ブレないAPAホテルの正しい姿勢

出張族にはおなじみのビジネスホテルといえば「APAホテル」ですが、同ホテルに設置された、同社代表が執筆した書籍が中韓両国によって「問題」にされています。ただ、APAグループ側は、中韓からの「書籍撤去要求」を一蹴しました。私は『【追記あり】APAホテルを全面支持します』、『APAホテル巡る捏造記事を削除した中央日報』でも言及したとおり、同社のこうした姿勢については深く支持しているのですが、ここで最近の動きをまとめておきたいと思います。

「APAホテル騒動」中間考察

APA騒動の経緯まとめ

APAホテルといえば、私のような「出張族」「ビジネスマン」の味方です。そして、このホテルには、元谷外志雄グループ代表が執筆した「南京大虐殺」や「慰安婦問題」を否定する書籍が設置されている問題が、ここ数日、メディアを賑わせています。私は『【追記あり】APAホテルを全面支持します』、『APAホテル巡る捏造記事を削除した中央日報』でも言及したとおり、同社の姿勢については深く支持しているのですが、ここで最近の動きをまとめておきたいと思います。

  • もともと、APAホテルでグループ代表が執筆した書籍が全ての客室に備えられていた
  • 1月15日 中国の動画配信サイトでこの件が取り上げられた
  • 1月18日 中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で「日本国内の一部勢力は歴史を正視しようとしない。正しい歴史観を国民に教育し、実際の行動でアジアの隣国の信頼を得るよう促す」と述べて同社を批判
  • 1月18日 菅義偉(すが・よしひで)官房長官が中国の華春瑩報道官に対し「報道官の発言一つ一つに政府としてコメントすることは控えたい」「過去の不幸な歴史に過度な焦点を当てるのではなく、日中両国が国際社会共通の課題や未来志向に向けて取り組んでいる姿勢を示すことが重要だ」と反論
  • 1月24日 韓国「中央日報」が「右翼関係者らが開催したフォーラムに出席し、『客室から書籍を撤去することは考えておらず、中国人の予約も受けない』と述べた」と捏造報道(その後記事を削除)
  • 1月24日 中国国家旅遊局の張利忠報道官が「中国の観光客に対する公然とした挑発であり、旅行業の基本的なモラルに反する」として、中国人訪日客に対し同ホテルの利用を控えるように呼びかけ
  • 1月24日 APAグループ側が『中国国家旅遊局の記者会見に関する報道について』、『一部報道について』、『札幌市冬季アジア大会開催における対応について』とするニュース・リリースを相次いで公表

中国政府という「国家当局」が、APAグループという「一民間企業」に対して攻撃することも異例ですが、これに対して同社側が「問題の書籍」の撤去を拒絶しているというのも、従来の日本企業の「事なかれ主義」とは全く異なる姿勢であり、同様に異例です。

APAホテルの声明

では、APA側はどのような声明を出しているのでしょうか?その内容を確認してみましょう。

まず、『中国国家旅遊局の記者会見に関する報道について』、です。

この声明では、「中国国家旅遊局」による「ボイコット呼びかけ」について、「政府が一民間企業の活動を個別に批判することに対しては疑問を感じます」としつつも、「中国政府の政策に対してこちらがコメントする立場にはない」と反応。そのうえで、「本件によって書籍を撤去しない方針に変更はありません」と断言しています。

非常に常識的・明瞭かつ一貫した姿勢です。なにより私は、この同ホテルのこうした姿勢については尊重すべきだと考えます。もちろん、ホテルという「客商売」で政治的な主張を述べた書籍をホテル客室に設置するというのは、「偏った政治思想を押し付けるホテルだ」と批判されるリスクがあります。しかし、そもそも民間企業である同社が何をするのも自由であり、そうした批判を受けるのも、一種の「経営上のリスク」です。したがって、「本件によって書籍を撤去しない方針」は同社が「経営上のリスクをきちんととる」と宣言しているのと同じであり、「ボイコットを恐れて自らの主張を撤回する」という「事なかれ主義」と決別していること自体、私は同社が尊敬に値する組織だと考えています。

次に、『一部報道について』については、具体的には『APAホテル巡る捏造記事を削除した中央日報』で指摘した、中央日報日本語版の次の記事をさしているものと考えられます。

日本アパホテル会長「中国人の予約は受けない」(2017年01月24日08時32分付 中央日報日本語版より※リンク切れ)

中央日報日本語版は

右翼関係者らが開催したフォーラムに出席し、『客室から書籍を撤去することは考えておらず、中国人の予約も受けない』と述べた

と報じましたが、これに対し同社によれば、

  • 元谷代表の発言の趣旨は「公式HPがサイバー攻撃を受けてダウンしており、現在中国の旅行代理店が不買運動を実施しているため中国から予約ができなくなっている」というものである
  • 中国からの宿泊予約は歓迎しており、(代表は)「中国人の予約は受け付けない」とする発言はしていない

と一蹴。実際、中央日報日本語版がリンク先の記事を削除したことからも、APAグループ側の主張が正しいことは間違いないとみて良いでしょう。

「圧力受けて書籍を撤去」もウソか?

