違法民泊問題アップデート:「日韓観光統計後編」に代えて
私は先月、『2017年の日韓観光統計を読む(前編)』という記事を掲載してそれっきりになってしまっていました。ただ、最近、「民泊の問題点」を指摘する報道が相次いでいるため、本日は「後編」に代えて、再びこの「違法民泊問題」を取り上げたいと思います。
目次
民泊について再考する
違法民泊問題
「違法民泊問題」は、昔から当ウェブサイトで積極的に取り上げて来ました。とくに、私自身が居住する新宿区内のマンションでも、管理組合の規約上、民泊としての利用が禁止されているにも関わらず、民泊としての利用者が後を絶たない状況でもあるため、この問題はきわめて身近に感じているのです。
民泊の定義や法的問題点などについては、昨年3月頃に相次いで掲載した『民泊を巡る議論の整理』や『違法民泊の実態調査』などで取りまとめているので、ぜひ、ご参照ください。また、昨年7月には『違法民泊問題と観光客の急増』のなかで、この背景に観光客の急増という問題があると指摘したところです。
こうした中、ついにこんな事件が発生してしまいました。
【民泊女性不明事件】/服を着ていない胴体、両腕、両足…切断遺体、相次いで発見 大阪・島本町、京都・山科区の山中計3カ所で(2018.2.26 10:00付 産経ニュースより)
兵庫県三田市の20代の女性が、どうも民泊を利用して監禁されるという犯罪被害に遭っていた可能性があるのです。もちろん、この事件は現時点でも捜査中であり、容疑者についてあれこれ詮索することは控えたいと思いますが、私はこの事件に「民泊」の本質を見る気がします。
民泊とは?
「民泊」とは、一般に旅館業法上の免許を得ていない宿泊施設のことをさし、その多くは違法営業物件です。この「旅館業法」という法律を巡っては、「いちいち当局の許可を受けなければ営業できない」という意味で、「とても時代遅れである」という批判が渦巻いていることは事実です。
とくに、一部のメディアや識者は、「さっさと民泊を解禁すべきだ」、「厳しすぎる規制を緩和すべきだ」などと主張していますが、それらの議論の中には、説得力があるものも含まれており、たしかに「そのとおりだ」、と思えるようなものもあります。
たしかに安倍政権が掲げる「2020年までに4000万人のインバウンド観光客」という目標に照らせば、ホテルが不足するのではないかとの懸念があることは間違いありません。そして、使われていない民間物件を弾力的にホテル流用できる制度的な枠組みがあっても良いことは事実でしょう。
しかし、「現在の規制が厳しすぎるから緩和すべきだ」という議論と、「現在の規制が厳しすぎるから破っても良い」という議論は、まったくの別物です。日本が法治国家であって、現在、「旅館業法」という法律が存在する以上、その法律を無視して良い、ということにはなりません。
非常に乱暴なりに、民泊についての長所と短所を私なりにまとめると、図表1のようになると思います。
図表1 民泊の長所と問題点
区分 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
長所 | 設備が簡単であること | 誰でも気軽に開業することができる |
宿泊料が安いこと | 利用者にとっては利用しやすいこと | |
需給調整がやりやすいこと | 普通のホテルと違い、新規参入・撤退が容易であること | |
短所 | 犯罪の温床となりかねないこと | 匿名性が高く、誘拐、人身売買、麻薬密売などに使いやすい |
騒音被害等周辺環境が悪化すること | マンションの場合、住民ではない不特定多数の人々が日常的に出入りすることになる |
(【出所】著者作成)
おもしろい民泊の体験談
一方、世の中には色々な人がいるもので、「違法民泊物件」に体当たりで宿泊した人物がいます。
「違法民泊」に独りで泊り続けた女子の想像を絶する経験/日本全国に広がる「闇の世界」(2017/12/19付 現代ビジネスより)
リンク先の記事を執筆したのは、「生活ジャーナリスト」と名乗る吉松こころ氏で、「昨年7月から12月にかけ、国内の違法民泊に60泊ほど泊った」という、「体当たりレポート」です。もっとも、記事の公表が2017年なので、「昨年」とは「2016年」のことでしょう。
この記事は、「単なる体験談」としては、それなりに興味深く読むことができます。部屋の鍵が郵便受けに無造作に投げ込まれているだけという部屋もあったり、ろくに掃除をしていなくてダニが湧いている部屋があったり、防災上、明らかに問題がある部屋があったりするようです。
もちろん、吉松氏が宿泊したホテルのうち、問題がある物件の割合がどのくらいだったのかはよくわかりませんが、すべての違法民泊物件がこの記事のような問題物件ばかりだとは思いません。しかし、もともとホテルではない、不特定多数の人が出入りする物件に泊まるなら、泊る方にしてもリスクが高すぎます。
実際、諸外国でも民泊に対しては推奨している国・都市もある一方で、私が調べたところ、ドイツの首都・ベルリンのように、むしろ民泊禁止に踏み切る都市もあるようです。
民泊の背景と入国者数
なぜ民泊が増えるのか?
