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日韓GSOMIA破棄と「南ベトナム・シナリオ」

本当に驚きました。先ほど『日韓GSOMIA破棄、日韓新時代へ』で速報したとおり、韓国政府はどうやら日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)の破棄を決断したからです。韓国はすでに今年7月19日の時点で日韓関係を「捨てた」格好ですが、これに加えて日韓間の争いを、ついに米国にまで飛び火させてしまいました。本稿では日韓GSOMIA破棄に関連する報道を紹介するとおもに、「韓国の南ベトナム・シナリオ」について、簡単に紹介しておきたいと思います。

予想どおりの「逆ギレ」

先ほど『日韓GSOMIA破棄、日韓新時代へ』で速報したとおり、韓国政府はどうやら日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)の終了を決断したそうです。

これについては、先ほどの記事に当ウェブサイト始まって以来の勢いで大量のコメントを頂きましたが、それだけ多くの人々がこの問題に関心を抱いた証拠といえるでしょう。

さて、これに関するさまざまな報道のなかで、比較的すっきりとまとまっている記事が、次の『聯合ニュース』(日本語版)のものだと思います。

日本との軍事情報協定を破棄 「外交努力に応じず」=韓国(2019.08.22 19:29付 聯合ニュース日本語版より)

記者会見で発表したのは金有根(きん・ゆうこん)国家安保室第一次長で、日韓GSOMIAの規定に基づき「延長通知期限内(つまり24日まで)に外交ルートを通じて日本政府に通知する」と述べたのだとか。

以下は聯合ニュースが報じた、日韓GSOMIA終了に関する金有根氏の説明です。

  • 日本政府は2日、明確な根拠を示さず、『韓日間の信頼喪失で安全保障上の問題が発生した』との理由から『ホワイト国(輸出管理上の優遇対象国)』から韓国を除外し、両国間の安全保障協力の環境に重大な変化をもたらした
  • こうした状況で安全保障上の敏感な軍事情報交流を目的に締結した協定を維持することは韓国の国益に合致しないと判断した

これについて当ウェブサイトでは、今朝の『本日GSOMIA破棄なら、日韓関係清算のチャンス』のなかで、韓国政府は次の行動に出るに違いないと「予想」しました。

  • もし韓国政府が日韓GSOMIAを破棄すれば、「日本の態度が悪かったからだ」として日本政府側に全責任を押し付ける
  • もし韓国政府が日韓GSOMIAを継続したとしても、「我々が延長するという譲歩をしてやったのだから日本もそれに答えるべきだ」と恩を売る

いかがでしょうか。

驚くほど、当ウェブサイトの予想どおりの「逆ギレ」でしたね。

問題を混ぜこぜにする韓国政府

聯合ニュースの記事の続きを眺めてみましょう。

これによると、韓国大統領府関係者は次のように述べたのだとか。

政府は強制徴用被害者に対する日本企業の賠償責任を認めた大法院(最高裁)の判決を三権分立の原則の下で尊重すると同時に、韓日関係を踏まえ、韓日首脳会談の提案や2度の特使派遣を含め日本政府に解決策を提示して努力したが、日本は応じず、(文大統領が対話を呼びかけた)光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)の演説にも公式な反応を示さなかった

手前味噌ですが、この下りも、今朝の『本日GSOMIA破棄なら、日韓関係清算のチャンス』で述べた、「日本政府の姿勢がまったくブレずに一貫していたこと」が、「瀬戸際外交」を繰り広げた韓国政府にとっての最大の誤算だった証拠です。

そして、韓国政府関係者によるとされる、この短い文章を読むだけでも、韓国政府がさまざまな問題を混ぜこぜにしていることがよくわかります。

そもそも論として、日本政府が7月1日に発表した『韓国向け輸出管理の運用の見直し』は、安全保障(つまり軍事的な理由)による輸出管理の話であり、韓国の輸出管理に対して日本政府が深刻な懸念を抱いたからこそ発動した措置です。

輸出管理体制に懸念がある韓国を日本自身が輸出管理上の「ホワイト国」に指定したままだと、軍事転用されかねない戦略物資が日本から韓国を通じて第三国に流れてしまうなどの危険があるため、早晩、日本が韓国を「ホワイト国リスト」から除外することは不可避でした。

