準備高4107億ドル 前月比34億ドル増(2020.07.03 06:00付 聯合ニュース日本語版より)
はて。
2020年6月は主要国通貨に対してドル安が進んだことは事実なのですが、それでもやっぱり、「何か変」です。
ここで、仮に韓国の外貨準備高がIMFのCOFERどおり、米ドル6割、ユーロ2割、円・ポンド約5%、といった構成だった、という前提を置いて、韓国の外貨準備高を為替要因とそれ以外の要因に分解したものが、次の図表3です。
図表3 韓国の外貨準備高変動の要因分解
(【出所】韓国銀行データ等をもとに一定の前提を置いたうえで著者作成。なお、為替レートについてはWSJのマーケット欄等を参照)
図表3では、韓国の外貨準備高の変動要因を為替変動とそれ以外の要因に分けてみたものですが、過去にはほぼ為替変動だけで説明が付く時期もある一方で、為替がドル高になっているにも関わらず、外貨準備が増えている(あるいはその逆)、といった時期があることもまた確認できるでしょう。
とくに、2020年3月に外貨準備が1ヵ月間で一気に100億ドル近く減っているのは、為替変動によるものだけではなく、おそらく通貨防衛(ウォン安回避のための通貨買い支え)が行われたためでしょう。
しかし、その後の3ヵ月間に関しては、むしろ過度なドル高が修正されていくという要因もあったのですが、それにしても毎月のように数パーセントの利回りで資産が増えていく、というのは非常に不自然です。つまり、為替変動だけではどうしても説明が付かない動きが大きすぎるのです。
ずばり「逆介入」でしょう
あえて、当ウェブサイトなりになかば決めつけで仮説を申し上げておくと、おそらくこれは「為替の逆介入」によるものです。
韓国ウォンの相場は、2020年3月に、一時1ドル=1300ウォンの大台を突破しそうになりましたが、その後、4月以降は1ドル=1200~1250ウォンのレンジで推移しています。
韓国は以前から、為替相場をかなり人為的にコントロールしていることが知られていますが(※実際、米国財務省は為替操作監視レポートでこのことに何度も言及しています)、その理由は、為替相場がドル高・ウォン安に行き過ぎても、ドル安・ウォン高に聞過ぎても困るからです。
たとえば、ウォン高になれば輸出企業の輸出競争力が落ちますので、基本的には輸出競争力を維持するためにはウォン安が望ましいのですが、それと同時に韓国企業は外国の金融機関からカネを借りていますので、ウォン安が行き過ぎると財務制限条項に抵触する可能性が出てきます。
そのレンジは、以前だとおそらく1150~1200ウォンだったのですが、武漢コロナ禍以降はそのレンジが1200~1250ウォンに切り上がったのでしょう。
そして、3月はウォン安に対し、韓国銀行は100億ドルほど外貨を売り、「ウォン買い介入」を行ったのですが、4月以降はむしろウォン安が反転したため、1ドル=1200ウォンを割り込むウォン高にならないよう、せっせ、せっせとウォン売り・外貨買い介入を行っていた、といったところが真相ではないでしょうか。
だからこそ、外貨準備が3ヵ月間で一気に100億ドルも増えたのだ、と考えると、何となく辻褄が合って来るのですが、いかがでしょうか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、短期的な外貨準備の変動については以上の流れでだいたい説明が付くと思うのですが、中・長期的に見ると、「行方不明の1500億ドル」についての問題は、なかなか解消しません。
自然に考えると、外貨準備が4000億ドルを超えているのなら、同国の外国金融機関からの債務(3000億ドル少々)を超えているため、同国には通貨スワップなどによる国際社会からの支援など必要ありません。
ところが、韓国では通貨スワップを外国と結ぶや否や、メディアが狂喜乱舞してそれを伝えている国です。果たして外国からの債務が3000億ドルを超えている国が、スイスとの100億フランのスワップごときで狂喜乱舞する理由はあるのでしょうか。
いろいろ、理解に苦しむ点です。
ただし、韓国は「先進国」だそうですので、通貨危機もおそらくご自身で何とかするのだと思います。だいいち、約束破りは韓国の文化だそうですから、重要なことは、私たち日本としては、間違っても「日韓通貨スワップを結ぼう」という提案をすべきではないし、そういう協定を締結すべきでもない、という点でしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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今日は、間に合ったニカ?失礼したニダ。
ここ二ヶ月くらい、韓国の外貨準備高が増えても、全然不思議は有りません。
増えた理由は、会計士さんが書いている、為替介入でしょう。
残念ですが、「当面は、安泰ニダ」だと思います。
外貨準備金
で
増えたのは、証券類。
預金は40億ドル減っている。
外貨準備高の預金は減らないと思いますよ、大韓民国政府が、ウォンを売って40億ドル買えたのなら。
そもそも基軸通貨ドルをそれも40億ドルもの莫大なドルを売って…紙屑ウォンを買う超大金持ちはいませんよ。
市場で通貨売買するのは超大金持ち、金の亡者の超大金持ち。
市場では、ドル、円も、ユーロも莫大な金額で頻繁に売買されている。
大韓民国40億ドル分の紙屑ウォンなど買ってしまたら、売ろうにも売れない、ウォン大暴落で大損害。なんてバカはしませんよ、金の亡者超大金持ちは。
だんなさんのコメントの通りです。客観的にみると,ついでに,韓国経済より日本経済のほうがずっと悪いです。原因は,アメリカがコロナで受けたダメージにより対米輸出が半減しているのに,対中輸出はほとんど減少していないことです。それで,対米依存度が高かった日本のほうが大きな被害を受けて,中国依存度の高かった韓国のほうが安泰だった,ということです。日韓の貿易量は,それに比べれば無視できる範囲なので,議論するだけ時間の無駄です。IMFの試算はコロナが早々に収束することを前提に日本の2020年のGDPは-5%程度ですが,この調子で感染拡大すると-25~-20%くらいを覚悟しておかないといけません。韓国は-2%程度です。
いや、その前に日本と韓国では貿易依存度が違うでしょうに
日本が-20%で韓国が-2%とか電波過ぎる
HNつけてくれて助かる
大韓民国外貨準備金のうち現金が、マイナス40億ドル
この40億ドル、為替スワップの借金41億4000万ドルの返済ですね。
大韓民国からChinaへの輸出激減!
