新興国からの資金流出は「落ち着いた」といえるのか?

日経新聞が報じたところによると、国際金融協会(IIF)は昨日、「3月だけでEM諸国の株式市場や債券債券から833億ドル(約9兆円)規模で資金流出が発生した」とするレポートを公表したそうです。また、為替市場ではEM諸国通貨の暴落には歯止めがかかった状態にありますが、これが「危機が終息した証拠」と見るのは早とちりかもしれません。

「しゅうきんぺい」を意識せよ!

新型武漢コロナウィルスの世界的な蔓延を受けて、ついにわが国でも7日、政府が東京、大阪など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出するに至りました。

この点、わが国の市場(株式市場、債券市場、外為市場など)に関しては、少なくとも目に見える範囲では、この緊急事態宣言による影響は限定的と言って良いでしょう。とくに株式市場では、日経平均株価は昨日、400円以上上昇しています(※本日は小幅下落していますが…)。

ただ、一部の報道等によれば、緊急事態宣言にも関わらず在宅勤務などの動きは限定的であり、満員電車などの状況は相変わらずなのだそうです。

安倍総理は4月7日の『新型コロナウイルス感染症対策本部(第27回)』で、

私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割、削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます

と述べました。

やはり、感染爆発と医療崩壊を防ぐためには、「しゅうきんぺい」を強く意識する必要があります(『【読者投稿】武漢肺炎:「しゅうきんぺいを避けよう」』等参照)。

避けるべき「しゅうきんぺい」
  • 空間
  • 接空間
  • 鎖空間

とくに、コロナウィルスについては、中国からの「第1波」に加え、欧米諸国からの「第2波」が到来しつつあることを強く警戒しなければなりません。私たち国民は、まさに現在が感染爆発を防ぐ正念場にあるという意識を強く持ち、できる努力をすることが必要なのではないでしょうか。

新興市場諸国からの資金流出にも「第2波」

ただ、この「第二波」は、なにもコロナウィルスそのものに限られません。金融の世界でも「第二波」へのリスクは十分にあり得ると思います。なかでも懸念されるのは、新興市場(EM)諸国からの資金流出です。

現在のところ、EM諸国からの資金流出には落ち着きが見られますが、その大きな要因としては、米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)が3月19日に、世界の9つの中央銀行・通貨当局との間で為替スワップを締結したことが挙げられるでしょう。

実際、当ウェブサイトでは先日の『為替スワップ2回目の入札、「韓国の危機は去った」?』でも報告したとおり、FRBが新たに為替スワップを締結した国のひとつである韓国では、約80億ドルを予定していた流動性供給入札が「札割れ」となりました。

為替スワップ2回目の入札、「韓国の危機は去った」?

これは、韓国の金融機関に米ドルの短期資金需要がなかったという証拠であり、現在の同国が通貨危機、金融危機という逼迫状況にはない、という意味でもあります。

こうしたEM諸国からの資金流出に関連し、日経新聞に本日、なにやら気になる記事が掲載されていました。

新興国、資金流出「第2波」 消えぬリスク

新型コロナウイルス感染拡大に伴う新興国への懸念が強まっている。2020年3月は新興国・地域の株式や債券の市場から域外マネーが9兆円規模で流出し、リーマン危機時<<…続きを読む>>
―――2020/4/9 5:01日本経済新聞電子版より

日経電子版の記事によると、国際金融協会(IIF)は3月のEM諸国に対する「域外マネーによる株式や債券の投資」が833億ドル(約9兆円)のマイナス(つまり、資金の流出超過)となった、とするレポートを発表したのだそうです。

調べてみると、このレポートはIIFが4月8日付で公表したもので、原文についてはIIFのウェブサイトで閲覧可能です(PDF版については “Macro Notes – 2020 Capital Flows Outlook for Emerging Markets” を参照)。

日経電子版はこれについて、次のように述べます。

足元では市場の極端な混乱は収まる兆しもあるが、中国以外の新興国には今後、急激な感染拡大が懸念される国も多い。巨額の財政支出や利下げを迫られ、資金流出の『第2波』を誘発するリスクも否定できない。

