【速報】北朝鮮の「新型戦術誘導兵器」報道、当面は静観が正解

内外の複数メディアの報道によれば、北朝鮮が昨日、「新型戦術誘導兵器の実験」とやらを行ったようです。ただ、北朝鮮がそのように発表しているわりには、昨日時点で、日米両国政府から本件に関する何らかのコメントが出ているという事実はありません。ということは、本件についてもいつもの「ウソツキ国家」である北朝鮮による米国などに対する牽制というだけの意味しかないと考えるのが正解でしょう。まともに取り合う必要はありません。それよりも、北朝鮮に対しては引き続き、最大限の圧力(と制裁逃れの摘発強化)、そして日本人拉致事件の全容解決に向けた日本の国内法整備などの議論が必要であるといえます。

新型戦術誘導兵器の実験

複数のメディアによると、北朝鮮が「新型戦術誘導兵器」の実験を行ったと報じられています。

北朝鮮が「新型誘導兵器」の発射実験 米をけん制か(2019.4.18 07:15付 産経ニュースより)
北朝鮮、新型戦術誘導兵器の実験実施 金委員長立会い=KCNA(2019年4月18日 / 07:28付 ロイターより)
North Korea Says It Test-Fired New Tactical Guided Weapon(米国夏時間2019/04/17(水) 19:30付=日本時間2019/04/18(木) 08:30付 WSJより)

これらのメディアの報道をまとめると、北朝鮮の国営・朝鮮中央通信は、北朝鮮が「新型戦術誘導兵器」を複数の標的に向けて発射したと報じたそうです。発射したのは水曜日のことであり、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)がその発射実験に立ち会ったのだとか。

金正恩(クリックで拡大)

(【出所】朝鮮中央通信)

「意図は米国の牽制」

この「新型戦術誘導兵器」とやらの詳細については、よくわかりません。

ただ、これについて産経ニュースは

国内外に向けて国防力強化の意思を誇示し、2月末にハノイでトランプ大統領との首脳会談が物別れになった米国を牽制した形だ

と述べています。

また、現時点で私が見た限り、一番詳しく報じているのはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の英語版ですが、これによると、朝鮮中央通信は今回の戦術誘導兵器(原文では “tactical guided weapon” )の実験が昨年11月以来のことだと発表したと述べています。

ただ、WSJは「ミサイル発射実験自体は2017年11月以来実施されていいないはずだ」と指摘ししつつ、

“Security analysts saw Mr. Kim’s visit to the air force unit as a message to the Trump administration: Unless Washington is prepared to compromise on sanctions, Pyongyang can revert to a cycle of confrontation.”

と評しています(意訳すると「米国が制裁緩和という譲歩を見せないならば対決に戻るというメッセージだというのが安全保障アナリストの見方だ」、といったところでしょうか)。

これをどう見るか

では、今回の話題をどう見るべきでしょうか?

正直、現段階では静観が正解でしょう。

まず、北朝鮮がミサイルなどのあからさまな武器の発射実験を行ったのであれば、日米両国政府などから関連する情報が出てくるはずです。しかし、今回の朝鮮中央通信の発表内容を裏付ける情報は、現時点で、日米両国政府などから発表されていません。

実際、WSJの取材に対し、ホワイトハウスは「その報道は知っているが、現時点でそれ以上のコメントはできない」と述べたそうですし、朝鮮中央通信の発信が事実ならば、北朝鮮は2017年11月以来、複数回の大量破壊兵器の実験が行われていたことにならないとおかしいからです。

よって、この北朝鮮による発表は、「虚偽の情報を流すことで米国などの反応を見る」という、いつもの「ウソツキ国家」ならではの姑息な目的によるものとの可能性が最も高く、まともに取り合う必要はないでしょう。

それよりも大切なことがあるとしたら、「制裁緩和」という自分たちの要望を聞いてくれないからといって、国際社会を脅すという、北朝鮮という国家の不誠実さを改めて認識することです。

たとえば、北朝鮮は日本に対しては「日本人拉致事件」をカードにしているつもりですが、他国から一般人を誘拐して自国に連れ去り監禁していること自体、れっきとした犯罪であり、新しいタイプの戦争でもあります。

日本が国家たるためには、「北朝鮮政府に懇願して奪われた日本人を帰国させてもらう」「北朝鮮政府に懇願して拉致事件の全容解明に協力してもらう」ということでは困ります。

必要なのは、「北朝鮮に監禁されているすべての被害者を強制的に奪還すること」、「拉致事件に関与した首謀者全員を逮捕し、日本で刑事訴追すること」であるはずであり、そのためには「北朝鮮に軍事侵攻するために国内法を整備すること」を議論しなければならないのではないでしょうか?

