8月19日に法的基盤が覆る?日韓関係はどうなるのか
韓国が作り出した自称元徴用工問題を巡り、例の「19日までに資産売却命令が確定するかもしれない」という論点に、続報がありました。この「19日」という日付自体、「裁判所が事件を受理して4ヵ月以内に審理を続行するかどうかを決定しなければならない」というものであり、韓国外交部関係者は「審理不続行にもなりうるし、審理をもう少し行うこともありうる」などと述べた、というのです。この19日という日付が、日本が韓国を名実ともに「無法国家」とみなす契機となるのかどうか、注目したいところです。
「8月19日」の意味
今朝の『徴用工訴訟:早ければ19日にも資産売却命令が確定?』でも取り上げた、例の「日本企業の資産売却が早ければ19日にも韓国大法院(※最高裁に相当)で確定する」とする話題を巡っては、ほかのメディアにも取り上げられていました。
ここで紹介しておきたいのが、韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)に本日掲載された、次の記事です。
日本の戦犯企業の資産売却、最高裁の決定間近…「被害者不参加」の官民協議開催
―――2022-08-10 10:25付 ハンギョレ新聞日本語版より
ハンギョレ新聞によると、「19日」というのは、「裁判所は事件を受理してから審理を続行するかどうかを4ヵ月以内に決定しなければならない」とする韓国の国内法上の期日のことですが、これは「裁判所が19日までに決定を下さなければならない」、という意味ではなさそうです。
というのも、ハンギョレ新聞の記事では、外交部当局者のこんな発言を紹介しているからです。
「審理不続行にもなりうるし、審理をもう少し行うこともありうる。それはすべて裁判所が決定する事案だ」。
ただ、19日が日本企業の再抗告に関する判断の節目であることは間違いなく、もしもこの日までに大法院が再抗告を棄却すれば、日本企業の資産売却命令が法的に確定することになります。
資産現金化はほぼ不可能だが…
このあたり、当ウェブサイトでは繰り返し指摘してきたとおり、原告側が差し押さえている資産は、三菱重工に関しては商標権と特許権、日本製鉄に関しては非上場の合弁会社株式であり、売却命令が確定したとしても、「そもそもその資産は売れるのか」という点については、大いに疑問ではあります。
というのも、競売手続を行ったところで、「買い手」が現れるかどうかは微妙だからです。
たとえば、譲渡制限条項が付いた非上場株式を購入しても、韓国の会社法制上、その会社の取締役会は「買い手」に対し、株主名簿の名義書き換えを拒絶することができます(その場合、「買い手」としてはその株式を、会社が指定する第三者に買い取らせることを要求することなどができます)。
また、知的財産権については、さらに不可解です。特許権ならまだ理解できなくもありませんが、商標権に至っては意味不明です。三菱重工の商標権を競売手続で落札しても、三菱重工としては、せいぜい、その商標権が韓国国内のビジネスで使えなくなる、というくらいの効果しか生じないからです。
ただ、こうした「金融評論家」としての当然の疑問については、残念ながら、ハンギョレ新聞の記事のどこを読んでも、ちゃんとした答えは出ていません。本当に残念な話です。
「日本の謝罪の在り方」を勝手に議論する人たち
それはともかくとして、このハンギョレ新聞の記事によれば、ほかにも付加情報がいくつか含まれています。
たとえば、9日午後に開催された第3回協議会の会合では、「加害者である日本の戦犯企業」(※原文ママ)の「国内保有資産の特別現金化(売却)についての最高裁決定が差し迫っていることから、緊迫感の中で会議が行われた」、などとしており、
また、「日本の謝罪の在り方」をめぐっても、こんな具合に議論されたのだそうです。
「日本側の謝罪を具体的な書簡や文書のかたちで受け取るべきか、あるいは口頭で受けるべきか、過去の日本側の謝罪表現とやり方などを改めて考慮しうるなどの意見が出された。日本政府の責任ある高位級関係者が加害企業側に対し『謝罪など企業独自の決定に介入する意思はない』と表明すれば、謝罪については融通がきくだろうとの指摘もあった」(※外交部当局者)。
「日本政府が口出しをせず、日本企業が謝罪する」という「落としどころ」が勝手に韓国側で議論された、ということですが、自称元徴用工問題でなぜ日本が謝罪しなければならないのか、意味がわかりません。本来ならばこの問題自体、むしろ韓国が加害者であり、日本は被害者だからです。
ただ、それと同時にこの発言からは、とにかく日本側に謝罪させようとして必死だという様子だけは伝わってきます。日本企業ないし日本政府がこの問題で、ひとことでも謝罪すれば、韓国側が「日本が謝罪に応じたということは、強制徴用の事実を日本が認めた証拠だ」、などと付け入るためでしょう。
