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米利上げと「日中3兆円スワップ」を恨めしげに眺める韓国

日本時間の今週木曜日、米FRBがFF金利の利上げに踏み切りました。利上げ幅は0.25%ですが、それでも着実に、米国に資金が回帰する流れが強まっており、実際、ドル・円為替相場も若干ですが、円安・ドル高に振れています。もちろん、こうした流れが続くのかどうかは疑問ですが、「外貨流出」にとくに神経をとがらせている国が、日本の隣に存在しているようです。

通貨スワップと通貨危機

私は以前から金融規制の専門家として、普通に日常生活を送っていると絶対に知ることがない、機関投資家しか知らないような金融商品を、数多く知っているつもりです。「通貨スワップ」、「為替スワップ」などの金融商品はその典型例ですが、ひと昔前だと、こんな言葉を知っている人は少なかったでしょう。

ところが、最近だと、「通貨スワップ」という単語はたいていの人が知っていますし、また、「為替スワップ」についても当ウェブサイトで知ったという人が増えているようです。なぜなのかといえば、国が通貨危機に陥った際に備えて、外国から助けてもらうために、通貨スワップを締結する国が増えているからです。

といっても、国際金融協力の世界でいう「通貨スワップ」(Bilateral Swap Agreement, BSA)は、デリバティブの世界でいう「通貨スワップ」(Cross-Currency Swap, CCS)とはまったく異なります。これについては『総論:通貨スワップと為替スワップとは?』でまとめていますので、そちらをご参照ください。

このうち「BSA」の方の通貨スワップについては、当ウェブサイトでも随分と取り上げており、たとえば、最近でも日本と中国の間のスワップについては『日中通貨スワップを必要としているのは、残念ながら日本の側』などでも取り上げています。

ただ、以前からの当ウェブサイトの主張どおり、国によっては通貨スワップが死活問題にも直結しています。たとえば、韓国は4000億ドルを超える外貨準備を保有していると主張していますが、そのわりに、通貨危機になったら1200億ドルの外貨不足に陥るとの指摘もあります。

韓国、米利上げ時に通貨危機の可能性…日米との通貨スワップ必要(2018年03月19日13時47分付 中央日報日本語版より)

このように、どうも韓国の場合は外貨準備統計などでウソをついているのではないかとする疑惑は、私にとっても以前からの関心事であり、先週、『外貨準備統計巡る韓国のウソと通貨スワップ、そして通貨制裁』でも取り上げていますので、ご参照ください。

米国の利上げ

WSJ・マッキントッシュ氏の論考

さて、当ウェブサイトの読者の皆様ならご存知の方も多いと思いますが、米FRBは現地時間水曜日に、FF金利の0.25%の引き上げに踏み切りました。

Fed Raises Interest Rates, Signals One More Increase This Year(米国夏時間2018/09/26(水) 18:08付=日本時間2018/09/27(木) 07:08付 WSJより)

米国では10年前の金融危機直後の2009年以降、ベンチマークのFF金利については「レンジ方式」によっており、この「レンジ方式」については改めていないので、現時点のFF金利のレンジは2%~2.25%とされています。

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、今年もう1回の利上げもあり得るとの見方が多い一方で、WSJのジェームズ・マッキントッシュ氏(※)の記事を読むと、むしろFRBによる利上げはそろそろ収束を迎えつつあるという印象を抱きます。

In a Strong Economy, the Fed Doesn’t Want to Hold Your Hand(米国夏時間2018/09/27(木) 11:34付=日本時間2018/09/28(金) 00:34付 WSJより)

(※)ジェームズ・マッキントッシュ氏は約20年、英フィナンシャル・タイムス(FT)紙で記者を務めていましたが、2016年からWSJに移籍していたのだそうです。やはり日経の傘下の新聞社で働くのが嫌だったのでしょうかね?(笑)

もっとも、ジェームズ・マッキントッシュ氏の指摘はむしろ、将来金利の不確実性が上昇したという点にあり、追加で利上げがなされる、なされない、という単純な話ではないことは間違いなさそうです。

米国で利上げがあればどうなるのか?

