立花孝志氏の落選は想定内?N国党の本当の狙いとは?

昨日、埼玉県選挙区で行われた参議院議員補選で、前参議院議員でもあるN国党の立花孝志党首が立候補し、落選しました。これについては、「せっかく7月の参院選に当選したのに、わざわざ議員辞職するとは、意味がわからない」、「どうせ立花(氏)の行動は単なる売名行為だろう?」といった反応もあるようですが、事情はそこまで単純ではないと思います。これについてどう考えれば良いのか、そして「N国党の本当の存在意義」とは何なのか。これについて、当ウェブサイト的に考えてみました。

立花孝志氏は落選

今年7月の参議院議員通常選挙で比例当選した「NHKから国民を守る党」(N国党)の立花孝志党首が、せっかく国会議員に当選したのに、さっそく議員辞職し、参院補選に出馬する、という話題を、『立花氏、「参院議員を辞職して参院議員選に出る」?』で紹介したことがあります。

立花氏、「参院議員を辞職して参院議員選に出る」?

これについてはすでに報じられているとおり、今回の補選では前埼玉県知事の上田清司氏が圧勝し、立花氏の参議院議員への「返り咲き」は実現しなった格好です。

ただ、そもそも論として、普通の人ならば、立花氏が議員辞職して補選に出馬すると決めた時点で、少なくとも次の3つの疑問を抱くのではないかと思います。

  1. 国会議員ならば非常に高額の年俸を得ることができるのに、もったいなくないのか。
  2. せっかく議員になったのに、なぜわずか数ヵ月で議員を辞職してしまったのか。
  3. あちこちで脈絡もなくさまざまな選挙に出るのはおカネの無駄遣いではないか?

これについて、どう考えれば良いでしょうか?

収益的には国会議員をする必要なし?

このうち「国会議員が得る年俸」については、計算方法により変動するため、一律にいくらとはいえませんが、当ウェブサイトの試算だと、国会議員を1人雇うことにより国が負担している金額は、少なくとも1.1億円と考えられます(『国会議員の1人当たり給料をねちねち計算してみた』参照)。

その積算根拠はざっくりと

  • ①議員1人に対する年間の報酬…3362万円
  • ②秘書3人に対する年間の報酬…2000万円
  • ③事務所、特殊乗車券等…1000万円前後
  • ④政党交付金…4000~5000万円

といったところですが、国会議員が年俸(歳費+文書通信交通滞在費)として得られるのは、立花氏本人が給料として得ている金額は①の3362万円であり、1ヵ月に換算すれば300万円近い、とてつもない金額でもあります。

ただ、それと同時に立花氏はユーチューブ上、「チャンネル登録者」が50万人を超えていることは事実であり、また、あるウェブサイトによれば、立花氏の月間のユーチューブ広告収入は1000万円を超えるとの情報もあります。

N国党・立花孝志党首、ユーチューブ収益を公開 「札束の分厚さ」に衝撃(2019/9/25 12:30付 『しらべぇ』より)

もしこのユーチューブ収益が維持できるのであれば(つまり、チャンネル登録者数と動画の再生数を維持することができるのならば)、年間売上高は1億円を優に超える計算であり、そんな立花氏にとって、「個人収入」の観点からは、立花氏はわざわざ国会議員を務める必要などないのです。

(※なお、余談ですが、今月初旬から立花氏のユーチューブの広告配信が停止されている、という情報もあるようです。その意味で、「ユーチューバー」としての立花氏には「広告配信停止リスク」というものがあるのかもしれません。)

さらにいえば、N国党は今回の選挙で政党要件を得ていますので、立花氏としては自分自身が「支配」している政党に政党交付金が交付されるという事実は変わりませんし、衆議院議員である丸山穂高氏がN国党に入党したことも、N国党が経済的が潤う要因のひとつであることは間違いないでしょう。

(※ただし、肝心の丸山氏自身がN国党から離党してしまう可能性もゼロではないと思いますが…。)

良く言えば話題作り、悪く言えば売名行為

次に感じる疑問は、「せっかく国会議員になれたのに、なぜ彼は議員を辞めてしまったのか」、です。

ここで何より重要なことは、今年7月の選挙で立花氏が当選したのは「比例代表」であり、「選挙区」ではない、という事実です。したがって、立花氏が議員辞職したとしても、比例代表名簿の2位の浜田聡氏が繰り上げ当選することになり、結局のところ、N国党としての議席数は減りません。

これに加えて、今回の補選では、上田氏の地盤である埼玉選挙区で立花氏は「惨敗」を喫した格好となりましたが、話題性だけは十分です。

実際、立花氏本人がさっそく次の地方選に出馬する計画があるという話題に加え、N国党がさまざまな有名人に対し、地方選挙や来たる衆議院議員総選挙などへの立候補を打診しているという話もあります。これなども立花氏が各所で話題作りをしているという証拠でしょう。