一方、札幌市で開催される「冬季アジア大会」では、APAホテルが大会組織委員会により、「選手村」に代替する宿泊先として指定されています。これについて、「捏造事件」を発生させたばかりの中央日報が、「極右歴史テロ」、「大会組織委が動いたことでホテル側は書籍撤去に同意した」などと報じています。

札幌アジア競技大会選手団の宿舎に「極右歴史テロ」(1)(2017年01月26日08時16分付 中央日報日本語版より

中央日報はリンク先記事冒頭で

2017冬季アジア札幌大会(2月19-26日)が開幕前からふらついている。参加国選手の宿舎として使用されるホテル側が歴史歪曲など極右性向の書籍を客室に置き、外交問題にまで飛び火している。大会組織委員会が動き出したことでホテル側は書籍を撤去することにしたが、アジアの冬の祭典を控え、韓日、中日感情の溝は深まった。

と述べていますが、実は、「大会組織委員会が動き出したことでホテル側が折れて書籍を撤去することにした」とする下りは、APAグループのニュース・リリースと正面から矛盾しています。

同社は『札幌市冬季アジア大会開催における対応について』と題するニュース・リリースの中で、

今回の報道とは関係なく、2015年4月に選手村としての宿泊について打診があった段階で、代理店を通じて口頭で該当書籍だけではなく客室内のすべての情報物の撤去の依頼」(※太字下線は引用者による加工)

があったとと述べています。つまり、「問題の」書籍を含めた全ての情報物を撤去することは、2015年4月の時点で決定されていたことであり、今回の「騒動」を受けてAPAグループ側が「折れた」わけではない、ということです。

これについても、中央日報側とAPAグループ側の、どちらが正しいのかについてはわかりません。

ただ、自然に考えると、APAグループ側の主張の方が正しいように思えます。なぜなら、通常のビジネスホテルには、近隣のレストランだとか、ナイトライフだとか、温泉施設だとか、そういった商業施設の案内文が置かれていることが一般的ですが、通常のスポーツ大会では、そういったチラシ類を設置することは適切ではないからです。

「ウソでも良いから謝ってくれ」

以上、一連の動きを確認してみましたが、私の目からすると、いつものように中韓が

「日本が歴史を歪曲した」

と大騒ぎすれば日本側が折れて問題の書籍を撤回すると思っていたところ、APAグループ側が全く折れる気配を示していないことで、却って問題が大きくなり、中韓にとっては都合が悪いことになってしまっている、というのが騒ぎの本質です。

中韓にとっての基本戦略とは、「過去に日本が悪辣なことを行った」という、一種の「プロパガンダ」を盲目的に世界中で垂れ流し、信じ込ませる、というものです。したがって、そこに「疑義を挟む」人間が生じると、非常に都合が悪いのです。なぜなら、騒ぎが大きくなればなるほど、第三国の立場から「客観的に検証してみよう」と考える人が増えるからです。

今回は中国が主張する「南京大屠殺」(※「南京大虐殺」の中国側の表現)、韓国が主張する「従軍慰安婦問題」について、APAグループがこれらを正面から否定する書籍をホテルの客室に備えていたことで、「騒ぎ」になりました。

中国としては、特に「南京大屠殺」に関する事実関係を深く探られると、何かと都合が悪いのです。そこで、APAグループ側に対して「問題の書籍を撤去せよ」と迫ったのですが、APAグループ側はこれを拒絶しました(※冬季アジア大会期間中は一時的にこれらを撤去するそうですが、これも常識的な対応です)。

つまり、「大騒ぎ」しても日本側が泰然自若として動かなければ、中韓側は非常に困ったことになるのです。もしかすると、水面下で「ウソでも良いから謝ってくれ」と依頼するために、同社への接触が行われている可能性はあります。

また、そのことを「公然と」主張する人もいます。

アパホテル炎上事件は謝罪しなければ終わらない(2017年01月23日(月)19時32分付 ニューズウィーク日本版より)

記事冒頭には

元・中国人からのアドバイス。不当な要求ではあるが、中国共産党からGOサインが出ている以上、今回の愛国主義の動きは、なんらかの落としどころがなければ鎮火しない

とありますが、これが中国側の「ホンネ」でしょう。そして、「なんらかの落としどころ」とは、「日本がウソでも良いから謝ること」です。記事を執筆した李小牧氏は、末尾を

不当な要求に謝罪させられるのはやりきれないが、今回に限ってはアパホテル側に非があることは明白だ。傷が浅いうちに事態沈静化へのアクションを起こすべきだろう。

とする文章で締めていますが、「不当な要求」だが「アパホテル側に非がある」など、この短い文章の中で論理が破綻しまくっていて、正直、ご自身でも何を書いているのかわかっていらっしゃらないのではないかと思います。

ただ、本日の結論は簡単です。

「問題を解決するためには、正しいと信じる側が、決して折れないこと。」

ただそれだけです。

間違った主張をしている者は滅び、正しい主張をしている者は正当に評価される―。それが世界です。したがって、APAグループは今まで通り、泰然自若としていれば良いと思います。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. porter より:

    中国人が使わないなら日本人が使えば良い。
    日本人はアパホテルを支持するよー。

  2. 新宿会計士 より:

    自己レスです。
    アパホテルは大会組織委員会の要請を受けて書籍の撤去に応じたかのような報道もあるようですが、これは実態とは全く違う、デタラメな記事です。
    本文でも触れている通り、同社は既に、「大会期間中は情報・印刷物を全て撤去する」と明言しており、まるでアパホテルが「圧力に屈した」かのように報じることには大きな問題があると言わざるを得ません。

    以上、補足でした。

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