トランプ訪日を英メディアが報じたことの意味

昨日、ドナルド・トランプ米大統領が米軍横田基地に到着。さっそく、安倍総理とゴルフや会食を楽しんだもようです。その一方、東京は2万人の警察官による厳戒態勢が敷かれていますが、なんと信じられないことに、お隣の国・韓国では、警戒レベルが最も低い水準に引き下げられたとか。

英FT記事に見るトランプ訪亜

トランプ氏のアジア歴訪開始

ドナルド・トランプ米大統領による、実に2週間弱に及ぶアジア歴訪が始まりました。

昨日、最初の訪問国であるわが日本の米軍横田基地に到着。予定では、これを皮切りとして、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンの5ヵ国を訪れます(図表)。

図表 ドナルド・トランプ氏のアジア歴訪予定
日付訪問国滞在期間
11月5日(日)~7日(火)日本2泊3日
11月7日(火)~8日(水)韓国1泊2日
11月8日(水)~10日(金)中国2泊3日
11月10日(金)~12日(日)ベトナム2泊3日
11月12日(日)~14日(火)フィリピン2泊3日

(【出所】ホワイトハウス・ウェブサイトより著者作成)

これについての話題が、数年前に日本経済新聞社の傘下に入った英経済紙「フィナンシャル・タイムス」(Financial Times, FT)に、大きく取り上げられています。

Trump arrives in Japan for Asia visit/President will focus on rallying allies and tackling nuclear North Korea(2017/11/05付 FTオンラインより)

(※FTの記事は契約または登録していないと閲覧できないことがありますのでご注意ください。)

記事を執筆したのは東京在勤のDemetri Sevastopulo氏とRobin Harding氏、そしてソウル在勤のBryan Harris氏だそうですが、私はどうもこのRobin Harding氏のこれまでの記事を読んで、あまり良い印象を持ったためしがありません。というのも、同氏の記事には得てして深掘りが足りないからです。

ただ、それでも日経の子会社であるとはいえ、編集権は独立している英FTが、外国の大統領であるトランプ氏の動静を報じるのは、今回のトランプ氏の訪亜が国際的にも注目されている証拠でしょう。というのも、FTによるとトランプ氏のアジア訪問は11日間に及び、これはジョージ・ブッシュ元大統領(※父親の方)の1991年における訪亜以来、最長だからです。

ゴルフに和牛…まるでワイドショーのようなFT記事

そのFTはトランプ氏の日曜日の動きを、これでもかというほど詳細に報道します。たとえば、

After addressing US troops at the Yokota air force base on Sunday, Mr Trump flew to the Kasumigaseki Country Club where he met Mr Abe for a round of golf.(日曜日、米軍横田基地に到着したトランプ氏は会見後、さっそく安倍氏が待つ霞ヶ関ゴルフクラブに向かった。)

The two leaders entered the club and signed white baseball caps that were emblazoned with the words “Donald and Shinzo Make Alliance Even Greater”.(両首脳はクラブ入りするや、「ドナルドと晋三は同盟をさらに強固にした」とする文章が書かれた白い野球帽にサインをした。)

Mr Trump was also scheduled to dine twice with Mr Abe on Sunday over a menu of hamburger and wagyu steak.(トランプ氏は日曜日、安倍氏とともに、2回にわたり、ハンバーガーとワギュー・ステーキの夕食を共にする予定だ。)

…といった具合です(カッコ内は私の文責による意訳であり、以下同様)。ちなみに「和牛」はいまやwagyuとして英語になっていて、wagyuといえば高級肉の代名詞なのだそうです。

「世界を代表するクオリティ経済紙」(※)であるFTが、こんな日本のワイドショーのような記事を書いた以上、それだけ日米の連携が強く印象付けられることは間違いありません。

(※私はFTが「クオリティ・ペーパー」だとは思いませんが、いちおう世間的にはFTは「クオリティ・ペーパー」だと思われているようです。)

ポイントは北朝鮮問題なのだが…画竜点睛を欠くFT分析

ところで、FTオンラインは今回のトランプ氏の訪亜を巡り、最大の目的が北朝鮮問題にあると述べています。

HR McMaster, US national security adviser, said Mr Trump would focus on three goals in Asia, including promoting an open Indo-Pacific region, and boosting US prosperity through fair trade.(米国家安全保障問題担当大統領補佐官であるハーバード・レイモンド・マクマスター氏によれば、トランプ氏には3つも目的があるとしているが、そのうち2つは「開かれたインド太平洋地域」、「公正な貿易推進を通じた米国の国益の増進」だ。)