もちろん、ここでいう「話題作り」というのは良い意味での表現であり、非常に悪い言い方をすれば「売名行為」でもあります。なにより、立花氏が船橋市議や葛飾区議、参議院議員などを務めて、すぐにやめているのは、彼に投票した有権者をバカにするような行為だ、と批判されても仕方はないでしょう。

ただし、立花氏の行為が良いか悪いかはべつとして、彼の行動には首尾一貫性があることは間違いありません。それは、「とにかくさまざまな地域の選挙に出て、『立花孝志』と『N国党』の名前を有権者にアピールすること」です。

調べてみると、立花氏は2013年9月の摂津市議会議員選挙(※落選)を皮切りに、今回の参議院議員埼玉選挙区補選で、合計10回の選挙戦を戦った格好です。

それも、国政選(参院選)、地方選(都議会選、市議会選、区議会選、市長選)といった具合に、さまざまな地域・さまざまなレベルで選挙に出続ければ、否が応でも注目を浴びることは間違いないでしょう。

選挙戦の目的は「投票させること」

だいいち、立花氏が侮れないのは、これまで10回の選挙戦で、実際に3回は当選している、という「実績」を伴っていることです。当然、彼自身には選挙のテクニック、ノウハウなどの蓄えもできていることでしょうし、彼が選挙のたびに「NHKをぶっ壊す!」と叫べば、それが多くの人に印象を残します。

正直、この「NHKをぶっ壊す!」というキャッチフレーズが良いコトバだとは思いませんが、ワンフレーズとして非常にわかりやすく、このフレーズが多くの人に伝われば、「N国党」という政党の存在を強烈に人々に印象付けることができます。

たとえば、このコトバが100人に記憶されたとして、30人くらいから反発を持たれたとしても、のこり70人くらいがこのコトバを契機に「NHKの問題点」に気付かされ、さらにそのうちの10人が実際に立花氏(や彼以外のN国党候補者)に投票すれば、これこそ彼の戦略勝ちでしょう。

その意味では、「アンチN国党」の有権者を300万人生んだとしても、「N国党支持者」を100万人発生させることができれば、極端な話、彼にとっては願ったりかなったりなのでしょう。

繰り返しになりますが、今回の参院補選での敗退は、立花氏にとってはおそらく「織り込み済み」だったのでしょう。いや、むしろ彼にとっての目的は、「さまざまなパターンの選挙戦を経験すること」にあったのではないでしょうか?

今回は上田氏が圧倒的な地盤を持っているなかで、立花氏にとっては圧倒的な不利な状況での選挙戦となりましたが、べつに彼にとっては今回の選挙で勝たなくても、ゆくゆくはN国党がそれなりの議席を獲得することにつながりさえすれば良い、という話なのではないかと思います。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

なお、N国党を巡っては、上杉隆幹事長が辞職したという報道もあるようであり、また、立花氏自身のユーチューブ収益が停止し続けているという話題もあるようですが、これについてはどうも情報が乏しく、よくわかりません。

このため、N国党が順調に議席や支持率を伸ばすとは限らず、むしろどこかで頭打ちになる瞬間が来るかもしれません。

ちなみに、当ウェブサイトとしては、N国党を公然と支持するつもりもなければ、N国党を公然と批判するつもりはありません。あくまでも今後のN国党の行動次第です。

なお、N国党とはまったく別に、当ウェブサイトとしては、NHKという組織については「経済競争で勝ち残ったわけでもないくせに、多くの家庭から巨額の受信料をむしりとり、役職員に対して異常に高額な人件費を支払う『国民の敵』」だと考えています。

その意味で、N国党が選挙のたびに注目されるというのは、決して悪いことではないと思います。なぜなら、「NHKを批判することが票につながる」と気付けば、「NHK改革」を公然と主張する候補者が増えるからです。

N国党がそこそこ躍進してNHK改革が実現すれば面白いですが、極端な話、べつにN国党が躍進する必要などないのです。

むしろ、N国党の本当の存在意義は、「N国党がNHK改革を実現するため」ではなく、「NHKの在り方に関する国民的議論を巻き起こすこと」にあると思うのですが、いかがでしょうか?

