当ウェブサイトではかねてより、「韓国が公表する外貨準備統計にはかなりのウソが紛れているのではないか」という仮説を提示しています。その仮説が正しいのかどうかは、現時点ではよくわかりません。ただ、日韓関係がここまで悪化しているにもかかわらず、韓国側からは「日韓通貨スワップ協定再開論」がしつこく出てきていることもまた事実です。そして、ここ数ヵ月で当ウェブサイトには新しい読者の皆さまも増えています。よって、改めて「韓国の外貨準備統計のどこがおかしいのか」について、関連する統計をもとに考察しておきたいと思います。
目次
2019/01/28 15:40 追記
図表1のタテ軸の単位が誤っていましたので訂正し、差し替えております。
「すまないさん」様、大変ありがとうございます。ご指摘通り、縦軸は「百万ドル」ではなく「十億ドル」でした。
韓国の外貨準備
統計で振り返る、韓国外貨準備統計の怪しさ
以前から私自身、「韓国の外貨準備高についてはかなりのウソが紛れているのではないか」との仮説を持っています。
韓国の通貨当局である韓国銀行の発表によれば、韓国の外貨準備高は昨年12月末時点で4037億ドルに達して「いることになって」います(図表1)。
図表1 韓国銀行が発表する外貨準備高
(【出所】韓国銀行『経済統計のすべて』(※韓国語版、英語版)より著者作成)
「4000億ドルを超えていることになっている」、という表現を使う理由は、どうもこの外貨準備の内訳が怪しいからです。
私の試算では、韓国の経済構造などから見て、外貨準備高の大部分(少なくとも7割以上、場合によっては8~9割)は米ドルで構成されているはずなのですが、米国側が公表する統計と、かなりの矛盾が存在しています。
- もし韓国の外貨準備高の7割が米ドル建てなら
- →韓国が保有する米国内の有価証券残高は約2800億ドル以上でなければおかしい
- もし韓国の外貨準備高の8割が米ドル建てなら
- →韓国が保有する米国内の有価証券残高は約3200億ドル以上でなければおかしい
- もし韓国の外貨準備高の9割が米ドル建てなら
- →韓国が保有する米国内の有価証券残高は約3600億ドル以上でなければおかしい
韓国全体が保有する長期債は1911億ドル
「韓国が保有する米国内の有価証券残高」について参考になるのは、米国財務省が公表する『TICレポート』( “Treasury International Capital” つまり『対米国際収支統計』)です。
これによると、韓国が保有している米国内の有価証券は、2018年9月末時点で3232億ドルですが(※短期債を除く)、その内訳は
- 米国債…987億ドル
- エージェンシー債…439億ドル
- 社債…484億ドル
- 株式…1,322億ドル
です。
このうち、通常であれば株式が外貨準備に含まれることはありませんので(※絶対にない、というわけではありませんが)、韓国の外貨準備高の7~9割は、株式を除く金額(1911億ドル)のなかに含まれていなければおかしいはずです。
しかも、この1911億ドルには、韓国銀行が保有する外貨準備だけでなく、韓国の機関投資家(保険、年金基金など)が運用している残高も含まれているはずなので、実際に韓国銀行が保有しているドル建ての長期債の金額は、1911億ドルではなく、下手をするとその半額以下、ということです。
(※なお、韓国はこの1911億ドル以外にも、短期債をおよそ100~200億ドル程度、保有していると考えられますが、それを足したとしても、韓国が国を挙げて保有している債券は2000億ドルを少し超えるくらいに過ぎず、議論の大勢には影響を与えないため、短期債の論点は割愛しています。)
判断根拠
COFERで判断する
ところで、なぜ私が「韓国のような国だと外貨準備の7~9割は米ドル建てではないか」と予想するのかといえば、それにはきちんとした根拠があります。
多くの場合、各国ともに外貨準備に占める通貨別の割合は非公表ですが、全世界の外貨準備高を集計した場合の内訳については、国際通貨基金(IMF)が『公式外貨準備高通貨別構成』という統計サイトで公表しています。
この統計の名称を英語では “Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves” と称しており、頭文字を取って「COFER」と略されています(IMFのホームページ(http://www.imf.org)で “COFER” と検索すれば、どなたでもすぐに見つけられると思います)。