But the third — “strengthening international resolve to denuclearise North Korea” — will receive the most attention, coming less than two months after Mr Trump said North Korean dictator Kim Jong Un was “on a suicide mission”.(しかし、何といっても注目されるのは3番目の目標である「北朝鮮の非核化という国際的な決意の強化」だ。事実、トランプ氏は2ヵ月前も、北朝鮮の独裁者である金正恩を「自滅に向かっている」と批判したほどだ。)

つまり、3つの目的のうち、米国の長年のテーマである「価値同盟」、トランプ氏の政権公約でもある「アメリカ・ファースト」という2つについては、ある意味では「オマケ」のようなものであり、やはり北朝鮮の核開発への対処こそが、トランプ氏の最大の目的であるということは、誰の目にも明らかでしょう。

ここまで書いたのであれば、「北朝鮮の開発した核兵器がイランを含めた世界中に拡散するおそれもある」といった分析にも言及して欲しかったところです。ただ、しょせんはRobin Harding氏の記事です。彼にそこまでの分析を求めるのは、酷というものかもしれません。

え?プーチンと会うのですか?

ただ、たまに外国のメディアを読むと、それなりに興味深い情報も得られます。

私にとっても盲点だったのですが、FTによると日本に向かう米大統領専用機「エアフォース・ワン」の中で、トランプ大統領はベトナムで開かれるAPEC首脳会合で、ウラジミル・プーチン大統領と会う予定だと述べたというのです。

Mr Trump also said he would meet Russian president Vladimir Putin at Apec, saying, “I think it’s expected we’ll meet with Putin, yeah. We want Putin’s help on North Korea”.(トランプ氏はまた、APEC会合でロシアのウラジミル・プーチン大統領と会うとしたうえで、「私はプーチン氏に北朝鮮問題で支援してくれることを期待している」と述べた。)

これは非常に重要な情報です。

今回、トランプ氏がロシアを歴訪国に加えていなかったことの「謎」は、ここで解けることになりそうです(※もっとも、本当にそれが実現するかどうかは、現時点ではよくわかりませんが…)。

現在のトランプ政権は、昨年の大統領選で、ロシア政府がトランプ氏の当選のために暗躍していたとされる疑惑(いわゆるロシアン・スキャンダル)に揺れています。しかし、北朝鮮処分を巡っては、重要な周辺国の1つであるロシアと何らかの合意をしないわけにはいきません。

その意味で、FT記事の情報が正しければ、「北朝鮮処分」については、APEC会合前後の金曜日から土曜日のどこかで、トランプ氏とプーチン氏の会談により、何らかの意思決定が下される可能性があると見るべきでしょう。

「南朝鮮」と米国の関係

FT記事では、もう1つ、韓国(英語の原文ではSouth Korea=南朝鮮)との関係についても、私たち「コリア・ウォッチャー」の間では周知の事実になっている内容について、次のように述べています。

Robert Hormats, vice-chairman of Kissinger Associates, said it was crucial Mr Trump used his visits to Seoul and Tokyo to demonstrate “strategic unity” between the US and its allies.(キッシンジャー・アソシエイツの副会長であるロバート・ホーマッツ氏によれば、トランプ氏が日本と韓国を訪問する中で、米国がこれらの同盟国との間で「戦略的な結合」を見せつけることが重要だと指摘する。)

Despite their alliance, Mr Trump has regularly irked South Koreans — from accusing president Moon Jae-in of appeasement towards North Korea to threatening to rip up a free trade deal known as Korus. More than 100 protest rallies have been planned for his visit.(しかし、トランプ氏は常に南朝鮮人にいらだちを隠さない。北朝鮮問題を巡ってモオン・ジャエ・イン大統領を批判したり、米韓FTAを巡る再交渉を言い出したりしているからだ。しかも、南朝鮮では100人を超えるデモ隊がトランプ氏の南朝鮮訪問に抗議しているほどだ。)

