「朝日新聞対財務省」は記者クラブ制度を破壊する?

私は以前、『「報道の自由度72位」は日本社会健全化の証拠』という記事で、「記者クラブ制度」を批判したことがあります。ここ数日のマス・メディアによる暴走と官僚への攻撃は、この「記者クラブ制度」が崩壊するきっかけになるように思えてなりません。

2018/04/20 08:07付 追記

当初この記事を公表するのは本日の午前9時を予定していましたが、公表予定日時の設定を誤り、「昨日の午前9時付」で公表されてしまっていました。このため、記事公表時点を「2018/04/20 08:00」に修正します(ただし、いったん公表してしまった記事を非公開にするつもりはありませんのでご安心ください)。

好き嫌いで報道を歪める人たち

韓国メディアの歪んだレンズ

私の「愛読サイト」(?)の1つである、韓国メディア『中央日報』の日本語版に、安倍晋三総理大臣の訪米については「手ぶらにこぶ」だったとする記事が掲載されています。

韓国メディア「日米首脳会談で安倍首相は“手ぶらにこぶ”」(2018年04月19日15時20分付 中央日報日本語版より)

「手ぶらにこぶ」とは耳慣れない表現ですが、中央日報が言いたいことは、「安倍総理がせっかく訪米したのに、何も成果がなかった(手ぶら)どころか、日米間の確執(こぶ)が目立つ結果となった」、つまり「逆効果だった」、という主張です。

たとえば、『朝鮮日報』は「2度の会談と『ゴルフ会合』にも、トランプ大統領に対する安倍首相の片思いは受け入れられなかった格好」、『ニューシス』は「日米首脳会談で、安倍首相は事実上『成果なし』のまま帰国することになった」、『東亜日報』は、「トランプ氏はこれまで、貿易不均衡問題に関する限り、日本に対する批判を続きてきた。鉄鋼とアルミニウム製品の輸入制限措置では、日本は同盟国であるにもかかわらず対象から除外しなかった」、といった具合です。

随分と手ひどい書かれ方です。

ちなみに「貿易戦争」という観点からは、事実上、「TPPイレブン」の盟主となった日本は、米国に対して強い発言力を有しています。その一方で韓国といえば、米国の圧力に屈し、これまで常態化させていた為替操作の内訳を公表させられることとなるなど、「窮地」に陥っています。

これのいったいどこが「こぶ」なのでしょうか?意味が分かりません。

また、日本は米国との間で、北朝鮮に対して「拉致問題の解決」と「完全、検証可能、そして不可逆的な方法による核・ミサイルの廃棄」を求めることで一致しました。これは極めて大きな成果です。いや、成果があまりにも大きすぎるため、韓国メディアには見えていないのかもしれません(笑)

あるいは、「日本憎し」のあまり、日本を見るときの「レンズ」が歪みまくっているのかもしれませんね。それにしても、揃いも揃って、よくこうも似たような論調が出てくるものです。

「とにかく安倍が嫌い」

ただ、私がなぜわざわざこの韓国メディアの報道を取り上げたのかといえば、マス・メディア産業に限定していえば、日本のマス・メディアも韓国のマス・メディアとメンタリティがそっくりだからです。それは、「各社横並びで見当違いな記事を配信する」という、非常に困った性質です。

いや、日本の場合は、最近、「アベ嫌い」が高じて、マス・メディア自身が倒閣運動にのめり込んでいる状況にあります。

日本のマス・メディアは朝日新聞が中心となって、昨年2月頃から、「もりかけキャンペーン」による安倍政権の倒閣運動を続けて来ました。このキャンペーンは、昨年7月に最初のピークを迎えます。7月初旬に行われた東京都議選で、自民党が惨敗するとともに、内閣支持率が軒並み急落したからです。

その意味で、マス・メディアによる「安倍政権を吹き飛ばす努力」が実りかけたようにも見えました。ただ、安倍政権は8月に内閣改造を実施。9月には衆議院の解散風を吹かし始め、いざ、解散が決まった途端、吹き飛んだのは野党・民進党の方だったというオチがついたのです。

結局、10月の衆院選では自民党が現有勢力をほぼ維持。マス・メディアによる倒閣運動は、いったん、失敗に終わった格好となりました。

しかし、野党は選挙結果にもめげずに、選挙前とまったく同じ「もりかけキャンペーン」を引きずり、今年3月に入り、今度は朝日新聞が財務省による公文書偽造事件をスクープ報道。ここからマス・メディアと野党の連合軍が盛り返し始めます。

財務省公文書偽造事件は3月27日の佐川宣寿(さがわ・のぶひさ)前国税庁長官の国会証人喚問により収束したものの、今度は4月に入り、「加計学園メモ」、「防衛省日報問題」、そして昨日当ウェブサイトでも詳報した「財務省事務次官セクハラ問題」と、政権攻撃のネタは延々と続いています。

役人の不祥事が続く理由は腐敗体質

ただ、ここで少し不自然に感じるのは、よくぞここまでネタが続くものだという点です。

たしかに、マス・メディアによる政権攻撃が常軌を逸していることは事実ですが、かつてのマス・メディアならば、内閣の1つや2つ、吹き飛ばしていても不思議ではない「スキャンダル」が、こうも続々と出てくるのには、何らかの理由を感じずにはいられないのです。

その「理由」とは、ずばり、役人の腐敗体質ではないでしょうか?