また、昨年秋口以降の旭日旗騒動、自称元徴用工判決、レーダー照射事件、国会議長による上皇陛下侮辱発言、慰安婦財団の一方的解散といったさまざまな問題は、いずれも韓国側が一方的に仕掛けてきた不法行為であり、全面的に韓国に責任があるものです。

予想される今後の展開

さて、先日の『韓国「告げ口外交」を機に、むしろG7で対韓制裁を!』でも報告したとおり、韓国側が困ったときに取る行動は、だいたい次の4つのパターンに集約できます。

  • ①日本との協定や条約の破棄など不法行為をチラつかせる「瀬戸際外交」
  • ②米国や中国のような「強い国」に媚を売り、日本に圧力を掛けさせる「圧力外交」
  • ③あることないこと織り交ぜて日本を揺さぶる「ウソツキ外交」
  • ④国際社会に対してロビー活動をして「日本の不当性」を強調する「告げ口外交」

日韓GSOMIA破棄も、「破棄するぞ、破棄するぞ、このままじゃ破棄するぞ~!」と脅すことにより、日本を交渉の場に引きずり出す、という意味で、「瀬戸際外交」の1つだったことは間違いないでしょう。

ただ、当ウェブサイトではまさか本当に韓国が日韓GSOMIA破棄を決断するとは思っていませんでした。なぜなら、本当にそれをやってしまったら「瀬戸際」ではなくなってしまうからです。

その意味で、「まさか一線を越えてしまうとは…」、と素直に驚いています。

ところで、今後の展開についていくつか予想しておきましょう。

「破棄するする詐欺」シナリオ

まず、まだ可能性が残っている選択肢は、「破棄するする詐欺」、つまり日韓GSOMIA破棄通告期限まであと2日残っているため、わざと韓国政府がこの破棄通告を行わない、という可能性です。

具体的には、日本政府に対して「交渉に応じるならば、いまならまだ日韓GSOMIA破棄の意思決定を撤回するのに間に合うぞ」と脅し、日本の「ホワイト国削除」について撤回させる、といったシナリオが考えられます。

「わざと遅延&言い訳」シナリオ

次に考えられるのは、じつは韓国政府がこの「破棄するする詐欺」を仕掛けて来ているにも関わらず、日本政府がこの詐欺に引っかからず、あくまでも「日韓GSOMIA破棄撤回と引き換えにホワイト国削除撤回」に応じないという可能性です。

その際、韓国政府が「外交ルートを通じた日本政府への通告」をわざと遅延させ、「事務上の理由で日韓GSOMIAの破棄が間に合わなかった」、と言い訳をすることです。個人的にはこの「わざと遅延し『事務上の手違いで間に合わなかった』と言い訳する」という可能性は決して否定できないと思います。

(もっとも、いったん「日韓GSOMIA破棄」で韓国国内が動き出した以上、もう文在寅氏自身にもこの流れを止めることはできないと思いますが…。)

本気で日韓GSOMIA破棄、そして…

ただ、「素人集団」である文在寅(ぶん・ざいいん)政権が、そこまで深く考えているとは限らない、という可能性もあります。そして、本気で外交ルートを通じて日韓GSOMIA破棄を通告する、というシナリオこそが、いよいよ本格的に「米韓同盟破綻」が視野に入ってくるはずです。

「西ドイツ・シナリオ」ではなく「南ベトナム・シナリオ」

そうなれば、やはり韓国に待ち受ける可能性が高い将来とは、「南ベトナム・シナリオ」ではないでしょうか。

第二次世界大戦後、国家が自由主義圏と共産主義圏の2つに分断された事例といえば、大きく東西ドイツ、南北ベトナム、南北朝鮮の3つが挙げられます(広い意味では中国が本土の共産党政権と台湾の国民党政権に別れたというのも、東西分断の事例といえるかもしれませんが…)。

このうち、自由主義圏に統合された事例がドイツであり(西ドイツが東ドイツを吸収)、共産主義圏に統合された事例がベトナムです(北ベトナムが南ベトナムを吸収)。

では、朝鮮半島は、いったいどうなってしまうのでしょうか。

すでにソ連はこの世になく、また、北朝鮮が中国とさほど仲良さそうに見えない点という地政学的な観点、さらには総合的な国力から考えれば、米国の同盟国である韓国が北朝鮮を吸収するのが、本来は自然だったはずです。

