信じられない「文在寅発言」の数々

本日は先週末の「時事ネタ」のうち、昨日は触れられなかった部分について補足しておきたいと思います。

米国を二重に怒らせた韓国

AIIBで米国を刺激する韓国

16日から18日にかけて韓国・済州島(さいしゅうとう)で中国が主導する国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の年次総会が行われました。このAIIBは2015年6月に署名が行われ、2016年1月に始動した組織です。米国は同盟国などに対し、AIIBに参加しないように求めていたにもかかわらず、韓国は米国を裏切る形で早々に参加を表明。「創設メンバー」としてAIIBに関わっており、栄えある第2回年次総会を主催した格好です。

韓国でAIIB総会開幕 「主要メンバーとして貢献する」文在寅大統領が強調(2017.6.16 19:39付 産経ニュースより)

もちろん、韓国が米国の意向に反してAIIBに参加したことは、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領の決定です。また、済州島でAIIB総会が開催されると決まっていたのも文氏が大統領に就任する以前の話です。その意味で、「韓国がAIIBに参加したこと、そのAIIB総会を韓国で開催したこと」自体に対する政治責任は、文氏にはありません。

しかし、産経ニュースによると、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領はAIIB年次総会開幕式で挨拶し、「韓国はAIIBの主要メンバーとして貢献する」と強調。文在寅政権下で韓国が米国を苛立たせるであろうことは、ある程度予想されていたとはいえ、これほどまでに早く文氏が「中国との関係が大事だ」と言い始めるとは、私も若干虚を突かれた気分です。

それだけではありません。何を思ったのか文氏はAIIB総会で、恐ろしい構想を口にしました。

ソウル「北と対話」 ワシントン「怒り」…韓米首脳会談前に隔たり(2017年06月17日10時19分付 中央日報日本語版より)

韓国メディア『中央日報』日本語版によると、文氏は

南北が鉄道でつながる時、新しい陸上・海上シルクロードの完全な完成となる

と発言したそうです。

これは非常に深刻な事態です。

北朝鮮に激怒する米国

韓国が米国の神経を逆なでしている要因は、それだけではありません。ここに来て、「ワームビア事件」が米韓関係にも影を投げかけています。「ワームビア事件」とは、北朝鮮当局により拘束されいてた米国人大学生が脳に重傷を負って帰国したという問題です。

北朝鮮から解放の米国人ワームビア氏、脳を著しく損傷 医師団が記者会見 ボツリヌス菌の痕跡「見当たらず」(2017.6.16 07:37付 産経ニュースより)

産経ニュースによると、昨年3月以来、北朝鮮当局によって拘束されていた米国人大学生のオットー・ワームビア君が解放され、14日に空路で米国に戻ったものの、ワームビア君は脳を著しく損傷し、「一切言葉を発さず、周囲の言葉にも反応せず、無反応覚醒の状態」にあります。これについて北朝鮮は米国政府に対し、「ボツリヌス菌に感染し、睡眠薬を服用したところ、昏睡状態に陥った」と説明したものの、診察した医師団によると、ワームビア君の体内からボツリヌス菌の痕跡は発見されず、皮膚の外傷・骨折などの形跡も見当たらなかったそうです。

これを受けて米国は政府、議会関係者、世論がともに激怒している状況にあります。

米国ではドナルド・トランプ大統領がコミー前FBI長官の解任を巡って、政治的に窮地に立たされています。国内での政治的な苦境を打破するために対外的な戦争に踏み切るのは米国の政権の常套手段ですが、私は、今回の「ワームビア事件」を受けて、ますますトランプ氏としては対外戦争に踏み切りやすくなったと考えています。

南北鉄道連結構想は米韓同盟の終焉を意味する

こうした中で、「同盟国」である韓国大統領が「南北鉄道連結」を言い出すのには、どういう意味があるのでしょうか?