「Moon Jae-in(モオン・ジャエ・イン)」という表記からは、これが誰のことをさしているのか想像が付きづらいかもしれませんが、これは文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領のことです(ちなみに朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領のことは、英文で「Park Guen-hye」(パルク・グエン・ヒェ)と表記します)。韓国語のローマ字表記は、私たち日本人を含めた外国人にとっては極めてわかりづらく、それは英語圏の人にとっても同じであるようです。

なお、FTを含めた英語圏のメディアは韓国のことを「South Korea(南朝鮮)」と表現しているため、上の意訳でも原文の意をくみ取り「南朝鮮」と訳出しています。

ところで、FT記事の深掘りが足りないという欠点は、ここでも出て来ています。「北朝鮮に対して日米韓3ヵ国協力体制のほころびを見せないことが重要だ」とする意見が米国内で生じていることに言及するのは良いのですが、「韓国が自らこの3ヵ国協力体制を壊そうとしている」という事実には触れられていないからです。

「クオリティ・ペーパー」を名乗る以上、せっかくトランプ氏の訪日について言及するのなら、そこまでの深掘りをしてほしかったところです。

中国やAPECなどに言及がない!

もう1つ、FTに不満を申し上げるならば、北朝鮮情勢を巡って、トランプ氏が中国を訪問する意図について、全く言及がないことです。

FT記者がエアフォース・ワンにまで乗り込み、Robin Harding氏が記事の冒頭で「パパ・ブッシュの訪亜以来、アメリカ合衆国大統領のアジア歴訪としては最長の日程だ」と述べているのであれば、それぞれの訪問先でトランプ氏が何をする予定なのか、ひと言くらいは言及して欲しい気がします。

今回のトランプ氏のアジア歴訪は、訪問の順序も非常に重要です。

最初に日本を2泊3日の日程で訪れるという理由は、トランプ氏が安倍晋三総理大臣を最も深く信頼しているからにほかなりません。次に、韓国を1泊2日と「素通り」に近い日程で訪問し、中国で2泊3日滞在する理由も、日本の安倍総理との「作戦会議」を踏まえ、北朝鮮処分について本格的に中国と協議するためです。

さらに、ベトナム(うち1日はAPEC首脳会談)、フィリピン(うち1日は東アジア・サミット=EAS)を訪問する理由も、日中両国の訪問結果を踏まえて、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相やフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領らと北朝鮮処分について意見交換するためだと考えるのが自然でしょう。

私自身、APECにロシアのウラジミル・プーチン大統領が参加する予定だという事実は、不肖ながら今回のFT記事で初めて知ったのですが、北朝鮮処分を議論するならば、当然に日中露3ヵ国の協力が必要です。

FT記事を読むためには高いカネを払わなければなりません。その意味で、FTの記事はどうにも強い不満が残ってしまうのですが、それでも今回のトランプ氏のアジア歴訪が、世界的に注目を集めているという点につき、その一端をうかがい知ることができたという意味では、有意義だったといえなくはありません。

北朝鮮処分とは韓国処分でもある

トランプ氏にお伝えしたい、訪韓の危険性

トランプ氏のアジア歴訪において、重要な訪問国は日本、中国、ベトナム、フィリピンであり、韓国は北朝鮮への軍事攻撃と米韓FTAの破棄を「通告」するためだけに「立ち寄る」という位置付けだと理解するのが正しそうです。

ところで、トランプ氏は明日7日(火)まで日本に滞在し、その後は韓国に移動するのだそうですが、肝心の韓国では、実におかしなことが発生しています。

トランプ氏の訪韓前に…政府がテロ警戒レベルを引き下げ(2017/11/02 10:57付 東亜日報日本語版より)

韓国メディア『東亜日報』の日本語版によれば、トランプ氏の初訪韓を控え、「韓国政府がテロ警戒レベルを最も低いレベルに引き下げた」と報じられています。東亜日報は

「(韓国政府)首相室対テロセンターによると、国家安保室や国家情報院、外交部など21の関係機関が参加した先月24日のテロ対策実務委員会で、テロ警戒レベルが「注意」から最も低い「関心」に下方修正された。テロ警戒レベルは、「関心→主義→警戒→深刻」の4レベル。最も低い「関心」は、テロの可能性が低いという判断で発令される。空港・港湾の検閲が15%から10%に下がる。

