先月の為替介入で政府に発生した利益は8600億円か
日本政府が先月実施した為替介入では、8600億円程度の利益が発生した可能性があります。財務省は先週、8月30日から9月28日までの為替介入額が2兆8382億円だったと公表したのですが、これを1ドルあたり平均143.5円で売却したのだとすれば、財務省が売却した外貨は197.8億ドルであり、日本の外貨準備の平均取得時相場は1ドル=100円と試算できるため、単純計算で8600億円の利益、というわけです。
先月の為替介入実績は2兆8382億円
日本政府・財務省は、為替介入を行った場合には毎月、その概要を公表しています。
こうしたなか、『ドル売り為替介入の会計的効果:日本政府に巨額の利益』でも指摘したとおり、日本政府は先月22日、為替介入を実施したと発表したのですが、その正確な金額がわかりました。財務省は9月30日付で、「2兆8382億円だった」と公表したのです。
外国為替平衡操作の実施状況 (令和4年8月30日~令和4年9月28日)
―――2022/09/30付 財務省HPより
財務省が公表したのは8月30日から9月28日の期間の為替介入額ですが、この2兆8382億円という金額は、おそらくは9月22日の1日における介入額だと思います(※ただし、これについては財務省が後日公表するであろうデータでも確認が必要だとは思います)。
この為替介入により、1ドル=145円台後半を付けていたドル円(USDJPY)は介入直後に一気に142円台に落ちましたが、いずれにせよ、ここで重要なことは、財務省が保有していた外貨(おそらくは米ドル)を1ドル=142~145円台で売却したという事実です。
ということは、逆算すれば、9月22日の為替介入では195~200億ドルほどの米ドルを売却した計算です。かりに売却時平均レートが1ドル=143.5円だったとすれば、財務省が売却した米ドルは逆算して197.8億ドルです。
米ドルの取得時平均相場は1ドル=100円
ただ、日本の外貨準備に含まれる米ドルの取得単価は、それよりももっと低いはずです。具体的にはいくらでしょうか。
財務省のウェブサイト『統計表一覧(外国為替平衡操作の実施状況)』では過去の為替介入実績の全データが公表されているのですが(※CSVファイル形式)、これをもとにデータが存在する1991年5月13日以降、2011年11月4日までの約20年分の介入実績を集計したものが、次の図表です。
図表 大蔵省・財務省による為替介入実績
通貨 | 買い | 売り | 純額 |
---|---|---|---|
日本円 | 4兆8794億円 | 80兆9038億円 | ▲76兆0244億円 |
ユーロ | 1兆0753億円 | 0億円 | +1兆0753億円 |
インドネシアルピア | 693億円 | 0億円 | +693億円 |
独マルク | 187億円 | 0億円 | +187億円 |
米ドル | 79兆8237億円 | 4兆9626億円 | +74兆8611億円 |
合計 | 85兆8664億円 | 85兆8664億円 | ±0億円 |
(【出所】財務省データをもとに著者作成)
つまり、過去20年間で、日本政府は米ドルを純額で74兆8611億円分購入した、ということです。
そして、非常にざっくりした試算ではありますが、国際決済銀行(BIS)が公表している過去の為替データをもとにして、この20年間に購入した米ドルの額を試算すると、7470億ドルと計算できます。
すなわち、7470億ドル分の米ドル資金を74兆8611億円で購入した、という意味ですので、日本政府が外為特会で保有している米ドルの資金の額は、1ドルあたり平均100円で購入した、という計算です。
なお、日本政府が現在保有している外貨準備高は約1.3兆ドルですが、これについては7470億ドルの資金を米国債などで運用した結果、増えたものと考えられます(その詳しい試算については『日本の外貨準備高に含まれる米国債の額を試算してみる』などもご参照ください)。
単純計算で8600億ドルの利益が生じたはず