これによると、2018年9月末時点における全世界の外貨準備高の合計値は11兆3970億ドルとされますが、そのうち内訳が公表されている10兆7050億ドルについては、米ドルが約62%を占めていて、それにユーロ(約20%)、日本円(約5%)などが続いています(図表2)。
図表2 COFERの統計値(2018年9月末時点)
項目 | 金額(十億ドル) | Aに対する比率 |
---|---|---|
内訳判明分(A) | 10,515 | 100.00% |
米ドル | 6,561 | 61.94% |
ユーロ | 2,130 | 20.48% |
日本円 | 511 | 4.98% |
英ポンド | 470 | 4.49% |
人民元 | 193 | 1.80% |
豪ドル | 179 | 1.69% |
加ドル | 200 | 1.95% |
スイスフラン | 17 | 0.15% |
その他の通貨 | 255 | 2.52% |
内訳不明分(B) | 949 | |
A+B | 11,464 |
(【出所】IMF『COFER』データより著者作成)
ということは、自然に考えて、多くの国では外貨準備高の60%以上は米ドルで占められているはずです。
ユーロが20%を占めているわけ
ところで、日本円が5%を占めていて世界3位というのも意外な感じがしますが、ユーロが全体の20%以上を占めているという点については、私個人的にはやや違和感を払拭できません。
なぜなら、ユーロは確かに国際的に広く取引されている通貨ではありますが、国際決済銀行(BIS)の統計などから見ても、米ドルと比べて国際的な金融市場の地位はそれほど高くありませんし、日本円、英ポンドなどの5倍以上に達していることは不自然だからです。
ユーロが世界全体の外貨準備の20%を超えている理由は、ユーロ圏特有の事情にあるのではないでしょうか?
これについて参考になるのが、IMFが公表している世界各国の外貨準備高を含んだ『国際準備・外貨流動性』(原文 “International Reserves and Foreign Currency Liquidity” 、略して『IRFCL』)と題する統計です。
これを加工し、2018年9月末時点において、外貨準備高が多い順に上位20ヵ国・機関を並べ替えたものが、図表3です。
図表3 外貨準備高トップ20ヵ国・機関(2018年9月末時点)
ランク | 主体 | 金額 |
---|---|---|
1 | 中国(本土) | 3兆1770億ドル |
2 | ユーロ圏 | 1兆5602億ドル |
3 | 日本 | 1兆2596億ドル |
4 | スイス | 8025億ドル |
5 | サウジアラビア | 5072億ドル |
6 | ロシア連邦 | 4591億ドル |
7 | 香港 | 4264億ドル |
8 | 韓国 | 4029億ドル |
9 | インド | 4005億ドル |
10 | ブラジル | 3807億ドル |
11 | ドイツ | 3729億ドル |
12 | 英国 | 3639億ドル |
13 | シンガポール | 2913億ドル |
14 | イタリア | 2870億ドル |
15 | タイ | 2044億ドル |
16 | メキシコ | 1770億ドル |
17 | フランス | 1571億ドル |
18 | ECB | 1530億ドル |
19 | チェコ | 1441億ドル |
20 | スペイン | 1360億ドル |
(【出所】IMF『IRFCL』データより著者作成)
(※ただし、「ユーロ圏」とユーロ圏に所属する各国や欧州中央銀行(ECB)などが出てくるため、ユーロ圏の外貨準備高が二重計上となっている点についてはご注意ください。)
ユーロ圏の特殊性
これで見てみると、世界4位のスイスの外貨準備高が8025億ドルにも達していることがわかります。じつは、スイスは2011年9月から3年少々の間、「1ユーロ=1.20フラン」を超える自国通貨高を抑制する無制限の為替介入を行っていました。
