【速報】シンガポール会談巡る米朝のさやあて

米国では「6月12日の米朝首脳会談が行われないのではないか」とする見方があるようです。しかし、会談直前まで相手を揺さぶるのは、ある意味で朝鮮民族の伝統のようなものです。

WSJ報道に見る北朝鮮

「米朝首脳会談は不確実」が米国のコンセンサス

私は昨日の『【夕刊】「蚊帳の外」にいるのはむしろ韓国』や今朝の『緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版』のなかで、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)が6月12日に予定されているシンガポールでの米朝首脳会談に現れない可能性があるのでは、と申し上げました。

ところが、こうした私の認識は、すでに米国ではかなり一般的なものになっているようです。ここでは米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道を参考にしてみましょう。

U.S. Brushes Off Pyongyang’s Tough Talk, Proceeds With Planning for Summit(米国夏時間2018/05/16(水) 19:38付=日本時間2018/05/17(木) 08:38付 WSJより)

リンク先のWSJ記事は英語版であり、かつ、契約していないと読めないことがあります。リンク先の記事を読むのは少しハードルが高いと思いますが、それでもWSJは北朝鮮問題に関しては鋭い論考を掲載する数少ないメディアの1つであるため、あえてリンクをそのまま紹介しておきます。

記事の書き出しは、こうです。

“President Donald Trump is still planning to hold a summit meeting in Singapore with North Korean leader Kim Jong Un, U.S. officials said, brushing off sharp comments by one of Pyongyang’s senior diplomats that caught the Trump administration by surprise.”(※下線部は引用者による加工)

この “still” という単語があるだけで、米国内で米朝首脳会談がどのように見られているか、一発でわかりますね。辞書的には「依然として」、という意味ですが、裏には「米朝首脳会談が本当に行われるのか、疑念が広がっている」というニュアンスが感じ取れます。

これを踏まえてうえの文章を意訳すると、次のような意味合いでしょうか。

ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮のリーダーである金正恩とのシンガポールでの首脳会談について、いまでも諦めていないと米国政府の高官が明らかにした。北朝鮮の外交幹部が発した、トランプ政権を驚愕させる発言を払拭する狙いがあるとみられる。

これはいったいどういうことでしょうか?

北朝鮮がCVIDを公式に否定

WSJの記事について、順番を入れ替えて内容を紹介すると、次のとおりです。

  • 北朝鮮はF22戦闘機などを投入した米韓合同軍事演習「マックス・サンダー」に反発している
  • 外交を担当する北朝鮮の第一副首相は米国が主張する「核放棄と経済協力の引換」という構想を批判した
  • トランプ政権における国家安全保障担当のジョン・ボルトン大統領補佐官は北朝鮮の核放棄が「リビア方式」であるべきだと発言しているが、北朝鮮はこれにも噛み付いた格好だ
  • マイク・ポンペオ国務長官は6月12日のサミットに向け、南朝鮮(South Korea)やシンガポールの外相などと協議を行った
  • ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は「トランプ大統領は厳しい交渉にも慣れており、(北朝鮮が会談に応じないと言い出すことは)想定内だ」と述べた
  • ただ、トランプ氏は普段、金正恩を「ロケットマン」と呼んだり、米国が北朝鮮を「炎と怒り」で破壊すると脅したりしていたが、政権幹部は水曜日、こうした激しい言葉遣いを控えた

つまり、北朝鮮がシンガポールでの米朝首脳会談に応じない可能性が出て来た直接のきっかけは、米韓軍事演習「マックス・サンダー」に反発したことですが、北朝鮮の第一副首相は「リビア方式での核武装解除」を公式に批判した格好です。WSJ報道から北朝鮮の第一副首相の発言を引っ張ると、

“It is absolutely absurd to dare compare the DPRK, a nuclear-weapon state, to Libya, which had been at the initial stage of nuclear development.”「核開発の初期段階にあったリビアと、すでに核武装国となっている朝鮮共和国を比較するのは、あきらかに不合理だ」

というもので、少なくとも現段階では北朝鮮は核のCVID(※)に応じるつもりがないということを、明確にした格好と言えるでしょう。

(※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)の略称)

まったく想定どおり

昨日、当ウェブサイトでは『【夕刊】「蚊帳の外」にいるのはむしろ韓国』のなかで、実は「蚊帳の外」に置かれているのは日本ではなく韓国だと申し上げました。韓国では4月27日の南北首脳会談以降、世論もメディアも、すっかり北朝鮮に取り込まれてしまったのかもしれません。

ただ、非常に冷たい言い方をするならば、北朝鮮が核兵器のCVIDに素直に応じると考える方がおかしいのです。北朝鮮にとって核はあらゆる犠牲を払って手に入れなければならない兵器でもありますし、リビアのカダフィ大佐が核放棄後にどうなったか、北朝鮮は間違いなく研究しているはずです。

