金融市場というものは、得てして予想外の動きをするものであり、そして、市場の崩落も唐突にやって来るものです。こうしたなか、昨日は土曜日であるにも関わらず、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が、『デイリー新潮』に、なにやら不気味な記事を寄稿されています。あくまでも当ウェブサイトの理解ですが、これは金融市場の動きに照らし、何やら市場の急変が発生してもおかしくない、という「警告」のようなものでしょう(※もちろん、実際には何も起こらない可能性もありますが…)。
金融市場の怖さと面白さ
当ウェブサイトでは先月、『数字で読む日本経済』というシリーズを掲載したのですが、その際にも取り上げた「事件」が、「スイスショック」です。
この「スイスショック」とは、それまでまったく何も兆候がなかったのに、2015年1月15日の夕刻、外為市場で突如としてスイスフランが大きく値上がりしたという「事件」のことです(『「国際収支のトリレンマ」に逆らった国・スイスの末路』参照)。
ただし、この「スイスショック」については、金融市場参加者は、何となく「現状のスイスの金融政策は持続できないな」、と見透かしていたフシがあります。なぜなら、「国際収支のトリレンマ」に逆らうことなど、絶対に不可能だからです。
ちなみにこの「トリ(3)レンマ」とは、3つの政策目標のすべてを達成することはできないという意味で使われます。国際金融の世界では、次の3つの政策目標について、どれか1つを諦めなければならない、という問題のことを指します。
- 金融政策の独立…自国の実情に合わせて自由に金融政策を打ちたい。
- 資本移動の自由…自国通貨の使い勝手を良くするために、外国との資本取引を自由にしたい。
- 為替相場の安定…為替相場が無秩序に変動するのは避けたい。
どの国も自国の実情に合わせて自由に金融政策を採用したいと思い、また、自国通貨の使い勝手を良くするためには、極力、資本移動には制限を加えたくありませんし、さらに自国にとって有利な為替レートを実現しておきたい(あるいは無秩序な為替市場の乱高下は避けたい)と考えています。
しかし、これらのすべてを同時に達成することはできません。
たとえば、金融政策の独立を維持しつつ、資本移動を自由にしてしまえば、中央銀行が利上げ・利下げをするだけで、資金(とくに投機資金)が出入りしますので、為替相場が大きく動いてしまいます。
このため、日米英欧などの主要通貨採用国は、資本移動の自由と金融政策の独立を両方維持するために、為替相場の安定という政策目標を実質的に放棄していますし、香港やデンマークは事実上の固定相場制を採用するため、金融政策の独立を放棄しています。
この3つの目標を同時に達成しようとする欲張りなスイスは、結局、為替介入に失敗し、現在ではGDPと比べて明らかに過大な8000億ドル以上もの外貨準備と5500億フランものマネタリーベースを抱え、にっちもさっちもいかなくなってしまっているようです(図表1)。
図表1 スイスの為替相場、外貨準備、マネタリーベース
(【出所】SNBウェブサイトより著者作成)
鈴置氏の最新論考
なぜ唐突に、スイスフランの事例を持ち出したのかといえば、「金融市場は突如として大きな動きをすることがある」という当たり前の事実を思い起こすためです。
こうしたなか、昨日は土曜日にも関わらず、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が、『デイリー新潮 半島を読む』シリーズに最新稿を寄稿されています。
米国にケンカを売った「韓国」から外国人投資家が逃避 ムーディーズには怪しい動きが(2019年11月30日付 デイリー新潮より)
鈴置氏といえば、先週土曜日も『韓国は米国の“お仕置き”が怖くてGSOMIA延長 今度は中朝との板挟みという自業自得』という論考を発表していますが、2週連続して論考が出てくるというのも、「愛読者」としては嬉しい限りです。
もっとも、今回の論考については、「金曜日や土曜日に韓国政府から緊急で何らかの動きがあった」、といった話ではなく、どちらかといえば金融市場(マーケット)の最新動向と各種報道などを組み合わせて、「来週以降の動きに注目せよ」、とする鈴置氏なりの警告ではないかと思います。
記事のタイトルに「米国にケンカを売った『韓国』」とあるとおり、「米国にケンカを売る韓国の将来を見切り、韓国から外資が逃げ始めた」とするのが、今回の論考の趣旨でしょう。
短期的な乱高下と長期トレンドをどう読むか
鈴置氏の論考は、さっそく、「韓国証券市場で外国人の売りが止まらない」という話題から始まります。
具体的には、11月7日から29日まで、じつに17営業日連続(!)で外国人が株式を売り越したということであり、11月29日の韓国総合株式指数(KOSPI)が10月以来、約1ヵ月ぶりの安値水準となる2087.96で引けた、という状況にあります。
ちなみに、鈴置氏の論考では触れられていませんが、「韓国売りが止まらない」という意味では、外為市場も同じような状況にあります。
WSJのマーケット欄によると、11月29日の引け値は1ドル=1181.7ウォンであり、10月31日の1ドル=1170.24ウォンと比べれば約1%のウォン安水準で、11月5日の最高値水準(1ドル=1,154.18ウォン)と比べれば2%以上下落しています。
- 株式指数…約1ヵ月ぶりの安値
- 為替相場…11月最高値から2%以上下落