ところで、米国で利上げがなされた場合には、外為市場ではいったい何が発生するのでしょうか?

経済理論的には、「新興国から資金が引き揚げられる」、という流れが発生します。

もちろん、現実には投資家も金融商品も通貨もさまざまですし、一律に「ドルが値上がりして新興国通貨が値下がりする」、という単純なものでもありません。たとえば、投資対象国の経済成長率が堅調であり、株価も上昇していて期待リターンが高まっていれば、投資資金は引き続きその国に留まるかもしれません。

しかし、それと同時に、経済が弱まっている国があれば、その国から資金が引き揚げられやすいのも事実です。とくに、金融政策を間違え、インフレ状態なのに通貨供給量が増えている国があれば、その国の通貨が売られやすいのは当然のことでしょう。

その典型例が、アルゼンチンやトルコですが、私たちのお隣の国である中国や韓国も例外ではありません。

とくに、中国の場合は米中貿易戦争のあおりをくらい、グローバル企業のあいだでは、製造拠点を中国から中国以外の国に移すという流れも広まりつつある状況です。

また、もともと通貨ポジションが脆弱な韓国の場合も、米FRBの利上げといった外部ショックに対し、非常に脆弱です。とくに韓国は最近、雇用環境が悪い中で最低賃金引き上げを断行するなどしたため、雇用環境がさらに悪化するなどの経済的な行き詰まりを見せています。

国際的な資金の流れを見ていると、どうも中韓両国がきな臭いのです。

日中スワップを眺める韓国

なぜ韓国メディアがそれを報じる?

こうしたなか、私が興味深いと感じたのは、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、次の記事です。

来月、安倍-習近平首脳会談…日中通貨スワップに決着か(2018年09月28日10時22分付 中央日報日本語版より)

これは、日本の時事通信の報道を引用する形で、来月行われる日中首脳会談で日中通貨スワップ協定が再開される、との観測を述べたものです。

すでに時事通信などの複数のメディアは、日中両国での通貨スワップの規模は3兆円程度であり、円と元の交換協定となるであろう、などと報じていますが、これがそのまま実現すれば2013年に終了した日中通貨スワップの10倍の規模となる形です。

ただ、どうして韓国メディアがこれをわざわざ報じるのでしょうか?

これにはおそらく、2つの理由があります。

1つ目は、韓国自身が通貨ポジションに悩んでいるという点です。以前から提示しているとおり、私自身は韓国が発表する外貨準備統計を信頼していません。韓国の実質的な外貨準備高は4000億ドルではなく、良いところでせいぜい2000億ドル、下手すると1000億ドルではないかとすら考えています。

しかし、「自分の国が通貨危機に弱い」という点については、むしろ韓国人こそがリアルに認識している点でしょうし、だからこそ韓国メディアが「通貨危機になれば1200億ドルの通貨不足が発生する」と報じているのでしょう。

日中関係の好転を羨む韓国?

もう1つの理由は、韓国が日中関係の好転を羨んでいるという可能性です。

もちろん、日中関係が「好転」している理由は、中国が米中貿易戦争で追い込まれているだけの話であり、別に日中間の懸念が解決したからではありません。中国が日本との関係改善を望んでいるのは事実ですが、日本としては中国に対する警戒心を一切緩めてはならないということも、また重要な注意点でしょう。

しかし、韓国にしてみたら、昨年12月に文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が「国賓として」訪中したにも関わらず、中国側から徹底的に冷遇されたことの記憶はしっかりと残っているに違いありません。見たくない現実かもしれませんが、実際に韓国は中国からいじめられているのです。