ただし、民泊などの問題を考えるときには、法的な面だけではなく、「なぜ、それが増えているのか」という経済的な面についても考える必要があります。先月、『2017年の日韓観光統計を読む(前編)』という記事の中でも触れましたが、日本を訪れる外国人観光客が急増しているのは事実です(図表2)。
図表2 訪日外国人の国別推移(グラフ)
(【出所】日本政府観光局・統計データ(速報値)より著者作成)
2017年を通じた1年間で日本を訪れた外国人の人数は2869万人で、2016年(2404万人)と比べて、実に465万人も増えました。安倍政権が発足する前後からの訪日旅客数は、まさにうなぎ上りで増えているのです(図表3)。
図表3 訪日外国人の推移
年度 | 人数 | 前年比増減 |
---|---|---|
2017 | 28,690,932 | 4,651,232 |
2016 | 24,039,700 | 4,302,291 |
2015 | 19,737,409 | 6,323,942 |
2014 | 13,413,467 | 3,049,563 |
2013 | 10,363,904 | 2,005,799 |
2012 | 8,358,105 | 2,139,353 |
2011 | 6,218,752 | -2,392,423 |
2010 | 8,611,175 | 1,821,517 |
2009 | 6,789,658 | -1,561,177 |
2008 | 8,350,835 | 3,866 |
(【出所】日本政府観光局・統計データ(速報値)より著者作成)
前年比で大きく落ち込んでいるのは、2009年については金融危機、2011年については東日本大震災の影響でしょう。したがって、2010年と2012年の急増は単なるリバウンドであり、実際に民主党政権下で観光振興を行った成果と見るべきではありません。
しかし、2013年以降、前年比で数百万人レベルで増加しているのは、明らかに安倍政権が掲げる政策が一定の成果を収めつつある証拠です。もっとも、欧米からの観光客も増えているものの、中国、韓国、台湾、香港という「近場」からの入国者数が大きく伸びているというのが実情でしょう(図表4)。
図表4 入国者数増減・国別内訳(2012年と2016年を比較)
出身国 | 2012年 | 2016年 | 増減 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
中国 | 1,425,100 | 6,373,564 | 4,948,464 | 347.24% |
韓国 | 2,042,775 | 5,090,302 | 3,047,527 | 149.19% |
台湾 | 1,465,753 | 4,167,512 | 2,701,759 | 184.33% |
香港 | 481,665 | 1,839,193 | 1,357,528 | 281.84% |
米国 | 716,709 | 1,242,719 | 526,010 | 73.39% |
欧州 | 775,840 | 1,421,934 | 646,094 | 83.28% |
豪州 | 206,404 | 445,332 | 238,928 | 115.76% |
その他 | 1,243,859 | 3,459,144 | 2,215,285 | 178.10% |
総数 | 8,358,105 | 24,039,700 | 15,681,595 | 187.62% |
(【出所】日本政府観光局・統計データ(速報値)より著者作成。なお、「2017年速報値」では米欧などのデータが揃っていないので、やむを得ず2016年と2012年を比較している)
