日本が「米中二股外交」で失敗したことにしたい韓国メディア
「米中二股外交」という単語、久しぶりに耳にした気がします。
「米中二股外交」とは?
以前から当ウェブサイトをご愛読下さっている方なら、「米中二股外交」という言葉を聞いたことがある、という方も多いと思います。
これは、もともとは日本経済新聞社の元編集委員である韓国ウォッチャー・鈴置高史氏が提唱した概念ですが、あくまでも私の理解によれば、韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領が大々的に繰り広げた外交のことを指しています。
朴槿恵氏は、2013年2月に大統領に就任して以降、ひたすら、中国への傾斜を強めていきました。
たとえば、歴代韓国大統領は、就任後最初の訪問国として米国、2番目の訪問国として日本を選ぶのが、一種の「外交慣例」のようになっていましたが、朴槿恵氏はこの慣例を破り、2番目の訪問国として中国を選びました。
また、中国が2015年頃、「アジア・インチキ・イカサマ銀行」、じゃなかった、「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)という国際開発銀行を設立すると発表した際も、いの一番にAIIBに参加すると表明。当時の米国の逆鱗に触れたほか、
- 2015年7月には、日本が世界遺産登録を目指した明治期の産業革命関連施設を巡り、「朝鮮人強制徴用」というウソを捏造して妨害
- 2015年9月3日に天安門で行われた「抗日戦勝利70周年記念軍事パレード」に、ロシアのウラジミル・プーチン大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領、ウズベキスタンのカリモフ大統領、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状を請求されているスーダンのバシール大統領などと並んで参加
- 米国が韓国に対して配備を求めていた高高度ミサイル防衛システム(THAAD)について、無理やりに理由を付けて配備を拒絶し続ける(※結局2016年7月8日に配備で合意)
- 前任の李明博(り・めいはく)政権時代からたなざらしとなっていた日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)を巡って、署名を拒絶(※結局、2016年11月23日に署名)
といった具合に、反日を全開にしつつも米国とも対決姿勢を深めていったのです。
そして、現在、文在寅(ぶん・ざいいん)政権下で、米韓関係が急激に悪化していることは事実ですが、これは別に文在寅政権が発足したことだけが理由ではありません。
米韓関係悪化の素地は、すでに朴槿恵時代に形作られていたと見るべきであり、それを形作った外交こそが「米中二股外交」だったのです。
韓国メディア『中央日報』が「米中二股外交」と批判
以上の基礎知識を踏まえて、まずは何も言わずに次の記事を眺めてみてください。
韓経:安倍の米中二股外交…「中国の経済協力、実利なかった」(2018年10月29日09時36分付 中央日報日本語版より)
タイトルだけで内容がよくわかる記事ですね。
そして、昔からの「鈴置ファン」としては、このタイトルに使われた「米中二股外交」という言葉を見て、懐かしさを感じてしまったことも事実です(笑)
それはともかくとして、記事の内容を私の文責で要約すると、次のとおりです(ただし文章の順序を入れ替えてあるほか、日本語表現については手直ししている箇所もあります)。
- 日本の安倍晋三首相は日本の首相としては7年ぶりに中国を公式訪問し、習近平中国国家主席や李克強首相と首脳会談を行った。
- この安倍訪中に、米独仏などの経済使節団を圧倒する500人の企業関係者が帯同し、日中首脳は関係正常化を宣言したほか、第三国のインフラ開発案件など50件もの大型の覚書を結んだが、これはこれは日本政府が今回の首脳会談に力を入れた証拠だ
- だが表に現れた成果とは違い、米中貿易戦争の影響を受け、安倍首相と日本企業は中国との協力に中途半端な姿勢を見せた。いわば、米中の間で日本は「二股」を掛けることになったからだ
- 中国外交部高位関係者は「米中間の貿易戦争の砲火の中に日本政府と企業は米国の反応をうかがいはっきりしない態度を見せた。今回の首脳会談で日中関係が実質的な関係改善に至るのは容易でないだろう」と指摘した
韓国メディアがこう報道しているくらいですので、日中首脳会談は大成功だったと見るのが正解でしょう(笑)。
というのは冗談として、実に酷い言い方ですね。ただ、それと同時に、韓国メディアとしては今回の日中首脳会談が羨ましくてならず、悔し紛れに「二股外交」と書いたように思えてなりません。
中途半端な関係改善、それがすべて
ただ、私自身は今回の安倍総理の訪中について、非常に良い内容だったと考えています。
たしかに、今回の安倍総理の訪中で、政府間の署名文書12本と第三国での投資協力を巡る企業などの覚書が52本に達したことは事実ですが、いずれも踏み込んだ内容に乏しく、昨日の朝日新聞の社説風にいうならば、「双方が有効の演出で足並みをそろえた」に過ぎません。
しかし、言い換えれば、日本が優先すべき国は常に米国がトップであり、中国との協力が中途半端なものに終わったこと自体が、「米中二股外交」ではない証拠にほかなりません。
