今月28日から29日にかけてわが国で開かれる「大阪G20サミット」まで、あと一週間となりました。内閣総理大臣としての通算在任日数が歴代3位となるほど指導力の強い安倍晋三総理大臣のもとで、日本が初めてG20の議長国を務めることになったというのも、非常に興味深い点です。G20サミットには「招待された国・機関」だけでなく、「招待されなかった国際機関」という視点も興味深いところですが、日本の国益に照らし、安倍総理がいったいどこの国・機関と会談を行うかについて、簡単に予測してみたいと思います。
AIIBを招待しない日本
大阪G20サミット(6月28日~29日)まで、あと一週間となりました。
大阪は日本を代表する商業都市であり、かつては人口で東京市を抜いたこともあったほどの都市ですが、今回のG20サミットを契機に全世界の目が大阪に向くのは、大阪にとっても間違いなく良いことであるに違いありません。
さて、安倍晋三総理大臣は日本の内閣総理大臣として、歴代3位の在職日数を誇っていますが(『安倍晋三氏の総理大臣在任日数が歴代3位に』参照)、稀有な指導力を発揮する安倍政権下の日本が初のG20議長国を務めるというのは、非常に画期的なことです。
G20にはメンバー国(19ヵ国+EU、ただしEUを「国」と見れば20ヵ国)に加えて、議長国が招待した国や機関の代表者が参加するのが一般的ですが、今回のG20での招待国、招待機関を見れば、「日本」「アジア」という特色が色濃く出ています。
大阪市ウェブサイト『2019年G20サミット首脳会議の大阪開催決定について』によると、今回のサミット参加国、参加機関は、合計で28ヵ国、9機関に達するそうです。
G20メンバー国…20ヵ国
アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、韓国、南アフリカ共和国、ロシア、サウジアラビア、トルコ、英国、米国、欧州連合(EU)
招待国・招待機関…8ヵ国/9機関
オランダ、シンガポール、スペイン、ベトナム、ASEAN議長国(タイ)、AU議長国(エジプト)、チリ(APEC議長国)、セネガル(NEPAD議長国)、国連(UN)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)、金融安定理事会(FSB)、経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)、世界保健機関(WHO)
この参加国・機関を見れば、APEC議長国やASEAN議長国、AU議長国やNEPAD議長国などが招かれているなど、安倍総理が中国の「一帯一路」を牽制するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」を強く意識していることは明らかです。
さらには、並み居る国際開発銀行のなかで、世銀とアジア開発銀行(ADB)が招待されているにもかかわらず、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が招待されていないという点にも、興味が尽きないところです。
安倍総理はどこの代表者と会談するのか?
すなわち、来週のG20サミットでは、安倍晋三総理大臣がG20メンバー国の日本を除く19ヵ国と今回招待された17ヵ国・機関を合わせ、計36ヵ国・機関もの代表者を大阪という街に一堂に迎えることになるのです。
ただ、わずか2日間の日程で、全体会合に加えて、会議の議長である安倍晋三総理大臣が36ヵ国・機関の代表者と個別に会うというのも、なかなか大変です。当然、G20諸国や招待国・機関のなかでも、優先順位を付けて会う必要があります。
そこで、ここでは勝手に、「安倍総理がどこの首脳と会うべきか」について予想してみたいと思います。
そもそも「G20諸国」はざっくり、次のようなグループに分けられます。
- G7諸国…米・英・独・仏・伊・加・EU
- BRICS…ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ
- 地域の有力国…サウジアラビア、トルコ、インドネシア、アルゼンチン、オーストラリア、メキシコ
G7は日本にとって非常に重要な相手国であり、とりわけ米英仏との関係は重視しなければなりません。
まず、米国のドナルド・J・トランプ大統領とは、4月の安倍総理の訪米、先月の国賓訪問に続き、3ヵ月連続での日米首脳会談が予定されています。といっても、イラン情勢や北朝鮮情勢など、話さねばならないことはいくらでもありますので、3ヵ月連続でも足りないくらいかもしれません。
また、英国のテリーザ・メイ首相は7月にも辞任する予定であり、個人的には、安倍総理がブレグジットでさんざん苦労したメイ首相に敬意を払って、時間を割いて日英首脳会談を実施するかどうかにも注目したいと思います。
ただし、外務省によると、フランスに関してはエマニュエル・マクロン大統領がG20の少し前に来日し、天皇陛下が御会見になられるほか、安倍総理とも首脳会談を行う予定ですので、おそらくG20中の日仏首脳会談は見送られるでしょう。