中国との関係に苦慮している韓国が、中国との関係を好転させている日本を見て、焦りを感じていることは間違いないでしょう。

反日と擦り寄りが同時に発生する

ところで、韓国は現在、自国が置かれている状況について、猛烈な危機感を抱いていることは間違いありません。

  • 国内の雇用環境は悪い。
  • 米国の利上げで外資が逃げ、外貨の借換ができなくなる危険性もある。
  • 高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備を巡って中国との関係は悪い。
  • 北朝鮮問題を巡り米国との関係は悪い。
  • 北朝鮮には利用されているだけ。

まさに日本でいえば鳩山由紀夫政権が5年間続くようなものでしょう。いや、文在寅氏は鳩山由紀夫元首相というよりも菅直人元首相のようなものでしょうか?いずれにせよろくなものではありません。

そして、韓国は国が置かれている状況がまずくなれば、きまって国内の不満を外に向けるために反日を激化させますし、それと同時に韓国の政官財の関係者は、きまって日本に擦り寄って来ます。

つまり、反日と日本擦り寄りが同時に発生する、ということです。

しかも、日本国内のマスコミは韓国社会の反日的な動きをあまり積極的に報じようとしませんし、政官財を問わず、日本側にも韓国に配慮すべきだと主張する人が必ず出てくるため、韓国の反日を許したままで、韓国を助けてやれ、と主張する意見が日本国内で主流を占めてしまっていたのです。

ただ、日本社会の側にも1つ、重要な変化が生じています。それは、インターネットで情報を調べる人が激増している、という事実です。

日韓スワップを増額した2008年から10年が経過しました。日本ではいまでもマスコミの影響力が強いことは事実ですが、その一方で、この10年間で日本社会もマスコミの偏向報道に騙されない人が増えていることは間違いないでしょう。

韓国が日本に対して助けを求めてきたときに、日本社会が「韓国は特別に親しい関係のある隣国だから助けてあげるべきだ」と反応するのか、それとも普通の他国として「助けてほしければまずは慰安婦問題というウソをついて日本を貶めることをやめろ」と言えるのか。

その点が、現在の私自身にとっては最大の関心事の1つでもあるのです。

新宿会計士:

View Comments (6)

  • 最初に独断と偏見かもしれないとお断りして、コメントさせていただきます。

    韓国経済が危機になった時、韓国への支援を日本政府に要求する(日本国内の)勢力は、
    いると思います。(その理由は一概には言えないと思いますが)それは
    ①韓国に進出している日本企業(あるいは、その中の部門)
    韓国経済悪化で、自社の売り上げ悪化を回避するために、そして、それによる自社
    内部での責任問題を回避するために、韓国支援を叫びだすと思います。
    ②与党内部の親韓政治家
    韓国との特別なパイプを誇る政治家が、これまでのしがらみで、韓国支援を要求す
    ると思います。
    ③既存のマスコミ
    既存のマスコミが、安倍総理を攻撃するために、感情論で韓国支援を要求すると思
    います。この時、いくらネット に支援反対の声があろうとも、それを無視して、(ある
    い日本国民の一部の声として)スタジオにいる人の声こそが、日本国民の大部分の声で
    あると言い張ることも考えられます。(もしかしたら、それを示すために、世論操作や
    そこまでいかなくても世論調査で小細工をするのかもしれませし)
    ④野党
    野党は、安倍総理攻撃のために、違いを示す韓国支援を要求してくることでしょう。
    この時、待機児童問題の前例に倣って、(もしかしたら一部かもしれませんが)韓国支援
    賛成の声をネットから探してくることも考えられます。
    ⑤日本政府
    韓国支援を行わない時の日本経済へのダメージが、大きすぎると判断すれば、(間違っ
    ているかもしれませんし、次々と追加支援が必要になるかもしれませんが)とりあえず、
    韓国支援を行うかもしれません。

