ガバナンスを欠くテレビ局

最近、新聞・テレビなどの「マス・メディア」やその関連産業の「不祥事」に注目が集まっています。背景にあるのは、マス・メディアがこれまで「独占競争」にアグラをかいてきた、という事情ではないかと思います。そこで、本日は電通を批判したインターネット上の記事を手掛かりに、メディアの問題点と収入源という観点から、「ガバナンスの問題」を問いかけたいと思います。

電通批判の「なぜ」?

電通(でんつう)、という会社があります。

これは「広告代理店」ですが、ただの広告代理店ではありません。事実上、日本のテレビ局を「支配」している会社です。

これについて、興味深い「週刊現代」の配信記事を見つけました。

日本を動かしてきた「電通」の正体~「過労死問題」は落日の始まりなのか(2016/11/08付 週刊現代より)

電通といえば、つい最近、過労により若い女性が自殺に追い込まれた事件を契機に、現在、社会的な批判にさらされています。これについては、一昔前であれば考えられなかった「事件」であるともいえます。なぜなら、電通は「日本のテレビ局すべて」を、事実上、「支配」しているからです。

リンク先の記事によれば、電通の元従業員で、現在はインターネット広告を手掛ける株式会社Lamir代表の藤沢涼氏が、次のように語ったということです。

「電通の不祥事は過去にも数々ありましたが、これほど大々的に報じられたことはありません。私の在職中にも痴漢事件を起こした社員がいましたが、報道では社名も実名も出ませんでした。同僚は、『これが電通の特権だ』と言っていました。/電通には政官界からナショナルクライアント幹部の子息などが入社していて、警視総監の子息もいた。各界のトップ層に網を張り、なにか起きた時に問題を封じることができる態勢ができていました。/しかし、今回はその抑えがきかない。行政もメディアもこぞって電通を攻撃し始めた事態に、幹部たちが戸惑っている様が目に浮かびます」

 

「たとえばクライアント企業の不祥事についてメディアが報じようとしているという情報を察知した際、これをもみ消しに動くということがありました。クライアントからは『口止め料』として追加の出稿をもらい、これをエサにしてメディアには記事の修正などをお願いするわけです。/実際、メディアに『今後半年の出稿を約束する』と言って、記事が差し替わったことがありました」

この意見は、あくまでも藤沢氏が週刊現代の取材に対して述べただけのものであり、事実であるのかどうかは良くわからない部分もあります(特に警視総監の子息が在籍している、など)。しかし、日本の在京民放テレビ局の多くは、売上高の8割程度を広告料収入に依存しており、視聴率を調べる「ビデオリサーチ」社も、電通が実質的に支配していることは事実でしょう。

つまり、

  • 広告料収入がテレビ局の売上高の8割程度を占めている
  • 広告料収入は視聴率等に応じて変動する
  • 視聴率を調べているのは電通の関連会社である

という状況を踏まえるならば、私が「テレビ局は事実上、電通に『支配』されている」と表現したことも、あながちピント外れではないはずです。

そして、メディアが一斉に「電通批判」を始めたことは、一つの興味深い現象の顕れではないでしょうか?

情報のすべてをマス・メディアが握っていた時代

メディアの経緯

私には一つの持論があります。

それは、「マス・メディア自体が一つの権力である」が、「インターネットの登場によりその権力が消滅しようとしている」、というものです。これはどういうことでしょうか?

例えば、日本が泥沼の日中戦争、大東亜戦争に巻き込まれていった1930年代といえば、人々が世の中で発生している情報を得る手段としては、新聞・雑誌かラジオ、あとは映画くらいしかありませんでした。そして、1964年の東京五輪を契機にテレビが爆発的に日本全国に普及すると、今度は「一般大衆に情報を伝達する手段」として、テレビが加わりました。

一方通行のメディア

しかし、これらのメディア(特に新聞、テレビ、ラジオ、雑誌)の特徴は、「情報伝達が一方通行である」、という点にあります。

今でこそ「地上波デジタル放送」が始まったことで、視聴者が番組内でリアルタイムに「世論調査」に応じる、などの「番組への参加」ができるようになっているようですが、一昔前であれば、それこそ「視聴者」「読者」が新聞・テレビなどの情報発信に参加するのは「至難の業」だったのです。