ということは、スイスの8000億ドル少々という外貨準備高が、ユーロの外貨準備高に占める比率を押し上げている可能性がある、ということです。いや、もっといえば、欧州における非ユーロ圏の国々の外貨準備高が、全世界のユーロ建ての外貨準備高を押し上げている、という仮説が成り立ちます。
本日時点において、欧州連合(EU)加盟国(28ヵ国)のうち「非ユーロ圏」の国は9ヵ国です(英国、チェコ、ポーランド、デンマーク、スウェーデン、ルーマニア、クロアチア、ブルガリア、ハンガリー)。これに非ユーロ圏のノルウェー、アイスランド、スイスを加えた12ヵ国の外貨準備は、図表4のとおりです。
図表4 欧州非ユーロ圏12ヵ国の外貨準備高(2018年9月末時点)
国 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
スイス | 8025億ドル | 非EU圏 |
英国 | 3639億ドル | EU |
チェコ | 1441億ドル | EU |
ポーランド | 1128億ドル | EU |
デンマーク | 734億ドル | EU、ERMⅡ |
ノルウェー | 651億ドル | 非EU圏 |
スウェーデン | 612億ドル | EU |
ルーマニア | 403億ドル | EU |
ブルガリア | 284億ドル | EU |
ハンガリー | 274億ドル | EU |
クロアチア | 192億ドル | EU |
アイスランド | 63億ドル | 非EU圏 |
12ヵ国合計 | 1兆7452億ドル |
(【出所】IMF『IRFCL』データ、EU駐日代表部データなどを参考に著者作成。なお、端数処理の都合上、合計欄は整合していない可能性がある)
ユーロはせいぜい10%、米ドルは7割超?
この1.7兆ドルの全額がユーロだとは申し上げません。しかし、ここに挙げた12ヵ国の外貨準備に占めるユーロの割合は、その他の地域と比べて明らかに多いはずです(といっても、スイスやデンマークの場合は明らかに大部分がユーロ建てですが…)。
仮に1.7兆ドルのうち、仮にユーロ建て資産が1.5兆ドルだったとすれば、図表2のCOFER統計値は次のように書き換えられます(図表5)。
図表5 欧州非ユーロ圏12ヵ国を除く世界の外貨準備高の構成(2018年9月末時点)
項目 | 金額(十億ドル) | Aに対する比率 |
---|---|---|
内訳判明分(A) | 9,015 | 100.00% |
米ドル | 6,561 | 72.03% |
ユーロ | 630 | 7.52% |
日本円 | 511 | 5.79% |
英ポンド | 470 | 5.22% |
人民元 | 193 | 2.09% |
豪ドル | 179 | 1.96% |
加ドル | 200 | 2.27% |
スイスフラン | 17 | 0.18% |
その他の通貨 | 255 | 2.93% |
内訳不明分(B) | 949 | |
A+B | 9,964 |
(【出所】図表2、図表4をもとに著者試算)
このように再計算すると、欧州非ユーロ圏12ヵ国を除く世界の外貨準備高に占める米ドル建ての資産の割合は、ざっくりと72%と算出できます。これだと、BIS統計などの通貨の取引高データとも整合してくるように思えてならないのです。
なぜ外貨準備にこだわるのか?
「行方不明の3000億ドル」、結局は何?
以上より、韓国の外貨準備高については、公式統計が4000億ドル超だといわれても、現実に換金可能な米国債などの安全性が高い資産は、トータルして1000億ドルあるかどうか、といったところが実情だと思います。
もちろん、外貨準備の構成通貨は米ドルだけではありません。ユーロや日本円、英ポンドが「代替通貨」の代表例ですが、最近だと中国の通貨・人民元が外貨準備の組入れ通貨としての地位を高めています(ちなみに人民元のような怪しい通貨を外貨準備に組み入れるとは、正気の沙汰とは思えません)。
こうしたなか、日本国債や英国債などの安全資産は昔から根強い人気がありますし、ユーロ圏の場合はドイツ国債が「最も安全資産の1つ」とされています(※もっとも、私自身はドイツ国債が「安全」だとは考えていませんが、その点についてはいずれ機会があればまた議論したいと思います)。
おそらく、韓国の場合は、外貨準備に占める米ドル建て資産は1000億ドル程度に過ぎず、残り3000億ドルを「安全資産以外の何らかの資産」で運用しているのではないでしょうか?
