韓国で「通貨スワップ待望論」が高まり過ぎたためでしょうか、単なるコミットメントラインを「通貨スワップ」だと称した、非常に奇妙な記事が出ているようです。
通貨スワップではなくコミットメントライン
「通貨スワップ」の意味を勘違いしている中央日報
韓国メディア『中央日報』に、ひときわ異彩を放つ、ヘンテコリンな記事が掲載されています。
韓国産業銀行、中国工商銀行と通貨スワップ締結…「安全弁確保」(2018年05月17日14時39分付 中央日報日本語版より)
記事の内容は、
- 16日、中国工商銀行(ICBC)と韓国産業銀行(IBK)が2億ドル規模の通貨スワップを締結したと発表した
- ICBC側が13億人民元(約225億円)、IBK側が2200億ウォン(約225億円)を上限とする自国通貨を相互に融通できるもので、契約期間は1年だが最大2回まで延長可能
- IBK関係者は「安定した人民元の調達基盤の構築を通じて、中国内の韓国系企業に対する資金支援など韓中金融協力が活性化し、世界の最大銀行との相互協力を通したビジネスチャンスの拡大などを図ることができるようになった」と述べている
といったものですが、いわば、「通貨スワップが欲しい」というあまり、事実に反する記事を配信してしまったようです。
ICBCの株主構成(※英語)は約76%が中国政府であり、IBKの株主構成(※英語)も約50.9%が韓国政府です。このため、いずれの銀行も中国政府、韓国政府の代理人のように見えてしまいますが、実態はいずれも政府ではなく、銀行です。
そして、銀行間で「いざというときにおカネを貸しますよ」という約束は、「通貨スワップ」ではありません。「コミットメントライン」です。中央日報さん、言葉は厳密に使いましょう。
通貨スワップが欲し過ぎて…
ところで、米WSJによると、16日時点の為替相場は、1ドル=6.3715人民元、1ドル=1,077.73ウォンでした。このレートで換算すると、13億元も2200億ウォンも、約2.04億ドルと計算できます。
- 2200億ウォン=204,132,761ドル
- 13億元=204,033,587ドル
若干の誤差が出ているのは、使った換算レートの差という側面と、「13億元」「2200億ウォン」というキリの良い数字にしたためでしょう。したがって、ドル換算した金額に差異が出ることは、それほど懸念する話ではありません。
また、中国の通貨・人民元は国際的な市場では使い物にならない通貨(ソフト・カレンシー)ですが、たかだか2億ドル程度の金額であれば、外為市場で両替するには、あまり問題になることはありません。というよりも、韓国銀行が外国中央銀行と締結している通貨スワップの額(図表)と比べて、少なすぎます。
図表 韓国と外国中央銀行の通貨スワップ(BSA)
相手国と金額 | 韓国ウォン | 相手国通貨の換算額 |
---|---|---|
100億豪ドル(オーストラリア) | 9.0兆ウォン | 75.4億米ドル |
150億リンギット(マレーシア) | 5.0兆ウォン | 38.1億米ドル |
115兆ルピア(インドネシア) | 11.0兆ウォン | 82.5億米ドル |
100億フラン(スイス) | 11.2兆ウォン | 100.0億米ドル |
3600億元(中国)(※) | 64.0兆ウォン | 565.8億米ドル |
合計 | 100.2兆ウォン | 861.8億米ドル |
(うち中国以外とのスワップ) | 36.2兆ウォン | 296.0億米ドル |
(【出所】著者作成。なお、中国とのスワップ協定については、昨年10月に失効済みであり、中国側は「更新した」とはヒトコトも言っていない点に注意。また、米ドル換算はWSJの2018年5月4日時点引け値により試算)
韓国が外国と締結する通貨スワップのうち、中国とのスワップが全体の7割近くを占めていますが、そもそも中国の当局は「韓国との通貨スワップの延長で合意した」とはヒトコトも述べていません。韓国政府、中央銀行関係者が「中国と口頭で契約を結んだ」と述べているだけです。
つまり、韓国が危機に陥った時に、中国としては「そんなスワップ知らないよ」と拒否することができるわけであり、また、韓国が中国の言うことを聞かなければ、中国としてはいつでも公の場で「通貨スワップは存在しない」と宣言して、韓国経済を大混乱に陥れることができる、ということです。
中国は実に老獪な国ですね(笑)
日韓通貨スワップ待望論
先週は日中韓3ヵ国「サミット」がありましたが、韓国国内の日韓通貨スワップ待望論を背負って訪日した文在寅(ぶん・ざいいん)大統領に対し、安倍総理は「スワップ」の「ス」の字も出しませんでした。そんな韓国では、何度も何度も、「日韓通貨スワップ」「米韓通貨スワップ」などの待望論が出てきます。
今週に入ってからも、たとえば次の中央日報記事のように、「日韓・米韓通貨スワップ」という議論(というよりも単なる願望)が掲載されています。
<専門家分析>究極的な通貨スワップは韓米…韓日も重要(2018年05月15日16時05分付 中央日報日本語版より)
別に韓国国内の「自称専門家」が言わなくても、韓国にとっては有事のドルが必要だということくらい、最近の日本では「韓国の外貨不足」が有名です。これについては当ウェブサイトの『【夕刊】外貨準備:韓国はいつものウソをつく』あたりもご参照ください。
ただ、韓国側でもはや「妄想の域」に達しているほど日韓通貨スワップ待望論が高まっているにも関わらず、日本ではむしろ逆に、外交青書で韓国を突き放す動きが出ている(『【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ』参照)のは興味深い点でしょう。
今朝も『韓国と北朝鮮を「対等な交渉相手」と見るな』で申し上げましたが、日韓には「対等な友好関係」など成立しません。韓国が通貨スワップに関する秋波を日本に送って来たとしても、まともに取り合う必要はないでしょう。
View Comments (3)
< 昼刊ありがとうございます。
< その中央日報の記事、読みました。とても嬉々として書いているようですが、たかが2億ドル(225億円)程度で、『安全弁の確保』になるのでしょうか?ケタが違うだろ。『中国で活躍する韓国系企業の資金支援になる』と語っているが、2億ドルなど1社単独でもたくさん借りたい時には足りないんじゃない?それに「元」建てだし。記事を深読みすれば日本、米国とのスワップが本当に欲しいんだね~。1円も貸しません!甘い顔はしない。コッチ見るな。 以上
素朴に疑問に思ったのですが通貨スワップ協定って締結されたら直ぐにお金が支払われる性質なものなのでしょうか?
どちらかというと万が一の際の保険のような性質と理解していたのですが。
>通貨スワップは保険
と
か保証人みたいなもの.....そういう常識が欠落してるから朝鮮人なんでしょ。
・メキシコかどこかからスワップした通貨を即座に大量に売っぱらってのドル買い、相手国が激怒
とか
・アメリカから毎月毎月サラ金借金の如くドルを借りた一覧表
とか
・支那の通貨スワップは金利が高いからスワップすると損だから支那スワップから借金しない
な
んてのがあった。韓民国にとっちゃ紙屑(ウォン)をドルにかえてくれる..カ..モ..なんでしょ、通貨スワップの相手国は