【速報】施政方針演説から外交を読む

本日は少し予定を変更し、安倍総理による施政方針演説について、「速報」的に、私なりに思うところを綴っておきたいと思います。

安倍総理の施政方針演説

昨日は通常国会が召集され、安倍晋三内閣総理大臣による施政方針演説が行われました。

その全文は、首相官邸のウェブサイトにアップロードされています。

ただ、安倍総理の「肝いり」の政策でもある、「働き方改革」や「人づくり革命」などの分野では、私として共感・賛同できる点は、残念ながらほとんどありません。そして、経済政策を巡っては、正直、期待外れも良いところです(ただし、文句だけなら誰にでも言えますが、きちんとした提言を行うのも社会人評論家の役割です。これについては、当ウェブサイトでも個別論点ごとに、追って触れていきたいと考えています)。

ただ、だからといって、私が安倍政権を支持していないという訳ではありません。いや、むしろ安倍政権には、「安倍政権でしかできないこと」をやってもらいたいと考えており、その意味で、私の関心はどうしても「外交・安全保障」と「憲法」の問題に集約されてしまうのです。

そこで、少し長くて恐縮ですが、施政方針演説の中で私が強く注目した部分を、できるだけ原文にそって抜粋し、これについて私なりの見解を加えておきましょう(ただし、小見出しを付けたのは引用者である私です)。

安倍総理のプライオリティ

欧州連合(EU)とのEPAと太平洋諸国とのTPPについて

先月、EUとの経済連携協定交渉が妥結しました。11ヵ国によるTPPについても閣僚間で大筋合意に達しました。早期の発効を目指します。引き続き、自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく21世紀型の経済秩序を世界へと広げてまいります。

まず、安倍総理は外交関係で最初にEUとのEPAと環太平洋パートナーシップ(TPP)の2点に触れました。このことは非常に象徴的です。

日本が自由貿易を最も重視しているという点が示されただけではありません。「自由で公正なルール」とは、おそらく「一帯一路構想」を進める中国を念頭に置いた発言でしょう。

中東との関係について

わが国は、長年、あらゆる中東の国々と良好な関係を築き、難民・人道支援、経済支援など、この地域の平和と安定に積極的な役割を果たしてきました。今後とも、中東和平の実現にできる限りの貢献をいたします。「積極的平和主義」の旗の下、これからも我が国は、国際社会と手を携え、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいります。

次に、わが国から地理的には遠く離れた、しかし地政学的には極めて重要な、中東との関係に言及しています。「中東和平の実現」という表現が出て来ますが、これは、暗に核兵器拡散を進めようとする北朝鮮への強い牽制でしょう。

わが国ではあまり意識されていませんが、中東(とくにイラン)と北朝鮮は、密接につながっています。安倍総理がEPA、TPPの次に中東に言及したことは、安倍総理の外交センスを感じさせます。

国防への備え

北朝鮮問題への対応について

平和と繁栄が、今、脅かされています。北朝鮮の核・ミサイル開発は、これまでにない重大かつ差し迫った脅威であり、わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後、最も厳しいと言っても過言ではありません。北朝鮮に、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で、核・ミサイル計画を放棄させる。そして、引き続き最重要課題である拉致問題を解決する。北朝鮮に政策を変えさせるため、いかなる挑発行動にも屈することなく、毅然とした外交を展開します。

3番目に言及した内容は、北朝鮮問題です。これは、安倍総理がおっしゃるとおり、わが国にとっては「これまでにない重大かつ差し迫った問題」ですが、それと同時に平和憲法の制約があるため、わが国が「北朝鮮に核・ミサイル計画を放棄させる」「最重要課題である拉致問題を解決する」という言葉は、空虚に響きます。

ただし、これは安倍総理の責任ではありません。憲法第9条第2項を含めた国防上の欠陥を、長年放置してきたのは、私たち国民の側だからです。

その意味で、この下りは、安倍総理から私たち日本国民に向けられているものと考えても良いかもしれません。

平和安全法制について

3年前、私たちは平和安全法制を成立させました。北朝鮮情勢が緊迫する中、自衛隊は初めて米艦艇と航空機の防護の任務に当たりました。互いに助け合うことのできる同盟は、その絆を(きずな)強くする。皆さん、日米同盟は、間違いなく、かつてないほど強固なものとなりました。