    さて本文とは関係ありませんが、リクエストがあります。中国経済の分析が(難しいとは思い
    ますが)お願いします。
    これはネットで(講談社の)現代ビジネスの「長谷川幸洋の「ニュースの深層」」の中の記事
    「貿易戦争、金融戦争の次に起きる「米中対立」恐怖の最終展開を読む」の一節から探して
    きたのですが、日本のマスコミだけでなく、アメリカのマスコミも北京にいる仲間の都合を
    忖度して、中国の不都合な記事は、書けないとありました。この真偽は分かりませんが、もし
    そうならば、中国経済の実態は、どこの記事を見ても分からないことになります。
    最も粉飾決済している場合は、外部から強制査察でも入らない限り、正確な数字は分からな
    いものかもしれませんし、いざとなれば、強制的に(株を買うことは良いが)売ることは許さな
    い中国に経済的常識は通用しないのかもしれません。
    以上

  • 思っているだけでは意見を示せないので、この場をお借りしましてあえて主張しておきます。
    日韓スワップには断固反対です(^o^)

  • < 更新ありがとうございます。

    < 日中スワップ3兆円規模。 どうしても必要かと言われれば言葉が出ないですが、ま、あってもいいでしょう。で、韓国が何故羨んだり、盛んに韓国・日本のマスコミに日中スワップを流すのか?・・・やはり以前に会計士様が仰る通り、中韓スワップは砂上の楼閣だった、いえ正式には結ばれていなかったんでしょうね。

    <  だいたい会食中の途中に会場から出て来た時の【記者団との立ち話】では、ありえない事です。言った方も『食事中で話が飛び過ぎた』『酔っていて言い間違えた』等、なんとでも言い繕えます。この辺が韓国人らしいところ。責任不在の発言を軽々と載せた。中国が韓国とのスワップに一切言及しないのも、変すぎます。

    < 韓国の情勢は、
    ①雇用環境は悪い。
    ②米国の利上げで外資が逃げ、外貨の借換ができなくなる危険性もある。
    ③高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備を巡って中国との関係は悪い。
    ④北朝鮮問題を巡り米国との関係は悪い。
    ⑤北朝鮮には利用されているだけ。(以上会計士様本文より抜粋)
    ⑥(ついでに)日本との関係も冷め切っている。

    < 別に日本はシナと仲良くなった訳でもなく、米中貿易戦争のあおりだけで中華が擦り寄って来ただけです。本来、敵性国ですし歴史上日本が特に五分の友好を継続した国でもありません。おそらく、中国とは今の共産党体制がある限り、今がいちおう『蜜月』の部類でしょう。一党独裁が倒れても、4~5分割国家にならないと、マトモな友好は無いと存じます。

    < で、韓国ですが今の危機を感じ取るなら、日本に対する侮辱、卑日をすべての件を平誤りぐらいでは許されない。まずは慰安婦(売春婦)強制連行でっち上げから、一つずつ真摯な謝罪が無いと話になりません。ムリ? なら『隣に生息する変な国』としてだけ、日本は対応します(笑)。

  • アメリカと中国はもう抜き差しならぬ状態。新冷戦みたい。冷戦となると日本には案外メリットかも。「日本をいじめると、中国側にいっちゃうかもしれませんよ。」とかでアメリカを脅せる。その点でいうと××民主党にはがんばってもらった方がいいかな。ロシアはもうだめだわ。アメリカに対抗する力はないみたい。はい、ロシアの利用価値はありません。勝手につぶれてください。北方領土?あんな寒いところに誰が行きますか?歯舞・色丹はもちろん、国後・択捉+樺太+アリューシャンぐらいもらわないと経済援助はなしでしょう。中東がだめになって、ロシアしか石油がでない状況にならないと経済援助は難しいでしょ。それだって、石油価格は国際価格でしょうから。まあ、そのうちロシアの極東地域は中国が経済的に接収するでしょうね。

    • >「日本をいじめると、中国側にいっちゃうかもしれませんよ。」とかでアメリカを脅せる。

      それやったのが田中角栄ですが・・・。