「自由で開かれたインド・太平洋戦略」という観点からは、G7のうちのカナダ、G20のうちのインド、オーストラリアとの関係が大切であり、この豪印加3ヵ国との首脳会談は、是非実現してほしいところです。
一方、その他のBRICSのなかでも、とくに地理的に日本に近く、日本と価値を共有していないにしても、戦略的利益の必要性から是非会うべき相手国は、ロシアと中国でしょう。おそらく、日露首脳会談、日中首脳会談は開催されると考えて良いと思います。
さらに、地域の有力国という観点からは、ASEANとの関係上はインドネシアも無視できませんし、とくにイランとの関係を強めている日本にとっては同じ中東のイスラム国であるサウジアラビアやトルコとも会談することが望ましく、TPP11参加国という観点からはメキシコとの関係も重要です。
招待国とも首脳会談を実施へ?自由で開かれたインド太平洋戦略
G20構成国ではないにせよ、今回招待された国に目を転じてみると、とくにASEAN議長国であるタイ、AU議長国であるエジプト、APEC議長国(かつTPP11参加国)であるチリ、NEPAD議長国であるセネガルの4ヵ国については、優先的に会談を実施すべきでしょう。
また、それ以外の招待国も重要であり、たとえばスペインはEUの大国でもありますし、ベトナムはASEAN加盟国にして対中牽制の肝となる国でもあります。さらに、「自由で開かれたインド太平洋戦略」という観点からは、シンガポールとの連携も必要です。
ただ、国際機関のうち、とくに4月に不当な審判を日本に下したWTOに対しては、日本が「WTO改革」を主導しているフシがあるため、牽制という観点から会談が見送られる可能性はあるでしょう。
一方で、世界の金融市場が再び不透明感を増している中で、IMFとFSBの両者の代表とは、是非、直接会って話しておいてほしいと思うのです。
まとめ:個別首脳会談相手の予測
以上から、安倍総理が個別首脳会談を行うべき相手は、おそらく次のとおりです。
G20で首脳会談を行うべき相手
- 米国:3ヵ月連続での首脳会談実施
- 豪・印・加+シンガポール:「自由で開かれたインド太平洋戦略」という点で重要な相手国
- タイ、ベトナム、インドネシア:ASEANの有力国
- チリ、メキシコ:地域大国であり、TPP11加盟国でもある
- スペイン:欧州の大国
- サウジアラビア、トルコ:中東・イスラム圏の有力国
- セネガル、エジプト:地域会議の議長国
- ロシア、中国:日本と利害対立するが、戦略的には重要な相手国
- IMF、FSB:金融市場安定という観点からは大切な機関
G20で首脳会談を実施しない、あるいはするかどうかわからない相手
- フランス:G20直前に日仏首脳会談を実施するため
- イタリア:安倍総理自身が4月に訪問しているため
- 英国:テリーザ・メイ首相が7月で辞任するため。ただし、安倍総理のことであれば、議長国として多忙であるにも関わらず、彼女に敬意を払って日英首脳会談を実施する可能性も。
- WTO:今年4月の不当判決を契機としたWTO改革の最中であり、牽制の意味から会談を見送る可能性
このように分類していくと、日本がG20の場で首脳会談を行うべき相手国を優先順位別に絞ったとしても、おそらく15~18ヵ国・機関に達しますが、ここまで絞るにしても、やはり少々数が多すぎる気がします。
これに加え、安倍総理のことですから、メイ首相に敬意を払うために、無理をしてでも日英首脳会談を開催するという可能性はありますし、また、「トラブルを抱えている相手とむしろ積極的に会談したがる」という安倍総理の性格からして、WTOとの会談もあり得るかもしれません。
忘れるところだった…
…、と書いておきながら、うっかり忘れるところでしたが、もう1ヵ国、G20では「この国」も参加するのでした。
ドイツのメルケル首相、体の震えやまず 式典中、健康面に関心も(2019.6.19 12:24付 産経ニュースより)
G20参加国であり、かつ、G7の一角を占める輸出大国・ドイツです。
ドイツ連邦首相として、2005年11月22日以降、すでに通算5000日近くにわたって在任しているのがアンゲラ・メルケル氏ですが、金融規制の専門家という視点から言わせていただくと、彼女こそ欧州債務危機を深刻化させた「戦犯」のようなものです。
いちおう、ドイツは「自由民主主義陣営」を名乗ってはいますが、『欧州発の金融危機?インチキ会計基準IFRSと欠陥通貨ユーロ』でも述べたとおり、実際にはユーロという欠陥通貨を使い、全欧州を支配しようとしている邪悪な国が、現在のドイツです。
今回のG20サミットでは、安倍総理にはぜひ、「これ見よがしに」IMFの専務理事やFSBの議長と会談をする一方、理由を付けてメルケル氏との会談をすっ飛ばしていただきたいと思うのです。
View Comments (17)
「忘れるところだった…」のはドイツでしたか、K国ではなく。
軽い悪意を感じてしまうのは私だけ?(笑)
あまりに華麗にパッシングされたのに驚きが隠せません(笑)
匿名のコメント主様
>あまりに華麗にパッシングされたのに驚きが隠せません(笑)
え?
何のことですか?