IIFの詳細なデータ自体は会員登録をしていないと閲覧できないようですが、今回の833億ドルという資金流出額を巡って、日経は「この統計では月間で過去最大の流出額」、「リーマン・ショック直後(2008年10月)の620億ドルを大きく上回った」としています。

為替市場を見るのが手っ取り早い

ただし、私たち一般人のレベルで、EM諸国などの詳細な金融市場に関する統計を過去にさかのぼって取得するのは非常に難しいのですが、EM諸国における市場の混乱を見るうえで、手っ取り早いのが為替相場です。

ここではまず、コロナ騒動が発生する直前の1月20日時点と、主要国通貨が大きく下落した3月27日の時点の為替相場を比較しておきましょう(図表1)。

図表1 為替変動と対ドルでの騰落率(1月20日→3月27日)
通貨1月20日→3月27日対ドルでの騰落率
ロシアルーブル61.6→78.77▲27.87%
メキシコペソ18.6637→23.391▲25.33%
ブラジルレアル4.1904→5.1005▲21.72%
南アフリカランド14.4987→17.63▲21.60%
インドネシアルピア13621→16140▲18.49%
ノルウェークローネ8.9292→10.4877▲17.45%
豪ドル(※)0.6872→0.6165▲10.29%
スウェーデンクローナ9.5183→10.4877▲10.18%
トルコリラ5.9147→6.455▲9.13%
NZドル(※)0.6609→0.604▲8.61%
加ドル1.3049→1.4023▲7.46%
タイバーツ30.36→32.52▲7.11%
アルゼンチンペソ59.9919→64.1724▲6.97%
マレーシアリンギット4.0595→4.3276▲6.60%
インドルピー71.04→75.47▲6.24%
シンガポールドル1.3466→1.4278▲6.03%
韓国ウォン1159.61→1212.74▲4.58%
英ポンド(※)1.3009→1.2455▲4.26%
オフショア人民元6.8673→7.0964▲3.34%
オンショア人民元6.8669→7.0887▲3.23%
台湾ドル29.969→30.182▲0.71%
サウジアラビアリアル3.7519→3.7557▲0.10%
香港ドル7.7693→7.7514+0.23%
デンマーククローネ6.7346→6.7025+0.48%
ユーロ(※)1.1096→1.1168+0.65%
スイスフラン0.9684→0.9513+1.77%
日本円110.18→107.92+2.05%

(【出所】WSJのマーケット欄を参考に著者作成)

なお、(※)で示した通貨は、マーケット慣行上、「ニューヨークターム」、つまり、「その通貨に対する米ドルの動き」を見るという表示方法を取っているため、数値が小さくなれば通貨安、数値が大きくなれば通貨高という意味で、(※)が付いていない通貨と表示が逆転している点にご注意ください。

図表1で見れば、ロシア、メキシコ、ブラジル、南アフリカ、インドネシアなどの「G20に属する途上国」の通貨が大きく下落していることが確認できます(※これに対し、日本円が米ドルに対して最も大きく買われていることもまた確認できます)。

しかし、この3月27日時点から昨日(4月8日)時点の値動きは、どうでしょうか?(図表2

図表2 為替変動と対ドルでの騰落率(3月27日→4月8日)
通貨1月20日→3月27日対ドルでの騰落率
ロシアルーブル78.77→75.05+4.72%
メキシコペソ23.391→24.0422▲2.78%
ブラジルレアル5.1005→5.1221▲0.42%
南アフリカランド17.63→18.1885▲3.17%
インドネシアルピア16140→16175▲0.22%
ノルウェークローネ10.4877→10.2525+2.24%
豪ドル(※)0.6165→0.623+1.05%
スウェーデンクローナ10.4877→10.0729+3.96%
トルコリラ6.455→6.7734▲4.93%
NZドル(※)0.604→0.6009▲0.51%
加ドル1.4023→1.4009+0.10%
タイバーツ32.52→32.71▲0.58%
アルゼンチンペソ64.1724→65.0618▲1.39%
マレーシアリンギット4.3276→4.3475▲0.46%
インドルピー75.47→76.42▲1.26%
シンガポールドル1.4278→1.426+0.13%
韓国ウォン1212.74→1216.26▲0.29%
英ポンド(※)1.2455→1.2368▲0.70%
オフショア人民元7.0964→7.0687+0.39%
オンショア人民元7.0887→7.0677+0.30%
台湾ドル30.182→30.122+0.20%
サウジアラビアリアル3.7557→3.7611▲0.14%
香港ドル7.7514→7.7515▲0.00%
デンマーククローネ6.7025→6.8762▲2.59%
ユーロ(※)1.1168→1.0857▲2.78%
スイスフラン0.9513→0.9717▲2.14%
日本円107.92→108.83▲0.84%

