【昼刊】産経が韓国に対するセカンダリー・サンクションに言及

ゴールデンウィーク後半を前に、朝鮮半島情勢をめぐり、私が個人的に共感した記事を2つほど紹介しておきたいと思います。

産経とNBOの南北首脳会談批判

やっとでてきた、南北首脳会談批判論

4月27日の南北首脳会談から2日後の4月29日、当ウェブサイトでは『韓国も経済制裁の対象にすべき』という記事を掲載しました。簡単に申し上げれば、米国が合理的に判断するなら、韓国が経済制裁の対象になる、という指摘です。

南北会談後に発表された13項目の「板門店宣言」には、日米両国が求めている核のCVID(※)、拉致問題の解決のいずれも含まれておらず、それどころか韓国が北朝鮮に経済援助を与えると受け止められかねない内容も含まれているためです。

(※CVIDとは、「完全、検証可能、不可逆的な方法による廃棄(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)」の略)

私が4月29日に『韓国も経済制裁の対象にすべき』を公表して以来、大手メディアのウェブサイトなどを眺めていたのですが、どうも北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)のイメージが向上しただの、南北融和ムードが広がっただの、そういった本質から外れた議論ばかりが目につきます。

こうしたなか、ようやく私自身の持論と似たような主張を、本日付の産経ニュースに発見しました。

【久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ】/見せ物だった南北首脳会談 「韓国は米制裁の対象に」と米専門家指摘(2018.5.2 01:00付 産経ニュースより)

記事を執筆したのは産経新聞の久保田るり子記者であり、米ジョージ・ワシントン大のヤン・C・キム名誉教授に対してインタビューを行ったものです。久保田氏によるとキム名誉教授は「歴代米政権の対北政策に関わり韓国政治にも詳しい」という経歴の持ち主だそうです。

そのキム名誉教授は4月27日の南北首脳会談について、手厳しく、次のように批判します。

南北合作に基づいた世界の見せ物、宣伝であり、とうてい受け入れ難いと米政府は判断するだろう

韓国が「セカンダリー制裁」の対象に

キム名誉教授は、こうきっぱりと断言したうえで、韓国に対しても次のように警告を加えます。

米政府は人道問題を除くすべての支援は国連制裁決議違反との立場だ。最大限の圧力を継続している米政策を無視し韓国が北朝鮮支援を行えば、米国は韓国にセカンダリー・サンクション(第2次制裁)を課すだろう

韓国の文在寅政権は南北首脳会談を米朝に向けの「橋渡し」と位置づけたが、韓国は北朝鮮の平和攻勢に手を貸した共演者とみなされるだろう

これは非常に僭越ながら、私自身の主張した内容とほぼ同一です。より厳密にいえば、日米両国が北朝鮮の核のCVIDと拉致問題の解決で連携しているところ、韓国が日米両国を裏切り、日米両国の「最大限の圧力」を無効化しようとしている、という状況だともいえるでしょう。

ただ、私の中で興味を感じたくだりは、ほかにもあります。それは、

米朝首脳会談で、金正恩がCVIDを「実行する」と言明するだろう

という指摘です。キム名誉教授によれば、金正恩にとっては「対米交渉を決裂させないことが最優先」であり、「米国のCVID要求をいったん受け入れて時間稼ぎを行うと米政府はみている」というのです。いわば、時間稼ぎをすることで米国内で軍事行使の機運が低下することを狙っているというわけです。

さらに、キム名誉教授は、米国・トランプ政権側にも、米朝首脳会談における成果を望む事情があると指摘します。それは、ロシア・スキャンダル(ロシアによる米大統領選干渉疑惑、あるいはアメリカ版の「もりかけ」問題)や今年の中間選挙などです。

このように考えていくならば、『【速報】トランプ氏「3~4週間後に米朝首脳会談」の意味』でも触れたとおり、米朝首脳会談自体は開かれるのかもしれません。

「民族の祭典に酔いしれた」と手厳しい批判

一方、わが国の「コリア・ウォッチャー」としては第一人者であるこの方の論説についても、読まないわけにはいかないでしょう。

「民族の祭典」に酔いしれた韓国人/南北首脳会談の批判は許されなかった韓国メディア(2018/05/02付 日経ビジネスオンラインより)

日本経済新聞社の鈴置高史編集委員が日経ビジネスオンライン(NBO)に本日掲載した論説が、相変わらず秀逸です。タイトルで内容がわかるとおり、韓国メディアが文在寅(ぶん・ざいいん)政権に対する批判を自主規制している、というのです。これが今話題の「忖度(そんたく)」でしょうか?