現時点で現時点で入手できる統計上、米国、欧州などの2017年12月末の数字がわからないので、上の図表4では、2016年と2012年の数値を比較しています。ただ、この4年間の増減を見ても、伸び率がダントツに大きい国が中国、次いで香港、台湾、韓国であることがよくわかると思います。
入国者数は偏る
これについて、もう少し実際の統計で確認してみましょう。入国統計上、中国人と韓国人だけで入国者全体の50%以上を占めていて、これに香港、台湾を加えれば、実に75%がこれら4ヵ国で占められている状況にあることがわかります(図表5)。
図表5 訪日客の出身国別構成(2017年)
出身国 | 人数 | 構成比 |
---|---|---|
中国 | 7,355,805 | 25.64% |
韓国 | 7,140,156 | 24.89% |
台湾 | 4,564,059 | 15.91% |
香港 | 2,231,499 | 7.78% |
その他 | 7,399,413 | 25.79% |
総数 | 28,690,932 | 100.00% |
(【出所】日本政府観光局・統計データ(速報値)より著者作成)
これらの人々が本当にすべて、純粋に観光需要で日本に来ていただいているならば、私も諸手を上げて歓迎したいところです。しかし、昨年を通じて3000万人近い人数が日本を訪問しているわりに、旅行収支が黒字になったのは2015年以降です(図表6)。
図表6 旅行収支暦年推移
(【図表】財務省『国際収支の推移』のうちサービス収支より著者作成)
このグラフに、出国日本人数と訪日外国人の差分を重ね合わせてみましょう(図表7)。
図表7 旅行収支暦年推移と入出国者数の差
(【図表】財務省『国際収支の推移』のうちサービス収支、法務省『出入国管理統計統計表』などより著者作成)
つまり、日本への入国者数が増えている割に、旅行収支の改善度合いはそれほど高くないというのが実情といえるかもしれません(ただし、2017年の日本人出国者数がまだ出ていないので、これについては「続編」を執筆しても良いかもしれません)。
「人数」を目的にするな!
ところで、以前から当ウェブサイトをご愛読いただいている方であれば、私が「訪日旅客数自体」を目標にする安倍政権の方針には、極めて批判的であることご存知だと思います。
もちろん、一般論として、世界中から多くの方々が観光客として日本を訪れ、日本の文化に触れ、日本を好きになって帰って行っていただくことは、長い目で見て日本の国益に資することです。これこそまさに「ソフト・パワー」だからです。
しかし、「貧乏な旅行者」が増えることは、日本経済にとって「良し悪し」です。冒頭に紹介した民泊問題もそうですが、外国人が急増したことで、結果的に日本の治安が悪化した、旅行収支の黒字は拡大しない、といった諸点を考えるならば、「人数自体」を政策目標にすることに、私は同意できないのです。
いずれにせよ、私は客観的な統計をベースに議論することに努めているのですが、本日の議論では一部、まだデータが出そろっていない部分もあるため、とくに最後の「旅行収支と入出国者数の関係」については、近いうちにフォロー・アップしたいと考えています。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
< 毎日の更新ありがとうございます。
< こういう話題は比較的ここのサイトを訪れている皆さんにあまり興味がないのか、コメント数が伸びませんね。まあ、全国的に見たら関西の、それも兵庫県三田市(さんだし)の娘さんのことなので、「遠いところ」というイメージがあるのかもしれません。犯人(被疑者)は米国国籍ですが、名前をみると多分生粋の西欧、米国白人社会の人ではなさそうです。
< 私が不審に思うのは、日本に来たのが今年1月、たった1か月でよくもまあ大阪府のマイナーな島本町、京都市の山科、奈良市と遺体を遺棄したものだと思います。また居住は大阪市東成区のマンション、遺体の一部が違法宿泊施設の同西成区、かなり近畿全体のルートに明るく、以前にも滞在、放浪していたのではないかと思います。