日本は、支那朝鮮と違って内需国。輸出入の増減など日本にとっては誤差のうち。
輸出がダメな大韓民国は、輸出で外貨(ドルや円)を稼がないと石油も食料もフッ化水素も工作機も何も買えない、半導体も作れない。
Money1さんのサイトだと証券類が+69億ドル、預金が-40億ドルとなっているのですが、
そうなるとドル売りウォン買いがあったことになならないのでしょうか?
>預金が-40億ドルとなっているのですが、
>ドル売りウォン買いがあったことにならないのでしょうか?
為替取引するのは超大金持ち。そんな金の亡者の超大金持ちが、紙屑ウォンを買うために基軸通貨ドルを40億ドルも放出するだろうか。
為替スワップという名のアメリカからの借金返済で40億ドルが、大韓民国から消えた…んでしょうね。
米への為替介入報告は半期締めであり、かつ韓国には売買介入の差額のみの報告が課されてたのではなかったでしょうか?
3月に通貨防衛のためのドル売り介入を大量にしちゃったものだから、6月末までに逆介入しておかないともったいないって心理も働いたのかもですね。
そんな大量の ドル買/ウォン売 が成立したのなら、
大韓民国政府が売に出した物凄く大量の紙屑ウォンを買って、その代わりに大量の基軸通貨ドルを売った為替市場の住人(超大金持ち)が、いることになる。。。いますか?そんな愚かな金の亡者が。
ブログ主様
基本的な統計の信用って大事だし、確かなデータをもとに舵取りしないと国の行き先がおかしなことになるでしょう。
コロナの時も、日本は死亡数を隠蔽していると言いがかりをつけてきましたが、
1.死体を隠すのは難しい、死亡数はおそらくごまかせない
2.医療従事者もコロナにかかりたくはない。従って入院してきた重症患者はまず間違いなく検査している
3.超過死亡の大幅な増加は認めず
以上から隠ぺいなどないことが分かります。むしろ、お隣は自分たちが隠蔽しているからよそも隠蔽しているのだろうと考えるわけでして。いい加減、自分たちの考えが国際的にはおかしなものだと認識すべきですね。
なお、佐藤優氏のインテリジェンスデータの9割は公表データというのは氏の立場に関係なく真実だと思います。それだけ、経時的に、他国とも比較しながらデータを眺めるといろいろなことが見えてくるということでしょう。
今後も、データの読み解き、よろしくお願いいたします。
>果たして外国からの債務が3000億ドルを超えている国が、スイスとの100億フランのスワップごときで狂喜乱舞する理由はあるのでしょうか。
疑問に思うのはこれなんですよね
アメリカからの時限為替スワップにしても600億ドルでしょ、つまり6兆円に過ぎない
韓国のGDPは170兆円。いざって時に6兆円でどれだけの効果があるのか
当方素人でよく分かりませんが、何故あんなに国民全体が一喜一憂しているのか
話題になったからメディアがスワップ問題を拡散・拡大させている部分があるのは明白ですが、
それにしてもあれだけ韓国人が気にするという事は、火の無い所に何とやらなんでしょうね
韓国経済は本当に張子の虎かも知れない。知りたいのは、その詳しい「張り子の度合」ですけどね
素人には中々核心は分かりませんねぇ・・
そう言えば、昨日は韓国に毎週訪れる為替スワップ返済日でしたね。
すんなり返済というつまらない結果なので、話題にものぼりませんね。
もうね、何十年も変わらず、もうすぐ韓国経済は破綻するっていう論法はやめた方がいいと思うんですよ。
やるなら、「韓国はどうして破綻しないのか。知られざるしぶとさの秘密を探る」みたいな方向でオナシャス。
もう一歩進んで、「こうすれば破綻に追い込める」という仮説を提唱し、提言する方向で。`
> 為替スワップ返済日でした
その返済額が、41億2000万ドル。
外貨準備高・預金減が、40億ドル。
にたような金額ですね。
在日の人の書き込みって危険だよ
日本は大丈夫
単純に、外国人が持っていた韓国株が売られて、その株を「あえて」ドルで買い支えたってことはないでしょうか?
つまり、正体は「外貨建ての韓国株」であり、外貨なのに国内経済に依存するということです。
これは韓国株の暴落を防ぐ一石二鳥な効果がある反面、それでも株価が下落したら、外貨準備の価値も急落することを意味しています。
しかも売ったら株が値下がりしてしまいますから、売るに売れない株を持ち続けることになります。結構な時限爆弾だと思いますよ。