あれれ?トランプ大統領が南北首脳会談の結果を大絶賛中!
南北朝鮮の首脳が共同宣言を発したことを受けて、日本時間昨夜、ドナルド・J・トランプ米大統領はこれを歓迎するかのようなツイートを発しました。最近では、「トランプ氏は北朝鮮の非核化に対して関心を失ってしまったのではないか?」といった指摘もあるようですが、こうした見方は正しいのでしょうか?そして、日本はこの事態にどう対処していけば良いのでしょうか?
コウモリ国家・韓国
「敵味方双方に良い顔をするコウモリ国家」といえば、私は真っ先に韓国のことが思い浮かびます。
読者の皆様もご存知のとおり、韓国は日本とも貿易、投資、人的往来などの関係が深い国であるとともに、米国と軍事同盟を結ぶ国です。韓国はまた、私たち日本と同じ「自由・民主主義国家」陣営に所属している国でもあります。
しかし、それなのに韓国は、中国共産党が君臨する一党軍事独裁国家である中国と、1992年に国交正常化して以降、関係を急激に深めています。たとえば貿易高でも、韓国にとっての中国は、最大の輸出相手国に浮上しています。
それだけではありません。
現在の文在寅(ぶん・ざいいん)政権は北朝鮮との関係を改善させようとしていて、北朝鮮を訪問中の韓国の文在寅大統領は昨日、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)と「平壌共同宣言」に署名したそうです。
金正恩氏のソウル早期訪問で合意 南北首脳「平壌共同宣言」に署名(2018.9.19 13:24付 産経ニュースより)
産経ニュース(速報)によると、合意事項は次のようなものです。
- 北朝鮮北西部にある東倉里のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台の専門家の監視の下での永久廃棄
- 米国が相応の措置を取れば北朝鮮は寧辺の核施設廃棄などの追加措置を取る用意がある
- 文氏の招請による金正恩氏の早期ソウル訪問
- 南北軍事共同委員会を早期に稼働させ偶発的な武力衝突防止に向け協議
- 条件が整い次第、北朝鮮での南北経済協力事業の開城工業団地と金剛山観光事業を正常化
- 離散家族再会のための常設施設を金剛山に早期開所
- 2032年の夏季五輪の共同開催誘致に向けた協力
こうした動きは、明らかに米国と日本を困惑させるものです。とくに、合意事項の1番目と2番目は、「核兵器、大量破壊兵器のCVID」とは似ても似つかぬ代物であり、こんな項目で米国が満足するとは、とうてい思えません。
ここで、CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)のことであり、核兵器やミサイル、生物・化学兵器なども含めて、大量破壊兵器を広範囲に特定し、完全に武装解除することを意味します。
これに対して北朝鮮側がしつこく主張し続けているのは、「核の段階的廃棄」であり、CVIDではありません。実際、合意文書の1番目と2番目は、北朝鮮が「CVIDに応じるつもりはない」と宣言したことと同じ意味だと見ても良いでしょう。
予想外のトランプ氏の反応
新宿会計士の予想が大外れ!
ただ、私自身にとって、1点、予想外だったことがあります。それは、ドナルド・J・トランプ米大統領の反応です。
私は『韓国の文在寅大統領がこの時期に平壌を訪問したことの対価』や『【速報】あまりに予想通りだった南北首脳会談』のなかで、文在寅氏が説明のために訪米したとしても、トランプ大統領自身が会ってくれない可能性すらあると申し上げました。
その理由は、文在寅氏の最近の動きが、明らかに「北朝鮮と朝鮮半島の非核化」という米国の戦略目標を阻害する方向に動いているからです。また、常識的な人物が米国大統領の立場だったら、昨日の南北共同宣言についても、内心、はらわたが煮えくり返るような思いをしているのではないかと思います。
文在寅氏は今月下旬に国連総会参加を目的に訪米し、トランプ大統領に経緯を説明するそうですが、今回の共同宣言は、文在寅氏は、訪米しても大統領に会えずに追い返されても文句が言えないほどのことをしでかしたといえるでしょう。
ところが、思ったことを何でもツイートしてしまうトランプ氏のツイッターを眺めてみても、トランプ氏からは特段、「怒り」のような感情は見えて来ません。いや、それどころかトランプ氏は、日本時間の昨夜、米フォックス・ニューズ(FoxNews)を引用する形で、こんなツイートを発しています。
“North Korea recommits to denuclearization – we’ve come a long way.”(2018/09/19 20:43付 ツイッターより)
“North Korea recommits to denuclearization – we’ve come a long way.” @FoxNews
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年9月19日
つまり、「長い道のりを経て北朝鮮は再び非核化を宣言した」という意味のツイートであり、いわば、今回の南北共同宣言を歓迎するかのような言い分です。
これをどう見るべきでしょうか?