なにより、安倍総理の中国訪問中のスピーチ内容を眺めていると、結局、安倍総理は中国に出掛けて、「国際ルールを守れよ」と言い放ってきたようにしか見えないのです(このあたりについては現在、別稿にてまとめており、早ければ明日にでも解説したいと思います)。
米中二股外交が実質破綻した韓国にとってみれば、「日本も韓国と同じく、米中二股外交で破綻して欲しい」と思う気持ちがあることも事実でしょう。しかし、残念ながら日本は海洋国家として、中国に入れ込むわけにはいきません。
言い換えれば、現在の韓国が置かれている状況が、本当にまずいということだと思います。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、明日・10月30日は、韓国の最高裁にあたる「大法院」が「徴用工訴訟」を巡って判決を下します。私個人的には、「日本企業が敗訴という判決を下すのかどうか」という点と、「韓国政府がどう対応するか」という点に注目したいと思います。
なお、徴用工訴訟については『混乱する日韓関係、ついに徴用工訴訟「介入疑惑」で逮捕者出現』などでも現況に触れていますので、どうかご参照ください。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
明日の判決が楽しみです。
コリア・ウォッチ系サイトの大勢は、原告勝訴と予測しています。
私も十中八九そうだと思いますが、斜め上なヘタレ判決があるかもしれません。
どんな斜め上かは想像できませんけど。
あるいは、裁判所と政府が事前に裏で示し合わせ、「原告勝訴、ただし賠償額は大幅に減額(百分の一とか)」という判決を出して、一応韓国人の愛国心を満足させておいて、韓国政府が「支払いは韓国政府が建て替えておくよ。慰安婦補償や南北統一費用請求と併せて後でまとめて日本に請求するわ。」と発表。請求先は日本政府ではなく新日鉄住金なのに、わざと話をずらして国民を欺き、実際には新日鉄住金にも日本政府にも請求しない、とか。
余り高い期待を持つと、しょぼい結果に終わった時の落胆が辛いので、予め不完全燃焼的な結末を覚悟しつつワクテカしております。
本題と関係ない雑談ですみませんでした。
〉安倍総理は中国に出掛けて、「国際ルールを守れよ」と言い放ってきた
一見、管理人が最上と主張される「自国の利益最優先の外交」とは結びつかないようにも見えますが、今度の記事でどの様に語られるのか。楽しみにしています。
< 更新ありがとうございます。
< 中央日報はじめ韓国政府としては、今回の安倍首相訪中をなんでもかんでも、とにかく『中途半端に終わった』としたいんでしょうね。分かります、その外道の気持ち(笑)。一緒にすんなよッ。日本はカメラマンも警備員に半殺しに合わずに済んだ。アンタラは昨年、抗議したのか?被害の補償は受けたのかな?(爆笑)。
< 中国と一蓮托生、無理心中でも!なんて気持ちは、日本に1mgもありません。ハッキリ言って、肌が合わないです。まずは米国が、友邦の第一なのは皆様ご存知の通り。かけがえのない存在として、73年間友誼を誓ってきたのです。アチコチふらふらの韓国、北朝鮮とはキッパリ違います。
< 昨日は安倍首相は、インドのモディ首相を別荘に招待し、両首脳にとって12回目の会談を行ないました。驚くほどのタイトな日程ですね。幾ら最優先で交通機関がすべて計画されたとはいえ、李首相や習主席とモディ氏を4日間で会うなんて、そんな首相は過去に(多分)居ません。
< 環太平洋インド洋の一角としてインドを誘い、日米加豪印と自由主義国の環が出来る。中国・半島には大きな楔になります。もちろん中国と戦闘を起こす訳ではなく、示威行為をするだけで良いと思います。
< 韓国では明日、なんかあるんですか(笑)?だいほういん?裁判官も日本企業無罪、なんて言うと京城に住めません。暗殺されます(古ッ)。どうせ玉虫色の『対日本企業への個人賠償権は有効だが、韓国政府が肩代わりする』なあんて、おバカな決定するんじゃないですか? もうどっちでもええわ。ICJに持ち込む!ガンバレ三菱重工業(あと忘れた)。
今更なのかも知れませんが…。
過去に中国は、訪中した文大統領を冷遇し、韓国に対して(中国 > 韓国)の序列を強く印象付けました。
その後に韓国は、訪韓した安倍総理を冷遇しました。
序列社会の韓国では、「同格」という概念が希薄で、基本的に格上と格下の認識しか存在しないとされています。
したがって、韓国視点での序列は、
(中国 > 韓国 > 日本 ) でなければならないのですね。
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ところが、今回の安倍総理訪中の歓待ぶりを見る限り、中国視点での相対的な序列評価は
(中国 ≠ 日本 > 韓国 ) との図式が成り立ってしまいます。
中央日報は、世界で類を見ないくらい高いプライドを保有している国のメディアとして、何としても今回の安倍総理訪中が「実利がなく、失敗だった」と結論づけざるを得なかったのでしょうね。
おそらく、(中国 > 韓国>≠日本)あたりが、国民感情の限界許容ラインなのでは? と、推測されます。
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「 習近平 隣国要人 訪中で 文は冷遇 安倍は礼遇 」
↑(五七調にしてみました。)
方法としては賛否ありなのでしょうが、「交渉相手に勘違いさせない」という強い姿勢に対しては、日本政府も見習うべきところはあると思います。
特に、「ご都合主義の塊」のような国の人たちには…。