自称元慰安婦問題などの前例を踏まえれば、手口としてはまったく同じであり、当然にあり得る展開です。まさに、「見え透いた罠」、というわけであり、とりわけこうした手口に自ら引っかかりに行く、外務省という「ウソツキ」(『ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」』等参照)にも警戒は必要です。
法的解決をみずから放棄する
ちなみにハンギョレ新聞の記事で看過できない記述は、ほかにもあります。これによると9日の会合では、一部の参加者からこんな趣旨の指摘がなされた、としています。
「法理的側面だけでなく、感情的側面まできめ細かく漏れなく備えなければ、解決策は失敗する」。
これもなかなかに強烈な発言です。韓国自身が「法治国家」であるという体裁をかなぐり捨てようとするものだからです。だれかこの発言が「おかしい」と思わなかったのでしょうか。
いちおうマジメにツッコミを入れておくならば、法的側面を無視した解決策など、失敗すれば良いのではないでしょうか。
日韓関係については、韓国側からは「法的に解決ができない」などとする主張が、左派、右派を問わず出てきますが(『韓国弁護士「過去の問題は法的手段では解決できない」』等参照)、韓国側がかたくなに「法的に解決できない」と言い張るのなら、正直、無理に解決させなくても良い話です。
この場合、韓国は「国際法に従った解決ができない国だ」と自ら宣言することにもつながりますし、私たち日本人としても、今後、韓国とお付き合いする際には、「国際法の保護が受けられない国である」という点を、きちんと認識することができます。
「19日」が「韓国無法国家宣言」の期日となるのか
その意味では、自称元徴用工問題を巡る「節目」とは、韓国が「国際法に従った問題解決ができる国であるかどうか」に関して、日本国内でコンセンサスが形成される日付のことを指すのでしょう。
この点、1965年の日韓基本条約・日韓請求権協定以来、少なくとも今までの間は、日本企業としてはこれらの条約の枠組みのもと、安心して韓国でビジネス展開をしてきました。韓国が国際法を守ってくれるという期待感もあったからです。
したがって、「その期日」以前に韓国に進出した日本企業が、韓国国内で不当な扱いをうけたならば、日本政府にはその被害者である日本企業を全力で擁護する義務がありますし、韓国に対しては日本企業に生じた被害を回復するように要求しなければなりません。
しかし、「その期日」以後に韓国に進出した日本企業に関しては、「韓国は約束を守らない国だ」という点を踏まえたうえで、自社のビジネスリスクとしてそれを行ったということであり、日本政府にそのような企業を守る義務はなくなります。
もし8月19日までに韓国大法院が売却命令を確定させたならば、韓国は司法機関である大法院自身が、日本政府側の度重なる警告にも関わらず、日韓間の法的基盤である日韓請求権協定を根底から覆したことを意味します。
その意味では、自称元徴用工問題自体、現金化がなされる、なされないを問わず、その期日までに解決策を自ら策定できなかった時点で、「韓国は安心してビジネスを営むことができる国ではない」というコンセンサスを日本社会に形成する役割を果たすのです。
8月19日がその「期日」となるのかどうかについては、引き続き、注目する価値はありそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
三菱には是非、李氏朝鮮時代の写真を提示して、日韓併合により職のない浮浪者に職と給料と安定を与えたので感謝こそされ、謝罪する理由など一切ありませんと燃料投下したら面白いのに。
やはり、嘘には真実で対抗するのが良いのかと。
いつも通りの「決まったことは何もない」ですね。
15日の大統領演説への呼応を見て・・ってところでしょうか?
彼らが「反日謝賠請求の不作為は違憲」って状態を改めない限り、健全な状態にはなり得ないんでしょうけどね・・。
日韓議連はまだ存在してうごめいているし、外交部会および部会長の言うことなど一切聞かない外務大臣リンが留任です。これらの原因は、日本のためになったかという結果責任を一切とらない日本官僚の悪しき伝統(バブル未満世代の年金はますますやせ細り、崩壊した厚生年金プールやホテルの廃墟があちこちにあるが、エライ役人や大臣が責任をとって辞めたという話を寡聞にして聞かない)を政治家が引き継いでいるからでしょう。
何を言いたいかと申しますと、言うことは正しいのでかわいそうですが、髭の隊長は、今回の内閣改造前に、自民党外交部会長として実質的に役に立っておらず、内弁慶言うだけ番長だったことを恥じて、リンを道ずれに職を辞するべきでした。
髭の隊長さん擁護派にとっては過激かもしれませんが、ムシャクシャして発言しました。後悔はしていません。
日韓議連に政府方針を動かす程の力があるのか、官邸にどれくらい影響があるのか明日から注目してみましょう。
議連の名簿に名前があるだけでギャースカギャースカ言ってる人とも、そろそろお別れを告げる時期なのかなも含めて。
理系初老さま
ご一緒にどうですか?