「G20に入る資格がない国」のことですって?ちゃんと記事の末尾で「ドイツ」って指摘してるじゃないですか(笑)
引き続きのご愛読とお気軽なコメントを何卒よろしくお願い申し上げます。
新宿会計士様
引き続き知的好奇心をくすぐっていただけることを楽しみにしています。
以前に下記のような記事を見ましたが、最近はあまり見ませんね。調整中かもしれません。
前回のブエノスアイレスG20では初の日米印3者会合を実現させていますので、今回も是非実現していただきたいです。
2019/05/25 02:46 投稿
ホワイトハウスは、日本と米国、インドは「自由かつ開かれたインド太平洋に向けた共通のビジョンを追求する」ため、来月大阪で開催されるG20首脳会合で3ヵ国会談を行うと発表した。
お隣の中央日報では、次のような記事もありました。
「トランプ大統領、来月日印首脳と3カ国会談…貿易戦争で中国包囲」
お疲れ様です。
趣味で主要国とEUの在日大使館のツイッターをチェックしています。ロシアだけは日本との友好より自国プロパガンダ優先なので見てません。勿論韓国は主要国ではないので見ていません。私見ですが、トップ固定ででかでかと「日欧経済協定」をかかげているEUとは会うかも、と思っています。
おつかれさまです。
誤字がありますのでご報告いたします。
会談→階段
匿名のコメント主様
ご指摘大変ありがとうございます。助かります。さっそく修正いたしました。
引き続き当ウェブサイトのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
更新ありがとうございます。
首脳会談が開かれない組み合わせ確定分・・・日韓。日独。その他、韓絡み多数(笑)。南アもあまり用が無いかな、、悪意はありませんが。
チョwwwバ韓国が加齢にスルーwwwww
袋だたきより悲惨な一人飯待遇を恐れたK国が出席ドタキャン、代わりに台湾をオブザーバーとして議長国が招待する、なんて展開ありませんかねえw
匿名2号様
まことに残念ではございますが(笑)、K国のM氏は、どんな辛い現実も”なかったことにする”という才能をお持ちです。来たる大阪G20でも、各国にシカトされながら、ご機嫌よく滞在され、大阪観光を楽しまれることでしょう。
むしろ、アメリカのT氏が、急に気が変わって、K国訪問をドタキャン、代わりに台湾訪問というのは、いかがでございましょう。だって、こちらのほうが、現在のアメリカにとって重要・有益なんですもの。
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
G19に関する参加・招待国に関して評論を行ったのはおそらくこのサイトだけではないかと思います。
従ってG19の参加・招待国に関して当方の感想をいたします。
G19に追加で招待をすべきと当方が思う国
・イラン(シーア派の有力国として招待すべき。彼らがどの国と会うかは任せればよい)
・イスラエル(ユダヤ教の有力国として招待すべき。彼らがどの国と会うかは任せればよい)
G19に追加で招待をすべきで友好確認のため皇族が期間中に合うべきと当方が思う国
・ニュージーランド(ファイブアイズを構成する故に参加を招待すべき)
・台湾(日本統治下にあった国として招待すべき。皇族以外に彼らがどの国と会うかは任せればよい)
・パラオ(日本統治下にあった国として招待すべき。皇族以外に彼らがどの国と会うかは任せればよい)
・ミクロネシア連邦(日本統治下にあった国として招待すべき。皇族以外に彼らがどの国と会うかは任せればよい)
もし日本の南洋統治領で独立した国家があれば上に追加です。
G19をどう利用するか?安全保障上の結束を見せる場として、俗に言われる日本の植民地統治が公正であったとアピールする場として、そして世界の諸問題解決へのチャネル提供の場として
とことん利用するべきではないでしょうか。
外務省はまだまだ努力不足と思いますね。
最後にサッカー好きの当方より管理人様へ一言。
ナイス「スルー」パス(笑)を文字にて読ませてもらいました。
これからも切れのある評論よろしくお願いします。
以上です。駄文失礼しました。
EUの代表については、触れられておられませんが、どちらでしょうか。
個人的には、懸案事項でから言って、メルケル首相とは会うべきと存じますが。できれば、EUの代表とも一緒に会って(イタリア首相とも一緒だとなおよいか)、例のドイツ銀行のソフトランディングに向けた処理をドイツが責任もって果たすよう迫るべきと思います。もっとも、ドイツ銀行が参院選前に破綻してくれれば、それも好都合かもしれませんが。(消費税率上昇延期の十分な理由になるので)
私は安倍総理はオランダと会うべきだと思います。
そして、できれば北朝鮮瀬取り監視に名目だけでも参加してもらい、太平洋(南シナ海)インド洋の治安維持への参加表明を取り付ける。
なぜか。オランダはかつて戦った国だからです。
アメリカ、イギリス(オーストラリア、ニュージーランド)、カナダ、フランス。
日本は北朝鮮対策を名目に、これらの国々と協力して中国の海洋進出包囲網を形成しています。
かつて日本の敵だった国がことごとく友軍となって中国に対峙しようとしている。
オランダまで参加すれば、連合軍は中露以外そろい踏み。今度は日本も連合側。
じゃない側の中朝韓。
象徴的ではないですか。