【夕刊】マイナス金利の日本と通貨防衛のアルゼンチン

アルゼンチンの中央銀行がベンチマーク金利を6.75%引き上げ、40%に設定したことが、市場関係者の間でちょっとした話題になっています。

金利が40%も貰えるぞ!

デフォルトの国・アルゼンチンの通貨安

アルゼンチンといえば、2001年12月に政府が公的債務弁済を全面的に停止する「デフォルト宣言」を行ったことで知られています。ジェトロのレポートによれば、デフォルトした債務は外国通貨建てで発行された国債や外国政府からの借款など、合計1300億ドル超とされています。

もともと、アルゼンチンの通貨・ペソは対米ドルで固定相場制を採用しており、1ドル=1ペソの等価とされていました。しかし、無理な固定相場制度を維持することで産業の輸出競争力が減退し、財政赤字と対外債務の拡大を嫌気し、外資の流出が相次いだことで、デフォルト状態となったのです。

その後、アルゼンチン・ペソは米ドルに対して下落。WSJなどで確認できる一番古いデータでは、たとえば2007年11月12日時点で1ドル=3.1275ペソ、すなわち3分の1以下に下落していることが確認できます。

ただ、アルゼンチン経済は自国通貨安のまま、小康状態を保っていましたが、2014年7月には、投資家(主にヘッジ・ファンド)からの2001年のデフォルト宣言に対する不服申立をニューヨーク地裁が認める「第2次デフォルト」が発生。アルゼンチンの通貨・ペソは再び暴落を始めます。

ためしに、アルゼンチン・ペソの対ドル為替レートを列挙してみましょう。

  • 2007年12月31日終値…1ドル=3.1435ペソ
  • 2013年12月31日終値…1ドル=6.5188ペソ
  • 2014年12月31日終値…1ドル=8.4646ペソ
  • 2015年12月31日終値…1ドル=12.94ペソ
  • 2016年12月30日終値…1ドル=15.8695ペソ
  • 2017年12月29日終値…1ドル=18.6035ペソ
  • 2018年5月4日終値…1ドル=21.8548ペソ

テクニカル・デフォルト前年の2013年末時点で1ドル=6.5ペソだった為替相場が、テクニカル・デフォルトがあった2014年末時点では1ドル=8.5ペソ、2015年末には1ドル=12.9ペソと、つるべ落としに下落していることがわかります。

昨日時点の終値は21.8548ペソであり、1999年末と比べると、ペソの価値はおよそ20分の1以下にまで下落した計算です。

通貨防衛に乗り出したアルゼンチン中央銀行

こうなってくると、さすがに通貨当局としても「これはまずい」と思ったのでしょう。アルゼンチンは政策金利を、なんと40%(!)に引き上げたのです。

Argentina Central Bank Boosts Main Rate to 40% in Third Rise in Eight Days(米国夏時間2018/05/04(金) 16:47付=日本時間2018/05/05(土) 05:47付 WSJより)

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道を要約しておくと、

  • アルゼンチンの中央銀行は金曜日、通貨防衛の目的で利上げに踏み切った
  • 33.25%だった政策金利は6.75%引き上げられ、40%に設定された
  • 先週金曜日と今週木曜日にも3%ずつ利上げしているため、1週間で3回、合計12.75%利上げした計算だ
  • アルゼンチン中央銀行(BCRA)は「利上げ以外にも為替市場に介入する手段を持っている」と述べ、ペソ安を牽制した

とあります。確かに、ここ数日のペソの動きを見てみると、5月3日(木)に1ドル=22.2515ペソという安値を付けたものの、5月4日(金)には1ドル=21.8548ペソと小幅で買い戻された格好となっています。

  • 2018年05月01日終値…1ドル=20.5315ペソ
  • 2018年05月02日終値…1ドル=21.183ペソ
  • 2018年05月03日終値…1ドル=22.2515ペソ
  • 2018年05月04日終値…1ドル=21.8548ペソ

ただ、2001年12月のデフォルト前の1ドル=1ペソという水準や、2014年7月のテクニカル・デフォルト前の1ドル=8.131ペソ(2014/06/30時点)などと比べると、極端な通貨安状況が続いていることは確かです。

では、これでいったい何が問題となるのでしょうか?

