「邪神の像」と化す慰安婦像
本日2回目の更新です。1月6日に日本政府が「対韓制裁」を発動し、本日、長嶺大使が一時帰国しました。ただ、「釜山の慰安婦像」を巡っては、どうにも「落としどころ」が見えないのです。
目次
「韓国を滅ぼす邪神像」と化す慰安婦像
最近、1日に2回以上、ウェブサイトを更新しているような気がしますが、是非、本日執筆しておきたいテーマが、「慰安婦像の邪神像化」です。
長嶺駐韓大使、羽田空港に到着
長嶺安政駐韓大使は本日、一時帰国のために羽田空港に到着しました。大使と駐釜山総領事が揃って日本に一時帰国するのは異例です。
ただ、首相官邸発表によれば、今回の措置はあくまでも「大使の一時帰国」であり、「大使召還」ではありません。つまり、別に外交使節団そのものを引き上げてしまう、という話ではなく、今回の帰国措置も(現時点の予定では)せいぜい1週間程度です(もっとも、報道によれば、官邸筋は「一時帰国期間は韓国の対応次第で伸びるかもしれない」と述べているようです)。
しかし、こうした「中途半端な措置」であっても、日本の対韓外交が従来の「事なかれ外交」から脱却したこと自体は評価して良いでしょう。
「落としどころ」が見えない
それはさておき、詳しくは明日、触れる予定ですが、今回の騒動については「落としどころ」が見えません。
日本政府が求めているのは「釜山の慰安婦像の撤去」です。「ソウルの慰安婦像」については、今回の措置で撤去を求めている訳ではありません。ということは、ソウルの慰安婦像を放置していても、日本政府としては、とりあえず「矛を収める」ことになります。日本政府の要求事項としては、実に中途半端ですね。
ただ、その一方で、私が見ている限りでは、釜山の慰安婦像の撤去は相当に困難です。というのも、慰安婦像が設置されるまでは、次のような「混乱」があったためです。
- 12月28日:韓国・釜山市の日本領事館前の公道上に、地元の市民団体が慰安婦像を設置したものの、釜山東区庁は同日、これを強制排除し、撤去・押収した。ところが、慰安婦像撤去直後から、同庁には「業務がマヒするほどの抗議電話」が殺到した
- 12月29日:同庁ホームページには苦情の書き込みが相次ぎ、日夕方4時頃にはホームページがダウンするという騒ぎに発展した
- 12月30日:同庁は結局、押収したこの慰安婦像を市民団体側に返還し、さらには慰安婦像の設置そのものを許可する方針に転換した
法治主義国であるはずの韓国で、法律や「外交に関するウィーン条約(第22条第2項)」を無視して慰安婦像の設置が強行されたという経緯から考えると、韓国政府は市民団体の反発を抑え込むだけの力を持っていないと見るべきでしょう。
ということは、結局釜山の慰安婦像は撤去されないまま、長嶺大使は一週間程度で韓国に戻る可能性が高いと考えられます。どうもいまいちすっきりしませんね。
釜山の慰安婦像撤去はむしろ「リスク・シナリオ」
ただ、実は「釜山の慰安婦像の撤去」が実現してしまうと、それはそれで、日本にとっては「リスク・シナリオ」です。なぜなら、せっかく韓国と距離を置く絶好のチャンスが出て来たのに、慰安婦像問題が「解決」してしまうと、日韓関係両国は再び接近し、たとえば韓国との通貨スワップ協議も再開しなければならなくなるからです。
逆説的に言えば、慰安婦像が存在している限り、日韓関係の「くさび」として機能します。いわば、慰安婦像は「日韓関係を転覆させる邪神像」なのです。
ということは、結果的に日本から見て、慰安婦像は「日韓両国の距離を置くための女神像」のようなものでしょうか?(笑)
宣伝:『「日韓断交」を見据えた現状整理』
慰安婦問題が迷走する中で、日本大使が一時帰国するなど、日韓関係が混乱しています。ただ、現在の日韓関係は、年間700万人にも達する人的往来もあり、また、投資や貿易などで韓国と関わる日本企業も多いでしょう。ただ、こうした中だからこそ、現段階で日韓断交を議論することは有益です。そこで、明日は日韓関係の現状整理と「日韓断交」に向けた課題を考える「たたき台」を提示したいと思います。ご期待ください。
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