(【出所】WSJのマーケット欄を参考に著者作成)

いかがでしょうか。

通貨によっては南アフリカランドやトルコリラのように、3月27日時点と比べ、さらに下落しているというケースもあるのですが、EM諸国全体として、「通貨がさらに下落していく」という状況にないことはあきらかでしょう。

実際、先ほどの日経の記事も、次のように指摘します。

足元の世界の金融市場には落ち着きの兆しもみえている。FRBなどが大規模な流動性供給などに動いたことで、極端なドル不足は解消され、米短期金融市場や社債市場では取引が戻り始めている。

これなど、当ウェブサイトの『為替スワップ2回目の入札、「韓国の危機は去った」?』で述べた内容と、ほぼ同じだと考えて良いでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

もっとも、現時点において、EM諸国からの資金流出がストップし、危機が完全に去った、と判断するのは早計です。

実際、コロナ騒動の第1波は中国からもたらされましたが、第2波はおそらく欧米諸国からもたらされました。そして、日経電子版によれば、ASEAN諸国などにおける感染者数はこれから本格的に増大するとの観測もあるそうです。

そうなると、現在の状況はあくまでも「踊り場」である可能性にも十分な注意が必要であることは間違いないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    >ただ、一部の報道等によれば、緊急事態宣言にも関わらず在宅勤務などの動きは限定的であり、満員電車などの状況は相変わらず

    勤務先は昨日から概ね半数出社、半数テレワークという勤務体制です。
    出社した昨日(4月8日)8時台の某県県庁所在市の通勤電車は、始発駅でないけど座れました。
    都心に向かう駅停車で徐々に増えますが、普段の半分から6割程度だったでしょうか。。。
    かなり、改善されてると思うんですが、時間帯で違うのでしょうか?
    勿論、会話は全くアリませんし、マスク率が半端ないです。

    勤務先も会議を中止&人数絞込みし、「しゅうきんぺい」は、物凄く意識しています♪

    >コロナ騒動の第1波は中国からもたらされましたが、第2波はおそらく欧米諸国からもたらされました。そして、日経電子版によれば、ASEAN諸国などにおける感染者数はこれから本格的に増大するとの観測

    日本の武漢肺炎感染者数増大が最も心配であり関心事です。
    昨日の某プライムの受け応えで指揮者たるべきN村大臣が、メールからの質問に、確認するとか何とかで、自分で決められない人と感じてダメダメと思ってしまったのは、私だけでしょうか?

    私見ですが、橋本元大阪市長・元大阪府知事あたりに交代してほしいです。

    1. 通勤嫌いな不良サラリーマン より:

      あれ、匿名になってしまいました・・・

  2. 匿名 より:

    ずっと踊り場で踊り続ける運命。体力勝負ですね。

  3. 山田内膳 より:

    簡易検査キットの承認が下りましたね。これで検査精度の問題は概ね解決できそうです。

    https://t.co/n9i720vWjQ

    現状の検査体制の問題は3点あると思っています。
    ①PCR検査の精度が悪い。
    ②病床数が足りなく、医療崩壊の恐れがある。
    ③検査場での感染を防げない。

    これで①は解決しそうです。②はホテル流用で軽症者の受入れ体制ができました。③は集近閉を避ければ対応できそうです。
    治療法もアビガンが医師と患者の同意があれば使用可能になりそうです。少しずつ体制が整いつつあります。ワクチン等の開発はまだまだ時間がかかりそうですが。

    1. 匿名 より:

      これはLAMP法で、抗体検査とかの簡易法とは違うんですね。検出はリアルタイムPCRと同じ方法ですよね?それとも流すのかな?