としていますが、北朝鮮工作員が何人も韓国社会に浸透していると想定される中で、これはあまりにも信じられない措置です。

ではなぜ、韓国政府は警戒レベルを最低水準に引き下げたのでしょうか?その理由について東亜日報は、

具体的なテロの疑いがない。長期間『注意』レベルを維持し、(該当機関の)疲労がたまっている。平昌五輪を控え、しばらく休もうと考えている

とする、韓国政府首相室関係者の発言を紹介しています。

ちなみに日本政府の場合は

Central Tokyo was on lockdown on Sunday with around 20,000 police mobilised to provide security — thousands more than were deployed for Barack Obama.(東京中心部では日曜日、バラク・オバマ氏の訪日時を数千人上回る2万人もの警官隊が動員され、警戒態勢に入った)(※先ほどのFT記事)

とありますから、トランプ大統領を迎えるに当たっての日韓の違いが、これでもかと浮き彫りにされた格好です。

しかも、韓国では2015年3月に、当時の駐韓米国大使だったマーク・リッパート氏が暴漢に襲われる事件も発生しています。明らかに、治安面では強い不安があります。

今からでも遅くはありません。トランプ氏は韓国訪問を短縮すべきではないでしょうか?

中国による対韓工作の成功

もう1つ、先ほども紹介したFT記事では、キッシンジャー・アソシエイツのホーマッツ副会長による次の発言が引用されています。

Differences of opinion, or even the appearance of such, would signal to Pyongyang that it can drive a wedge between the US and these two countries.(日米韓における意見の相違は、それが存在すると見えるだけであっても、北朝鮮に対し、日米韓3ヵ国の亀裂を見せつけることになりかねない。)

The more doubts he casts on the reliability of the US as a protector of these countries the more they will probably turn to making deals with Pyongyang.(かりに米国が日韓2ヵ国に対する守護者としての信頼性に疑義を持たれてしまえば、北朝鮮との交渉にも悪影響が生じかねない。)

発言者が「キッシンジャー・アソシエイツの副会長である」という時点で、私はその信頼性には眉に唾を付けてしまいそうなのですが、私がホーマッツ氏に反論するとすれば、

すでに日米韓3ヵ国連携のほころびは生じている

と申し上げたいと思います。

当ウェブサイトでもすでに紹介したとおり、韓国政府は中国政府に対し、事実上、つぎの3点について「約束」してしまったからです。

韓国政府が表明した「三不」
  1. 高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の追加配備を検討しない
  2. 米国のミサイル防衛システム(MD)には参加しない
  3. 日米韓3ヵ国協力を軍事同盟には発展させない

韓国にとっては、中国という「昔からの宗主国様」は、そんなに怖いのでしょうか?北朝鮮の核開発という現在進行形の脅威よりも、中国様のご機嫌を損ねないことの方が重要だとでも言うのでしょうか?全く理解に苦しみます。

しかし、この「三不」が国際社会に知られてしまった以上、もはや「日米韓3ヵ国連携」などと言っていられません。

中国様、責任を取って下さいね

こうなった以上、もはや韓国を日米同盟側に引き戻す努力をしても、意味はありません。そして、日本と米国は、「韓国は存在しない」ものとして、北朝鮮と対峙することの覚悟を決めるべきです。

逆に、そのように決めれば、ここから先の対処は非常に簡単です。先月の共産党大会で政権基盤を確固たるものにしている習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席を相手に、日米両国は「ディール」をすれば良い話だからです。

私が具体的に考える「ディール」とは、要するに、次の2点です。

  1. 中国が責任を持って朝鮮半島の非核化を達成し、日本人拉致事件を初めとするさまざまな人権侵害を解決する
  2. そのかわり、中国のお望み通り、米軍の主力部隊は朝鮮半島から引き揚げ、韓国(朝鮮半島南部)を中国の勢力圏に置くことを認める

逆に、これが実現するならば、日本にとっては非常に良いことです。現在、日本が朝鮮半島との間で抱えている問題としては、未解決の日本人拉致事件、韓国軍による日本領・竹島の不法占拠事件を筆頭に、「従軍慰安婦問題」という捏造に基づき日本人の名誉が世界中で傷つけられている問題、韓国による国を挙げた日本の知的財産権の窃盗など、いずれも韓国・北朝鮮の不法行為により日本が被害を蒙っている事案ばかりです。

もちろん、日本は中国からも、「南京大屠殺」という大ウソに基づく歴史プロパガンダ戦を仕掛けられています。しかし、敵は「中国・北朝鮮・韓国」という3ヵ国であるよりも、中国1ヵ国であるほうが、はるかに対処しやすくなります。

韓国から外交権を奪うのは中国?