つまり、(資産運用等で増えたにせよ)もともとの取得時レートが1ドル=100円だった外貨準備を、1ドル=142~145円で最大200億ドル売却したわけですから、外為特会には単純計算で8400~9000億円ほどの実現益が発生したはずです(1ドル=143.5円と仮定すれば約8600億円)。
これは、なかなかに驚異的です。現在、消費税の国税収入が約20兆円であるとされています。消費税は国税部分が7.8%(軽減税率の場合は6.24%)ですので、たった1回の為替介入で消費税の税率0.5%ポイント前後の1年分の税収が得られたのと同じだからです。
そういえば、財務省を筆頭とする日本の財政破綻論者らの言い分は、「日本は国の借金が1200兆円を超えている」、「国民1人あたり1000万円だ」、「だから日本は財政破綻する」、といった極めて短絡的なものでもあります。
そもそも「主権国家には通貨発行権限がある」という事実を無視し、主権国家の財政を個人や企業の感覚で理解すること自体が間違いですし、日本政府や公的団体・準公的団体が保有する巨額の資産(外為特会以外にも天下り団体やNHKなどが隠し持っている巨額の資産)の存在を無視するのも不適切です。
正直、日本は税率を引き上げるより前に、2022年6月末時点で179兆円にも達したという巨額の外貨準備を含めた巨額の資産をどうにかすべきでしょうし、電波利用権をオークション形式で売却するなど、無駄な資産の有効活用にも努めるべきです。
なぜ税率は「おむつ>新聞紙」なのか
いずれにせよ、財務省は増税の前にやるべきことをやるべきですし、今からでも良いから消費税の合計税率を引き下げるか、あるいは食品・日用品などについてゼロ%の軽減税率を広く適用すべきではないでしょうか。
なお、どうでも良いのですが、赤ちゃんのおむつの合計税率が10%なのに、(一定要件を満たした場合の)新聞紙の合計税率が8%というのは、個人的には理解できない点です。同じ紙製品でも社会の役に立っているものこそ、軽減税率を適用すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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>>食品・日用品などについてゼロ%の軽減税率を広く適用すべきではないでしょうか。<<
物価が、上がり出したので、これは、是非お願いしたいです。
又、少子化対策として、育児用品の税率ゼロは、いいですね。
先の介入を、効果がなかったとか無駄だったとかマスコミなどがさわいでおりますが、結果だけみてもそれは違うんじゃないかとおもいます。
心理的な圧力も含めて牽制することで、円安を緩やかにする、敢えて悪い表現をするなら先送りするのが目的の介入で、少なくとも1月位の時間を買うことに成功したと見るべきなんじゃないかと思います。
非継続的・単発の収益である為替差益と継続的な収入である消費税とを単純比較するのは、「霞が関埋蔵金」と称して国民を欺いて政権を奪取した某政党と同じ匂いがします。
差益額をイメージさせるための比喩として消費税と対比しているのでしょうが、何ら注記なく為替差益と消費税とを対比していると、某政党と同レベルと見られるリスクがあります。ご注意を。
〉たった1回の為替介入で消費税の税率0.5%ポイント前後の1年分の税収が得られたのと同じ
税収を年限して比較しているので、表現としては間違っていないかと思います。
>同じ紙製品でも社会の役に立っているものこそ、軽減税率を適用すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
日本社会の益になるものには軽減税率を!
日本社会に仇為すものには過重税率を!
当方新聞から離脱して久しく新聞の税率が100%であろうが200%であろうがちっとも痛くない。
凡そ書籍の分類には入り得ない雑誌類も等しく過重税率にすればよいと思います。
更に売上部数が減って淘汰が加速されること請け合い。税込み価格に見合うモノでなければ生き残れないのではないでしょうか?
また個人で購入しづらくなるので図書館が激混みになることも請け合い。異様な雰囲気だろうなー変な意味で…
新宿会計士様
いつもありがとうございます。
「単純計算で8600億ドルの利益が生じたはず」
こちらは8600億円ではありませんか?