「トランプ=愚か者」説
一番わかりやすい説明は、「トランプ(氏)は韓国と北朝鮮ごときに騙されるほど愚かな人物だ」、というものでしょう。
「韓国が同盟国である米国を裏切って北朝鮮という『敵』に塩を送ったのに、それをとがめないどころか絶賛するとは、本当に愚かな政治家だ」。
実際、トランプ氏のツイートに対しても、
「あなたは数ヵ月前に、北朝鮮の核の脅威は去ったと言っていたではないか?」
といったツイートや、トランプ氏と金正恩の髪形を入れ替えた写真を掲載しているツイートなども寄せられている状況です。
Did you say the “Nuclear Threat” was gone several months ago?
— Ed Krassenstein (@EdKrassen) 2018年9月19日
— Sherri (@sherri18510842) 2018年9月19日
あるいは、酷い説になると、最近では、
「もはやトランプ(氏)の頭の中は中間選挙でいっぱいで、北朝鮮の非核化への関心など、完全に失われてしまった。」
といった批判も見られます。
ただ、この「トランプ(氏)は愚か者だ」と、そう簡単に結論付けて良いのでしょうか?
見えるものが違う?
おそらくその答えは、「見えているものが違う」からだ、ということだと思います。
ここで参考になるのが、優れた「コリア・ウォッチャー」である鈴置高史氏が今週初め、日経ビジネスオンライン(NBO)に寄稿された、次の記事です。
米国は通貨で韓国に「お仕置き」する/1997年「通貨危機」のデジャブ(2018年9月17日付 日経ビジネスオンラインより)
(※内容の全文については、直接、リンク先を読んで下さい。記事を読むためには日経IDの取得など、面倒な作業が発生しますが、そのような面倒さを我慢してでも読む価値がある優れた論考です。)
鈴置氏は今回の論考で、愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授の真田幸光氏と対談。真田氏はトランプ政権が北朝鮮の非核化への関心を見失ったとする説に対し、次のように反論します。
「真田:関心を失った、というよりも優先順位を落とした、というべきでしょう。/現在、米政府の最大の関心事は中国とイラン。そしてそのイランについては、トランプ政権に強い影響力を持つイスラエルが「とにかくイランの核開発をやめさせて欲しい」と強力に米政府に訴えているからです。そこでトランプ政権はイランを全力で叩きに出ています。」(中略)
「米国は北朝鮮よりもイランの核を先に処理するということですね。」
「真田:その通りです。そこで米国は軍事的に圧迫していた北朝鮮といったん和睦したのです。秀吉の「中国大返し」です。/(中略)/米国は北朝鮮への水攻め――合同演習など軍事的な圧迫は解きました。ただ、兵を引いている間に北朝鮮が悪さをしかねない。/「動くな」と牽制しておく必要があります。中国に対し通貨戦争を仕掛けている理由の1つには、北朝鮮への牽制があると私は見ています。/中国を圧迫しておけば、北朝鮮への露骨な経済援助はできない。すると北朝鮮は、核やミサイル実験を容易には実施できません。」
私は数多い説明の中でも、この「鈴置論考」に出てきた真田教授の説明が、一番すっきりとしているように思えるのです。
アメリカ合衆国の大統領という立場にあれば、当然、北朝鮮のことだけを見ていれば済む、と言う話ではありません。シリアしかり、トルコしかり、ベネズエラしかり、そして現在だと、何にもましてイランと対峙しなければなりません。
加えて、ロシア、中国との関係も良好とは言えませんし、最近では欧州連合(EU)やカナダとの関係もぎくしゃくしています。現在の米国にとって「最大の理解国」といえば、日本と英国くらいなものでしょう。
日本の立場は最強に!