ちなみに、日本銀行が公表している『BIS国際資金取引統計および国際与信統計の日本分集計結果』などの統計から、韓国が外貨準備のうち3000億ドルを日本円で運用している、という可能性は排除できます。
そう考えていくならば、「行方不明の3000億ドル」のうち、やはり、かなりの金額が米ドルと日本円以外の通貨に投じられている可能性は非常に高く、下手をすると、かなりの額がユーロ圏の周辺国債(いわゆる “peripheral”)やカバードボンドなどに投資されているのかもしれません。
フィッチが韓国ソブリンを「ダブルAマイナス」据え置き
ところで、先週木曜日付の韓国メディア『聯合ニュース』の記事によれば、格付業者の1つであるフィッチが韓国の信用格付(ソブリン格付)を「ダブルAマイナス」(つまり「信用力が高い方から数えて4番目」)に据え置いた、とする話題があります。
韓国の格付け フィッチが「AAマイナス」に据え置き(2019.01.24 14:29付 聯合ニュース日本語版より)
この格付は日本国債の格付を上回っているそうですが、しょせん、格付業者の目も節穴、ということでしょう。あくまでも私の主観ですが、おそらく債券市場参加者は、ソブリン格付など誰も参考にしていないと思います。
(※ちなみに仕事がら、私もずいぶんと格付業者のソブリン・レポートを読まされてきましたが、いずれも通貨危機の本質についてまったく触れておらず、正直、何1つとして参考になる代物ではありません。)
それに、もし韓国のソブリン格付が「ダブルAマイナス」に値するというのならば、韓国の行動に合理的な説明が付きません。実際、当ウェブサイトでは過去に何度か紹介しているのですが、昨年3月、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、こんな記事も掲載されています。
韓国、米利上げ時に通貨危機の可能性…日米との通貨スワップ必要(2018年03月19日13時47分付 中央日報日本語版より)
これは、「韓国経済研究院」が「韓国が通貨危機に陥った場合、外貨保有額が約1200億ドル不足する」という試算を公表したという話題です。
私の試算だと、韓国の対外債務は2500~3000億ドルですが、もし「外貨不足額が1200億ドルだ」とすれば、韓国の外貨準備高のうち、事実上、「使い物になる」金額は1300~1800億ドルしかない、という話です。
さらに、中央日報によれば、同記事には
「国内居住者の資本流出と海外韓国法人の現地金融のうち短期償還分、市場安定化のための韓国銀行による外国為替市場介入分などを考慮すると、不足額はさらに増えるだろう」
などと記載されているそうです。
いい加減にしつこい、日韓スワップ議論
「格付業者のソブリン格付で通貨危機を予測できない」というのは私の持論ですが、その理由は簡単で、通貨危機が発生する理由は「輸出の減速」、「GDP成長率」ではなく、シンプルに「外貨不足」にあるからです。
そこで参考になるのが、先週金曜日付で韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、次の社説です。
【社説】一触即発危機の韓日関係、速やかな鎮火を(2019年01月25日08時18分付 中央日報日本語版より)
「社説」と銘打っていますが、正直、読んでいてもまったく参考にならない代物であり、存在価値があるとしたら、「韓国を代表する大手新聞社がこの程度の社説しか出せないという証拠」としてではないかと思います(それでも「リンク先を読みたい」という方がいらっしゃれば、どうぞクリックしてください)。
ただ、1ヵ所だけ参考にすべき箇所があるとしたら、この社説の後半に出てくる、こんなくだりでしょう。
