レーダー照射巡り、そろそろ日韓二国間協議を打ち切る局面か
昨年12月20日に発生したとされる「レーダー照射事件」を巡り、昨日、シンガポールで日韓双方の協議が行われたという話題は、今朝方の『レーダー照射事件巡る日韓協議と「日米英仏豪加連合」の成立』で紹介しました。その後、日韓のメディアに関連する続報が出ていますので、これらについて簡単に紹介するとともに、昨日の『徴用工判決問題の節目は4月12日か 日本政府の狙いとは?』とあわせて、改めて「日韓関係において第三国を絡ませることの重要さ」について、考えてみたいと思います。
目次
日韓協議
中央日報「昨日の協議は事実上の決裂」
昨年12月20日に発生したとされる、韓国海軍による海自哨戒機に対する「火器管制レーダー照射事件」を巡り、昨日、シンガポールで日韓協議が行われたという話題は、今朝方の『レーダー照射事件巡る日韓協議と「日米英仏豪加連合」の成立』で紹介しました。
本件を巡って、韓国メディアが相次いで詳細を報じていますので、本稿ではそれらを取り上げておきたいと思います。最初に目についたのは、韓国メディア『中央日報』(日本語版)による、次の記事です。
韓日実務協議、結論出せず…「日本、レーダーの周波数を未公開」(2019年01月15日06時48分付 中央日報日本語版より)
中央日報は昨日のシンガポールの協議を巡って、韓国政府側の国防当局者の話として、日韓の国防当局者が「認識の隔たりを解消することができず会議を終了した」と報じています。また、中央日報によると、会議がそもそも日韓両国ではなく、わざわざシンガポールで開かれた理由について、この担当者が
「あまりにも先鋭な問題なので会議場所を第三国であるシンガポールに設定した」
と述べた、とも報じています。つまり、この中央日報の報道は、いずれも韓国政府側の説明に基づくものである、ということです。
これについて中央日報は、両国が何らかの合意点に達した場合、共同声明を出す予定だったとしつつも、韓国政府側が本件を「北朝鮮の漁船を救助していた韓国艦艇を威嚇した問題」と述べるなど、日韓双方が従来の立場を繰り返したと指摘。
「事実上お互いの立場を確認したまま決裂した」
と結論付けています。
また、昨日時点で、日本側が捕捉した韓国側の火器管制レーダーの周波数を公表していませんが、これについて中央日報は
「日本側が当時捕らえたレーダーの周波数を公開するかに注目が集まっていた(が、)日本側が証拠を提示できず会議が終わり、真実攻防が続く可能性が大きくなった」
と報じています。
時事通信も「両者平行線」
一方、日本側でも、時事通信が昨日の深夜、この問題についての続報を取り上げています。
日韓、シンガポールで協議=レーダー照射問題、平行線のまま(2019年01月14日23時55分付 時事通信より)
このシンガポールでの協議を巡り、時事通信の記事も、日本の防衛省幹部による「双方の認識の隔たりを解消するには至らなかった」というコメントを紹介したうえで、「議論は平行線をたどった」「次回協議も未定」と報じています。
これに加えて、時事通信は
「岩屋毅防衛相はこれまで、海自が保有するレーダー波の傍受記録を、実務者協議で韓国側データと交換することを示唆しており、日本側が証拠として提示した可能性がある」
としつつも、防衛省は時事通信の取材に対し、データを今後開示するかどうかについては「協議中のため」として明言を避けたとしています。
ただ、先ほどの韓国メディアの記事と比べると、日本政府側の反応は素っ気ないという印象を受けます。
実際、防衛省のウェブサイトを眺めても、現時点において日韓でいかなる協議が行われたのか、その具体的な内容についてはほとんど記載されていませんし、時事通信を含めたいくつかのメディアを眺めても、防衛省関係者の発言はあまり見当たらないからです。
「実績作り」としては十分
いかなる意味を有するのか?
状況を整理しておきましょう。
まず、韓国政府側は、「昨年12月20日午後3時ごろ、石川県能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国海軍の駆逐艦が日本の海自所属P1哨戒機に対し、火器管制レーダーを照射した」という事実を、頑なに認めていません。
この点について、日本政府側は昨年12月28日に、該当するP1哨戒機から撮影した映像を動画サイト『YouTube』にアップロードし、日韓のやり取りに加え、現場の状況などを全世界に向けて公開しました。
日本側が公開した動画は、「レーダー照射を受けた決定的な証拠」とは言えないまでも、それまでの韓国政府側の説明(悪天候だった、海自側が韓国海警を呼び出した、など)がウソだったということを証明するには十分なものでした。
これに対し、韓国側が今年1月4日になって公表した「反論動画」とやらは、中身がスカスカ過ぎて、どうも反論としてはほぼ機能していないと考えて良いでしょう。
さらに、日本側は火器管制レーダーの周波数など、「韓国側がレーダー照射を行った証拠」をしっかりと掴んでいて、それを公表していないのは、単に防衛上の理由であろうと考えられます。
先ほどの時事通信の報道によると、韓国軍関係者は韓国メディアに対し、
「日本側は電波情報を公開せず、日本側が収集した一部データと韓国側の駆逐艦のレーダー情報全体の交換を要求してきた」「韓国側は専門家による『相互検証』を提案した」
などと話しているそうです。
そろそろ韓国との協議打ち切り?