キャリアパスで言えば部会長は当選3回生のポストで大臣から見れば小僧、組織論で言えばその発言が党の見解になるのは党三役。三役の中で政策担当は政調会長で部会長はその下に大勢いるグループ長に過ぎない役職。
外交部会長が何か言ったところで外務大臣が一々相手にするはずもない。外務大臣が林氏であろうがなかろうが。カウンターパートとしての格と権限のお話。
数日前倒しして8月15日の終戦記念日(韓国の祝日なんか知りません)に
「差押え現金化〜」
ってやって盛り上がるんじゃないですかね?
祭りのあとは寂しいもんになるのが常ですが。
韓国の愛国者が資産を買うと思いますよ。
北朝鮮系企業とか中国企業が愛国市民団体に裏金渡して
買わせるんでしょ
日韓関係を壊せば、最終的に米韓同盟も叩けるから
こんな美味しいタイミングで買わないなんてありえない
仮に大法院が再抗告を棄却すれば、日本企業の資産売却命令が法的に確定するものの、またその後の手続が牛歩のごとく延々と続く、スレスレ戦術の続きとなると予想します。
恐らく、韓国政府は、『「現金化」とは原告側が文字通り被告企業の資産(既に法的に差押されている)を競売にかけ現金を手にすることをというので、それまでは「現金化」ではない。従って、日本政府は直ちに報復措置をとるべきではない。』などと宣い、岸田政権はそれに唯々諾々と応えてしまうと予想。
ブログ主様が命名(?)されて、「ヤルヤル詐欺」はまだまだ延々と「千年の恨み」のごとく続くことでしょう。
ヤレヤレ。。。
抗告中の現在は、現金化できないのは抗告をした三菱のせいという責任転嫁が可能です。
しかし棄却されて確定してしまうと、それ以降は現金化の時間を稼いでも責任は韓国政府(と裁判所)にあるため、ローソクの炎に対して矢面に立つ事になってしまいます。
支持率が高ければまだしも、現状の韓国政府が国民による現金化圧力には耐えられないと見ています。
韓国側が勝手に落とし所として日本企業の謝罪を期待しているだけなら「勝手にそう思ってろ」で済む。
しかし、どうも日本側にも、それに呼応して解決を図ろうとする者が、外務省を中心に居るような気がしてならない。
・日本企業が謝罪し、韓国政府が補償するという案なら、被告企業に金銭的損害は出ないから、日韓請求権協定に反しない
・現金化されれば、日韓関係は実質的に破綻する。
謝罪一つでそれが防げるなら、韓国で商売をしている日本企業にとっても悪い話ではない
こんな理屈で「謝って済むなら謝った方がいい」と考える人が、それなりの数居る気がする。
“コトナカレ”というか…メディア露出している外務省OBは軒並みソッチ方向のコメントしている印象アリです
テメーらマジ国益スルーなのな、って思ってしまう短絡的なワタクシデアリマス
謝罪をすれば植民地支配による強制連行、強制労働を認めたことになりますね。
慰安婦問題と同じです。
もっとも現金化スルスル詐欺は現金よりそこが狙いなんですけどね。
もう一人相撲は、見飽きました。
4年近くもよく、やってられますね。
年金が99円で韓国が激怒!
これって当時既に日本は年金制度がありそれを朝鮮半島にまで適用していた。
の証拠になるのですが彼等には厚生の意味が理解できないのでしょうねえ。
いつもですが”金金金”しか興味が無い、見えない。
ノでしょうねえ
コレ煽るなら「まんじゅうこわい」と「HAHAHAヤツ等にそんなガッツはねえヨ」どっちでしょ?
「どーせまた勝手に切った期限をムービングゴールポストよろしく先延ばししてソレを以て配慮だ努力だしてる風吹かすんでしょ」あたり??
>しかし、「その期日」以後に韓国に進出した日本企業に関しては、「韓国は約束を守らない国だ」という点を踏まえたうえで、自社のビジネスリスクとしてそれを行ったということであり、日本政府にそのような企業を守る義務はなくなります。
この点については、日本政府は期日以後に韓国へ進出した企業であっても守る羽目になる気がします。
例えば、ISISの支配地域に行って捕まった日本国民であっても、日本政府は日本国民である以上は助ける羽目になりますし。。。
皆さまの期待が高まっているところ申し訳ないですが、これからも延々と遅延状態が続くだけで、現金化は決断できません。損得勘定に長けていらしゃる半島の方々のなかに、「正義」のために火中の栗を拾う度胸のある人はいないでしょう。したがって、当方としては「被害者」が全員いなくなるまで、このまま何年でも放置しておけばよろしい。変に反応するのではなく、関わり合いにならないのが一番。「日韓議連」とやらも、そのうち高齢化で自然消滅するんじゃないかな。