「韓日葛藤が激しくなるほど損害が大きくなるのはわれわれのほうだ。いま在韓米軍から日本に展開している米軍基地の支援・補給がなければ身動きができなくなる。北核問題も日本を援軍としなければ今後の過程がうまくいかなくなってしまう。下降傾向の経済成長率と不安定な金融環境を見ても日本の対韓投資と通貨スワップ再開は必須だ。毎年800万人の韓国人が日本を訪れている現実だけ見ても、韓日は協力して共に進まなければならない運命だ。」(※下線部は引用者による加工)
ちなみに日本の支援を一方的に必要としているのは韓国の側であり、べつに日本としては韓国ごときと協力しなくてもうまくやっていけます。
ただ、ここで重要なことは、「日韓通貨スワップ協定」の再開は必須だ、と中央日報がしつこく主張している点でしょう。このことは、韓国国内では「通貨危機」に対する恐怖感すら根強く存在している、という証拠にほかならないのです。
スワップ協定あれこれ
ところで、記事に出てきた「スワップ協定」とは、「日韓の通貨当局間で、緊急時に通貨(外貨など)を融通し合う協定」のことです。大きく分けてスワップ協定には、
- ①自国通貨建て通貨スワップ協定
- ②米ドル建て(または国際通貨建て)通貨スワップ協定
- ③為替スワップ協定
の3種類があります。
このうち「①自国通貨建ての通貨スワップ協定」とは、韓国がオーストラリアやスイスなどと締結している協定で、通貨危機などの際に韓国が相手国に韓国ウォンを渡し、相手国から自国通貨(豪ドルやスイスフラン)を受け取る、という協定です。
英語で “Local Currency Biltateral Currency Swap Agreement” などと呼ばれることもあるようですが、略すと「LCBSA」でしょうか。
一方、「②米ドル建て通貨スワップ協定」は、日本がアジア諸国(フィリピン、インドネシア、シンガポール、タイ)と締結している協定で、「相手国が通貨危機に陥った場合に、日本が外貨準備から保有する米ドルを貸し出す」というものです。
わが国の財務省は英語で “Bilateral Swap Agreement” と呼んでおり、これを略せば「BSA」です。
さらに「③為替スワップ協定」は、「相手国の民間金融機関に対して」自国通貨を供給するという協定であり、一般にこれは通貨危機の際に流用できる協定ではありません。英語では “Bilateral Liquidity Swap Agreement” と呼ばれるため、私は「BLA」または「BLSA」と略すこともあります。
韓国は2017年11月、カナダとの間でこの「為替スワップ」を締結し、「無制限の通貨スワップを締結した」と勘違いしたことは記憶に新しい点ですし、昨年10月に日本が中国との間で「日中為替スワップ」協定を締結した際には、一部のメディアが「日中通貨スワップ」協定と誤報し、いまだに訂正されていません。
なお、通貨スワップと為替スワップの違いについては、詳しくは当ウェブサイトの過去記事もご参照ください。
2018/10/24 05:00 『通貨スワップと為替スワップについて、改めて確認してみる』
2018/10/26 21:30 『【速報】やはり中国とのスワップは「為替スワップ」だった!』
通貨スワップの政治利用
さて、本日も長々と書き連ねてしまいましたが、当ウェブサイトではこれまでも、
- 韓国は外貨準備高が4000億ドルを超えていると主張しているが、緊急時に確実に使い物になる金額は、下手をするとせいぜい500~1000億ドルに留まるのではないか
- いざ通貨危機が発生すれば、1000億ドルを超える外貨不足に見舞われるため、韓国としては何としても日本との間で米ドル建ての通貨スワップ協定を欲しがっているのではないか
