日本が入国を認める相手国に中韓台港米は含まれない?

本日の「速報」です。日本政府が夏以降、タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランドの4ヵ国を対象に、ビジネス客の入国を1日あたり最大で250人ほど認める方向で調整していると、複数のメディアが報じました。この「入国を認める相手国」に、2019年における入国者の多くを占めていた中国、韓国、台湾、香港、米国が認められなかったわけですが、これについてどう考えるべきでしょうか。

複数メディア「夏以降、4ヵ国に対し1日250人までの入国認める方針」

本日の「速報」です。

いくつかのメディアの報道によると、政府は今年夏以降、タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランドの4ヵ国を対象に、ビジネス関係者の入国を1日で最大250人程度認める「方向で調整している」と、複数のメディアが報じました。

タイ・ベトナムなどからビジネス目的の入国緩和へ(2020年6月11日 10:41付 FNNプライムオンラインより)
4か国から1日最大250人、入国許可へ(2020-06-11 12:32付 MBS NEWSより)
入国者1日最大250人程度で調整 ベトナム、豪州など4カ国 入国制限緩和策(2020.6.11 11:38付 産経ニュースより)

(※上記以外にも情報源多数)

政府の公式発表に先立って、民間メディアがこのように報じるというのにも違和感があります。

これまでも政府が世間の反応を知るために特定のメディアだけに情報を流したのではないかと思しき事件は何度か発生しているのですが、ただ、報じたメディアの系列もバラバラであるにも関わらず、「4ヵ国」、「1日250人程度」、「夏以降」、「ビジネス客限定」という要素はどの報道でもだいたい一致しています。

以上の情報から判断して、今回の各社の報道は、おそらく本当に政府関係者から情報を得ているのでしょう。

この4ヵ国の意味、そして入国者のシェア

もっとも、『ビジネス客の入国制限解除はTPP加盟国から順番に?』などでも紹介したとおり、この4ヵ国については読売新聞が5月23日付の『政府、入国制限を段階的に緩和へ…夏以降に専門人材など』という記事ですでに触れられており、新鮮味がある、というものではありません。

また、今朝の『正論:入国制限の緩和「中国は念頭にない」=茂木外相』でも示したとおり、当ウェブサイトの用語でいういわゆる「茂木3要件」を満たしている国は、この4ヵ国以外にもあると思いますが、その典型例は、台湾です。

出入国条件が緩和されるための条件(茂木3要件)
  • ①相手国が日本について「感染状況が落ち着いている」と判断すること
  • ②日本が相手国について「感染状況が落ち着いている」と判断すること
  • ③日本と相手国が同時に同様の入国制限緩和措置を実行すること

なぜ台湾に対して制限を解除しないのか、謎ですね。

ちなみに、日本政府観光局(JNTO)の『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』によると、2019年における入国者数は3188万人で、そのうちの30%が中国ですが、台湾からの入国者数は韓国に続き3位です(図表)。

図表 2019年を通じた入国者数
相手国・地域入国者数構成比
中国959.4万人30.09%
韓国558.5万人17.52%
台湾489.1万人15.34%
香港229.1万人7.19%
米国172.4万人5.41%
その他779.8万人24.46%
総数3188.2万人100.00%

(【出所】日本政府観光局『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』より著者作成)

いずれにせよ、上位5ヵ国・地域(中韓台港米)は各メディアが報じた4ヵ国に含まれていないというのはひとつのポイントでしょう。

反発が予想される国とは:

さて、その一方で、予想どおり「あの国」がさっそく反発しているようです。

日本、今年夏から4カ国入国許可…韓国は含まれず

(中略)4カ国だけ第一次として入国制限を緩和する方針であることが伝えられた。韓国はここに含まれなかった。<<…続きを読む>>
―――2020.06.11 15:37付 中央日報日本語版より(※下線は引用者による加工)

なぜわざわざ「韓国は含まれなかった」などと報じるのでしょうか。もしかして、韓国が「K防疫」にプライドを感じていて、「コロナ禍の抑え込みで日本に勝った」と自負しているからなのでしょうか?このあたりはよくわかりません。

声高に「ノージャパン」を叫んでおきながら、実際に日本から入国拒否措置を受けると反発するあたり、文化人類学的な観点からは研究しても面白いかもしれませんね。

(※もっとも、韓国メディアが日本に対してあたかも入国制限が不当だと言い募る心理については、『鈴置論考が解く、韓国が「輸出規制撤回」を求める理由』でも述べた、「輸出『規制』」とやらの撤回を求める心理状態と似ているのかもしれませんが…。)

サプライチェーンの組み替え

一方で、コロナ禍の最大の加害国である中国といえば、こんな報道が出ています。

G7声明 中国「重大な関心」(2020/6/10 18:30付 日本経済新聞電子版より)

