韓国警察幹部竹島上陸で外相会談も実現せず=時事通信

これを日韓関係の「悪化」と呼ぶべきなのでしょうか。時事通信によると、林芳正外相が就任してからもうすぐ1ヵ月が経過しますが、日韓外相会談が行われる予定はないそうです。韓国警察庁長の竹島不法上陸が影響したためだというのが時事通信の説明ですが、個人的には外相同士の会談すらなくなった現在の状況を日韓関係の「悪化」と呼ぶのが適切なのかは微妙だと思う次第です。

韓国に下手な譲歩ができなくなった日本外交

「独り相撲」で勝手に盛り上がる「朝鮮戦争終戦宣言」』を含め、当ウェブサイトでこれまでに何度となく取り上げてきたとおり、日韓間には諸懸案が山積みであり、しかもそれらの諸懸案は、ほとんどが韓国側からの日本に対する一方的な不法行為(国際法破り・条約破り・約束破り・外交非礼・準戦闘行為など)です。

そして、これらの諸懸案を巡っては、最終的には次の3つのどれかしか落としどころがありません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

まことに残念な話ですが、現在のところ①の選択し、すなわち「韓国が国際法を守る方向に舵を切る」という形での諸懸案の解決は、期待がし辛いのが実情でしょう。

そうなると、日韓関係の破綻を防ぐためには、何らかの形で日本が韓国に対し譲歩することが必要です(これには、たとえば「2018年の火器管制レーダー照射事件を不問に付す」、「自称元徴用工判決問題で韓国の判決を認める」、などが考えられます)。

ただし、念のためお断りしておきますが、個人的にこの②の選択肢については、日本国民の1人として、絶対に御免蒙りたいと思う次第ですし、同じように考えている日本国民は大変に多いのではないでしょうか。

このため、もしも日本政府がハンドリングを間違え、韓国に対し何らかの譲歩をしてしまった場合、日本国民の怒りの対象は韓国に対してではなく、その韓国に下手な譲歩をした日本政府の側に向かう可能性が非常に高いと思います。

韓国の不法行為を「不問」に付してきた日本外交の失敗

思うに、『失敗に学ぶ日韓外交:「密室外交」からの脱却が必要だ』でも議論しましたが、日韓両国は何かトラブルがあると(つまり韓国が何らかの問題を作り出すと)、韓国側が密室で日本に譲歩を要求してきたというのが、1965年の国交正常化以来の日韓外交だったのではないかと思います。

そして、「密室の合意」をベースに日本が韓国に謝罪したり、賠償したりすると、韓国はとたんにその合意を反故にし、「そら、日本が謝罪したぞ」と国際社会に対して喧伝し、「日本が悪い」ことにされてしまっていたのではないでしょうか。

たとえば、1993年の「河野談話」にしたって、おそらくは韓国の側から、「慰安婦の強制連行が事実だったことにしてほしい」、「今回だけは日本が謝ってほしい」、という「密室ベースの依頼」があったのではないかと個人的には睨んでいます。

実際、今日において「慰安婦問題」は、「日本軍による性的奴隷の問題」として全世界に認識されています。

これなど、日韓密室外交の大きな失敗だったといえるでしょう。

また、『慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」』でも取り上げたとおり、2015年12月に日本政府が韓国政府との間で慰安婦合意を取り交わした際、官邸には抗議が殺到していた、といった報道もありました。

そして、この慰安婦合意も、韓国で政権が変わったらあっけなく破られました。日本国民の懸念は的中した格好です。

日韓トラブルの「国際化」が大事

もちろん、経済・産業的に見ても、外交・安全保障的に見ても、現在の日本にとって韓国との関係はそれなりに重要ですので、日本が韓国との関係を積極的に「破綻」させることは難しく、また、そうすべきでもありません。

しかし、それと同時に、現時点において、日本がこれ以上、韓国に対して何らかの譲歩をすることは不可能であり、必然的に、日韓関係を巡っては、当面、下手をすると数年は、現在の膠着状況が続かざるを得ないのではないでしょうか。