米国は米韓同盟を維持するため、米軍を朝鮮半島に駐留させており、その巨額の駐留経費は毎年、貴重な米国民の血税から捻出されています。つまり、米国にとっては米韓同盟というコストを払い、韓国を北朝鮮という名の「狂犬」から守ってやっているのです。

しかし、その韓国は1992年に中国との国交を正常化して以来、米中双方に「尻尾を振っている」格好です。そして、外交の「対中シフト」は、特に朴槿恵政権以降、加速しています。米国から見てこの状態が不愉快であることは想像に難くありません。米韓同盟という「コスト」を一方的に負担させられているのに、韓国に対する影響力は中国と折半しなければならないからです。

そんな韓国に対し、米国は朴槿恵政権時代から「損切り」のタイミングをうかがっていたのではないでしょうか?こうした中で、「AIIB総会での南北鉄道連結構想への言及」は、米国が米韓同盟を「切る」ためには、絶妙な口実となり得ます。

文在寅大統領は大統領選挙期間中から、自身が大統領に就任すれば北朝鮮との関係改善に踏み出すと公言していました。そして、現実に大統領に就任後も、彼は「現実路線」に軌道修正するだけの賢さを持っている有している形跡は見えません。こうした中、有力メディアの一つである中央日報も、この期に及んで北朝鮮に対し「対話」を呼び掛ける社説を掲載しています。

【社説】北朝鮮、挑発を中断して対話の窓を開け=韓国(2017年06月17日11時51分付 中央日報日本語版より)

韓国は政治、メディア、国民がこぞって「北朝鮮との対話」を求めているのです。明らかに米韓で意識がずれていると見るべきでしょう。

G20と日本

安倍総理、北欧訪問の意味

週末の話題の中に、G20に関連して重要な情報があります。今年のG20会合は、ドイツで7月7日から8日にかけて開催されます。安倍総理にとってはイタリアの5月に行われたG7サミットに続き、再び欧州での国際会議となります。さて、こうした中で興味深い報道が入ってきました。

安倍晋三首相が北欧、エストニア訪問検討 7月のG20出席に合わせ(2017.6.17 23:10付 産経ニュースより)

産経ニュースによると、安倍総理は来月、G20出席に合わせて北欧を訪問するそうです。訪問先はデンマーク、フィンランド、スウェーデンの3ヵ国に加え、7月以降の欧州連合(EU)の議長国でもあるエストニアです。

本来であれば、安倍総理は今年4月にノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデンの4ヵ国を訪問するはずでしたが、北朝鮮情勢の緊迫化もあり、訪問を見送ったという経緯があります。今回はノルウェーを除く3ヵ国に加え、おそらく日本の現職首相として初めてエストニアを訪問することになります。

日本にとって北欧とは、地政学的には「ロシアを挟んだ隣国」という立場にあり、また、意外な話ですが、北欧は日本から「最も近い欧州」です。地球儀をお持ちの方ならわかると思いますが、日本の主要な航空路線で見ると、成田空港から直線距離で一番近いのはフィンランドの首都・ヘルシンキです。そして、北欧は自由民主主義・法治主義という観点から、日本と価値を共有し得る相手でもあります。

ただし、今回の訪問先にはノルウェーが含まれていないようです。しかし、ノルウェーはEU非加盟国ではあるものの、北極海に面した大国でもあります。是非、安倍総理には何らかの形でノルウェーをケアして頂きたいところです。

日米韓3ヵ国首脳会談の意味

また、G20会合に関連する報道として重要なものは、もう一つあります。

日本政府、来月のドイツG20会議での韓日米首脳会談で調整(2017年06月19日08時27分付 中央日報日本語版より)

中央日報日本語版によると、ドイツG20会合の席にあわせて、「日本政府が日米韓3ヵ国首脳会談を」推進している、ということです。

これには2つの非常に重要な意味があります。

1つは、「日本がトランプ政権・文在寅政権下で悪化する米韓同盟の間を取り持つ」という意味です。いわば、「表向きの意味」であり、日本が米韓両国に「恩を売る」という格好です。

しかし、「裏側の意味」として、もう1つ、極めて重要な意味があります。それは、韓国に対し「日米陣営に留まるのか、中国側に行くのか」を突きつける機会になる、ということです。もっといえば、「引導を渡す」ということです。

一瞬たりとも目が離せない!

