ロシア経済の苦境深まるなかロシア中銀がさらに利上げ
トリレンマ理論の正しさを巡っては、ロシアも無縁ではいられないようです。ウクライナ戦争開始直後は1ドル=120ルーブル程度までに下落していたルーブルも一時は持ち直していたのですが、最近は再び1ドル=100ルーブル前後にまでルーブル安が進行。先週、ロシア中銀は政策金利を15%(!)という水準にまで引き上げています。
ルーブルの動きが怪しくなってきた!
ロシアの通貨・ルーブルの動きが怪しくなってきました。ロシアはいったん通貨防衛に成功したものの、ここもと、またぞろルーブル安が進行しているフシがあるのです。
ロシアといえば2022年2月のウクライナ侵攻を契機として、西側諸国から厳しい経済・金融制裁を喰らっている国でもあります。
国際決済銀行(BIS)のデータをもとに、ルーブルの動きを見ていると、2022年3月には1ドル=120ルーブル前後を付けているのですが、これはロシアの主力銀行が国際決済網であるSWIFTNetから排除された直後の話です(図表1)。
図表1 USDRUB
(【出所】The Bank for International Settlements, “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates (daily, vertical time axis) をもとに著者作成)
このときにいったい何があったのか――。
政策金利はどう動いたのか
図表2は、ロシアの政策金利の推移を示したものです(参考までに米国の金利についても付記しておきます)。
図表2 政策金利比較(ロシアvs米国)
(【出所】The Bank for International Settlements, “Download BIS statistics in a single file”, Policy rates (daily, vertical time axis) をもとに著者作成)
図表1に示したUSDRUBと、図表2に示したロシア中銀の政策金利が、ある程度、リンクしているというのがポイントです。
要するに、ルーブル安に対抗するかのようにロシア中銀が利上げに踏み切っており、USDRUBの水準が落ち着いてきたらロシア中銀が再び利下げをしている、という流れが確認できます。
ところが、7月頃からロシア中銀が再び大幅な利上げに踏み切っているのです。おそらくは、今年の春先から夏場にかけてルーブル安が進んだためでしょう。
【参考】ロシア中銀
トリレンマで見るロシアの苦境
当ウェブサイトで何度となく指摘してきたとおり、経済学の世界では「国際収支のトリレンマ」という、いかなる国であっても絶対に乗り越えられない鉄則が存在します。これは、「資本移動の自由」、「金融政策の独立」、「為替相場の安定」という3つの目標を「同時に」達成することが、絶対にできない、という法則です。
法則の概要については図表3をご参照ください。
図表3 達成すべき3つの目標
©『新宿会計士の政治経済評論』/出所を示したうえでの引用・転載は自由
この3つの目標、2つを達成したら、ほかの1つを達成することができません。
詳しいメカニズムはこれまでに何度となく当ウェブサイトで解説してきたとおりですが、これについては図表4でまとめたとおりです。
図表4 トリレンマ
©『新宿会計士の政治経済評論』/出所を示したうえでの引用・転載は自由
現在のロシアの場合でいえば、「為替相場の安定(=通貨防衛)」を目的に、「資本移動の自由」と「金融政策の独立」のいずれか片方(あるいは両方)に制限を加えている格好です。
ロシア国内では国民が自由に自国通貨を外貨に両替することができなくなっているというのは、基本的には形を変えた「資本移動の自由」の制限ですし、通貨防衛を目的とした利上げは「金融政策の独立」の部分的な放棄そのものでしょう。
ロシア中銀が政策金利を15%に!
さて、こうしたなかで先週、こんな話題が出てきました。
ロシア中銀、予想以上の大幅利上げ-インフレ抑制とルーブル安定重視
―――2023年10月27日 21:49 JST付 Bloombergより
Bloombergによると、ロシア中銀は27日、政策金利を15%と、これまでの13%からさらに2ポイントも引き上げたのだそうです。「資本規制再導入で通貨ルーブルへの圧力は沈静化した」が、「インフレリスクはなお強まっている」、というものです。
先ほどの図表2に記載のとおり、15%という政策金利水準は、戦争開始直後の水準よりは低いにせよ、2022年4月以降の高金利状態です。
ちなみに記事によると、ロシア中銀は声明で「インフレ率が目標から上方に乖離していくことを抑え、2024年に4%に戻す」ためには追加的な金融引締めが必要だ、などと述べたそうです。
「15%」と「4%」には、ずいぶんと大きな乖離があるように見えてなりませんが…。
いずれにせよ、現在のロシアが深刻なインフレとルーブル安に悩んでいるということは、もう少し踏み込んでいえば、ロシア経済が苦境にある、ということでもあります(「ロシア経済が絶好調だ」という「設定」は、いったいどこに行ったのでしょうか?)。
「ウクライナ戦争がロシアにとって予想外に長引いていることは事実だが、ロシアが経済制裁で苦しんでいるわけではない」、などとする言い分を聞くこともありますが、現実問題、「中央銀行の政策金利」という「動かぬ数字」が、ロシア経済の苦境を象徴しています。
このことがロシアの戦争遂行能力にいかなる影響を及ぼすのか――。
引き続き、金融評論的な立場からは、注目に値する論点のひとつであることは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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Daniil Orain くんが敢行するロシア街頭インタビュー「1420 Russia」 Youtube チャネル、本年 7 月 25 日投稿の動画タイトルは
Would life be better if the war hadn’t started?