鈴置説の優れているのは、韓国メディアの南北首脳会談に関する報道を、左派系のハンギョレ新聞から保守系の朝鮮日報、東亜日報などと並べ立てたうえで、韓国の保守系メディアが「奇妙な弱腰」を見せていると指摘。

その理由として、文在寅政権が朝鮮日報系の「TV朝鮮の放送免許取り消し」をチラつかせ、朝鮮日報などに脅しをかけているという点を指摘しています。どうして文在寅政権はそこまでして批判を封じ込めたいのでしょうか?これについて鈴置氏は

首脳会談はすぐに透けて見える薄っぺらい台本を基に演じていますので、誰かが「猿芝居ではないか!」と叫んだらお終いなのです。ただ、国民の中にも「猿芝居とは思いたくない人」がいるのも事実です。

と指摘。そのうえで、

政権を批判するメディアを失った韓国という国は、どんどん北朝鮮側に寄って行くことでしょう。

と不気味な予言をしているのです。

野党議員が国民の敵

ところが、朝鮮半島情勢が風雲急を告げているというのに、翻って国内を眺めてみると、実に心もとない限りです。野党の中では日本維新の会がきちんと審議に応じていますが、立憲民主党を中心とする野党6党は、「もりかけ・セクハラ・日報問題」などを理由に、国会での審議拒否を続けているからです。

ちなみに日経調査では64%の人が野党の審議拒否を「不適切」と回答しています。

野党の審議拒否「不適切」64% 内閣不支持、最高迫る/本社世論調査(2018/4/29 21:00付 日本経済新聞電子版より)

私は、審議拒否を行っている野党6党のうち、立憲民主党、民進党、希望の党、自由党、社会民主党の5野党の議員に対しては、「きちんと国会議員としての職責を果たしている」のかどうか、じっくりと考えなおすことを、強くお勧めしたいと思います。

(※もっとも、私は「日本共産党非合法化論者」なので、そもそも日本共産党の議員には更生を求めるつもりはありません。審議拒否でもなんでもやれば良いと思います。)

野党がこういう状況だと、与党も腐って来ます。私が最も恐れるのは、自民党と社会党が馴れ合う1980年代の政治の再来であり、それだけは防がねばなりません。その意味でも、私たち日本国民こそ、選挙のたびに賢くならなければならないことは間違いないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

     < 昼刊の配信ありがとうございます。産経がとうとう、日本人なら茶番劇だと不審に思う「板門店会談」について、インタビューで「セカンダリーサンクション」まで話を俎上に上げましたか。
     < ヤン・C・キム教授は京城生まれの米国籍。生粋の韓国系ですな。どうしても米国の韓国ウオッチャーは朝鮮韓国系の人ばかりになるので(白人系は聞いた事がない)、『基本的な考え方、発言、行動は本当にニュートラルか?』『韓国の利益にウエイトを置いてないか?』『内心は左傾ではないか?』と疑ってしまいます。悪いクセです、誤ります。
     < 南北会談について氏曰く、『世界の見世物、宣伝であり、到底米国は受け入れられないと判断する』と発言。また『韓国が北朝鮮に支援すれば、セカンダリー・サンクションを行なう』とも。米国側から南北会談に関するコメントは、これまで表面的な賛辞ばかりでしたが、ようやくホンネが聞けたように思います。
     < また米朝会談で金正恩が『CVIDを実行すると言っても、時間稼ぎに過ぎない』というのは、そこまでハッキリ言われると我々日本としても、「限定的な空爆やむなし」と感じます。当事国(韓国)の報道はほっときましょ。浮かれてるんだから。疑問を提議したくてもできない世論。これも身から出た錆、どうとでもしてくださいな。目端の利く金持ちなら、そろそろ逃げ出すのではないかな。日本に来るな!
     < ありがとうございました。

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