もちろん、これらについては単なる市場指標であり、また、金融市場というものは市場参加者のさまざまな思惑によって激しく動くものでもあります。また、韓国ウォンは「危険水域」(?)とされる1ドル=1200ウォンの大台を超えているという状況でもありません。
このため、短期的なトレンドでたまたま売られただけなのかもしれませんし、月曜日以降、韓国の市場に再び外国人投資家のマネーが入って来て反騰したとしても、べつに不思議ではありません。
ただし、先ほどの「スイスショック」の事例にもあったとおり、「何らかのマグマが溜まれば、いずれそれらが噴出し、市場の大崩落が発生する」というケースは多々ありますし、それが韓国で(あるいは中国で)発生したとしても、何ら不思議ではありません。
ちなみに今回の韓国の株安局面について、鈴置氏の論考では「MSCI指数(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社が公表する株式指数)の韓国の比重が変更されるのが韓国株下落の原因だ」とする韓国メディアの説明に異論を唱えています。
この「MSCI要因」とは、一般に、パッシブ投資家(年金基金や投信などにおいて、株価指数と同じような値動きを実現させようとする投資家)による売買によって、証券市場が動かされるというものですが、鈴置氏は韓国の株安の原因がMSCI要因以外にもある、と述べるのです。
※ただし、それらの具体的な証拠(米韓同盟に亀裂が入りかけているという話題や、銀行や工場などの外国資本が韓国から徐々に引き上げているという話題など)の詳細については、是非、リンク先記事をご参照ください。
金融危機が発生するとしたら…?
正直、私自身はまだ今回の韓国の株安局面が一時要因なのか、それとも長期的な「コリア・エグジット」という潮流を反映したものであるかについては、現段階では見極めが難しいとは考えています。
月曜日以降に反転する可能性は、十分にあるからです(※もっとも、金融市場の動きに関する話題を取り上げる以上は、「予測が当たる可能性も外れる可能性もある」というのは、ある意味ではごく当たり前の話ですが…)。
しかし、それと同時に鈴置氏の論考は、市場参加者の視点だと忘れられがちな、「政治と金融は分けられない」という、当たり前の事実に裏打ちされているため、やはり「不気味な兆候」でもあると思わざるを得ないのです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、あくまでも一般論ですが、韓国発の金融危機が生じるとしたら、それは株安が原因ではなく、外貨建ての債務の借換(ロールオーバー)ができなくなることが原因と考えられます(このあたりは『「韓国経済崩壊」論、本当の脅威は株価暴落ではなく外貨不足』などもご参照ください)。
もちろん、韓国の株価崩落が外国人投資家の「パニック売り」を招くという可能性は否定できませんが、それよりもダイレクトに企業の倒産をもたらすのが「資金繰り」であることから、個人的に注目したいのが、「韓国が国を挙げていくら外国の金融機関からカネを借りているか」というデータです。
以前の『最新のBIS統計から読む、「カネの流れと日韓関係」』でも紹介したとおり、韓国が外国の金融機関から借りているカネの総額は、2019年6月末時点で約3300億ドルですが、このうち1年以内の短期債務が1000億ドルを少し上回っています(図表2)。
図表2 韓国が外国金融機関から借りている短期債務の推移
(【出所】国際決済銀行統計より著者作成)
といっても、リーマン・ブラザーズの経営破綻が発生した2008年の水準と比べれば、まだ外国からの短期債務の残高は少ない方ですが、それでも最近になって外国金融機関からの短期債務の額がジワジワと増え続けているのは不気味な兆候でもあります。
いずれにせよ、韓国の株式市場については、外国人投資家の売りが続くのか、投資家がむしろ「安値で拾う」動きに出るのかは読めませんが、週明け以降の展開については注目する価値があることは間違いないでしょう。
View Comments (31)
韓国経済崩落が発生するか否かは、明日以降の話ですが、周辺国の思惑で建国・維持され、自らの力で危機を乗り越えた経験の無い「70年の恥ずべき歴史」しかない「傀儡国家」がどうなるのかが見ものです。🐧
韓国が金融破綻したとしても自業自得と思うけども、それによって日本が大きな影響を受けるのは避けたいので、個人的には金融よりは生産活動から先に衰退して欲しいですね。
といっても、韓国はその国民性から博打を打って負けた時のことを一切考えないという傾向があり、過去の経験から金融機関の脆弱性がわかっているのに変わらずそのままで、ちょっとしたことで危機に陥る可能性は大きいと言えます。
それと日本を対比すると、自国通貨建てで国債を発行して、さらに国内需要では賄いきれないほどの資金があるのは、歪ではあってもバッファが超巨大で恵まれているなと思います。
今年もあと一か月ですが、年内にパーフェクトストームがあるのかどうか。無いとは断言できないと思っています。
鈴置氏
>>外国人が売って、年金基金など機関投資家が買い支えるという構図が続いてきましたが、それが崩れたのです。
此、パーフェクトストームが無くても順調に「自滅してる」って事では無いですかね。
ハンファケミカルがロールオーバーに失敗した、200億円相当のサムライ債の満期が11月末でした。
無事返済されたのでしょうか?