もちろん、新聞や雑誌には「読者の声」欄が設けられていることは事実ですし、テレビも「視聴者の意見」を伝えることはあります。しかし、「どのような意見を選別するか」という権利は、新聞社・テレビ局などの側にあります。そして、新聞社やテレビ局の側から見て「極論だ」と思われる意見を除外するのも、「編集権」の一環として認められています。

少数寡占メディアの問題

日本にはもう一つ、重大な問題があります。それは、「少数の資本が新聞社・テレビ局を支配している」、ということです。

例えば、「全国紙」と呼ばれる新聞は、日本経済新聞、読売新聞、慰安婦捏造新聞、毎日新聞、産経新聞の5紙です(ただし、これに中日新聞・東京新聞グループを含めて6紙とする考え方もあります)。そして、この5紙の系列グループが、それぞれテレビ局の「在京キー局」「在阪準キー局」を支配しています。さらに、テレビ局グループでは、NHKという、国民から十分な監視を受けていない組織が、「受信料」という名目の、事実上の「国民からの強制的に巻き上げられる血税」によって運営されています(図表)。

図表 少数寡占されるマス・メディア
グループ名新聞在京在阪
読売グループ読売新聞日本テレビ読売テレビ
慰安婦捏造グループ朝日新聞テレビ朝日朝日放送
毎日グループ毎日新聞TBS毎日放送
フジサンケイグループ産経新聞フジテレビ関西テレビ
日経グループ日本経済新聞、Financial Timesテレビ東京テレビ大阪
中日グループ中日新聞、東京新聞
NHKグループNHK総合、NHK教育NHK総合、NHK教育

このように考えていくと、日本で情報発信を担うグループは少なすぎます。つまり、日本国内で「意見の多様性」を確保するのは至難の業です。

意見の「押し付け」

そして、メディアが少数寡占状態となれば、必ず出てくるのが「意見の押し付け」という問題点です。

世の中の「情報」には、「客観的な事実」と「主観的な意見」の二種類が存在します。この両者は似て非なるものであり、本来であれば厳格に分けなければなりません。しかし、往々にして日本のメディアは、この両者を混同し、あたかも「絶対に正しい意見」が存在するかのように偏向報道を行ってきました。

文芸評論家の小川榮太郎氏が事務局長を務める「放送法遵守を求める視聴者の会」の調査によると、2013年の「特定秘密保護法」や2015年の「安全保障関連法案」の審議の際、TBSをはじめとする民間放送局の報道番組を調べたところ、明らかに片方の意見に関する報道時間が長いなどの問題があったことが判明しています。これについてTBS側は

弊社は、少数派を含めた多様な意見を紹介し、権力に行き過ぎがないかを チェックするという報道機関の使命を認識し、自律的に公平・公正な番組作りを行っております。放送法に違反しているとはまったく考えておりません。/今般、「放送法遵守を求める視聴者の会」が見解の相違を理由に弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦であり、看過できない行為であると言わざるを 得ません。/弊社は、今後も放送法を尊重し、国民の知る権利に応えるとともに、愛される番組作りに、一層努力を傾けて参ります。

と、明らかに回答になっていない回答を出したようですが、これで視聴者が納得するとは到底思えません。

インターネットの出現が世界を変える!

ただ、私が注目したいのは、TBSからの回答にある

「放送法遵守を求める視聴者の会」が見解の相違を理由に弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦

という下りです(ただし、「放送法遵守を求める視聴者の会」は、現時点で「スポンサーに圧力をかける」という記述を削除しているようです)。

これは、「テレビ局にとっては、偏向報道を問題視され、スポンサーに圧力を掛けられるのが困る」、「今まで通りテレビ局が好きなように番組を流すことを許してほしい」、という「ホンネ」を、TBS側がうっかり出してしまった格好です。

「検証される」ことが困る

今までのマス・メディア(特に新聞、テレビ)は、事実上、数社の「独占競争」のもとで、報道した内容は「垂れ流し」状態でした。私の目から見ると、「ウソでも何でも良いから、視聴率・部数が取れればそれで良い」といった番組・紙面づくりも行われているように見受けられますし、さらに酷いケースになると、番組・紙面の作成者が特定の政治的思想を持っているケースすらあります。