新興国不安+ドル高不安

一般的に、アルゼンチンのように外国から外貨を借りている国にとっては、自国通貨が安くなれば、債務負担が増えておカネを返すことが難しくなります。そうなると、外国資本から見れば「アルゼンチンは危ないぞ」となり、通貨安がますます加速していく、という現象が発生しやすくなります。これが通貨危機です。

もともと、アルゼンチンだけでなく、新興市場諸国(Emerging Marketsを略して一般に「EM諸国」と呼ぶこともあります)は、国内の金融、産業基盤が脆弱であり、外国からおカネを借りて投資を行うものの、先進国(アメリカや日本)が利上げを行えば、たちまち資金が逃げてしまうという欠点があります。

もちろん、EM諸国のなかには比較的、外国投資家から信頼されている国もありますが(例:香港)、アルゼンチンのように10年に1回は何らかの危機を発生させている国は、外国からの信頼も低く、高い金利を支払わなければ外国資本をつなぎとめることができないのです。

しかし、もともと金融政策の目的は、目標インフレ率の達成や雇用の最大化など、「国内経済のため」に行われています。日本の場合も、日本銀行の金融緩和政策は「デフレ脱却」を目的にしており、「円高・円安」は政策目標に入っていません。

これがEM諸国と先進国の金融政策の、きわめて大きな違いなのです。

「国の借金教」

ちなみに、日本の場合は「国の借金が~」などと言い出す、財務省や日本経済新聞のような頭の悪いプロパガンダ勢力がいます。彼らの主張によれば、「日本は1000兆円を超える国の借金を抱えているから、財政再建をしないと日本も財政破綻する~!」というものです。

では、この「財政破綻」とは、どのようにして実現するのでしょうか?

アルゼンチンの場合は、外国からおカネを借りてくることが難しくなり、自国通貨の価値が2007年の水準から7分の1にまで暴落し、通貨防衛のために金利を40%(!)にまで引き上げているという状況です。こうなると、国民経済はめちゃくちゃですし、産業基盤も破壊されてしまいます。

では、日本の場合、自国通貨(円)の価値は暴落し、通貨防衛のために政策金利を40%にまで引き上げている状況なのでしょうか?

  • 2007年12月31日終値…1ドル=111.75円
  • 2008年12月31日終値…1ドル=90.69円
  • 2009年12月31日終値…1ドル=92.99円
  • 2010年12月31日終値…1ドル=81.16円
  • 2011年12月30日終値…1ドル=76.9円
  • 2012年12月31日終値…1ドル=86.75円
  • 2013年12月31日終値…1ドル=105.31円
  • 2014年12月31日終値…1ドル=119.72円
  • 2015年12月31日終値…1ドル=120.3円
  • 2016年12月30日終値…1ドル=117円
  • 2017年12月29日終値…1ドル=112.7円

アベノミクスが始まった2013年以降、為替相場は1ドル=100円の大台を回復するほどの円安になりましたが、その後、1ドル=120円程度をピークに、これ以上、円安が進まなくなってしまいました。その一方で、日本の政策金利は「マイナス」0.1%です。

もし財務省や日本経済新聞の「教え」が正しければ、アルゼンチンの例に倣えば、日本は今すぐ、「国の借金が大きすぎること」が嫌気されて1ドル=800円(!)というハイパー円安になり、政策金利は40%になっていなければおかしいのですが、どうもケタが2つも3つも違うような気がするのです(笑)。

いずれにせよ、まともなマクロ経済学の知識もなしに、増税プロパガンダを垂れ流す財務省、プロパガンダをそのまま受け売りにする日経新聞という「悪の巨頭」こそが、日本経済の癌ではないかと思える今日この頃なのです。