これは、昨日の『「日本主導でG7対中声明」は共同通信虚報のおかげ?』でも触れた、安倍総理が「対中G7共同声明を日本がリードしたい」と述べた、とする話題に関連し、中国政府・外交部の華春瑩(か・しゅんほう)報道局長が

「(香港は)完全に中国の内政に属し、いかなる外国も干渉の権利はない

などと述べた、という話です。

わが国の総理大臣が靖国神社に参拝したときにはやたらとギャーギャー騒ぐくせに、自分たちが香港の自治を弾圧しようとするときには「内政問題だ」と文句をいうというのも、見事なダブルスタンダードで呆れますね。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただ、今回の武漢コロナ禍の教訓がひとつあるとしたら、「普段からの信頼関係の醸成」が、いかに大切であるか、という点でしょう。

中国や韓国は、形のうえではサプライチェーンなどの結びつきも強いのが実情ですが(※このあたりについては早ければ数ヵ月以内にウェブサイト以外の場で論じたいと思います)、逆にいえば、日本に対して不法行為を仕掛けてくる国、ダブルスタンダードの国と結びついていて良いのか、という論点に直結します。

入国制限解除については日本政府の公式発表を待ちたいと思いますが、将来的な「ヒト、モノ、カネ、情報」という交流に関しては、もう少し深い議論が必要なのではないでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 豆鉄砲 より:

    先日のプライムニュースに真田教授が出演されていた回で仰られていました。

    入国管理で韓国が喚くのは「技術者が入国出来ないからだ」と。

    要は半導体などを作る機械の多くは日本製で、そのメンテナンス技術者が入国出来ないのは困ると。

    これもひとつの経済制裁ですね。

    1. しきしま より:

      豆鉄砲 様

      技術者もそうなんでしょうが、一般人の観光欲求も強いと思います。
      LCCを使えば安いし、近いのでその気になれば日帰りも可能。
      見所のある観光地はたくさん。食い物はうまい。
      何よりボッタクリが無い。

      韓国人は本心では日本に憧れていると思います。
      No Japanがほとんどうまくいってないことからもわかります。
      憧れてはいるけど、韓国はなかなか(おそらく永遠に)日本の立ち位置にたどり着けない、だからこそ憎いのでしょう。

  2. sey g より:

    自分は、WHOの仕事の一つは、新しい感染症が出た時にすぐさま情報を収集開示し 感染症の拡がりを押さえ込む事であると思っています。
    しかし、当事国が情報をWHOに報告せず、WHOも強制的に調べに行けないなら これからもこの様なコロナ禍が起こり得ると思います。

    アメリカ、ブラジルがWHO脱退するのであれば、これはもう新しいWHO ネオWHOを作る方がいいのではないか?
    そして、ネオの加盟国以外の国からの入国は入国時 ホテルで待機 自費で健康調査し、その結果が良の時に初めて国内で活動出来る様にする。

    もう、世界を民主と独裁の2つに分離する時期に来ているのではないか?
    やはり、混ぜるな危険は正しい注意書きです。
    今の現状は89年のベルリンの壁崩壊後、混ぜてはイケナイものを混ぜた結果だと思います。

    まだ、引き返せる時点です。

    1. カズ より:

      保健機構を新設するのであれば「HOW」って呼称がいいかな?って思ってます。

      活動の趣旨としては脱中国ではいけない筈なんですけど、人道的な取組みに政治的な思惑を絡められると活動自体が成り立たなくなってしまうんですよね。

      ざんねんだけど。

    2. 心配性のおばさん より:

      sey g様

      こちらをうかがっていると、議論の内容もそうですが、キラキラする言葉を見つけることも楽しみです。

      >やはり、混ぜるな危険は正しい注意書きです。

      キラキラする言葉は大好きですが、ちなみに、私はカラスではありません。アジア系人類、一応女性に分類されています。

      ご提案については、激しく賛同いたします。お話の最初にあった国際機関の再編ですが、たしかに手に届くところにある具体的な手段ですわね。ただ、従来通りの組織だと、現段階での独裁国の排除はできますが、油断すると特定国の侵食が繰り返えされます。

      漠然としていて、嗤われることを覚悟で申し上げると、各機関の活動を検証できる効率的なシステムが無いものかと‥。

  3. だんな より:

    グローバリズムという言葉で語られていた時代から、ポストコロナの時代に変わるのだと思います。
    世界は、色々な形で分断していく様に思います。
    幸いにも日本は、恵まれた立場にいて、お金で困る事は無いと思います。
    日本のポジションを明確にしなければならない、良い機会になるかも知れません。
    友達は、選ばないといけなくなると思います。

  4. 七味 より:

    >なぜ台湾に対して制限を解除しないのか、謎ですね。
    コントロールしやすいように、元々入国が少なかったとこから門戸を開けるってことじゃないのかな?