たとえば、財務省は「官庁中の官庁」として、歳入、歳出を両方ガッチリ押さえ、霞ヶ関に君臨してきました。そして、財務省は霞ヶ関、さらには時の政権を支配するほどの権勢を誇るだけでなく、マス・メディアに対しても隠然たる影響力を誇っています。

ここまでの絶対権力を持っている組織が、腐敗しないはずなどありません。

私は、「セクハラ疑惑」が報道された福田淳一・財務省事務次官に対する個人攻撃を行うつもりはありません。しかし、前世紀には、財務省の前身・大蔵省が、いかがわしい店での接待で批判された事件も発生しています。

「日本は今すぐ財政再建しなければ財政破綻する」といったウソを世間に平気でばら撒く一方で、官僚の天下り先はしっかり温存する――。こういう矛盾した行為を行って平気でいられる面の皮の厚さは、まさに財務省が根っこから腐っている証拠ではないでしょうか?

そういえば、朝日新聞やその他のマス・メディアが報じている不祥事は、「森友学園国有地売却に絡む公文書偽造事件」にしろ、「財務次官のセクハラ事件」にしろ、いずれも政治家ではなく、財務省の官僚・役職員に絡むものばかりです。

記者クラブは官僚に飼い馴らされている

では、どうして新聞記者は官僚・役人の不祥事をあまり報じて来なかったのでしょうか?その最大の理由は、「記者クラブ」という制度にあると考えられます

これは要するに、新聞・テレビなどのマス・メディアの記者が加盟する、一種の「独占組織」のようなものであり、この組織に加盟していれば、勝手に役所から情報が配られるため、マス・メディアの記者らはその報道発表をそのまま記事に仕立てることができます。

これを官僚の側から見れば、マス・メディアの記者らが自分たちの流した情報をそのまま鵜呑みにしてくれるので、非常に便利です。つまり、記者クラブとは、官僚が新聞・テレビの記者を飼い馴らす仕組み、というわけです。

逆に、官僚・役所を怒らせてしまい、記者クラブから追放されてしまうと、記事が書けなくなってしまいます。このため、マス・メディアの記者らは、絶対に官僚・役所を怒らせないようにしなければなりません。これが、財務省を初めとする官庁の決定的な不祥事が報じられてこなかった理由でしょう。

私が考える「最近になって官僚・役人の不祥事が急に報じられ始めた理由」とは、どうやっても安倍政権を倒すことができないマス・メディアが焦りを感じ、その結果、この「禁断の官僚の不祥事」にまで手を伸ばし始めたためです。そう考えれば、ものごとが非常にすっきりと説明できます。

ただし、官僚としては「飼い犬に手を噛まれた」格好です。きっと財務省あたりは朝日新聞社を含めた朝日グループに何らかの制裁を発動するのではないでしょうか?これこそが、私が以前から申し上げている、「国民の敵同士が潰し合う状況」です。是非、大いにやってもらいたいと思います。

RSFレポートのアップデート中

ところで、「記者クラブ」といえば、忘れてはならないのが「報道の自由度ランキング」です。

私は一昨年11月、当ウェブサイトに『「報道の自由度72位」は日本社会健全化の証拠』という記事を掲載しました。これは、フランスに本部を置く組織「国境なき記者団」が公表する「報道の自由度ランキング」において、どうして日本が72位という異常に低い順位に甘んじているか、考察したものです。

ちなみに72位という順位は2016年のものであり、最新版(2017年)においても、72位という低い地位を維持しています。ただ、順位が低い理由の1つには、やはり、「記者クラブ制度」という問題があるようです。

今回の「朝日新聞グループ対財務省」という戦いのなかで、結果的に記者クラブ制度が崩壊するならば、マス・メディアによる情報の独占体制がさらに崩れ、日本国民の知る権利が促進されるとともに、マス・メディア崩壊にもつながる、またとないチャンスとなるかもしれません。