< こういう輩がいるから違法民泊は駄目、という気はないです。それよりも昨年2017年で約2869万人の訪日客、そのうち51%が中国人、韓国人というのが「やり過ぎ」「多過ぎ」と思う。それに台湾人、香港人(香港人といってもイザとなったら英国に逃げ込めるようにしているのだろう)を加えると75%を超えるとか。正直言って、中、韓が増えて欲しくない事実を述べます。私が2年前の3月に、富山県の黒部アルペンルートを旅行したのですが、途中有名な雪道(バス1台がやっと通れる幅だけ除雪して、両壁は高さ10mを超える雪壁になっている)を散策していると、一番最後の出口近くに大量の落書きがある。傘の先や、スマホの自撮り用の棒、あるいはカラーペン、油性マジックなどでいたずら書きされている。風景に全く合わない汚らしさ。
< 勿論国立公園内、そんな事は禁止ですし、警告文も立ってます。でも外国の方は、全くお構いなし。100%そんないたずらをしないのは日本人。いたずら文字で多いのは、ハングル、中国語(簡易体)。ずばり韓国人、大陸中国人がヨカラヌ事をするのです。係員の方、地元ボランティアの方は見かけたら注意しますが、観光バスが着く度にひと騒動、私もせっかく綺麗な雪道なのに、汚い文字を見て、ガッカリでした。日本人客の中には「ホント、マナー悪いよねー」「あいつら来るな!街で買い物しとけ!」という非難の声も上がってます。しかし地元は大切なお客様、声を荒げて注意する警備員、観光協会の方はいませんでした。
< 途中、麓の駅まで中国人団体と同じバスでしたが、喧しくて騒ぐわ子供は走り回るわ汚すわ、奇抜なおよそ日本人の服装とは異なるので目立つ事!辟易してホテルにチェックインしました。大都市ではショッピングに、地方へは観光にと国土が『蹂躙』されている気がします(笑)。昨年韓国人が最も多く訪れた都市が大阪とのこと。分かります。異様な多さです。京都駅周辺は白人系も含め、メチャクチャ多い。できるだけ近寄りたくない。
< それを政府は4000万人にしようと計画している。今でさえホテルは不足気味、ましてやリッチな方ばかりでなく、リュックかハードケース一つであまり金銭に余裕のない若者も多い。とすると、宿泊は違法民博になる。煩雑な届の必要な旅館業法は既得権の為にあるようなもんだし、でも最低限、不特定多数を連れ込むのは厳禁とし、最低限パスポートによる本名確認、どこから来て何処へ行くか、は管理者がチェックし、届け出るべきでしょう。でないとテロはないが『無宿人』『不逞人』で溢れます。政府はあまりに無策すぎませんか。それと『2020年 4000万人』は止めて欲しい。今で十分です。
< 失礼します。
この犯人、20日間あまりで10人近くの女性と会っていた、という報道もあってギョッとしました。
「日本の女はピカチュウって言っときゃヤレるぜ」に信憑性を与えてしまう事件が起きてしまって残念です。
中国人や韓国人を来なくするには安部首相が靖国神社に参拝するとか、竹島は日本領とか、慰安婦合意を守れとか、南京大虐殺は真っ赤な嘘とかのキャンペーンを大々的に行えばよく、必ず中韓は国が渡航を禁止するはずです。アパホテルの例もありましたが、中韓が来ないと分かれば他の外国諸国が大量に来日すると思います。まあ、無理な提案とは思いますが。
韓国は米国と同じで極端な学歴社会であり、就職先の大企業も少ないため絶望し、日本で就職して住み心地が良いので、日本人化して居着く人が多くなっています。この人達は在日とは別の種族で危険は少ないようです。
中国は周近平さんの皇帝化が進んでいますが、外貨流出を防ぐため外国(特に日本)への渡航制限を強化して来ると思います。外貨(特にドル)は周近平さんが口約束した援助に必要なので規制がしやすい旅行や送金等の些細な外貨流出を止めてくるはずです。