という趣旨の主張を続けて来ました。
あそこまで日本をコケにしておきながら、日本に「スワップが必要だ」と要求できる根性が私には理解できませんが、これが韓国という国の節操のなさなのでしょう。
ただ、先日『対韓経済制裁が難しい理由と、日本に求められている「覚悟」』で申し上げましたが、日本が韓国に対して何らかの「経済制裁」に踏み切るにせよ、個別具体的な経済制裁を巡っては、その効果や日本経済に与える「副作用」をきちんと検討しなければなりません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ところで、いっそのこと、韓国側の「節操のなさ」に乗っかる、というのも妙案かもしれません。すなわち、麻生太郎財相が「条件次第では日韓通貨スワップ協定を再開してやっても良い」、と発言するのです。韓国政府は日本とのスワップ交渉再開を大喜びで歓迎するでしょう。
そして、交渉でひたすら時間を稼ぎ、いざ、韓国に通貨危機が訪れそうになった瞬間、その日韓スワップ交渉を再び打ち切るのです。つまり、日韓通貨スワップ協定を、単なる「韓国に対する経済制裁の手段の1つ」として保持しておく、という話です。
折しも韓国の最高裁に相当する大法院は昨年、自称元徴用工らの訴えを認め、日韓請求権協定を踏みにじり、日本企業に対して損害賠償を命じました。現在、日本政府は日韓請求権協定第3条に基づく協議を韓国政府に申し入れている最中です。
私の見立てだと、この協議、仲裁の申し入れには最長で3ヵ月必要であり、今年4月まで日韓関係が膠着する可能性は非常に高いといえるでしょう。
交渉のカードは多ければ多いほど良いものです。
いっそのこと、今年4月まで限定で、日本政府は「日韓通貨スワップ交渉再開」をチラつかせてはいかがでしょうか?
(※ただし、日本国民の1人として、日韓通貨スワップ協定を本当に再開することだけはやめて頂きたいと思いますが…。)
View Comments (27)
おはようございます。とても素敵な妙案、興味深く拝読させていただきました。
鼻先にハリボテのニンジンをぶら下げる策略、有効だと思います。
ただ、底意地を理解できない、いわゆる特定の保守の方たちからは怒号が飛びかってきそうですが。
ついでにレーダー照射事件もカードに使うのはどうでしょうか。
スワップ再開の交渉を検討しているとの観測気球を飛ばし韓国が食らいついたところで、レーダー照射を認めて謝罪するのであれば交渉を考えてやってもよいと、カードとして使う。
考えてやってもよい、なので、認めたところで交渉自体をやらない選択肢もあります。
韓国がレーダー照射で誠意ある態度をみせなかったので自業自得でしょう。
ぐらいのしたたかな外交? 対応をとるのもおもしろいかもしれません。
野良犬です。
投稿してから思ったのですが、駆け引きが通じるのはまともな相手ですね。
まともではない相手に駆け引きをしかけても火傷する可能性が高いかもしれません。
それと経済に詳しくない人間が安易に経済絡みのことに意見するのもどうかなと投稿してから思いました。
ということで前言は撤回します。
軽はずみに投稿するものではないと、ちょっと思いました。
今後、投稿することがあっても慎重にしてまいります。
閲覧は続けますので、また機会がありましたらお邪魔させていただきます。
日本が韓国とスワップしない理由。
韓国が北朝鮮とウォン-ウォンスワップしないのと同じ理由。
また、最近、韓国でCPTPP議論が花開いている様子。
韓国は自身を盟主にした
KPP(環朝鮮半島パートナーシップ協定)でも作ればよろしい。
アジア開発銀行、中国主導の「AIIB」に対抗して
北東アジア開発銀行を推進していた韓国さんは今何をやっているの?