ところで、歴史を振り返ると、19世紀末の日清戦争、20世紀初頭の日露戦争という2つの戦争を経て、朝鮮半島は日本の監督下に入ります。この中で、「大韓帝国」が持っていた外交権が日本に接収された協約といえば、1905年の「第二次日韓協約」です。

さすがに現代国際社会において、ある主権国家がほかの主権国家に対し、外交権を譲り渡すという条約は、あまり例がありません(まったくないわけではありませんが…)。しかし、現在の韓国については、この「第二次日韓協約」のような協定が必要でしょう。

というのも、独自に外交をやらせると、周辺国がそれに振り回され、無用な戦争に巻き込まれるリスクすらあるからです。

実際、現在の韓国は中国や北朝鮮に引っ張られてしまっていますが、これは日米両国からしたら迷惑このうえないことです。安倍総理、トランプ大統領の両名が「日米韓3ヵ国協力」と述べているそばから、文在寅大統領が北朝鮮に直接対話を呼び掛けたり、人道支援を申し出たりしているのは、その典型例でしょう。

ただ、中国からしても、韓国が自主的な外交権を持っている状況は厄介です。というのも、韓国は今後も、北朝鮮と結託して中国を裏切る可能性が十分にあるからです。たとえば、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)は中国の習近平国家主席と仲が悪いことで知られていますが、韓国が金正恩の言いなりになって、中国の国益に反すること(たとえば金正恩体制の延命につながりかねない、開城工業団地事業の再開など)に踏み切れば、そのこと自体、中国にとって不利益をもたらすこともあります。

ということは、日本、米国、中国の3ヵ国が結託して、韓国から外交権を奪い、中国に帰属させる、「現代版の保護国化」で合意するのが、結果的には日米中3ヵ国の共通の利益につながるのです。

北朝鮮は中露が2分割?

ただし、韓国を「中華属国化」させるかどうかという話よりも前に、まずは北朝鮮をどうにかしなければならないという問題があります。

そして、昨日のFT記事にもあったとおり、トランプ大統領がもくろみ通り、プーチン大統領と会談できれば、その会談の目的が、北朝鮮問題でロシアの関与をどうするかについて協議することにあると考えてさしつかえないでしょう。

その内容とは、ずばり、北朝鮮の中露両国による分割ではないでしょうか?

米国や日本としては、北朝鮮の非核化と日本人拉致問題の解決が図られれば、別に北朝鮮という世界の最貧国の国土など必要ありません。ということは、現実的には、金正恩を除去したあとの北朝鮮については、東半分をロシアが、西半分を中国がそれぞれ責任もって管理すれば良いのです。

先日の日経ビジネスオンラインの記事では、

  • 北朝鮮を中国と米国が南北で分割占領するという、米ランド研究所による「北朝鮮2分割案」
  • 北朝鮮を米韓中露4ヵ国で分割占領するという、韓国MBNニュースの「北朝鮮4分割案」

の2つの「北朝鮮分割案」が紹介されていましたが、私はむしろ、北朝鮮については中露2ヵ国で東西に分割するというのが、日米中露のすべての当事国にとっては理想的だと考えています(その構想の概要については昨日の記事の『仮シナリオ:北朝鮮東部がロシア領、南朝鮮が中国領?』でも触れていますが、これについては近日中にアップデートしたいと思います)。

意外と遠くない、朝鮮半島処分

私が考える「アジア新時代」とは、日米両国を核とした「セキュリティ・ダイヤモンド構想」と、中国を核とした「一帯一路構想」がぶつかり合う時代です。残念ながら、「ダイヤモンド連合」と「一帯一路構想」の両者は、いまのところ相容れない関係にあります。そして、もう1つの大国であるロシアは、日米陣営に着くのか、中華陣営に着くのか、様子を見ている状況にあると言って良いでしょう。