こうしたなか、日韓諸懸案に対する日本政府の動きで特筆すべきものがあるとしたら、『日韓の「意見の相違」で日米韓共同記者会見取りやめに』などでも取り上げた、「日米韓3ヵ国共同記者会見の中止」でしょう。

これは、現地時間11月17日に米国で行われた日米韓3ヵ国外務次官級会合で、日本側が韓国の警察庁長の竹島不法上陸に抗議する形で共同記者会見への参加を拒絶した、という「事件」です。

これについては『日本が会見見送りで米国のメンツ潰した「本当の意味」』でも申し上げたとおり、この「事件」の本質とは、竹島問題の「国際化」にあります。

つまり、日韓両国の同盟国でもある米国に対し、竹島問題の存在を強くアピールし、「竹島問題が日米韓3ヵ国連携に直接影響する」ということを強く牽制したという意味では、日本の外務省は珍しく、大変に良い仕事をしたと思う次第です。

くどいようですが、「密室外交」自体、「ウソをつかない」、「約束を守る」など、信頼に値する相手としか成り立ちません。

日本政府がここ数年、積極的に推進している「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想も、これに基づく「日米豪印4ヵ国(クアッド)」による協議の枠組みも、結局のところ、「信頼できる」という相手だからこそ成り立つものです。

おそらく日本は今後、FOIP諸国などとは「密室協議」を積極的に推進していけば良いと思いますが、それと同時に、「約束を破るのはわが国の文化だから、日本はそれを理解せよ」などと平然と言い放つような相手と密室協議をすべきではありません。

今後の日韓関係が修復に向かうのか、破綻に向かうのかは存じ上げませんが、少なくとも韓国との間では、竹島問題を含めた諸懸案を積極的に「国際化」し、韓国の日本に対する不法行為の数々について、国際社会のスタンダードで判断してもらう、という態度が重要でしょう。

日韓外相は電話会談すらない状況=時事通信

こうしたなか、時事通信には昨日、こんな記事が掲載されていました。

日韓外相、電話会談すらなく 「竹島上陸」でさらに冷却

―――2021年12月05日21時08分付 時事通信より

これは、林芳正外相が就任してから10日で1ヵ月を迎えるなか、林外相が各国外相とあいさつを兼ねた電話会談を重ねる一方で、韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官とは会談の「見通しが立っていない」と指摘する記事です。

時事通信によると、林外相は11月13日にアントニー・ブリンケン米国務長官と会談したのを皮切りに、これまで約15ヵ国の外相と電話、テレビ会議システムなどで会談しているものの、このなかに韓国は含まれていないと指摘。

そのうえで、外務省幹部が「韓国は当分ない」と断言した、と報じています。

本来ならば、新外相の就任は電話会談を推進する良い機会であるはずですが、なぜ、日韓外相会談が開かれていないのでしょうか。

時事通信は韓国警察庁長の竹島不法上陸に日本側が反発したことで「対話ムードがしぼんだ」、「竹島上陸の影響で(電話会談の)調整すら行われない状況に陥った」と述べるのですが、日韓の対話ムードが欠落している状況は、べつに今になって始まったことではないと思います。

日韓の「外交閉塞」状況は当面続く

実際、茂木敏充前外相も、今年5月のロンドンG7外相会合などで鄭義溶氏と対面会談をしていますが、正直、直接会っても両者の会談は平行線をたどるのみであり、決して生産的なものではありませんでした。

また、時事通信の記事では触れられていませんが、今年1月に来日した姜昌一(きょう・しょういち)駐日韓国大使自身も、菅義偉総理や岸田文雄・現首相、茂木前外相や林外相と面会できておらず、その意味では、日韓の外交チャネルは閉塞状況が続いているのです。