結果がわかるのは明日でしょうね。
一企業の動向ではありますが、仮に返済されなかった場合には、資本逃避が一気に加速しそうです。
ハンファケミカル11月30日、韓国輸出入銀行12月末のサムライ債の巨額ロールオーバーができるかできないか、手に汗握る展開になってきました。
特に韓国輸出入銀行12月末のサムライ債1,000億円のノールオーパーができないと韓国自体がトホホ状態になると思われます。
雑談専用記事にもコメしたのですが、他スレでサムライ債の償還期限が11月8日とみかけました。これ正しいのかはわかりませんが。
https://toushi.kankei.me/d/S1008XR3
JCR 格付一覧:ハンファケミカル
https://www.jcr.co.jp/ratinglist/corp/13077
これのニュースリリース 2019.06.28の3ページを見ると、以下のようになっています。
第1回円貨社債(2016)200億円 償還期日:2019年11月8日
内容を見る限り、財務は健全なのではないでしょうか。
自己レス。
上記のサムライ債の件で、ちょこ様より回答いただきました。
https://shinjukuacc.com/20191130-00/
各位
ちょっとした興味本位で雑談専用記事と本スレの記事分断となり申し訳ございません。
経済ど素人故、スレ建てしても質問にも答えられない体たらく。恥入るばかりです。
ちょこ様の書込みにより12/02の楽しみが残って良かったです。
歴史愛好者の端くれとして韓国の終わりの始まりを見届けたい気分です。
私も先走ってしまい大変失礼いたしました(汗)
今の韓国経済を実験中だと思って見ています。
最低賃金を上げて、企業の活動を抑制し、国民にバラマキを行い、日本のパヨさん達が、考えている事の社会実験を行ってくれています。
国の経済的体力は、圧倒的に違いますが、「何をしてはいけない」という反面教師の観点から、実験結果は多くの教訓を、日本に与えてくれると思います。
韓国経済破綻は、通貨安、株安のどちらが、トリガーになるか分かりませんが、ほぼ同時に起こると思います。
企業収益の悪化、個人負債の増加、不動産バブルなど、一旦弾ければ、良くなる要因が見当たりません。
早く、鈴置さんの話が、実現する事を望みます。
特色ある半島ならでは主体性が今回も発揮されて、命綱なし空中遊泳アクロバットの妙技を全世界が同時鑑賞することにやるやも知れません。反逆者の末路が洞窟に追い込まれ獰猛にして勇敢なる軍用犬の餌食に終わるやの悪夢がいちぶでも心の隅に横切ることあるすればそれこそ秘めたやましさの発露ではないか、そのよう愚考いたします。
文在寅の壮大な社会実験の結果はすでに明らかになりつつあります。
地球上では「重力」が働いていることは明白な事実ですから「命綱なし空中遊泳アクロバットの妙技」の結果は地面に叩きつけられて跡形もなくなることは当然明白に予想されます。
通貨安、株安、そして韓国経済破綻はすぐそこに迫っています。韓国はもう滅茶苦茶です。いろいろな情報から文在寅は今年の中頃には破綻すると思っていましたが意外にしぶといのには驚きです。この分では文在寅より韓国自体の破綻の方が早そうですね。
今回の日韓GSOMIA終了の凍結で、韓国が日本に迫っているのが、経産省措置の撤回です。
もちろん、安全保障と輸出管理は取引されるものではなく、輸出管理強化はそれに至る原因が除かれない限り、撤回されません。日本政府はこれまで何度となく説明してきたはずですが、今回の日韓GSOMIA終了の凍結を受けて、最初のテーブルに着く同意をしました。(アメリカの顔を立てたのかしら?)