今朝の『緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版』では、シンガポール会談が行われたとしても、米朝が決裂する可能性が高し、そもそもシンガポール会談すら行われない可能性もあると申し上げましたが、シンガポール会談を前に金正恩が全力で米国を揺さぶってくるのは、ある意味で想定どおりです。

麻生副総理「飛行機が落ちたら」

会談直前になって「やっぱり行かないかもね」と言い出して相手を揺さぶるのは、朝鮮民族の悪い風習のようなものかもしれません。

では、こうした北朝鮮の姿勢に対し、どうするのが良いでしょうか?私は、いっそのこと茶化すのが良いと思います。こうしたなか、昨日夜の共同通信の記事によれば、麻生副総理が

あの見てくれの悪い(北朝鮮の)飛行機が無事シンガポールまで飛んでいってくれることを期待するが、途中で落ちたら話にならん

と述べたのだそうです。

北朝鮮専用機「途中で落ちたら」/米朝会談、麻生財務相が言及(2018/5/16 21:17付 共同通信より)

フェイク・ニュースが多い共同通信のことですから、麻生副総理が本当にこんな発言をしたのかどうかはわかりません。ただ、北朝鮮のように誠意のない国に対しては、「あの見てくれの悪い飛行機が墜落する」などと茶化すくらいで、ちょうど良いのではないかと思います。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 【速報】の更新ありがとうございます。
    < シンガポール会談の件ですが、共同通信によると、麻生副総理が『あの見てくれの悪い飛行機が途中で落ちたら話にならん』とのことですが、茶化すにしてもまんざらでもないようです。麻生さんらしい軽口とも取れます。しかし、北の唯一の高麗航空はトンデモない会社です。落ちてもおかしくない。今までひた隠しにして、箝口令を引いてますが、創業当初から幾度も墜落事故、着陸失敗、発火による人身事故を起こしてます。国内なら隠し通せるが東欧や中国各都市とも結んでまして、今は殆ど廃止になってます。
    < 機材といえば旧ソ連のツポレフ、アントノフ、イリューシンなど。さすがにシナ製はありませんし、西側の米、ユーロ、カナダ、ブラジル製もありません。少しは新型(といっても10年以上経過)を入れてるようですが、たったの4機程度。それに探ってみると重大な事に気づきました(勿体ぶるなよ。大した事ではありません 笑)。
    < 現在、北朝鮮の国際線旅客は平壌とウラジオストク(平壌との直線距離が684km)、北京(同808km)、瀋陽(同365km)と短距離です。これだけしかありません。もし平壌からシンガポールに行こうとすると、直線距離で4,743km、これは日本の大阪-シンガポール(4948km)とほぼ同距離、東京-シンガポールは5316kmです。ハッキリ言って、北朝鮮にこの長距離に耐えれる飛行機が無い。勿論皆さんご存知のように、最短距離で飛行機は飛びません。国際空路(高度と幅)を守って飛びます。つまり片道分最低7,000km以上の燃料を積んで飛べる中型機以上です。もう一つ言うとパイロットの技量も空軍出身者が多いだろうが、長距離経験無し、レーダー誘導やら航法、国際空路に沿った運行ができるのか不安です。
    < 中国の南方航空や東方航空、国際航空、あるいは韓国のゴキブリ航空や足穴航空に乗せて貰うかチャーターすれば済む話ですが、朝鮮民族のプライドはエベレストよりも高いので、よほどの事がないと恃まないでしょう。よくもこれで於 シンガポールを呑んだものです。ハナからする気が無かったのか(笑)。
    < アシの話はそれぐらいにして、今北朝鮮は「CVID」は全く拒否、米国は「still」付きで「まだ諦めず」です。そもそも米韓演習など毎年のように春先にやっている事、それを口実にダダを捏ねる北朝鮮は非常識窮まりない。日米はそれも想定内、多分韓国だけが『突然に連絡してきた』と泡を喰っているんでしょう。文は不眠症になるぞ(笑)。やってもやらんでも破談、更に楽しみになりました。   以上。

  2. とらじろう より:

    実は、私の父は朝鮮半島からの引揚者で3歳まで釜山に住んでいたそうです。
    子供心に朝鮮語を覚えているそうですが、なぜか相手を罵倒する言葉ばかりだったと語ってました。
    相手に敬意を払わないのもかの民族の伝統なんですかね?

    1. めがねのおやじ より:

      < とらじろう様
      < 初めまして。たぶんおっしゃる通りだと思います。私も高校生ぐらいまで在日一世、二世の方が多く住む地域に居ましたが、いつもキツイ言い方で仲間同士罵ってました。朝鮮語は覚えてませんが、一世の方はたどたどしい関西弁で、『チョセン、チョセン、パカスナ!』と何回も日本人の大人に言っていたのを覚えてます。訳すると『朝鮮人、朝鮮人、と言ってバカにするな!』です。これ、普通のおばさん達ですよ。口から出るのは汚ない言葉だけ。子供ごころに怖いな〜と思いました。
      < 失礼します。

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