早く設立してメンバー集めればいいのに。
制裁の目的は、報復や断交ではありません。
①特別な配慮を撤廃し、2国間の国交を正常化する。
②自発的な謝罪を促し、2国間の国交を再構築する。
の、どちらかだと思ってます。
特に、②自発的な謝罪を促すための制裁であるならば、過剰制裁をしないこと(大義名分がある部分は、きっちりと制裁する)が大切です。必ず制裁の結果は「韓国にとっての自業自得」でないといけないからです。
制裁を実施するのであれば、正々堂々と「出来るかぎり国際社会からも韓国からも非の打ち所がない」完璧な制裁を目指して欲しいと期待しています。
*****
私、個人としても韓国の非常識な対応には、どこかで溜飲を下げたい気持ちでいっぱいなのですが、思わせぶりな(実現性のない意地悪な)駆け引きでは、「大国によるイジメ」と、とられかねない可能性があります。
国際社会から「どっちもどっち」と思われない範囲でお願いしたいですね。
「制裁の目的は報復や断交ではない」は「目から鱗」です。自国政府の振る舞いを誇れる自国民の矜持が大切(国際社会からの評価は副次的)だと考えさせられました。
「特別な配慮撤廃による国交正常化」は、是非とも日本国民の共通理解としてほしいです。「特別な配慮」をしないことを非難する論調が、在日マスコミに溢れていますから。
「自発的な謝罪に基づく国交再構築」は無駄であるだけでなく、その観点をもつことが有害だと思われます。道徳的価値観が民族によって異なる事についての理解が重要だと思うからです。
https://monqu.web.fc2.com/ohgchib.html#dohtok
「韓国側からの自発的な謝罪を促し、国交を再構築する」との考えは、おそらく永遠に実現することのないテーマなんだと理解してるつもりです。
おそらく、民族の根っこのところ(道徳的価値観)がそれを許さないんですよね。
それでも、日本人なんだから、あえて戦略的な制裁を科するのならば、「韓国側からの自発的な謝罪を促し、国交を再構築するための『自業自得制裁』」って方向であるべきなんだと思ってます。
*****
ただし、いつまでも自発的な謝罪なんて期待できないんだろうから、「エンドレス制裁」になってしまうのかも知れないし、もし仮に形ばかりの謝罪があったとしても「元のように国交が再構築されるとは限らない」んですけどね・・。
レスポンスありがとうごさいました。
カズさんの2019/01/28 at 06:45の投稿への意見
現状では「2国間の国交を正常化、あるいは再構築する」のは無理と考えます。
理由は、南北両朝鮮政府と中国北京政府は自分たちの正当性の根拠として「侵略者日本を撃退して国家を再構築した」と主張しているからです。これが続く限り対等の立場での和解は無理と考えます。
それぞれの現政権が一度崩壊し、日本に中立的な政権が樹立されたなら対等な交渉も可能になるかもしれません。
素人の論考ですので間違いなどありましたらご指摘ください。
私が制裁の目的とした
①特別な配慮を撤廃し、2国間の国交を正常化する。
については、特別な制裁を科さなくても「日韓漁業協定の凍結」や「WTO提訴による貿易協定違反の是正」等、目に見える形で「是は是、非は非」との主張を積み重ねることにより、現在進行形で「真の国交正常化(普通の2国関係)」の実現に近づきつつあると思ってます。(今回のレーダー照射問題もその一例です)
②自発的な謝罪を促し、2国間の国交を再構築する。
につきましては、先ほど 愚塵様からもコメントを頂いたのですが、現実的には、国家の成り立ち以前の問題として、「民族の根っこのところ(道徳的価値観の相違)がそれを許さない」と考えています。
例え両国の政府名が変わったとしても、人が変わるわけではないので、2国間の「真の和解」は成立し難いと言えます。(韓国では、1000年たっても加害者と被害者の関係は変わらないとのことですから・・。)
*****
ですので、②案については、「現実味のない理想」であると同時に「戦略的制裁を実施せざるを得ない場合の『建前』」でもあるんだと理解していただけたらと思います。
溜飲を下げたいばかりに「目には目を」と無秩序な制裁を科してしまうと、非常識国家(韓・北・中)と同じ穴の中に落ちてしまいます。それこそが韓国の望む土俵(泥仕合)なんですから。