読者コメント一覧

  1. ketsuro8da より:

    官庁の中の官庁などと常に上から目線でうぬぼれている財務省は解体すべきです。日本国にはいりません。内閣府の一部局にすればよろしい。予算をさも偉そうに査定するなどの行為は韓国並みの見苦しさです。東大を出ただけの泊しかない能力不足の官僚の巣窟を一掃すれば行政改革にもなります。
    さてもう一つの問題点、朝日新聞はひっつける相手も見つからなくて・・・どうしましょうか。

  2. めがねのおやじ より:

    < 夕刊の配信ありがとうございます。
    < 『 EM諸国』って初耳でしたので、アルゼンチンやメキシコ、ブラジルなど南米勢やロシア、南アフリカが常連さんのようですが、低所得で外国からの信頼が低いわけですね。割と名前が通った国が多いのに内情はボロボロということに驚き。日本で良かった(笑)。
    < 『国の借金が1,000兆円を超え〜』はよく聞くフレーズ。私もホントかと信じかけたクチです。日経は提灯記事満載で、ある意味朝日新聞より悪質なプロパガンダ紙です。私は大手五紙で朝、毎の次に倒産期待が日経。財務省は増税ありきで今後も何をしてくるか分かりません。嘘情報の垂れ流しはお手の物、コチラのサイトで知らせて下さい。失礼します。

  3. 黄昏せんべい より:

    資金流出か
    お金がどんどん飛んで行くんやね
    お金がさっぱり入ってこんのやね

    コンドル は飛んでいく

    なんちって

  4. むるむる より:

    アルゼンチンの話題も上げての分かり易い説明ありがとうございます。
    あと何時ぞやに私にオーストラリアの経済、政治が中国に依存しすぎて末期状態と教えてくれた方ありがとうございました。と言うのもYouTubeで活躍しているカズヤ氏がオーストラリアの現状を現地動画で収め報道してくれたお陰でヤバさが想像以上に見て取れたのですが事前知識が無ければ混乱していたので助かりました。

    あと私ここ以外に他のブログも読んでいるんですがそちらで「プラザ合意以後、日本企業が海外で稼いだドルが円高で戻せず海外に留まりそれがアメリカの金融機関で運用されて膨大な額に膨れ上がってる」と紹介されていたのですがそれらを調査したデータとかソースとかって存在するのでしょうか?
    またそれらのお金は果たして日本に帰って来る事があるのでしょうか?(てかそれが起きる条件と起きた時の現象ってどうなるの?

    1. 団塊A より:

      日本企業が外国で稼いだお金を日本に送金せず外国の金融機関に預けたままの金額を集計していないみたいです。集計したとしても結果は発表されていないというか発表できないでしょ。

      そうでなくとも本当はGDP2位でありアメリカに次ぐ世界第2の経済大国と言われている日本(実際の支那GDPはドイツより小さい第4位)。こういう状況で、これ以上経済規模が大きいとバレたら、そうでなくとも超大国日本への集りが五月蝿いのが、とんでもないことになる。
      (アメリカはNO2を必ず潰にかかる。その標的にされるのを避けているんでしょうね)
      ….
      2011.3.11 no 大津波にやられ東北地方に大被害が発生した。その上 原発が爆破し日本が危機的状況となった。
      こういう日本の危機に、日本を救うべく日本の企業は外国へ保留していた莫大なドルを売りユーロを売って手に入れた「円」を日本へ送金している。←特アではあり得ない世界に類のない愛国企業ばかりですね

      1. 匿名 より:

        なるほど、集計できる金額を超え表に出すのも問題な領域になってしまったんですね。
        こんな世界の経済を左右する規模のお金が日本に戻って来る時なんて世界秩序の変化とかあまり良い状況ではない事は想像に難しくないので複雑な気分ですね。
        返信ありがとうございました。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の全文引用はお控えください!発見次第、削除します。

コメントに際しては当ウェブサイトのポリシーのページなどの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。