    2. りょうちん より:

      これって日本の企業以外の情報が無いんですが、この原理のキットは栄研の専売なんでしょうか?

    3. ケロお より:

      コロナのPCR精度が悪いと言われているのは、検体採取時にウイルスが取れないことが頻繁に起こるのが原因なので、LAMPでも同じ問題が残ります。武漢肺炎はインフルと異なり、鼻や喉の粘膜であまりウイルスが増えず肺で増えてることがあるようなので(喉の痛みや咳などの症状発現前に肺炎になることも)、鼻や喉から検体採取してもヒットするとは限らないということです。ウイルス遺伝子の増幅で検出する方法はすべてこの問題から逃れられないということになります。PCRに問題があるのではなく、SARS-CoV-2の性質と遺伝子検査という方法とで相性が悪いので、遺伝子検査の時点でもうしょうがないということです。

      LAMPのメリット
      ・等温反応なので機器が安価
      ・増幅遺伝子が沈殿物として懸濁するので目視で判定できる
      ・反応時間が少し短い
      デメリット
      ・PCRより試薬(酵素)が高くて、供給量にも不安
      ・プライマー末端相当部位に変異が起こったら検出できないけど、そのリスクはPCRより高い(6プライマーのうち一つでも末端の点変異で増幅しなくなる、PCRならプライマーはだめだけどプローブ末端の点変異だけなら問題なし)
      ・PCRはパテントフリーだけど、LAMPは栄研の特許権が生きてるのでコストと権利の問題が生じやすい
      ・PCRは標準法として定着してるけど、LAMPはまだ未知数(現場で実際やってみたらイマイチという危険性はあり得る)
      PCRと同じ点
      ・特異性が高い(プライマーが6ヶ所なので、2遺伝子×リアルタイムPCR=プライマー×2+プローブ×1に相当なので、感染研メソッドと同程度)
      ・検体採取箇所によっては感染者が陰性になりやすい

      結論。
      多検体なら検体処理で時間がかかるので通常通りのリアルタイムPCRでも大差なし(実績のあるリアルタイムのほうが安心)。
      少数検体なら産総研開発のGeneSoCでリアルタイムPCRをやったほうが速い(試薬キットは杏林製薬。海外キットを日本で使わせたいアレな人には残念なお知らせでした)

  4. 迷王星 より:

    >人と人との接触機会を最低7割、極力8割、削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます

    と安倍総理は述べられたそうですが、このブログにお集まりの医療関係者の方々に質問があります。

    この中共コロナ感染は上の安倍総理の方針で終息するのですか?

    この方針では確かに新規感染者数が減少に転じるのかも知れませんが、集団免疫(nCoV-19の感染力からの集団免疫成立の免疫獲得者率は60~70%だそうです)が確立していない状況では、単なる一時的な安寧ではありませんか?

    いつまでも人同士の接触機会を従来の7~8割減で続けることは不可能です。また、このウィルスを日本から完全に駆逐することは現実的ではありません。それに加えて、いつまでも鎖国を維持することは現実的ではありません。

    つまり世界中で感染力の強いこのウィルスを絶滅させることが出来ない限り、日本で人同士の接触を激減させることに成功して一時的に新規感染者が出なくなったとしても、集団免疫の6~7割の免疫獲得率が達成されない限り、日本国内で誰かの中に潜んでいるのが広まったり海外からの来日客からこのウィルスが入りこめば、いつでも今回の爆発的な感染の広がりが再開するのではありませんか?という疑問です。

    ということは、こういう対策で一時的に感染爆発を抑えこめて医療崩壊を防ぐことはできても、緊急事態宣言が解除され学校が再開され会社出勤が当然となり社会が再び動き出せば再び感染爆発の危機に直面するのではないでしょうか?

    医療関係のプロの方々は、我が国におけるCOVID-19の最終的な終息はどういう形になる、あるいはどういう形で終息させるのが正しいとお考えなのですか? 