以上、週末の動きを確認して来ましたが、朝鮮半島情勢は当面、一瞬たりとも目が離せない状況が続きそうです。米軍による北朝鮮攻撃の可能性はゼロではありませんが、あからさまな親北勢力である「文在寅政権」という要因が、朝鮮半島情勢を複雑にしているという側面があります。

ただ、私は、意外と早く転機が訪れると考えています。要するに米国が韓国を「切る」と決断すれば、そこから朝鮮半島新秩序の形成が始まるからです。余談ですが、日本が取らなければならない対応とは、韓国国民に対する「ビザなし渡航」を一刻も早くやめることではないかと思うのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 本日の追記です。

    米WSJ紙(電子版速報)によると、本文でも紹介した米国人学生のワームビア君が亡くなったそうです。

    Otto Warmbier, American Detainee Released by North Korea, Has Died
    https://www.wsj.com/amp/articles/otto-warmbier-american-detainee-released-by-north-korea-has-died-1497905282

    北朝鮮は、ただでさえ簡単に沸騰しかねない米国世論を敵に回してしまった格好です。

    ミサイルを開発している。
    米国人学生を殺害した。
    トランプは政治的苦境を脱したい。

    これだけ材料が揃ってしまうと、米朝開戦のリスクが再び高まったという状況にあります。

  2. 激辛大好き より:

    いつも参考にさせていただいております。
    私見ですが、アメリカは北朝鮮を攻撃することにためらいはないと思います。トランプは激怒して攻撃に踏み切る可能性は高いし、アメリカ国民も支持するとみます。ただ、側近の進言もあり、手順は踏むと思う。その第一に北朝鮮への警告と韓国ムンジェイン政権の対応を見るはずです。
    ムンジェイン大統領が訪米してTHAAD配備を決断しないなら、アメリカ軍属の本土や日本への引き上げ、それでもためらうなら、韓国からの米軍撤退を匂わしてくるでしょう。また米韓FTA廃棄、韓国製品の輸入制限などの絡み手も出してくるはず。韓国政府が北朝鮮への攻撃に与するかどうか見極めようとする。
    日本は憲法の絡みで北朝鮮への直接攻撃はできないが、アメリカ軍への後方支援はできる。国内左派からの非難は受けても、日本政府はアメリカに断固協力する。さらに、日韓の経済と漁業交渉再開のハードルを高くし、日本人の韓国渡航自粛をより強化する。これが韓国政府に対しアメリカへの協力を促すサインですし、強力なカードとなる。韓国が東北などの水産物を輸入制限していることを理由に、日本は韓国からの食品物を全面的に輸入禁止してもよいかと思う。これらは韓国には多くの負担になるが、日本にとりマイナス面は少ない。一方ビザ制限は年間600万を超す訪日韓国人に影響を与える。ビザ制限は朝鮮半島が混乱し、避難民が押し寄せることを考慮すると当然あり得るが、一番先に行うことではない。
    ともかくムンジェイン政権の価値判断はあやふやで、アメリカ側か北朝鮮側かどちらに転ぶか分かりませんね。

  3. めがねのおやじ より:

    毎日の更新ありがとうございます。最近の世界、特にアジアを中心とした目まぐるしいほどの動きに、壮大なスケールの物語を見ているような錯覚を覚えます。国内政治経済だけでもいろんな動きがあるのに、米中北南露らが絡み合って、世界地図の塗り替え、パワーバランスの変動を感じますが、何処で落ち着くのか、落としどころはどこか、見当がつきません。南鮮の米国に甘ったれた態度や北の核開発による気狂いに飛び道具、米国学生の拷問殺人、トランプ大統領の国内での苦境を総合すると、米国の危険箇所への先制集中攻撃は十分あるでしょう。日本、中国には事前通告しても南鮮にはナシ。本当は中国にもバラして欲しくないが、国境をまたいで大量の難民が殺到するので、仕方ありません。米韓首脳会談は無くなるのでは?ここまで離反した南鮮に、米国も譲歩してでも戻って来いとは言わない。

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