少なくとも文在寅(ぶん・ざいいん)政権が続くあと5ヵ月間は、日韓の対話が極端に少ないという状況が続く可能性が高いと見るべきでしょうし、また、文在寅政権が終わったあとで、日韓間の対話が拡大すると期待するのは尚早です。

そして、来年3月時点で文在寅氏の後継者に選ばれるのが「左派」(?)の尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏なのか、「極左」(?)の李在明(り・ざいめい)氏なのか、あるいはそれ以外の人物なのかはまだわかりませんが、誰が次の大統領になったとしても、状況はあまり変わらない気がします。

もっとも、「韓国が日本を挑発する行動を取り、日韓が密室で話し合い、日本が譲歩する形で丸く収める」という形での、古き悪しき日韓関係が機能しなくなったという意味では、現在の状況を「日韓関係の悪化」と呼ぶのが正しいのかについては微妙だと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. イーシャ より:

    ゼロコロナは無茶でも、ゼロコリアはよい政策ですね。

    1. だんな より:

      イーシャさま
      ふと思った事です。
      立憲が主張していたゼロコロナは、現状の様な状態の事で、実現不可能な話では無かったとか、言い出さないかな。

      もう一つ
      「ウィズコロナのコリアとウィズコリアするニダ。」
      ただ、感染拡大しているだけじゃん。

      お後がよろしいようで。

  2. だんな より:

    外交は、価値観の共有、軍事安全保障、経済安全保障などの要因から、相手国との優先順位が出来て、必要に応じて取捨選択されるものでしょう。
    価値観を共有せずに、安全保障上の価値も下がり、感情だけでNO JAPANをするような国の優先順位が下がるのは、当たり前です。
    それが、関係悪化になるなら、それまでの事。
    「約束を守らない嘘吐きの国の優先順位を上げろ」という話の方が、よっぽどおかしな話だと思います。

  3. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    日本でコロナ感染者数が反転してきたかな
    正月開けくらいに、また緊急事態宣言かも

  4. カズ より:

    Q.「日韓関係の悪化(あっか)」と呼ぶのが正しいのかについては微妙・・
    A.「日韓間は空く化(あくか)」しています。

  5. 福沢諭吉 より:

    「竹島問題の国際問題化」「韓国の特有性、異常性の国際問題化」と進める意味では、次期大統領は李在明氏が最適人かと思います(笑)。
    又、米国は、韓国の異常性を薄々認識しつつも、その対価(負担)を日本へ押し付けてきましたので、米国以外の国(特にクアッドやファイブアイズ、ASEAN)も巻き込む事がポイントかと考えます。

  6. M1A2 より:

     外務大臣就任の挨拶程度の会談ならTwitterとかFacebookでやり取りしたらそれでええやん。
    SNSを活用した外交をこれからの日韓関係のスタンダードにしていきましょう。

    1. どみそ より:

      ファクスで送りつければいいんじゃないの。
      どうせ 返信には ろくなこと 書かれていないでしょうし。

  7. ホワイト国 より:

    この際、日本の外交白書には、

    「韓国は、わが国と価値観が異なる隣国」と
    「我が国の領土を不法占拠している国」と表記すればよいと思います。

    1. 匿名 より:

      引っ越したくても引っ越せない隣国
      で充分

  8. 匿名29号 より:

    本文中に引用された時事通信の記事末尾に、
    >『元徴用工、慰安婦問題などの懸案を協議する事務レベル対話は継続しており、日韓外交筋は「韓国側がやりたいと言えば検討する」と話す』

    とありますが、そんなこと聞いてへんで。国民の目の届かない「事務レベル」の対話こそ密室外交と違いますか。まあ、記者が勝手にそう書いているだけかもしれませんが。

    1. 裏縦貫線 より:

      事務レベルで、韓国側がやりたいと言えば検討すると聞いて、おととしの夏の
      「事務的説明会」
      を思い出しました。

      1. 匿名29号 より:

        韓国紙に書いてあることは自分に都合よく事実が粉飾されていて、まったく正確性に欠けていますね。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告