    プロの方々のお考えをお教え頂ければ幸いです。

    1. ケロお より:

      医療のプロでなくて申し訳ないですが、「政策」では終息しません。それと、現在の対策は『一時的に感染爆発を抑え込む』のではなく、長期戦で感染爆発を抑え込むのが目的です。数ヶ月とか数年継続できることだけをやってるのです。
      「日本の政策」(安倍政権の政策ではない)では、同時に同地域で多数の要治療者が発生して医療キャパを超えることを避けることが前提です。もちろん重症者の救命が最重要なのは大前提です。その前提で、感染者数ピークの山を低くなだらかにすることを目標にして、緩やかな行動制限『だけで』感染者数のコントロールをしていくために、各政策が実施されています。新型インフル対策の延長線上にある政策なので安倍政権の政策というよりも、政治的判断では左右しにくい21世紀の日本型対パンデミック政策と言うことになります。政権が決められるのは、経済対策と他の細かいところだけで大筋は変わらないとおもいます。日本では、地域封鎖や外出禁止をおこなわないでも、自粛だけでおそらく乗り越えられますので、経済的ダメージが他国より小さくなり、かつ、人口あたり死者数も最少クラスで維持されていきます。要は、日本ではこのままダラダラとコロナ慣れしながら、『自粛』、『集・近・閉を避ける』、『手洗いの徹底』、『自分も感染してるかもしれないからマスク』を続けることになります。国民の大多数がコロナ慣れすれば、他国からすれば平常通りに見えるレベルの社会活動に戻りますが、コロナ以前から見たら平常とは言い難いかもしれません。多分数年かかります。集団免疫が先か、治療法確立が先か、ワクチンが先かはわかりませんが(多分、治療法、ワクチンの順でしょうか)。
      欧米が死者出しすぎた挙げ句に、強力な行動制限で短期的に抑え込もうとしてますので、制限解除後に反動で強烈な第2派を自爆的に発生させる危険性が高いです、答え合わせは中国がしてくれます。韓国も死者が少ないですが、残念ながら我慢が苦手な国民性なようですから行動制限解除後の反動も熾烈なものになるかもしれません。
      いっそのことノーガード戦法で経済ダメージを防ぐべきという意見もありましょうが、残念ながらそれでは医療崩壊リスクがかなり高いです。日本の武漢肺炎死者が少ないのは全国民対象としては医療システムが世界トップクラスだからです。その医療システムが破綻しますと、他の疾病での死者数が爆発的に増えてしまい、社会システムが維持できなくなり「国家崩壊」に繋がりかねません。医療システムがテキトーな他国なら、元々医療崩壊してもしなくても似たりよったりなので、ノーガードもありって言えばありですが。アメリカなんかはノーガードを貫くと予想してましたし。キリスト教系先進国は人と人との肉体接触が致命的に多い上に、衛生観念が予想のはるか上(下?)の酷さだったようですね。ハグやキスをしない分だけ中国の方がマシというレベルでしたね。

      1. 迷王星 より:

        ケロお様、お返事有難うございます。引用箇所が前後しますが、

        >いっそのことノーガード戦法で経済ダメージを防ぐべきという意見もありましょうが、残念ながらそれでは医療崩壊リスクがかなり高いです。

        ええ、この点に関しては承知しています。ノーガード戦法をやれば医療崩壊するのはまず確実でしょうから余りにもリスクが大きすぎるというのは私も良く理解しています。

        問題は、

        >現在の対策は『一時的に感染爆発を抑え込む』のではなく、長期戦で感染爆発を抑え込むのが目的です。数ヶ月とか数年継続できることだけをやってるのです。

        とありますが、現在の対策、つまり緊急事態宣言を発令して集近閉の場や原因となる業種には自粛要請するというのは適切な補償がない限りは現実問題として継続など全く不可能だということです。

        実際、密集の最たるものである通勤ラッシュは(多少は緩和しているのでしょうが)全然解消していませんし、今後もすることはないでしょう。企業からすれば倒産するか社員がコロナにかかるリスクを負わせるかの究極の選択となれば、後者を選んで当然です。

        自粛要請される業種の個人店や零細業者も、借金が嵩んで自分が首を括るか、それともチャイナ・コロナ感染拡大の原因(になり誰かが武漢肺炎で死ぬ原因)になろうとも日銭を稼いで首を括るのを避けるか、となれば後者を選ぶのは当たり前です。これを非難したり批判したりすることはできません。