先ほど引用した、TBSが「放送法遵守を求める視聴者の会」に寄せた見解は、「テレビ局が放送した内容を検証するな」、「テレビ局の報道に納得がいかないからといってスポンサーに圧力を掛けるな」、と言っているのと同じことです。

ただ、インターネットが出現したことによって、こうした「情報垂れ流し」も変わろうとしています。先ほどの「放送法遵守を求める視聴者の会」の活動にもありますが、テレビ局の偏向報道ぶりが白日の下にさらされる機会が出現したからです。

インターネットを使って情報を収集し、分析して、それをインターネットに公表することで、人々が広くこれらの情報を共有することができる時代が到来してしまいました。そして、いったん進歩した技術は、元に戻ることはありません。

私たちは、TBSの番組を(あるいはNHKや慰安婦捏造新聞などの報道を)、ばしばし検証し、これに納得がいかなければ「新聞社・放送局の偏向報道」をネット上で容赦なく問題視していくべきなのです。

普通の会社は「監査」を、国は「調査」を受ける

そして、重要な点は、普通の会社であれば、株主や会社債権者などの「利害関係者」に対し、経営内容をきちんと「説明」しなければならない、という点です。これが「監査」です。普通の上場会社であれば、監査役(あるいは委員会設置会社の場合は「監査委員会」)が業務監査を担い、会計監査人(監査法人や公認会計士)が会計監査を担います。

あるいは、国であれば、政府の官僚らは求められればいつでも国会に対し、国政の説明をしなければなりませんし、国会議員は「国政調査権」を保持しています。そして、お金の使い方については会計検査院の検査を受けます。

しかし、マス・メディアは社会的な影響力が大きいにも関わらず、その報道について、これまできちんと「検証」を受けて来ませんでした。TBSの

「放送法遵守を求める視聴者の会」が見解の相違を理由に弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦

という見解は、まさに「説明責任の放棄」にほかならず、マス・メディアとしてだけでなく、会社組織としても極めて卑劣だと言わざるを得ません。

収入源を絶たれると組織は生きられない

冒頭に、「TBSなどの民放各社が電通に支配されている」という話を提示しましたが、これは、民放各社にとって電通などの大手広告代理店が「収入源」をもたらしてくれる、大事な存在だからです。

しかし、私もささやかながらインターネット・メディアを運営していますが、当ウェブサイトは電通に依存していませんし、新聞社やテレビ局から一切のお金をもらっていません。というわけで、私はこれらの組織のことを、遠慮なく批判することができます。

もう一つ、私はいくつかの企業の個人株主ですが、自分が株主となっている企業が電通を経由して広告を出稿していたとしたら、「電通のようなブラック企業に仕事を依頼していることはいかがなものか」、TBSの政治番組に広告を出稿していたら「反社会的な番組に広告料を出すとはいかがなものか」、と、株主の立場からそれぞれ物申すと思います。

つまり、電通が社会的批判にさらされていること、「放送法遵守を求める視聴者の会」のような組織が支持を集め始めていることは、いずれも、社会が良い方向に向かうための重要な変化であると見て良いでしょう。ようやく、民間テレビ局にも「規律」が導入されるきっかけとなれば良いのですが…。

NHK法の改正は焦眉の急

ただ、電通が支配しているのは、あくまでも民間テレビ局であって、NHKではありません。なぜなら、NHKは「受信料」という名目で、強制的に人々からお金を徴収しているからです。テレビを設置した人に、事実上、NHKの受信料を支払わないという「拒否権」はありません。

しかし、これは「選択の自由」を不当に制限しているものであり、到底、容認できるものではありません。幸い、地上波デジタル化により、スクランブル放送(受信料を払わない世帯に番組を配信しない措置)も技術的には可能であるはずです。

よって、テレビを設置した世帯に、「NHKと契約しない自由」を認めるべきでしょう。なぜなら、現在の体制だと、NHKがどんな低品質な番組を垂れ流したとしても、視聴者の側に、それを拒否する自由がないからです。

あるいは、NHKの受信料支払い義務を維持するのであれば、英国のように、5年に1回はNHKの存続・廃止を巡る国民投票を実施すべきです。

私もせっかく、社会に向けて情報を発信するウェブサイトを持ったのですから、新聞・テレビなどのマス・メディアによらない形での公正な意見発信を続けていきたいと思います。

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