  5. 小太りTAK より:

    台湾に関しては、残念ながら我が国の感染状況が落ち着いているという認定をしてもらえなかったのではないかと愚考します。なにせ台湾はすでに1か月余り新規感染者が0人の国ですので、そこから見れば我が国の感染状況はまだ落ち着いているようには見えないでしょう。

    1. さんにんパパ より:

      小太りTAKさんの見立てに完全に同意します。
      感染者数を厳しく抑え込んだ国ほど国境開放に慎重になるのは当然です。
      逆に集団免疫を達成した可能性がある欧州の国は積極的に他国民を受け入れるでしょう。こちらが行きたがるかどうかは別の話ですが。。。

      1. 墺を見倣え より:

        御説御尤もとは思いますが、台湾より感染者数の少ないベトナムが含まれている事を合理的に説明できますでしょうか?

        やはり、

        1)台湾はCPTPPに入って居ない、
        2)その原因でもある、日本産食品輸入規制をまだ続けている。
        (他にも、一部日本製工業品の輸入制限・持込制限を行っている。輸入制限どころか、観光客の一時持込すら制限している。建前上は別途許可証がジーれば持ち込める事になってはいるが、その許可証が入手困難。韓国・ベトナム・オーストラリア・ニュージーランドは持込OKなのに。)
        3)一応「一つの中国」という建前なので、中国へ忖度した。

        等では?

  6. ハゲ親父🐧 より:

    韓国は日本の「防疫上の入国制限」に対して「恒久的な入国制限」を実施しており、それを「外交の相互主義」に基く措置であると主張しています。🐧

    「外交の相互主義」を全面に出して、過剰な対日入国制限を日本に課しているのですから、日本が同様に「外交の相互主義」に則り対韓入国制限を韓国に課しても、どの様な外交上の問題も発生する筈がありません。🐧

    ここに両国の利害の一致を見る訳ですから、このままの状態で良いと思います。🐧

    相互排除による両国の利害を私なりに整理しておきます。🐧
    日本
    治安・風紀の改善
    産業スパイの排除
    将来の「自称徴用工」「自称慰安婦」の排除

    韓国
    精神的勝利

  7. かえる より:

    個人的にはまずこの4カ国、というのは妥当な選択だと思います。最初は目立ちますから、香港問題でピリピリの中国を悪戯に刺激するのも面倒ですし、なによりTAKさまのご指摘通り、残念ながら日本の現状は台湾から見て安心していただけるものではないでしょう。
    人間の心根もコロナはあぶり出しますね。実は残念な人、分かってはいたけどやっぱりあかん人、普段は目立たないけど信頼できる人…。国同士の関係も同じですね。どこの国がどのカテゴリに当てはまるかは控えますが(笑

  8. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    台湾は、日本の特に頻発している新型コロナウイルスのスポット、東京と札幌、北九州が落ち着いてないので、相互信頼関係にまで至らなかったのでしょう。

    難しい話しは分かりませんが、夏以降タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランドの4ヵ国を対象に、ビジネス客の入国を1日あたり最大限250人ほど認める方向とか。

    安モンのパッケージツアーではないから、飛行機も満席で飛ばすのではなく、60〜70%ぐらいの着席率に抑えるのでは?密で感染したら冗談では済まないですから。

    という事は、B-777等の400人〜500人乗れる大型機を使い、満杯にしない。横方向1列が9人掛けとして、2〜3人分座席を空けたら随分ラクです。

    それにビジネス客なら、アッパークラスから予約が埋まる。利益率大きいですよ(笑)。

    韓国はねー、まさか航空便復活とか思ってないでしょうネ?大邱もゲイクラブも真相と状況報告を克明にしないと話にならん!

    中国はコロナ禍の巣窟、ワザと仕掛けたかもしれない国。ビジネス客復活などありえません。中韓とも世界の孤児になるべし。

  9. 匿名 より:

    たしか中韓とベトナムはお互いにビジネス入国を認めてるはずなので、ある程度日本に来ることは可能なのでは?それを見越してのベトナム選択&人数制限だとは思いますけど。

  10. 匿名 より:

    コロナ終息とは程遠い状況なのに 今のザル状態の我が国の検疫体制ではワザワザコロナを直輸入するようなものだ。いまだに到着してからの検査で感染が見つかっているではないか。数日前にはパキスタン人が12名も検疫に引っかかってる。なぜ搭乗前にPCR検査をしないのか不思議でたまらない。同じ便で入国した旅客の扱いは放置同然だし。恐ろし過ぎる。

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