北朝鮮問題について述べた直後に安倍総理は、わが国の平和安全法制と防衛力について言及しています。この下りは、この直後に出てくる「防衛力の強化」と「日米同盟の抑止力」に係っていく部分でもあります。

防衛力の強化について

北朝鮮による挑発がエスカレートする中にあって、あらゆる事態に備え、強固な日米同盟の下、具体的行動を取っていく。日米の緊密な連携の下、高度の警戒態勢を維持し、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜いてまいります。安全保障政策において、根幹となるのは、自らが行う努力であります。厳しさを増す安全保障環境の現実を直視し、イージス・アショア、スタンド・オフ・ミサイルを導入するなど、わが国(の)防衛力を強化します。年末に向け、防衛大綱の見直しも進めてまいります。専守防衛は当然の大前提としながら、従来の延長線上ではなく国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めてまいります。

防衛力の強化を述べたこの下りについては、私としては、安倍総理の発言を全面的に支持したいと思います。とくに、イージス・アショアなどの具体的な防衛力に言及したことは、高く評価できる部分でしょう。

思えば、国会で堂々と「国防のためのミサイル」に言及できるようになったとは、時代も変わったものです。朝日新聞を筆頭とする反日メディアの力が衰えている証拠でもあるのかもしれません。

日米同盟の抑止力について

わが国の外交・安全保障の基軸は、これまでも、これからも日米同盟です。トランプ大統領とは、電話会談を含めて20回を超える首脳会談を行いました。個人的な信頼関係の下、世界の様々な課題に、共に、立ち向かってまいります。先月末、沖縄の米軍北部訓練場4000ヘクタールが、戦後、70年余りの時を経て、土地所有者の皆様の手元へ戻りました。本土復帰後最大の返還です。地位協定についても、初めて、環境と軍属に関する2つの補足協定を締結しました。これからも、日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄の方々の気持ちに寄り添い、基地負担の軽減に全力を尽くします。米軍機の飛行には、安全の確保が大前提であることは言うまでもありません。米国に対し、安全面に最大限配慮するとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう、引き続き、強く求めていきます。学校や住宅に囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の全面返還を1日も早く成し遂げなければなりません。最高裁判所の判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進めます。移設は、3つの基地機能のうち一つに限定するとともに、飛行経路が海上となることで安全性が格段に向上し、普天間では一万数千戸必要であった住宅防音がゼロとなります。安倍内閣は、米国との信頼関係の下、沖縄の基地負担軽減に一つひとつ結果を出してまいります。

日米同盟について述べた下りを読むと、やたらと沖縄県の基地問題について長く言及されています。これは、おそらく沖縄県に跋扈する、外国人を含めた「ノイジー・マイノリティ」の存在を強く意識したものでしょう。

とくに、沖縄県の反基地運動家は、沖縄の地元民ではなく、東京、大阪などの大都市圏から日本共産党の支持者、在日韓国人らが派遣されているのが実情です。安倍政権下で、その実態が少しずつ明らかになり、これらの反基地運動家が単なる日本共産党支持者や反日勢力であることが人々に知られることで、日本に巣食う反日勢力の根絶が図られることを強く期待したいと思います。

地球儀外交について

さて、これらの論点に続き、外交分野で最も重要な発言だと私が考える下りが、この次の部分です。

総理就任から5年。これまで、76ヵ国・地域を訪問し、600回の首脳会談を行い、世界の平和と繁栄に貢献するとともに、積極果敢に国益を追求してまいりました。これからも、地球儀を俯瞰(ふかん)する外交を一層積極的に展開いたします。自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携する。米国はもとより、欧州、ASEAN、豪州、インドといった諸国と手を携え、アジア、環太平洋地域から、インド洋に及ぶ、この地域の平和と繁栄を確固たるものとしてまいります。太平洋からインド洋に至る広大な海。古来この地域の人々は、広く自由な海を舞台に豊かさと繁栄を享受してきました。航行の自由、法の支配はその礎であります。この海を将来にわたって、全ての人に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす公共財としなければなりません。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推し進めます。