しかし、韓国は残念ながら、米国の同盟国としての地位を自ら捨て去る決断をしてしまった可能性が高いといえます。そうなれば、やはり「西ドイツ・シナリオ」が実現するよりも、「南ベトナム・シナリオ」の方が現実的です。

そして、米国は同盟国が裏切った場合、「焦土化したうえで撤退する」という共通点があります。

その典型例がベネズエラですが、これについては日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が今年2月の時点で予言していたのが参考になるでしょう(『稼ぐ力弱まる韓国に「ベネズエラ化」という予感』参照)。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、「ATM」と呼ばれるわが国の極左メディアを筆頭に、マスコミ各社はおそらく明日の社説で、「今からでも遅くないから、日本政府は韓国に頭を下げて、日韓GSOMIA破棄を思いとどまるようにお願いすべきだ」、といった主張をするのではないでしょうか。

ただ、残念ながらこの日韓GSOMIA破棄は、韓国が踏み抜いた地雷であり、私たち日本にとってはどうすることもできません。

それよりもこれから必要なのは、対馬海峡が「最前線」になることへの覚悟ではないかと思うのですが、これについては少し深く掘り下げたい論点がありますので、稿を分けて説明したいと考えております。

新宿会計士:

View Comments (36)

  • ここまでの事態を決して想像しなかった訳では無いのですが、
    実際にやられてしまうと余りの馬鹿っぷりに眩暈がしてきますね。
    明日になったら「正式に外交ルートで言った訳じゃ無いのでアレは無し!」何て事もあるかも知れません。
    外務大臣は即抗議、防衛大臣はボケた発言をし、首相は無言、アメリカはテンプレ通りの発言しかしてませんが、
    午後からドル/ウォンのレートが天元突破してるようで、数字は正直ですなぁ。

  • 今日と言う日と文氏は世界史の教科書に載るかもなぁ。
    かえりみれば、文氏が「韓国を踏みにじってでも赤化統一する!」野望は隠しきれてない。億単位の人々を騙しつつ走りまくってる。

    統一とか難しそうな事言っても、米軍動かないタイミング見て半日でミッションコンプリートだろ。北朝鮮軍呼び込んで、家の中案内して、酒酌み交わしてお祝いムード作ったら他人は手出しできない。つまり在韓米軍撤退させるまでが文氏の演じてるシナリオ、か・も?

    韓国が空回りして見えるのは金氏がツンツンしてるから。でも上記の目的が秘密裏に合意されてたら、目的のためには「金氏はデレないでくれ。ツンっツンでお願いします」だろう。

    その陰謀論が正しければ、ホワイト国除外の時には待ちに待った祝杯だったろうなぁ。「トランプのアホはなかなか在韓米軍撤退してくんねぇけど、アベちゃんは間に合わしてくれたよね。思ってたより半年遅かったけどwww」

    • 少なくとも、韓国の歴史教科書には載るかと・・・
      こんな無茶苦茶な決定、軍部や野党は頭抱えているだろうし、親米側が政権奪い返しても時既に遅しですね。
      歴史の一場面を見ているようで、恐ろしく感じました。

  • トランプ氏が現段階で何も言っていないためかもしれませんが、GSOMIA破棄で一時1212まで一気に落ちたUSD-KRWですが、その後1209台まで持ち直しています。22:00のNY市場オープンでも大きな変化がありません。政府間の正式通達がないので最終的にどっちに転ぶかの様子見かも知れません

    いずれにせよ、韓国が一方的に信頼を落としたのは確かでしょう

  • 更新ありがとうございます。

    前投稿「韓国GSOMIA破棄」には乗り遅れましたが(笑)、こちらは手が空いたので早めに送ります。いや〜韓国のシロウト政府、GSOMIA破棄という最悪(最高)の一手を打ちましたネ。やっぱり頭ん中足らないんちゃうか(爆笑)?

    24日になって急にGSOMIA継続、但し条件付きで、なんて言って来てももう遅いッ。ジャジャーン(笑)これで晴れていや、大雨の中で日本は韓国と縁切りすることが出来ました。ちなみに日米/壁/韓です。

    大雨の中の決別の方がベトナムには似てるだろ?自由陣営裏切って、北に付くんだからベトナムみたいに、京城市の名前を変えろよ。

    文在寅市いや、金正恩広域大都市!どうだ、良い市名だろ(嘲笑)。釜山や仁川も北の独立功賞貰った奴から選べよ。文大統領は本望だろう。

    さ、米国がいつ総員撤去、或いは重〜い制裁、または済州島沖に大艦隊集結するか、楽しみだよ。第2次特需が日本を潤すかもね。同時に日本も韓人の渡航禁止、在日資産凍結、在日韓国、朝鮮人の半島への引き渡しをするべし!