経産省措置の撤回?いえ、そのための韓国の輸出入管理体制再構築のためです。
コケの一念で経産省措置の撤回を叫んでいる韓国側は「話しが違う」ということなのでしょう。(日韓GSOMIA終了の凍結に日本は何も約束していませんよ)
過日、Web主様がおっしゃておられていたように、あの国は、輸出入管理についてもそうですが、法治についても何も理解していないのですね。
さて、日本側はそれでも粘り強く、韓国への経産省措置を元に戻すには、その管理体制再構築が必要でそれには数年以上かかると説明しているのに対して、韓国側は「それまでもたない!」と言ったのだとか(笑)。なにがもたないのでしょう?
ともあれ、日本は韓国に譲るべき何もありません。今月の24日に日韓首脳会談が予定されているらしいのですが、空手でくる文在寅大統領と安倍総理は何を話すのかしら?写真撮影というパターンはいい加減疲れます。24日までに韓国経済崩壊してくれません?
> 輸出管理強化はそれに至る原因が除かれない限り、撤回されません。
取り除かれれば、韓国をホワイト国(グループA)に戻すというのが、最初から日本の方針です。
> 今回の日韓GSOMIA終了の凍結を受けて、最初のテーブルに着く同意をしました。
それは多分順序が逆です。21日に韓国からWTOの話をがあり(同時に、我国の輸出管理の最初からの方針も確認したのかどうかは、よく判らないが)、22日に韓国が「GSOMIA終了の凍結」を発表したのです。但し、前日の話だとは言わずに、GSOMIAにくっつけて発表した、と思われます。
墺を見倣え様 あら、そうでしたわ(笑)。
≫今回の日韓GSOMIA終了の凍結を受けて、最初のテーブルに着く同意をしました。
>それは多分順序が逆です。21日に韓国からWTOの話をがあり、22日に韓国が「GSOMIA終了の凍結」を発表したのです。
そう誤解する様に、韓国が仕組んでいるのですから、仕方ない面はありますが、韓国の術中に嵌らない様。御互いに注意を払いましょう。
過去にも、「輸出管理の見直し」なのに、「経済報復」だの「輸出規制」だのと、韓国の術中に嵌った人が居られますので。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
明日以降の韓国金融市場が、どうなるかは私には分かりません。しかし
鈴置高史氏の推測通りに動くとして、韓国の文大統領の動きを推測してみ
ると
①韓国国内の保守派の財産を没収する
②同じく、韓国国内の日本企業の資産を、国内法を制定して没収する
③日本マスゴミ村のATMに、「安倍総理が、韓国に譲歩した」との記事を
書かせて、それを既成事実化することを狙う
④アメリカに、「日韓GSOMIA破棄凍結の借りを返せ」と要求する
⑤中韓通貨スワップと同じく、「中国との間で経済支援の合意が成立した」
との発表を一方的に行う
でなないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
「ダメだ」「危ない」と言われ続けて生き延びてきている半島です。今回も期待しないで、ノンビリ待ちます。
良い方向へ行くとは思っていませんけどね。碌な滅び方はしないでしょう。
更新ありがとうございます。
11月7日から17営業日連続で外国人が株式を売り越した。逃げ出した。日本企業も永久に戻らないと決めないと。まだ居るのは損切り覚悟か。
明日以降の韓国金融市場が、どうなるかは分かりません。崩壊してもザマアミロというより、日本に被害が最小で留まる事を願います。まあ、日頃の日本に対する行ないが悪いのと、「世界の嫌われ者」(鈴置氏)の韓国ならば、ロクな結末は無いでしょう。
碌な結末無い…
その通りでしょうね。
経済が破綻すれば日本に逃げ込もうとするから、そこだけは早々に手を打って欲しいところです。
日本では畳の上で昇天したいと言いますが、彼の国ならどういうのでしょう。
いずれにせよ彼の国(中華思想や儒教から抜け出せない国)は、碌な滅び方と昇天の仕方は無いと思います。
業火に炙られ続け魂まで灰になるのか、核や放射能に苦しめられ死ぬまで苦痛や苦悩を味わい続けるのか…。
某国も李朝積弊精算に方針転換して貰いたいものですね。
通りすがりのA様
激しく同意します!
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
通りすがりのA様へ
彼の国は、滅ぶになら日本も道連れにしようとするのでは、ないでしょ
うか。そして、その前日まで日本マスゴミ村のATMや野党は、桜で安倍総
理を批判して、当日になったら、「安倍総理は、何も用意していなかった」
と批判すると思います。
駄文にて失礼しました。