今回の演説の中で、私が一番重要だと考える下りは、じつは、この「地球儀外交」に関するものです。

ここに、安倍総理の外交観のすべてが詰まっていると私は感じます。

もちろん、安倍総理が念頭に置いているのは、中国が進める「一帯一路構想」でしょう。中国は「共産党一党独裁国家」という異常な国であり、その中国が、最終的にはユーラシア大陸、そして世界に影響力を及ぼそうとしている点については、私たち日本人としては忘れてはならない点です。

安倍総理は、2012年に再登板した際に、「自由と繁栄の弧」構想を掲げましたが、今回の演説を見るに、この構想は、まったく変わっていないことがよくわかりました。

改めて振り返ってみると、外交の冒頭で掲げた日欧EPA、TPPイレブンの論点は、いずれも「自由主義、民主主義、法治主義などの価値を共有する国同士の連携」という論点でもあります。

安倍総理には、引き続き「地球儀外交」について尽力してほしいと思います。

オマケ部分

以上までが、おそらく、安倍外交の方向性を示す重要な部分でしょう。

そして、ここから先については、安倍総理にとっては、一種の「付随部分」(あるいはオマケ)部分だと私は考えます。

日中関係について

まずは日中関係です。

この大きな方向性の下で、中国とも協力して、増大するアジアのインフラ需要に応えていきます。日本と中国は、地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ、切っても切れない関係にあります。大局的な観点から、安定的に友好関係を発展させることで、国際社会の期待に応えてまいります。本年は日中平和友好条約締結40周年という大きな節目に当たります。経済、文化、観光、スポーツ、あらゆるレベルで日中両国民の交流を飛躍的に強化します。早期に日中韓サミットを開催し、李克強首相を日本にお迎えします。そして、私が適切な時期に訪中し、習近平国家主席にもできるだけ早期に日本を訪問していただく。ハイレベルな往来を深めることで、日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります。

なるほど。

先ほど、安倍総理は「地球儀外交」の下りで、「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携する」と述べました。

中国については、明らかにこの「基本的価値を共有する国々」とは別に考えている、ということが、この配置を見るだけでも明らかです。

安倍総理の中国との関係論を見ると、ヒトコトで要約すれば、「仕方なしに付き合う」、というものです。

つまり中国は、わが国やその他、世界中の自由・民主主義国とは基本的価値を共有していないものの、わが国のすぐ近所にあるため、「切っても切れない関係にある」ということです。

また、「経済、文化、観光、スポーツ、あらゆるレベルで日中両国民の交流を飛躍的に強化します」とありますが、こうした「関係強化論」もどこか空虚に響きます。

ただし、外交とは「仲良くできる部分で仲良くする」という考え方が原則ですから、「中国の軍事的暴発リスクを抑えつつも、日本は中国と「戦略的な互恵関係」を目指す」という方向性は、基本的には正しいといえるでしょう。

日韓関係について、大幅なグレードダウン!

不謹慎を敢えて承知で申し上げるならば、私が個人的に、一番笑ったのはこの下りです。

韓国の文在寅大統領とは、これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新たな時代の協力関係を深化させてまいります。

日韓関係については、たったの1行!(笑)

私の記憶が定かなら、たしか日韓関係は、安倍政権の再登板直後から、少しずつグレードが下がって来ています。

2015年以降は、それまでの「基本的価値を共有している」という表現が欠落し、「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」(外務省の定義)に格下げされたのですが、今年はこの「戦略的利益の共有」という表現すら欠落したのです。

「これまでの両国間の国際約束」とは、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が慰安婦合意を反故にしようとしていることに対する強い牽制であり、「相互の信頼の積み重ねの上に」とは、言い換えれば、「韓国がこれ以上、信頼を裏切れば、わが国は未来志向での日韓関係すら深化させることはできない」と読むべきでしょう。

日露関係について

日露関係は、最も可能性を秘めた二国間関係です。昨年9月、国後島、択捉島で、初めて、航空機による元島民の皆様のお墓参りが実現しました。北方4島での共同経済活動、8項目の経済協力プランを更に前進させ、日露の結び付きを深めます。長門合意を1つひとつ着実に進めることで領土問題を解決し、日露平和条約を締結する。プーチン大統領との深い信頼関係の下に、北朝鮮問題をはじめ、国際社会の様々な課題について、協力する関係を築き上げていきます。中国、ロシアも含め、全会一致をもって、先月、北朝鮮に対する国連制裁措置を、前例のないレベルにまで高める、強力な国連安保理決議が採択されました。地域の平和と繁栄のために、近隣諸国との連携を一層強化してまいります。