そこで、このRSFのレポートを手掛かりに、近日中に日本のマス・メディアの闇について、最新状況をアップデートしたいと考えています。どうかご期待ください。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < うわ、ありがとうございます。第4弾ですね。
    < 国境なき記者団ってよく駅前でビラ配りやら横断幕を張ってる国境なき医師団みたいなもんでしょうか(笑)。仏本部か。日本72位か。100位以下は露、中、イラク、イラン、北朝鮮等で納得ですが、やはりサヨってる団でしょうね。難民を多く受け入れるから自由だって、簡単に決めるなよ。ドイツ見てごらん、白人系が居なくなるよ。
    < 報道の自由度が低いとは、ナニを物差しにしてるのか?国の中枢部の事を、自称ジャーナリスト風情に自由に話したり閲覧させる方がおかしい。それは酋長さんの率いる族です。欧州には一匹狼で通信社と契約している自称記者が多いです。良く言えばフリーランス。悪く言えばトップ屋(古う)。
    < 多分、得体の知れない、昨年迄は傭兵してたかも知れない記者モドキもいるだろう。日本や米国、英国あたりは彼らの入国をチェックしている。日本は少し甘いが、それでも白人、黒人、ヒスパニック、東洋人は悪さもしにくい環境です。『顔』『ガタイ』が違うから。国籍わかりにくいのは、韓国人、北朝鮮人、大部分の中国人、台湾人ぐらい。今年も更にランク落ちそうですね。
    < 記者クラブは各県警、県庁、政令市等にありますが、おっしゃる通りメディアは首輪で繋がれてます。都合の悪い事書くな、或いは地元紙に先にリークする、地方人が格調高いと思ってる朝日新聞(当然過去の話)にも伝える。中央ならもっと露骨に旧式情報社の互助会です。
    ここに入ってなければソースが得られない。今の世の中に不要、癌化してます。記者クラブも官庁広報課も今のままなら要らない。両方とも潰れて結構。但し、聞きたい事、知りたい事、その他、自由に市民が閲覧なり観れるようになればいい。内容の良し悪しは、視聴者が判断する。ま、まだ時期尚早ですね。
    < 失礼します。

  2. もう生理的にムリ より:

    日本の報道自由度の低さは既に各所で指摘されている様に、
    ・記者クラブ制度(閉鎖的体質と政府発表の垂れ流しによる検証性の無さ)
    ・採点が各国の記者からの申告も基づく(日頃あれだけ好き勝手しながら政府の監視だ統制だと言ってるアサヒや毎日の記者が申告しているので無条件に日本は悪い評価になる)
    らしいですよ
    上段の理由はある意味納得のいくものであり、中央省庁の庁舎内にでかいスペース貰って偉そうにしている記者どもを見ましたが、正直何様だと思うほどでかい態度で呆れました
    ちなみにこいつ等への便宜の全ては税金で賄っています
    明らかに私企業への便宜供与ですが、本文ご指摘の様に官庁側にもメリットがあるので、役人は人の金=税金なので腹は傷みませんし、マスゴミは自分の事なので絶対に騒ぎません
    結果としてこの前近代的且つ有害な仕組みが存続しています
    そして笑えるのは下段理由の反日記者の自己申告です
    国境なき~の方は、私の知る限りそれなりに公正な組織の様ですが、情報源が腐っていれば何の意味もありません
    基本的にランキングなどは、明確な共通の1種類の数字での比較以外はあまり意味がない(GDPなど)ものですが、得てして各種統計で上位に来る日本がマスゴミ・人権関係だけで評価が異常に低くなるのは、国内外に巣食う日本を貶める事を人生の目標にしている人たちのせいでしょう
    実際、アサヒ(慰安婦)毎日(ワイワイ)日弁連(死刑)高木福島他(慰安婦)あげていけばキリがありませんが、全て自称リベラル又は人権派です
    纏めて日本から追い出すべきでしょうが、せめて今度の件でアサヒの醜悪さや害悪が少しでも周知される事を望みます

  3. ヒロ より:

    今回の朝日の問題は日本のマスコミの根幹部分の問題が露呈した感があります。
    自分の足で情報を探さず、「官僚のリーク」に頼ってるからこんな個人的なお食事とかすることになる。
    仮に今回のセクハラ発言が本当だったとして、リークとはお互いに利益があるからすること。
    ギブアンドテイク。リークが欲しけりゃ、対価だせ、って言われただけ。

    いい記者はリークしたがっている人を見つけるのが上手い。そう、それが記事になればメリットがある人を。
    朝日は記者にろくな教育もせず、にもかかわらず、単に上層部と仲良くすれば情報がもらえる、その程度の考えで
    個人的な食事をすることを許した訳でしょ。

    足で情報を稼いで、ぐうの音が出ないような物証を示し、上層部から情報を引き出す、そういう記者を
    育成して欲しいですね。

    同じことが国会にも言えます。とにかく相手の失言を待つ。言葉尻を捉えて攻める。さらに失言を待つ。
    そして最後には自分が悪かったと認めさせる。・・・あれ、どこかで見た光景・・・。

    証人喚問するなら、相手がぐうの音も出ないような物証を出せ。疑惑が深まった、そんな無駄な喚問はやめてくれ。

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