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. りょうちん より:

    現代の兵器体系で、無誘導の戦術兵器(RPGとか無反動砲)の方が珍しいのですが・・・。
    MRLSですらGPS誘導弾の時代に、新型砲熕兵装っていわれてもポカーンですな。

  2. 一国民 より:

    日本向けの中距離戦術核ミサイル、瀬取監視艦艇向け対艦ミサイル、はたまたドローンによる誘導兵器などなどと、想像してしまいます。

  3. なんちゃん より:

    内容に具体性が無いので、「戦術」の言葉には政治的な意味しかないのかなーと思って見てました。
    戦術であれば、米国本土には直接影響がない兵器。
    戦略であれば米国の逆鱗に触れるけど、そうでないところで反発して見せているというような。
    国内向けの強硬姿勢の表現で、かつ、アメリカの反応もうかがってるんでしょうかね。

    でもやはり、米国と日本との離間のポイントは、依然としてそこなんだよな、と再認識した次第。

    観測気球に対しては、反応せずに変な情報を与えないのが一番いいんだろうと思いますね。

  4. 門外漢 より:

    核ミサイルで無いので米も放置でしょう。
    要するに「構ってチャン」なのですよww

  5. 浮動票の一市民 より:

    《必要なのは、「北朝鮮に監禁されているすべての被害者を強制的に奪還すること」、「拉致事件に関与した首謀者全員を逮捕し、日本で刑事訴追すること」であるはずであり、そのためには「北朝鮮に軍事侵攻するために国内法を整備すること」を議論しなければならないのではないでしょうか?》

    ずーーーと、この言葉を待っていました、寡聞にて初めて目にしました。
    どうして誰も言ってくれないのでしょう、どの政治家も・・・
    そして、社会党の反省も聞いた覚えがありません

  6. 名無Uさん より:

    まだ、トンチャンリからICBMが発射されていないようで、ホッとしました。
    ですが、まだまだ油断できるわけではありません。トンチャンリが発射態勢を整えていることには、変わりはないですからね…
    北朝鮮としては、米政府と敵対関係であることは最初から覚悟しても、トランプと完璧な敵対関係になることを恐れているのでしょう。ま、米政府は北朝鮮の敵であっても、トランプだけは北朝鮮に同情的だと信じたいところがあるのでしょう。トランプは米政府やアメリカメディアと距離があるものと、北朝鮮はいまだに信じているのかもしれません。
    それは北朝鮮の幻想なんですけどね…
    ムン・ジェインを使って、あれだけトランプに嫌がらせをかましているのに、トランプが金正恩を好きなわけがない。

  7. 匿名 より:

     韓国メディアが軍の見解として報じている射程数十キロ程度のものなら対戦車誘導弾ですね。北が南進してこない限り使用する機会はないし、北と陸上戦などしないアメリカにとってはそもそも何の影響もない。

     年末まではアメリカの出方を待つと勝手に期限を切った金正恩ですが、アメリカはその間に演習を重ねて北爆作戦の練度を上げるでしょうね。

     本気を出せば空爆は半日で重要拠点を完全に破壊し尽くし、直ちに中国人民軍が平壌に侵攻し北朝鮮軍を制圧、金正恩を亡命させ傀儡政権を樹立し改革解放経済へと舵を切り人民の生活の安定を図るでしょう。核は中国の管理により完全廃棄、核開発に携わった技術者は中国に疎開させられるでしょうね。

     それを見届けたアメリカは(中国との約束どおり)韓国から完全撤退。そして、韓国だけがボッチで取り残される。中国の庇護を受けて経済改革を進める北朝鮮が韓国の方を向くことはない。北東アジアで没落しながら孤立する韓国。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告