しかし、あくまでも私の意見ですが、日本の防衛省は韓国側にデータを提供すべきではありません。なぜならば、現在までの韓国の姿勢を見る限り、もはや韓国は日本にとって、「信頼に値する相手」とは考えられないからです。
ただ、私がそう懸念するまでもなく、おそらく防衛省側も、韓国のことはもうまったく信頼していないのではないかと思います。その証拠が、防衛省のホームページに記載されています。
防衛省はあくまでも、「今後とも日韓防衛当局間で、必要な協議を行っていく」と述べていますが、その割に、本件を巡る日韓の協議は、第1回目がテレビ会議で、第2回目が第三国であるシンガポールで開催されています。
あくまで一般論ですが、日韓がお互いに困難なときほど、国防幹部が直接相手国を訪問し(または相手国の幹部を招き)、政府庁舎で面と向き合い、膝詰めで協議するのが定石です。それなのに、少なくとも防衛省のホームページを見る限り、本件を巡り、日韓が相互往来したという形跡はありません。
このこと自体、日本政府側の韓国に対する強い不信感を意味しているように思えてなりません。
いや、もっと言えば、防衛省はそろそろ韓国側との協議自体を打ち切るのではないかという気がしてなりません。というのも、日韓双方が複数回、協議を実施し、それによってお互いに平行線をたどったという事実が重要だからです。
あくまで一般論ですが、日本政府は、なにごとも「筋を通すこと」を重視します。要するに、「韓国に対して事実確認を行い、きちんと協議した」という実績を残したいのでしょう(それが良いか悪いかは別として)。
しかし、「筋を通すこと」を大切にする日本政府としても、「韓国に対し、冷静に議論を呼びかけたが、相手が発狂していて話にならない」という「実績」ができたのであれば、もうそれで十分ではないでしょうか?
そろそろ多国間協議に委ねるべし
さて、ここから先は、純粋な私の意見です。
日本政府は今後、日韓関係を巡っては、日本と韓国の間だけでケリを付けようとせず、必ず第三国(とくに米国)を介在させるのが正解です。
折しも昨日の夜、私は『徴用工判決問題の節目は4月12日か 日本政府の狙いとは?』のなかで、「徴用工判決」問題を取り上げました。
この中で私は、日本政府が「日韓請求権協定第3条に基づく協議」を韓国側に申し入れたことについて、「①日本や世界の世論に韓国の無法を訴えかける効果」と、「②日本や世界が監視する中で、韓国が違法行為を行っていくのを見届けさせる効果」があるのではないか、と申し上げました。
実は、今回のレーダー照射事件についても、これとまったく同じことが言えるように思えます。いわば、日本政府側が「日韓二国間交渉」を諦め、韓国との外交問題については米国などの第三国を絡ませることで、韓国の違法性をよりいっそう国際社会で強調することができると思うのです。
言い換えれば、日本外交が良い意味で脱皮するためには、まずは防衛省が韓国との二国間交渉を事実上打ち切れるかどうか、そして米国などを巻き込むことができるかどうかにかかっているといえるでしょう。
その意味で、日本政府が時間稼ぎをして事態の引き延ばしを図る戦略は、これはこれで合理性があると言えるのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
米国は両国と安保を結んでいるので、絶対に乗ってこない。
なら、日本は国連安保理に出してその他の国に韓国が危険な国であると出せばいい。
更新ありがとうございます。
哨戒機火器管制レーダー照射事件については、日本側もハナッから何時もの韓国のやり口を肌で知ってるだけに『協議したぞ』という実績作りだけの為だけでしょう。
* どうせ自ら非を認めない韓国ですから、何を言っても進展は無い。ましてや日本相手だと1000%無い(笑)。
* レーダー照射の一件は、当然同盟国の米軍、米国政府にも行ってるでしょう。もう二度と協議は無いかも知れないが、再度協議するなら米軍太平洋方面総司令官と空母艦載の哨戒機搭乗員に入って貰えばいい。
* 私が危惧するのは、小狡い韓国の事だから、駆逐艦のレーダー波を改造するのではないか、という点です。
* 1個ずつ波長が異なるなら、魔改造(笑)しそうだが、技術的に韓国で可能か、或いは衛星で見張ってたらヘンな動きはできないと思うのですが。取り越し苦労と信じたいです。
魔改造wwww
https://annex2ahouse.blogspot.com/2018/03/blog-post_6.html
>1個ずつ波長が異なるなら、魔改造(笑)しそうだが
小生の予想です。
① ノイズを被せればばれないと思い発振器を取り付ける。
② 波長解析でバレバレなのが分かる
③ 仕方がないから本体をバラシて改造を試みる
④ 元に戻せなくなる
⑤ 製造元に泣きつく