おりしも本日、自民党総裁選の投開票が行われます。
といっても、国会議員票で挑戦者・石破茂氏を圧倒していますし、地方票でも石破氏の追い上げかなわず、おそらくは安倍晋三総理大臣が自民党総裁に3選されるでしょう。しかし、本当の勝負は、ここから先だと思います。
米国から見て、現在、本当に心から信頼し得る相手は、日本と英国くらいしかありません。トランプ氏の「全方位にケンカを売る姿勢」が、自ら米国の立場を苦しくしているからです。
もちろん、私自身はトランプ氏のことを、魑魅魍魎跋扈するニューヨークの街で不動産王として財を成した才覚を持つ、稀代のビジネスマンだと考えています。タフ・ネゴシエーターであるトランプ氏が、北朝鮮の核武装を許すという失敗をするとは思っていません。
おそらく、先日の私の予想に反して、トランプ氏はニューヨークを訪問する文在寅氏を生温かく(?)受け入れるでしょう。しかし、日本では政治的立場を強くした安倍晋三氏が引き続き内閣総理大臣として在任しているため、北朝鮮核問題をめぐっては、安倍氏からキッチリとネジのまき直しが入るはずです。
いずれにせよ、日本は現在、欧州連合(EU)、豪州、インド、ASEAN諸国などとの関係も良好ですし、最大の仮想敵国である中国との関係を改善しつつあります。日本の外交的な立場は第二次世界大戦以降、最強になりつつあります。
私は、安倍総理には引き続き、この国難の打破に取り組んでもらいたいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
< 更新ありがとうございます。
< 南北会談をトランプ大統領が生暖かく絶賛ってきみ悪いですね。真田教授のご指摘どおり、米国は世界のいろんな国、地域と対立している。いわば喧嘩相手が多過ぎる。昔なら世界の警察官として、多方面作戦可能ですが、今は最悪のポイント一つしか、相手に出来ません。北朝鮮は二番手か。
< 中国に貿易で喧嘩しかけて、コレは米国の圧勝。その壁の向こうにいる北朝鮮も間接的には被害が出ている、という事か。経済制裁継続!だから金は文吉をわざわざ空港まで出迎えるショーをしたんだな。よっぽど苦しいんですね(笑)。
< ところで、米国の話が十分できる真の友邦は、日本、英国のみですか。喧嘩売りまくりだっつうの!でも独あたりとは絶対組まないし、加も雲行き怪しい。日本はシナと握手外交で正面敵を減らせればいい。勿論、ホンネは敵ですが(笑)。
< 阿呆南北のおかげで、日本は少なくとも存在感を上げました。このまま改憲まで行って、金、文吉を黙らせたいものです。さて、韓国への経済制裁はトランプ大統領、米韓会談で伝えるのかな?(笑)
< 直接話題に関係なく、すみません。
< 報道によると、小泉進次郎、石破に一票(大笑)。阿呆な奴。風が読めんね。怪しい自論を言うのも石破と同じ。
< これで大臣の椅子は遠のいた。求心力も失う。なんなら石破と一緒に党を割る根性あるんか?ないやろな(笑)。
まともな人なら反町理氏と同様な見方をしますね。
反町理 @o_sori
フジテレビ政治部 反町です。
小泉進次郎氏がきょう「石破支持」を明らかにした。想像するに小泉氏の真意は「総理は安倍しかいないが、一定の批判勢力は必要」と言う事だろう。石破陣営からは「3日早く言ってくれれば党員票では勝てた」と、安倍陣営からは「自分の影響力をひけらかしている。信用できない」と双方から批判が。
2018年9月19日
https://twitter.com/o_sori/status/1042641908655218688
文在寅は、もし北の非核化に成功すれば、
その手柄をすべて掻っ攫っていきそうで嫌だなあ。
非核化が成功するとすれば、それは国際社会の妥協なき圧力のおかげであって、
それを率先して破ってるくせに、
「私が対話により北を非核化へ導いた」みたいなことを言いそう。
ただ、北の非核化の後がわからないんですよね。
核のない北が、連邦制にせよ金体制を維持できるとは思えないし。
金が願う独立した体制保障をどうやって実現するのか。
非核化と金ファミリーの体制保障がどう考えても折り合わないです。