です。国際報道配信会社の回送記事を当てにしないで、現地発の意見を発言者から直接得ることができるという点で国内報道機関が顔色を失いそうなくらいに値打ちがあると思います。動画は 10分間あります。20名の発言。
インタビュー中、背景に映る街の雰囲気や人々の様子、のんびりとしている。インタビューされている人達の表情も緊迫していない。音声も字幕も無ければ、何を訊いているかは分からないだろう。戦争をしているとは感じられない。
第二次大戦中、アメリカ国内の人々は、普段通りの何も変わらない生活をしていて、大戦末期に少し物価が上がった程度だった、と聞いたことがある。国家総動員法を作り、欲しがりません勝つまでは、と標語まで作り、千人針まで縫って死にもの狂いだった日本とは、大違いだったらしい。
今、ロシアは、前線に送られる兵士は殆ど少数民族、生活物資は、天然ガスや金の取引で入って来る。
白人ロシア人には、戦争している実感はそれ程湧かないのでは?
政策金利も50%位にならなければ、国民は戦争を本当に実感しないのではないか?
少し逸れて更に続けますが。
その大戦中、アメリカは、対ドイツのヨーロッパ戦線と、対日本のアジア太平洋戦線の、2方面作戦をやっていました。2方面やっていて、国内は普段と変わらず、です。
今、イスラエル対ガザの問題が出て来て、アメリカは2方面対応できるか?という意見がありますが、歴史をみるとやれそうです。
さて、3方面になるとどうか?これに、言及している評論家もいるようです。
更に。
3つ目の為に、2つ目を作ったという話をする人もいるようです。
囲碁・将棋・チェスの初歩的な手ですね。日本は古来から、囲碁・将棋という、極めて戦略的な深読みが必要なゲームをやって来ていますが、どうもそれをゲームの世界だけの思考法と思っているらしい。しかし、それは、現実の政治やビジネスにこそ、存分に活かすべきではないか?
日本がゲーム作りが得意なのは、多分、囲碁将棋が盛んな事と関係がありそうです。
素朴な疑問ですけど、プーチン大統領はロシア中央銀行の動きを、完全にコントロールしているのでしょうか。それとも、ある程度の影響力を持っているのでしょうか。それとも、経済問題なので丸投げしているのでしょうか。それとも中央銀行がプーチン大統領の意に反して動いているのでしょうか。(ロシア中央銀行総裁が、ビルから落ちるかで分かるのでしょうか)
プーチンの意向に沿って行動したとしても、結果がプーチンの意向に沿わなければ、彼は跳ぶ()かもしれマセン
基準金利の上昇は、通貨信用の裏返し。
通貨信用の評価は、国家信用の鏡写し。
国家信用の棄損は、無法への竹篦返し。
で、あって欲しい。
金利を上げることは、経済学の教科書的に言えば
「加熱した景気へのブレーキ」
ですから、もしかしたら
「ロシアは好景気なので引き締めたんだいっ!」
とか、強引に言えなくもない。
当局はそう匂わせたいのかも。
でも、外野席の野次馬の目には、
「実需に対して供給不足のインフレ」
に見えまする。
これは、統計でウソつくよりはマシかな。
「インフレなんか存在しない!キリッ」
とか言い張っていたのが日本の戦時統制経済。
たしかに定価で米を売ってるけど、並んで並んで買えるのは1ヶ月に一升だけ。
闇市に行けばなんでもあるけど、高い。
ロシアはどうなのかしら。
たぶん、モスクワは最後まで裕福なママなんでしょう。
ねずみ講社会では、頂点が崩れるのは最後ですから。
どちらも需要に対する供給不足は同じです。
問題は、その需給関係の有り様でしょう。
景気が良くて収入があり過ぎて、金を使いたい人が多過ぎるのに物の供給が追いつかないのか?
或いは、普通の生活をするだけなのに、物の供給が足りないのか?
そりゃ、経済制裁で表向きの貿易が出来ないので、裏から物を買えば、足下見られて高く買わなければならないから、貨幣価値は下がります。
自国で天然ガスと金が産出するからやっていられるけれど、もし、日本みたいに何もなければ、経済制裁でイチコロでしょう。
日本は、ABCDラインで封鎖されたから、余計にムキになって資源を独自に確保しようとして戦線を拡大しました。
寧ろ、戦線拡大するようにし向けられた所があります。ただ、これは、欧米が意図してやったのかは分かりませんが。
この辺りから見ると、ウクライナが、ロシア軍を被占領地から全部追い出すか、ロシアでプーチンが退場して反戦争派が政権を取るかしないと、宇露戦争は終わらないかもしれませんね。殆どの戦争がそうですが、中途半端で終わることはないですから。
刷った金で兵器を作りまくってGDP過去最高を記録してるんだから大丈夫でしょ。
刷りまくるとジンバブエの二の舞になりませんかね。
似たような過去事例。
大日本帝国が戦時国債と統制経済でGDP過去最高を記録しまくったのは80年前。
ま、そんなもん中学生が思いつきそうな青臭い「ぼくのゆめ」。
大日本帝国の経済官僚がヒト味違ったのは、
「日本銀行vs朝鮮銀行」
という互いに国債を引き受け合うウロボロスを創造して、無限信用を構築したところ。
ロシアはどうするのかな。
普通に考えたらベラルーシとか共産党中国とかイランとか、もしかしたらサウジアラビアとかが、ロシアの国債を引き受けるスキームを考えつくのかな。
参考)NHKアーカイブの「圓の戦争」