マスコミさん、カツカレー食べた石破氏を批判しないのですか?

「例のカツカレー」と聞いて覚えているという人は、かなりの政治マニアであるか、それとも古くからのネット・ユーザーであるかのどちらかでしょう。マスコミが「3500円もする高級カツカレーを食った安倍晋三の庶民感覚のなさ」と批判しようとしたところ、それを遥かに上回る6300円の超高級カツカレーが朝日新聞大阪本社で提供されていたというお粗末なオチを思い出す人は、さらにマニアックです。

「例のカツカレー」騒動を振り返る

言霊信仰とカツカレー

古来、日本人には言霊(ことだま)信仰というものがあります。

私の理解に基づけば、これは、もともとは「良い言葉を口にすれば良いことが、悪い言葉を口にすれば悪いことが発生する」、といった素朴な信仰ですが、現代でいう「ポジティブ・シンキング」にも通じるものであり、「良いこと」「前向きなこと」を言葉に出すことは、決して悪いことではないと思います。

また、何かの試験を受けるときに、トンカツが入った弁当を持参するという人も多いと思います。これは「試験に勝つ」と「トンカツ」の掛け言葉であり、トンカツを食べて受験を成功させようとする純粋な願いを込めた行動だといえます。

そして、これは政治家でもまったく同じです。何か重要な選挙のときに、トンカツ、あるいはトンカツが入った食品(たとえばカツカレーなど)を食べて勝利を祈願する、あるいは逆にカツカレーなどを食べて勝利を喜ぶ、といったことは頻繁に行われているようです。

今から6年前の2012年9月、当時の野党だった自由民主党の総裁選挙に出馬した安倍晋三氏は、「1皿3500円の高級カツカレー」を食したとして、当時のマスコミから強く叩かれました。残念ながら該当する記事のリンクは残っていないのですが、私の記憶ベースでは、当時のマスコミは

かつて首相を1年で投げ出した男が、今度は3500円もする超高級カツカレーを食べるという庶民感覚のなさを露呈した!こんな人間を再度、首相にしてはならない!

といった印象を露骨に植え付けようとしており、強い違和感を抱いたことを覚えています。

しかし、意外なこと、当時は野党・自民党の一介の国会議員に過ぎなかった安倍晋三氏を、マスコミがこっ酷く叩こうとしたところ、逆にインターネット上で「マスゴミ(※)、いいかげんにしろ!」といった反論が発生。安倍晋三氏らの秋葉原での街頭演説後に「マスゴミ」コールが起こったのも印象的です。

(※)マスゴミとは:「ゴミのような情報しか流さないメディア」、「取材方法に著しい問題があるメディア」などに対する、「マスコミ」と「ゴミ」を掛け合わせた、人々の怒りを込めたネット・スラングのこと。

朝日新聞に対する「元祖ブーメラン」

さらに、「安倍晋三(氏)が3500円もする超高級カレーを食べていた!」と叩こうとしたら、当時、朝日新聞大阪本社に入っているレストラン「アラスカ」では、カレーが6300円だったことが判明した、というオチが付きました。

安倍新総裁「高級カレー」を朝日が取り上げる では自社内レストランのカツカレーランチの値段は(2012/10/ 1 17:58付 J-CASTニュースより)

もちろん、この「6300円のカレー」というのは、カレー単品ではなくコースメニューであり、単純な比較はできません。また、朝日新聞自身が当時、公然と「安倍晋三氏がカレーを食していたのはけしからん!」と批判していたわけではないので、厳密には「ブーメラン」とも言い切れません。

しかし、朝日新聞を含めたマスコミ側が安倍晋三氏の「高級カツカレー」を叩こうと虎視眈々としていたときに、朝日新聞社にそれをさらに上回る超高級カツカレーを提供する店が入っていたというのは、シャレにしてはきつすぎます。

つまり、「高級カレー騒動」とは、マスコミが野党・自民党の総裁に返り咲いた安倍晋三氏を貶め、野田佳彦首相率いる与党・民主党を応援するために揚げ足取りをしようとしたところ、それがマスコミにブーメランとなってグッサリ突き刺さったという、非常に痛快な事件だったのです。

総理に返り咲いた安倍晋三氏「例のカツカレー」FBで挑発

さて、安倍晋三氏が野党・自民党の総裁に返り咲き、野田佳彦首相は2012年11月14日(水)の国会討論で、安倍氏に対し、衆議院を解散すると明言。その2日後の11月16日(金)には、実際に衆議院を解散してしまいます。

これを受けて、2012年12月16日(日)に実施された衆議院議員総選挙では、自民党が294議席を獲得して圧勝。これに対し与党・民主党の獲得議席数は57議席にとどまり、野田首相は退陣し、代わって安倍晋三総理大臣が誕生したのです。

その直後に、当時はまだ自民党総裁だった安倍晋三氏は、フェイスブック(FB)に、なかなかしゃれた投稿をしました。

安倍総裁「今夜は例のカツカレー」FBに投稿 またブーム来る?(2012/12/18 15:46付 J-CASTニュースより)