  • 文政権としては日本から撤回の報酬を受け取るも、支持率を下げずに離米するも、どう転んでも美味しいと思っているのでしょう。
    他者の信頼という物に興味のない韓国らしいおぞましい手法です。価値観の共有なんて絶対無理。
    早く聖域なき安保論議に繋げていかないと狂信者の殉死に巻き込まれますね。

  • 本稿の最後にもあるように、韓国についてどうこうよりも日本の安全保障上どうするかという点を政府は冷静に対応してほしいなと願いますね。現在の状況を想定していたのかどうかは、アメリカの公式発表から透けて見えると思うので注目しています。
    多分アメリカは冷静に対応するだろう(≒想定している、南ベトナムと同方向の扱いになる)と予想します。

  • 新宿会計士様、毎日貴重な情報を発信してくださり感謝申し上げます。
    さて、今日の夕方からのニュースはGSOMIAに関して繰り返し流れているようですが、核心を突くようなコメントは出てきません。日韓の関係が更に悪化する内容ばかりで物足りないですね。
    GSOMIA破棄で最も大きな問題は日韓ではなく、米韓の関係だと思います。以前中央日報の記事でハリス駐韓大使が釘を刺す内容の記事(確か同盟崩壊に繋がる様な内容)が出ていましたよね。
    これで米韓同盟の崩壊、在韓米軍撤退へと道筋がはっきりしたのではないでしょうか。

  • 地上レーダーのみで、軍事衛星がないので

    韓国「ジャップの情報はアメリカに横流ししてもらえばいい」
    米国「守秘義務の掛かってない情報しか教えられない」

    韓国「北のミサイルの情報くれ」
    米国「花火か砲弾かも含めて開示できない」「自分で調べたら?人工衛星くらいまともに飛ばせや」「じゃな」

    韓国「今朝、時間は不明だが、北朝鮮から飛翔体が何基か発射されたっぽいです。
    飛距離は未定、右のほうに飛んで行った感じかなぁ。とりあえず遺憾の意です」

  • 一番気になることは、韓国が壊滅して難民が小船に乗って大量に日本に押し寄せてくること。日本はどう対応するのか?焦土化されれば起こり得る話です。憲法改正含めて国会で議論してほしい。
    個人的には、北の通常ミサイルが、日本の山の中に着弾してほしいと思ってます。(人的被害がない所に)
    そんなことがなければ、憲法改正は進まないのでは?

    • 北朝鮮つまり金正恩は、日本へ着弾させるのが目的ならば通常ミサイルなんて撃ちませんよ、しかも山の中になんて脅しにしかならない無意味な場所にはね。

      金正恩はあれで極めて合理的なので、感情が全てに優先する韓国の連中のように意味のない火遊びはしません。やる時は本気ですし、本気でやる気がなく単なる脅しならば、口先で言うだけかせいぜい上空通過で海に落下です。日本に着弾させれば脅しでは済まなくなる(少なくとも日米は本気だと判断して本気で北朝鮮の現体制を潰しに行く可能性がでます)からね。相手がどう出るか予測がつかない危ない火遊びは韓国ならともかく金正恩はしない。

      北朝鮮が日本に着弾させるべく撃つときは東京や大阪や京都のど真ん中に撃ってきます。しかもその時は核弾頭ですよ。ちょうど兄を躊躇なく暗殺したようにね。

      そして3四半世紀もの長きに亘り軍備放棄という幻想の平和に慣れてしまい自衛隊が憲法違反とさえ思わなくなってしまった日本国民は、山中にミサイルが落ちたぐらいでは憲法改正へと意識は切り替えられませんよ。

      日本国民の意識を切り替えて憲法改正に過半数が賛成するようになるには、残念ながら何人もの日本国民の生命という人柱が不可欠なのです、現代の人柱がね。実に愚かしいことですが。

      • 憲法改正には人柱が必要・・・私もそう思います。憲法改正どころか道交法改正でも死人が出るまで動かない国ですから。

  • ベトナムの場合 脱出の合図は季節外れのクリスマスソングでしたっけ

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