        つまり、経済的な補償なし(東京都の場合は少しは出しますが)の緊急事態宣言に基づく自粛要請という政府打ち出した現在の対策は、どんなに我慢できても1ヶ月かせいぜい2~3ヶ月しか続けられないものであって、とてもではないが長期戦にはならないと他人事(私自身は自粛させられる仕事ではないので)ながら思うのですよ、少なくとも自粛させられる側から見れば。

        補償しないで自粛だけ求めるのでは、連休明けに緊急事態宣言1ヶ月の期間が終われば、自粛要請に従っていた業者も一斉に業務を再開し、それ以降も自粛要請しようとも従わず、結局はコロナ感染拡大にとっては1ヶ月間だけ時計の進みをゆっくりさせていただけの効果で終わると思うのです。

        1. ケロお より:

          緊急事態宣言の本質は、マスコミが言っているようなものではないのです。医療崩壊確実な状況を想定したものです。土地・建物を強制的に取り上げて臨時医療施設を作るのを可能にすることとか、医薬品や食料品を強制徴収(代金は払う)できることです。罰則ありで、言ってみれば戦時体制ですよ。ホテルとかを強制的に感染者隔離施設にしたり、ひょっとしたら、東京ドームやさいたまスーパーアリーナを一時的な死体置き場(臨時霊安室と呼べば医療施設とも言えます)にしたりとかもするかもしれませんね。災害下における都道府県レベルでの自宅避難をしている状況というのが最も適切な例えかもしれません。言葉の意味をしっかりと把握するべきです、「緊急事態」なのです。

          「強制力がない自粛要請」は、つまり、緊急事態宣言下でなくとも続けていただく必要があるものだと思います。緊急事態宣言下では生活上必要な外出以外は全て自粛という強い要請ですが、仕事に行くことは生活に必要な外出です。問題は、生活に必要でない外出でしかニーズのない業種ですね。ライブバーとかキャバクラとか、一般の外食業とか、映画館とか、散髪とか。もちろん、業種によって自粛プレッシャーは異なります。都知事はそういうところはおかまいなく自粛させようとしていたので、色々と揉めたのでしょう。
          緊急事態だから自粛しろというロジックで自粛させたら、緊急事態明けには自粛を解いていいと勘違いされますよね。ご指摘のとおりです。でも、そんなことはどうでもいいことなんですよね。まともな人は「緊急事態が明けたからキャバクラ行くか!」とはならないわけなので。西浦先生も、コントロールできない部分があるという前提で、8割の行動制限と言っているのですが、つまり「緊急事態明けにキャバクラ行くようなバカは緊急事態の最中でもハイリスクな行動をとるし、そういう業種は自粛要請なんか屁でもなく営業を続ける」という確信を持っているという意味だと思います。まともな会社なら緊急事態が明けても大人数での会議などやらないし、可能ならテレワークも継続しつつ、一部必要に応じて出勤を許可していくでしょう。多くの業種でテレワークなどそもそも不可能というのは当然ですが、一方で、ノートPCを買うカネをケチってるだけ、内部規則を変える手間を惜しんでいるだけの企業もあるのではないでしょうか。努力の余地はまだあるものと理解してます。政府だって緊急事態があけたら急に「3密OK、濃厚接触OK」なんて言わないですよね。「事態は予断を許さない状況なので、不要不急の外出は引き続き自粛していただくし、テレワークなども一層の推進をお願いします」って言いますよ。一斉に業務再開なんてとんでもない。再開可能かどうかは個別判断です。政府や地方自治体が個別事情まで細かく勘案できないのは当然ですし、出せるお金も限度があります。有限なものの配分には、優先順位がつけられてしまう。1ヶ月間自粛で休業してても、ただお休みするのではなく事業継続を真剣に考えなくてはいけないですし、残念ながら頭を使わなかったところから食い詰めるのは当然の帰結でしょう。