ということは、これから「日米連合」対「中華連邦」が、何らかの緊張を伴いながら対立するという構図が生じるのです。日本は今度こそしっかりと、「自由・民主主義国家の雄」として、世界に範を垂れる存在とならなければなりません。

ただ、ケンカをする前には、あらかじめ地面に落ちている石ころなどの障害物を除去しなければならないのと同様、「ダイヤモンド構想」対「一帯一路構想」というぶつかり合いの前に、両陣営にとっての障害物は取り除いておくのが理想的です。

その「障害物」とは、朝鮮半島、つまり南北朝鮮のことにほかならないのです。もし両陣営(安倍・トランプ同盟vs習近平+プーチン)が賢明であれば、そのことはしっかりと議論するはずです。

余談ですが、今回のトランプ氏の訪韓日程が1泊2日から0泊1日に短縮されたならば、トランプ氏が本格的に「韓国を切り捨てる」と決断したという、決定的な証拠になりかねません。その意味でも、トランプ氏は予定通り、韓国を1泊2日の日程で訪問せざるを得ないと考えています。

さて、どうなることやら。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < トランプ大統領が国賓訪問というのに、韓国は警戒レベルを最低に下げるとは、喧嘩売ってるのか?それでなくとも、リッパード大使は殺人未遂されたのに、その危機分析も発表もなく、まさか烈士とは言わぬだろうが、国が国の体をなしてない。なぜ行かねばならないか、ホントに厄災ふり撒く劣等民族です。直前になってトランプ大統領は訪問を縮小、半日滞在で南鮮への不満を態度に示すかも。*それをされても、問題の根幹が分からず、他国のせいにするんでしょうな。
    < 米ランド研究所の北朝鮮二分割案は、昨日までは可能性薄いと見てましたが、べつに金正恩体制が崩壊し、核開発を止め、日本人拉致被害者が救出されれば、日本としては関わり合いたくない民族ですから、東がロシア、西がシナの保護国になっても構いません。更に南鮮は中国が属国化すすめ、*(4分割は韓国側のムシのいい話。)南鮮に領土を運営する力など1000%ない。さて、一帯一路とダイヤモンド構想は、相容れない話しです、ここが来年以後の勝負となるでしょう。

  2. 左翼 より:

    私は安倍首相を全然支持していませんが、意外と思われるかもしれませんが、本件については安倍首相のやっていることは日本のためになっていると私は考えています。安倍首相の右翼的なところ、国粋主義的なところには嫌悪感があることも事実ですが、私はブログ主さんが(パヨク)と呼んでいる連中と違って、現実的には日本が国として成り立たないといけないという認識はあるので、安倍首相がトランプ大統領と仲良くしていることは日本の安全保障を間違いなく高めていると思うのです。

    自戒も込めて左翼界隈の現在の論調をお伝えしておきますと、今回のトランプ訪日も戦争法反対、憲法9条改悪反対という流れの中で議論されています。ただ、左翼界隈は絶対に北朝鮮には文句を言わない人が多いのですが、その理由はもちろん、金日成思想(主体(チュチェ)思想)に共鳴している人も左翼界隈には多いからです。私はチュチェ思想はマルクスエンゲルスが朝鮮人風に劣化して中華儒教思想と結合したものだと考えており、その意味では南朝鮮や中共の思想とも根底で共通しているものですが、日本や西欧では絶対に受け入れられない思想でしょう。

    ただ、キムジョンウンはマルクス経済思想を明らかに理解していませんが、侮ってはなりません。若いため病死が期待できないこと、恐怖政治がある程度功をなしていることを考えると、対話路線に引き込んで喜ぶのは北朝鮮ほうであり、日本ではありません。枝野革マル政党(自称保守)に日本のかじ取りをゆだねるのは危険すぎます。

    この難局については、安倍首相がかじ取りをすることが、左翼の私の目から見ても正しいと思います。

  3. 匿名 より:

    半島処分について、中国が半島の日本海沿岸まで陸路で到達するというのは日本にとってとても大きな軍事的リスクではないでしょうか?
    対中で近年の南西方面警戒に加えて日本海沿岸をも警戒しなくてはいけないというのは日本にとっては日露前のロシア南下に匹敵する国難であるかと思われます。
    なので半島処分についても南半分は何らかの形で緩衝地帯として残ってほしくあります

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