さて、今回の「オマケ部分」のなかで、一番解釈が難しいのは、実は日露関係の部分です。

「最も可能性を秘めた二国間関係である」ということは、「日本にとって、現時点でもっとも未熟な二国間関係である」ということです。

私自身の理解によれば、日露関係とは、確かにマネージが難しい分野ではありますが、それと同時に、中国との関係を考える上で、絶対に疎かにできないものでもあります。

私は以前、『改めてロシアとの関係を考える』のなかで、「北方領土問題は時間が解決する(しかない)」と申し上げました。この見解自体は今でも全く変わっていませんが、その後、北方領土での共同経済活動などの動向もあるため、この論点についてはアップデートする価値がありそうです。

憲法改正は今年中?

以上、外交に関する部分を精読してみましたが、私としては非常に納得ができる限りです。

ただ、いくら外交努力をしたとしても、あの欠陥憲法を放置したままでは、根本からわが国の安全を担保することは難しいといえます。

そこで、私が安倍総理に最も期待している部分とは、憲法改正です。

多くの人の力を結集し、次の時代を切り拓く。あらゆる人にチャンスあふれる日本を、与野党の枠を超えて、皆さん、共に、作ろうではありませんか。50年、100年先の未来を見据えた国創りを行う。国のかたち、理想の姿を語るのは憲法です。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待しています。

私が安倍総理に最も期待しているのは、憲法改正に向けたリーダーシップを発揮することです。ただ、安倍総理が憲法改正の内容自体を決めるわけではありません。あくまでも憲法改正を議論する場は国会であり、それに承認を下すのは私たち国民です。

私自身の考えでは、わが国に必要な議論とは、現実的改憲論です(『改憲議論の前に:現実的改憲論の勧め』をご参照ください)。というのも、足を引っ張るだけの野党が衆参両院で無視できない勢力を占めている以上、改憲には公明党などの政党の協力が必要だからであり、公明党は憲法第9条第2項の撤廃に反対の立場にあるからです。

私は、まず1回、きちんと憲法を改正するということで、戦後70年以上に及ぶ旧弊を打破することが重要だと考えます。

1回でも改憲の発議を行えば、その後、憲法改正が当たり前になります。憲法としての理想の追求は、その後で良いから、まずは憲法第9条第2項を優先的に無効化して欲しいと考えています。

私は引続き、国会の議論を見守りたいと思います。

読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < 安倍総理大臣の施政方針演説は、私はほぼ思っていた通りでした。外交、国防、憲法改正については具体的な説明で良かったと思います。経済政策や働き方改革については、今年一年で何かできるかというと、大して期待していないというか、難事であろうと思ったからです。最初にEUとのEPAと、環太平洋諸国とのTPPについて発言。これはアジアの民主主義国、自由主義国の代表として、当然であると思います。中国の「一帯一路」構想という世界半分征服の邪念を念頭に置き、ハッキリ言ってそれを阻止するあるいは合同で動く事によって、中国の行動に楔を打ち込むものだと思います。中東は遠いですが、とても重要な関係で、日本は宗教問題についてはニュートラルであることから、中東和平に貢献できるという狙いもあります。
    < 国防については、まず北朝鮮の非核化の実現。これは特に米国とのラインで攻めて行きますが、中国やフラフラの韓国などの不確定要素もあり、しかし3月五輪パラ終了後にはサージカル・アタックを米国主力支援日本という形で敢行して欲しいものです。
    < 日中、日韓、日露関係についてはまた後日機会があれば記します(今までさんざん言ってますので今回はよいかと)。「憲法問題」については、世論も過半数以上が改憲論議を進めるに賛成となっており、安倍首相の発言も積極的になった感があります。今年中には憲法9条第2項を無効化して正式な軍事力の保持を明文化して欲しいです。
    < しかし、偏向朝日新聞は、今日の朝刊でもやらかしてました。1面トップがなんと『森友交渉 内部文書を開示(近畿財務局)』です。まだやるか?記者も編集方針も会社全体も狂ってますね。早く潰れろッ。
    < 失礼しました。

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