繰り返しになりますが、もし制裁を実施するのであれば、日本人らしく、正々堂々と「出来るかぎり国際社会からも韓国からも非の打ち所がない」完璧な制裁を目指して欲しいと期待しています。
*****
ひとつだけ、言及させて頂きます。
>それぞれの現政権が一度崩壊し、日本に中立的な政権が樹立されたなら対等な交渉も可能になるかもしれません。
と、ありますが、日本は現政権でも中立です。正式な謝罪があれば赦せる国なんです。
あれほどの対日三不(過ちを認めない・約束を守らない・感謝がない)でなければこんなに揉めることもないんですけどね。
満足な応えではないかもしれませんが、私からの返信とさせて頂きます。
レスポンスありがとうございました。
益々御盛況おめでとうございます。
個人的には面白い案とは思いますが、最後まで腹芸が維持出来ないと判定しました。韓国シンパや反安倍派、便乗組、マスゴミ等が妨害するのが目に浮かびますから。リップサービスでも言わない方がいい。
わたしは頭があんまり良くなくて、経済とか本当に苦手以前の問題で意味不明なんですが、この記事はゆっくり自分で考えながら最後まで、苦手意識もなく読めました。
他の記事もチャレンジしてみます
ありがとうございました
同意決定する気のないスワップ交渉を行い、絶妙なタイミングで交渉を打ち切る。
制裁というより報復ですね。
レーダ―照射問題の際にすでに同様の交渉打ち切りを行い、韓国軍は信頼して同盟・共同戦線を張れる相手ではないと喧伝しました。
結果、韓国の信用(初めからあるかどうかも怪しいですが)を貶めるという形で、韓国の不誠実な対応に対する報復は成功しています。
二度目を行うならば最低でも数年単位で冷却期間を設けなければ「日本はすぐに手の平を返し一方的に交渉を打ち切る国」と世界に認識されてしまいます。
実際に交渉するのではなく「日本与党内でスワップ交渉再開が必要ではないかという意見がある。意見の調整をしている」程度の噂を聞かせるぐらいで留めておくのが賢明かと。
さておき、本題の韓国が公表する外貨準備統計の内容に関しては自己を過大評価するお国ですし。
北朝鮮が稼いで来た外貨を韓国名義でマネーロンダリングする為に多く見積もってる可能性もありますけどね。
非常に面白い案ではありますが、韓国を持ち上げて落とす作戦だよということが日本国民にあらかじめ知らされていない限り
韓国とスワップ協議をするなんてと、安倍内閣が国民の総スカンを食らうでしょう
国民にあらかじめ知らせれば、韓国にも知られてしまうでしょうから、無理じゃないでしょうか
面白いですけどw
新しい読者です。昨今の日韓関係について考えを共有(受けてるだけですが)できるのは良いと思います。考えは伝わり拡がります。文章が学のない自分にもとてもわかりやすいです。勝手に心の片隅で新宿先生と呼ばせて頂いております笑。
先日、本屋で浜矩子さんの「通貨の正体」を立ち読みしましたが、その中で日本円を「隠れ基軸通貨」と呼んでいました。言いえて妙な表現と思いました。基軸並みのパワーはあるものの迫力は無いということだと思います。
さて、韓国の外貨準備が怪しいとのことですが、中国の外貨準備も怪しいと思います。中国政府は外貨規制を行い、必死になってドルを掻き集めています。(その割に巨大な支援を口約束していますが)
是非、新宿会計士様に中国の外貨準備について解説をお願いしたいと思います。
>交渉でひたすら時間を稼ぎ、いざ、韓国に通貨危機が訪れそうになった瞬間、その日韓スワップ交渉を再び打ち切るのです。
小生の考えではこれをやると「日本はswapを結ぶと言っておいて、今になって裏切った」と言われ、あっちこっちに悪口を言われるのが関の山です。
彼らにとって「交渉してもいい」=「確定」といった、変な変換ロジックを持っていますので、もし交渉をしても良いなどと言って後で「や~めた」などと言おもんなら、「日本は約束を破った」などと吹聴して回るに違いありません。ここは慰安婦像の移動が実施されない限り、交渉も何もしてはいけないと思います。
駄文にて失礼します
在韓日本人様へ。
日本が韓国様に土下座し、どうか日本の円を借りてくださいとお願いしない限り、SWAPは復活しません。
心配する必要は全くありません。そんなことより、そろそろ帰国準備をなさった方がよろしいのでは?
そろそろ内示のある頃だと思いますが。