          はっきり言って、政府が国が保証とかできるような状況ではないのです。まだ、リーマンショックとかバブル崩壊程度の認識でいる人は危機感が足りません。世界大戦級は当然、もしかしたら火山の冬級の大災害の入り口かもしれないのです。しょうがないですよね、感染拡大の努力を怠った人がたくさんいた結果ですから。なんなんですかね、K-1とかキャバクラとか卒業旅行とか送別会とか帰省とか、バカそのもの。そういうのがなければ今の半分くらいには抑えられていたんじゃないですかね。半分とまで行かなくても全然マシだったのではないかと。まあ、食糧生産は可能っぽいので生きるだけならなんとでもなります。でも、自粛したら保証してほしいとか、店舗の家賃が支払えないので助けてくれとか、寝ぼけてるのかなという感じです。もちろん、バカやった人と割を食った人が違うのは知ってますよ。だからといって卒業旅行に行って送別会にでて帰省した人に賠償金を請求しても支払い能力ないですよ。まあ、いずれにせよ、全員は助けられないだろういうことです。年単位で自粛させようというのに保証なんかできるわけがないので、持ちこたえられないなら自主的に廃業か転業を、そうでなければ休眠状態で耐えてくれということです。廃業するなら生活困窮者扱いで最低限の生活費を貸与できるけど、死んだ産業に無駄金注ぐわけには行かないのです。察しの悪い方々をわざわざ刺激する必要はないし、刺激してもメリットがないので、ものすごく分厚いオブラートにくるんで言っているのです。「継続可能かどうか」というよりは、「継続可能なことだけやれ」、「社会全体を継続可能なようにしろ」、ということです。家があって水があって電気が来ていてガソリンもあって食べるものはある、最悪そういう状況で1.2億が耐えることになる。感染拡大させないなら遊んでいてもいいんですよ、散歩とかネットとか。でも、食い扶持を稼げる人はそのままでお願いします。そうでない人は、どうしよう?自分で考えてくださいね、子供じゃないんだから、という大変厳しい状況です。もしかしたら、都市封鎖とか外出禁止とかじゃないから、外国よりも状況が良いと思っている人もいるかも知れないのでしょうけど、50歩100歩ですね。都市封鎖も外出禁止も、どちらも、継続不可能政策なのでやらないし、検討もされてないんです。経済へのダメージと感染拡大防止のコストパフォーマンスが悪くて1ヶ月持つか持たないかなので、継続性とコスパが良さそうなところでやっていきましょうということです。本当にコスパがいいのかはわかりませんが、いわゆるロックダウンよりは継続可能ですよ。時計の針を1ヶ月遅らせるのではなく、1ヶ月遅らせた後に、緊急事態を解かれても、さらに1ヶ月、さらに1ヶ月、事態が好転するまで延々と最悪の状況の発生を遅らせるのです。遅らせるだけ?そうですよ。だって、解決法はまだないのは皆さんご存知じゃないですか?ワクチンも特効薬もまだないのですから。ひたすら耐えるのですよ。別にね絶望させようと言うわけではないのですよ。2019年と同じようには生きられないけど、生きていかなくてはいけないし、感染拡大させないなら自由にしていいんですから戦時中よりマシじゃないですかね。監禁されたり、拘束されたり、虐待されたり、暴力を振るわれたり、そういうことをされているのではないのですから、自分で希望をさがして生きていくべきなんじゃないかなと思います。

          ちなみに、集団免疫は、どうにもならなくて最終的に落ち着く先がどこかという話なので、ゴールではないということをお断りさせていただいた上で、多分、日本は10%-30%程度の免疫獲得者割合で成立すると思われます。R0値をいくつに設定するかで変わってくるので、日本ではR0<2は間違いなく、1.5くらいなら33%、各個人ががんばりつつ継続可能な自粛で1.1とか1.2になれば10-17%程度です。現在の感染者総数を10万と仮定すると、あと少なくとも120倍くらいの感染がなければ落ち着いてはこないということになりますが。それでも、現在の東京周辺、大阪周辺以外の地域レベルまで落ち着いてくれば、人との接触を8割減という無理めの目標ラインを下げられます。他の多くの県はそこまでやらなくてもやっていけてるという事実がありますので、長期的に考えると、異常な人口密度である東京一極集中の解消も視野に入れ長期的に取り組む(政府任せでなく、企業や個人レベルでもです)必要があるでしょう。

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