投資関係のサイトに流れている真偽不明の情報ですが,6割くらいのトレーダーは1ドル145円が上値抵抗線だと強く意識していて,4割くらいのトレーダーは145円超えもあるかもしれない,と思っているそうです。今日,瞬間的に1ドル145円を超えたのですが,分殺で145以下に押し戻されました。分足チャートを見てもらうと,とても面白い形をしていますよ。
たぶんディーラー達も,世界のあちこちに爆弾が隠れていることは意識していて,今までのような大胆なトレードはやりにくくなっている気がします。有能なトレーダーなら,ここは資産防衛に専念して,無理に利益を取りにいかないと思います。日本国債の空売りも,そろそろ終わりでしょう。一部のYoutubeサイトで,ドル売り介入の理由について,デリバティブと関連づけた解説をしているところもありましたが,それについては半信半疑です。
日銀はアクセルをふかしているのに対して、財務省はブレーキを掛け、一見ちぐはぐに見えますが、市場はメッセージを感じているということでしょうか。日銀と政府が阿吽の呼吸でやっているなら 凄いけれど、そうなのかなー。
四半期開けもあると思いますが、長期・大口はリスクが高いドル円をやってないと思います。他やった方がマシですもん。
今日など激しく上下はしていても、介入前と比べると変動幅が小さいです。こんなので作られた買いポジションなど、一回ガツンと押されて食われるのがオチだと思います。
今やってるのは、超短期アルゴリズムと、ミセスワタナベ(カモ)くらいじゃないでしょうか。(想像)
少なくとも介入から2,3週間は140-146の範囲かなと思っています。その後のことはわかりません。
>今やってるのは、超短期アルゴリズムと、ミセスワタナベ(カモ)
もちろん、短期特化でうまくやってる人もいると思います。
>「赤ちゃんのおむつの合計税率が10%なのに、(一定要件を満たした場合の)新聞紙の合計税率が8%というのは、個人的には理解できない点です。」
==>それは、おむつは赤ちゃんだけが使えますが、新聞紙は赤ちゃんのみならず大人も尻拭きに使えるものだからであります(昭和の話)。新聞を取らなくなって久しいですが、大掃除や割れ物を包むときなど、新聞紙がないと結構不便なことに気付きました。ちょっと前まで宅配の梱包材といえば新聞紙を丸めたものでしたし。
文字の印刷はいらんから、新聞「紙」だけ配達してくれんかな。
新聞代、月5千円、年6万円。これだけのお金があれば、キッチンペーパーだろうが、梱包材だろうが、必要な量を買ってもお釣りがくるはずです。是非、ご検討ください。そして、少しでも、新聞の発行部数を減らしましょう。
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/10/03/2022100381157.html
韓国の介入実績が公表されていて
今年1~3月 83億ドル
今年4~6月 154億ドル
とのこと(7~9月は12月末に公表)
市場規模からみて今回の日本の198億ドルは打診売りといったところか。
この先の世界の為替市場の動向も油断ならない。
>なぜ税率は「おむつ>新聞紙」なのか
財務省の理解が足りないから。
おむつ>新聞紙>>>おつむ
利益を物価対策に活用するのであれば、あらゆる物品のコスト要因である物流サービスにかかる消費税。ガソリン税にかかる消費税(二重課税)を何とかして欲しいですね。
為替介入の効果があったのかなかったのかは知らんが、この円安で得をすることが一切無い、外貨資産とは無縁の低所得国民にすべて還元してもらいたいものだ。
円安のメリットは総額は少なくないかも知れんがその受益はごく一部の国民だけが享受するがデメリットは国民全体が被るんだから。
介入の利益に関しては会計的にはどうなんでしたっけ。後、介入の原資のドルは無尽蔵じゃないことは気になりますね(大昔のドル買い介入とのちがい)
そうそう楽観出来ないなあというのが正直な感想です。
先日の為替介入では日本銀行がドルを売却し、2兆8382億円相当の円を手に入れたということになりますよね?
ということは2兆8382億円の日本円を市場から回収したということになります。
日本銀行が行っている緩和政策と矛盾する金融引き締め効果があるはず。
政府は直ちに3兆円規模の減税もしくは財政出動をすべきですね。
特にコアコアに効く食品やエネルギーに対する減税もしくは補助が望ましいですね。
デフレギャップを解消するにはその10倍規模の財政出動でもいいですよ。
財源は外貨準備の含み利益とかでいかがですか?
財務省の天下り先に多少は響くかも知れませんが、よろしくお願いいたします。
今回の介入は「非不胎化」だったそうです。
22日の円買い介入、規模3.6兆円か 財政等要因が市場予想下振れ
https://jp.reuters.com/article/intervention-idJPKBN2QR0OD
円買い介入の場合、資金を吸収された銀行が短期金融市場で資金調達する可能性もあるが、26日の短期金融市場では「銀行に特段の動きはみられず、無担保コール翌日物に、特段の上昇圧力は強まっていない。むしろ連休前の4日積み要因が剥落し金利は低下傾向。日銀が資金を供給して非不胎化する必要性は薄い」(国内金融機関)
たまたま引用した「非不胎化する必要性は薄い」は、「不胎化する必要性は薄い」の間違いではないかと思います。
受給の調整をしないことを非不胎化と呼ぶそうですから。