⑥ 製造元から無断改造により賠償請求を受ける
⑥ 廃艦
こんな感じでしょうか
駄文にて失礼します
うん?一回目はテレビ会議だね。二回目はソウルでやっていなかったかね。三回目は相互にということで東京でということだったが韓国か拒否したという経緯だよ。だからシンガポールでなら良いのかと日本が提案した。これには皮肉が込められているね。そう、昨年のトランプと正恩があった所だよ。米軍関係者は親指立ててニヤリとしているよ。日本人にもジョークが出せる余裕と才知があるとね。
韓国は
テロリスト崇拝国家、
テロ・核支援国(北朝鮮)支援国家。イランと同類。
国際法違反常態化国家。
この度のレーダー照射事件は水上での出来事でしたが、
これからは海面下での類似事件もあるかもしれません。
2020年に韓国の新造潜水艦が就役を控えてますし。
日本と韓国の軍事交流、情報交流がなくなる場合、
韓国機への空自スクランブル増加もありえなくもない。
もう韓国とはそういうことも想定しなければならない危ない国。
最初シンガポールと聞いて、アメリカも入ったなと思いましたが違うようです(アメリカ静か過ぎませんか?)。
韓国は何処まで追い詰めても、主さんの仰有る通り時間の無駄ですね、北と同じなのです。
日本は北朝鮮に対する警戒強化では無く、核を持った南北合同軍として警戒強化を考えなくてはいけない時に突入したと考えるべきと思います
韓国で初めて建造された3000トン級次期潜水艦「島山安昌浩(トサン・アン・チャンホ)」北のslbm、何処に潜めば良いのか当然遣っていると思います。
武器を持てば試したくなるのは人間の心理、日本は其の欲望を抑止させるモノが足りない国で有ると自覚し行動すべきと考えます。
韓国の潜水艦はドイツの212型の低性能輸出型の214型(1700トン)を潜れない潜水艦といわれながらやっとさ建造したばかりで、早速インドネシアに輸出しようとしています。
今回進水した潜水艦は3000トンですから沿岸用の214型と異なり外洋仕様となり設計は全く別になります。
しかも、垂直発射型ミサイルや全リチウム電池(サムソン製)駆動といわれています。潜れない潜水艦ならまだしも爆発する潜水艦となる可能性が非常に高いしろものです。期待しています。
実際に防衛省が求めているのは、双方の周波数情報の照合であって開示じゃないですからね。
日本側のマスコミでも開示との表現が多いですが、韓国側が称号を拒否したと報道すべきだし、日本政府もそのようにリークしなければ駄目ですよ。
日本には当てにならないけれど外国メディアの特派員も居るのだから、彼らにも分かりやすく日韓対立の構図を政府がアピールしなくては。
外国人記者に直接リークするような関係を政府は持っていないんですかね。
「称号」は「照合」の誤記です
韓国は提示を拒否してるけど、
レーダー波というのはねつ造や改竄することはできないものなのかな?
韓国は照射していないと主張しているのだから、無国籍駆逐艦から照射されたレーダーの情報をネットで公開しても、日韓関係に支障をきたさないはずである。さっさと公開すれば。
同レーダーを採用している他国やメーカーには支障あるそうですね。
しかも公開されても専門知識の無い私たちには証拠になるかどうかの判断もできないという。
韓国政府が韓国軍艦の照射ではないと否定しているので、同形式のレーダーを使用している他国とかメーカーへ、照射された時に取得したデータの一部を公開して良いか、念押するのは如何でしょうか。止めてくれという国などがあれば、その国のレーダーや韓国軍艦のレーダーと哨戒機に照射されたレーダーとは異なると韓国政府が言っているのに、止める理由を確認したいですね。
韓国からすれば、公開されても、
駆逐艦一隻のレーダーを交換すれば済む話なのかな?
>駆逐艦一隻のレーダーを交換すれば済む話なのかな?
486CPU、16MB RAMの統合戦闘システム(いや建造年を考えればそのスペック自体は責められないが)を
近代化改修しない海軍がそんな高等な改造をするとかw
レーダーの交換が大変なら、同型の駆逐艦があれば、艦船の認識番号を取替える方法もありますね。
971と972のナンバーを塗装工作したりしてね。
かの国では、普通なら考えられない思考で「そんなバカな!!」ってこと、期待を裏切らない律儀なところもあるんですよね。
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過去には、韓国軍の救助艦が、最新鋭の軍事ソナーの調達予算・約4億1000万円を使って、古(いにしえ)の旧型魚影探知ソナー・約2000万円を搭載してたって話もありましたね。
差額の3億9000万円は、どこに消えてしまったのでしょう。 ポケットの中かな?
こんな調子では、せっかくの国防予算4兆円の威力も半減というものですね。