読者コメント一覧

  1. 阿野煮鱒 より:

    「NHKから国民を守る党」および立花孝志氏に関しては、「在日特権を許さない市民の会」と桜井誠氏のような胡散臭さ、エキセントリックさを感じます。

    胡散臭い敵に対して、胡散臭い輩を鉄砲玉としてぶつけるという使い方はあると思い、先の参議院選挙ではN国党に票を入れましたが、彼らは多数派になられると困る危ない集団です。しかし、、在特会が一向に社会的影響力を伸ばしていない現状を見ても、N国党がマジョリティーになる危険はないと思っています。

    それよりも心配なのは、在特会の活動によって在日ヘイトの方が問題視され、むしろ在日に有利な状況を生み出しているかもしれない現状に照らし、むやみなNHKヘイトによってNHKの立場が有利になりはしないかということです。

    潔癖主義的に考えれば、ああいった胡散臭い輩を味方と見做すことは間違いです。その一方で、狡猾でしたたかな敵に対しては、潔癖な戦い方だけでは限界があるとも感じます。

    当座はN国党には暴れもらいつつ、彼らを頼りにしない議論を積み重ねていくのが、胡散臭くない「我々良識ある有権者」の仕事だろうと思います。

  2. 墺を見倣え より:

    > べつにN国党が躍進する必要などないのです。

    「必要ない」というレベルを通り越して、「N国党」には余り躍進して欲しくありませんが、NHKのスクランブル化は実現して欲しいです。代案として、NHK廃止、または、完全民営化というのも大いに歓迎。

    NHKの廃止、または、スクランブル化、と、電波オークション、または、Jリーグみたいな入替制、を希望します。

  3. 七味 より:

    今回の補選はふたりしか立候補がなかったので、選択肢を有権者に提示してくれたという意味で、立花氏には感謝です

    「海はない、空港もない、だが補欠選挙はある」ってポスターも可笑しかったのです \(^o^)/

  4. 匿名 より:

    投票いけよ
    わけのわからん答弁しかできない
    企業票おじさんが埼玉の民意なら仕方ないけどな

  5. G より:

    私の試算ですが、どうもN国は供託金の没収を回避したのではないでしょうか。多分選挙活動にそんなお金かけてない、議席は繰り上げで党勢には影響なし。つまりはタダ乗りでの売名にまたもや成功してしまったということです。

    これももうある程度の支持層を確保してしまった証です。

    まあ、NHKは報道以外ではコマーシャルなどを解禁してその分大幅に受信料を下げるとかで良いような気がします。国会中継分は国費を拠出、災害報道などには受信料原資に頑張ってもらい、その他の番組は民放と同様の運営。
    どうでしょうね。月200円300円くらいなら良いんじゃないかなぁ。

  6. ピークを過ぎたソフトエンジニア より:

    私が見るに、立花氏はむちゃくちゃ面白い芸人なんです。
    ネタは選挙と「~をぶっ壊す」。

    本当かどうかは知りませんが、既得権益を持つ組織からの資金にまったく依存してないと言い張ってます。見かけ上はクリーンな選挙、クリーンな政治なんですw

    確かなのは、立花氏の相手が逃げ回っていることです。何でもかんでも暴露されることがわかっているので、失策を恐れて相手をできません。ターゲットにされた方はたまりませんね。

    あとは結果が出せるかどうかに掛かってます。
    今のところは、かなり斬新な選挙芸人と言ってもいいかも知れません。

  7. スカイネット より:

    私は、立花氏は評価していません。公職選挙法の穴をつき、被選挙権がないと知りながら、立候補させ、無効票を大量に発生させた過去があります。有権者をバカにしているとしか思えない行動でした。

  8. 元韓国駐在員の 妻 より:

    話題がずれてしまってすみませんがー

    4月初め、私が乗っていたJRの車内のつり広告すべてが
    NHK朝ドラの宣伝でした。

    先週乗ったJR車内の広告映像、
    NHKプロフェッショナルなんとか
    という番組の宣伝でした。

    「公共放送」が、
    広告代理店とJRに、
    「私たちの受信料」を
    広告代として支払うのはおかしくないですか?

    そもそも、TVを購入したら、
    見たくもない番組が多いNHKに、
    否応なしに、
    未来永劫、
    多額のお金を払い続けなければならない「受信料」の仕組みを
    変えてもらいたいです。

    文句だけの投稿ですみません・・・

  9. 近くの反日より遠くの親日 より:

    落選を待ってましたとばかりにw。
    NHK、立花N国党首に受信料支払い求め提訴  – 産経ニュース
    https://www.sankei.com/affairs/news/191028/afr1910280023-n1.html

    NHK的には、ここぞと追い込むつもりなんでしょうが、悪手にしか見えないなぁ。
    ネタを提供し続けないと詰んでしまう立花氏的には、この上ないプレゼントかと。

  10. りょうちん より:

    「民主主義を食い物にしている」と言う点では立花孝志氏は、共産党と同類と言えるでしょう。
    この場合、思想の方向性ではなくて、手法がですが。

  11. 酒が弱い九州男児 より:

    ワンセグとネットの受信料はあきらかにやりすぎ。
    立法府がNHKに忖度しかしないから、こういう輩を選挙で送り出すしかない。
    先生の仰る『「NHKを批判することが票につながる」と気付けば』は大きな武器なるので、立花氏はその方向にかじを切ってもらえればいいんじゃないかと思う。

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