当時のJ-CASTニュースによると、安倍晋三氏は12月17日、自身のフェイスブックに

只今、特別国会に向けて準備中です。今夜はホテルで夕食。メニューは例のカツカレーです」(※下線部は引用者による加工)

と投稿。これに4万件近い「いいね!」が付いたとしています。

私は当時、この安倍総理の「返し」を見て、痛快に感じたものです。新聞、テレビが「安倍は庶民感覚がない!」と叩こうとしたら、逆に国民から総スカンを喰らい、とどめに総選挙を制した安倍総理側から「例のカツカレー」と言われてしまう始末。

間違いなく、あのとき、時代は変わり始めたのです。

マスコミさん、石破茂氏のことは叩かないのですか?

値段を報じないマスコミの怪

さて、あれから6年が経過しました。

マスコミの虚報体質はまったく変わっていませんが、1つ良かったことがあるとすれば、私たち一般国民が、マスコミの垂れ流す情報を鵜呑みにしなくなっていることだと思います。また、6年前と比べ、スマートフォンなどの電子デバイスはさらに普及しており、インターネットはますます身近な存在となっています。

そして、私のように意地悪な人間だと、どうしても「マスコミがかつて何をやったのか」ということをねちっこく覚えていて、それを折に触れて自分のウェブサイトに公表し続けているので、マスコミさんにとっては本当に都合が悪い時代になったのではないかと思います。

こうしたなか、時事通信や日本経済新聞などのメディアは、自民党総裁選の告示日である7日、石破茂氏が昼食にカツカレーを食したと報じています。

これらのメディアの報道を総合すると、石破氏は7日、必勝を祈願して自陣営の議員約30人とともにカツカレーを食べ、昼食後に竹下派の議員らと握手を交わしたのだそうですが、さすがにどのメディアの報道を見ても、このカツカレーの値段は書かれていません。

しかし、石破氏らがカレーを食した場所は党本部であり、レストランではありません。そして、レストランないしホテルなどからカツカレーの出前を取ったとすれば、やはり6年前に安倍陣営が食したカレーと同様、「庶民感覚」からすれば決して安くないはずでしょう。

どうしてマスコミの皆さんは、6年前に安倍総理が食べたカレーを「3500円の高級カレー」と叩いたくせに、石破氏が食べたカレーの値段を報じないのでしょうか?

「正直」、「公正」。どれもマスコミのことじゃないことだけは確かだ

ちなみに今回、石破茂氏が掲げているスローガンは、「正直、公正、石破茂」、です。石破茂氏がこのスローガンで何を訴えようとしているのかは存じ上げませんが、すくなくとも「正直」、「公正」という単語は、日本のマスコミの報道姿勢を指すものではないことだけは確かでしょう。

私が大手ブログサービスで個人ブログを開設したのは2010年7月のことですが、あれから8年が経過し、マスコミの虚報体質はまったく改まらないどころか、近年、ますます酷くなっています。

なかでも酷いのは「もりかけ問題」という虚報で倒閣を仕掛けた朝日新聞ですが、このメディアに残されているのは、もはや廃刊一択だと思います。しかし、朝日新聞だけでなく、新聞各紙、NHKを含めたテレビ各局も、程度の差はありますが、状況は似たようなものでしょう。

むろん、腐った新聞社、腐ったテレビ局に務めていながらも、志を失わず、優れた記事を執筆し続けている記者も存在しています。しかし、中日新聞の元論説副主幹の長谷川幸洋氏や、日本経済新聞社の鈴置高史元編集委員のように、優れた記者ほど、その会社を辞めてしまうように思えます。

日本のマスコミ各社には、産経新聞の阿比留瑠比氏のような論説委員もいないわけではありませんが、それはあくまでも少数派であり、ゴミのような記事(たとえば朝日新聞の社説のような記事)しか書けない記者が論説主幹などとして残ってしまうのが日本のマスコミの問題点なのでしょう。

いずれにせよ、総裁選の投開票日まであと2週間弱ですが、この間、マスコミがどんな醜態をさらしてくれるのか、私はウェブ評論家の1人として、じっくり見極めさせていただこうと思います。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. チチンプイプイ より:

    安倍氏カツカレー騒動の「火付け役」だった 2016年4月20日 16時40分
    熊本地震の被災地を取材していた毎日放送MBS【TBS系】の山中真アナウンサー(39)による「弁当ツイート問題」がなかなか収束しない。
    謝罪文投稿後も批判が相次ぎ、MBS宛てには今も抗議が殺到しているという。

  2. あいあい より:

    鈴置ウォッチャー(笑)のあいあいです。

    鈴置氏は、1954年生まれですので御年65才です。
    入社が1977年、退社が2018年の3月とのことですので、40年お勤めの上で定年退職ではないかと思います。
    もっとも、日経の人事規定を知りませんので断定はできませんが。

    以上、情報提供まで。

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