国民民主党のアンケートで7割弱が「経済政策」に関心

政治とカネはたった4%!

国民民主党の公式Xアカウントが25日にポストしたアンケートに対し、本稿執筆時点において2万件を超える回答が寄せられ、なかでも元も関心が高いのが「経済財政・賃上げ」で68.9%、これに「教育・子育て」14.3%、「外交・安全保障」13.3%と続き、「政治改革(政治とカネ含む)」については、なんとたった3.5%に過ぎないことが判明しました。これが国民の生の声なのでしょうか。

国民民主党はパンドラの箱を開いた

一部のメディアの世論調査によると、政党支持率で国民民主党が立憲民主党を上回り始めているようです。

といっても、とある理由もあって、該当する調査については、本稿では引用しません。本稿の段階では、あくまでも「一部の世論調査では」、というレベルに留めておきたいと思います。

それはともかくとして、先日の『国民民主が開いたパンドラの箱…国民対財務省の戦い?』でも指摘したとおり、国民民主党が言い始めた「年収の壁引上げ」という問題が、いまや、国民民主党を越えて、国民的な関心事に高まっているフシがあります。

当ウェブサイトで詳しく申し上げることはできませんが、著者自身、立て続けにいくつかの会合に参加し、懇親会などの場で、この「年収の壁問題」にコメントを求められたのです。

これについては、一定の仮定を置いたシミュレーション計算については、すでに当ウェブサイトでも何度となく触れてきたとおりですので、何となくイメージを付けて戴いている方も多いとは思います。早い話が、基礎控除と給与所得控除を動かすと、少なくとも働いている人の圧倒的多数に恩恵が及ぶ、ということです。

大雑把な試算で恐縮ですが、一定の前提を置いたうえでの年収ごとの手取りの変化は、次の図表のようなイメージです。

図表 年収ごとの手取りの変化
年収手取りの変化増加額と増加率
100万円987,600円→989,000円+1,400円(+0.14%)
150万円1,221,116円→1,261,900円+40,784円(+3.34%)
200万円1,599,264円→1,684,200円+84,936円(+5.31%)
300万円2,361,603円→2,474,890円+113,288円(+4.80%)
500万円3,847,111円→3,978,419円+131,308円(+3.41%)
750万円5,542,809円→5,766,313円+223,504円(+4.03%)
1000万円7,182,475円→7,410,625円+228,150円(+3.18%)
1250万円8,761,582円→9,012,704円+251,123円(+2.87%)
1500万円10,124,480円→10,452,178円+327,698円(+3.24%)
2000万円12,868,167円→13,195,865円+327,698円(+2.55%)
2500万円15,470,760円→15,852,060円+381,300円(+2.46%)
3000万円17,674,980円→17,674,980円+0円(+0.00%)

(【注記】試算方法は本稿末尾の「試算の前提」参照)

多くの所得階層で影響が生じる

年収3000万円の層で増加額、増加率がゼロになっているのは、現行の制度上、所得金額が2500万円を超えると基礎控除が「消える」(!)からです。これも酷い制度だとは思いますが、とりあえず今回の試算では、この部分については変更なし、という前提を置いています。

そして、所得金額が2400万円までに限定すれば、年収が上がるほどに減税額も上昇しますが、これに重税感に苦しむ多くの勤労者が反応しないはずはありません。必然的に、国民民主党に投票しなかった人たちの間でも、これが強く意識され、減税への期待感が強まっているのです。

(※余談ですが、財務省が余計な抵抗をして基礎控除の増加額に年収制限を設けようとすれば、少なくない人の怒りが財務省に向かいかねません。いったん発生した減税期待をへし折られると、その期待が絶望に、そして強い怒りに変わり得るからです。)

国民民主党のアンケート、政治とカネはたった3.5%!

こうしたなかで、国民民主党の公式Xアカウントが25日、とあるアンケートをポストしました。

これによると、「皆さんの声を国会にへ届けます」とありますが、本稿執筆時点において、アンケートには2万件を超える回答が寄せられ、なかでも元も関心が高いのが「経済財政・賃上げ」で68.9%、これに「教育・子育て」が14.3%、「外交・安全保障」が13.3%と続きます。

これに対し、(一部のメディアがアジェンダセッティングしていた)「政治改革(政治とカネ含む)」については、なんとたった3.5%に過ぎません。

もちろん、これら4項目以外にも関心が高い項目はあろうかとは思いますが、ただ、国民の多くの関心事は「政治改革」ではなく「経済政策」だという点は、なかなかに興味深い話です。新聞、テレビが世論を牛耳っていた時代だと考えられなかった話かもしれません。

いずれにせよ、国民民主党が選挙で躍進したことは、(著者自身の見解ですが)間違いなく日本の政治を良い方向に変える契機だと思いますし、それだけ国民民主党の「政策」に対する期待が大きいことの裏返しでしょう。

ただし、国民民主党が国民に対して約束した「手取りを増やす」が実現できるかどうかは、これからが正念場です。おそらく財務省側などからの巻き返しは、これから本格化すると懸念されるからです。

その意味では、これから(少なくとも予算が通るまでの)数ヵ月の政治は、なかなかに手に汗握るものとなることは間違いないと思う次第です。

試算の前提

なお、本稿で示した図表に関する試算の前提を示しておくと、こんな具合です。

試算の前提
  • 被用者は40歳以上で東京都内に居住し、東京都内の企業に勤務しているものとし、給与所得以外に課税される所得はなく、また、ボーナスはないものとし、月給は年収を単純に12で割った値とし、配偶者控除、扶養控除、ふるさと納税、生命保険料控除、配当控除、住宅ローン控除などは一切勘案しない
  • 年収を12で割った額が88,000円以上の場合、厚年、健保、介護保険に加入するものとし、その場合は東京都内の政管健保の令和6年3月分以降の料率を使用するものとする(ただし計算の都合上、端数処理などで現実の数値と合致しない可能性がある)
  • 雇用保険の料率は1000分の6とし、「社保」とは厚年、健保、介護保険、雇用保険の従業員負担分合計、税金とは所得税、復興税、住民税の合計とし、住民税の均等割は5,000円、所得割は10%とする
  • 本来、住民税の所得割は前年の確定所得に基づき翌年6月以降に課税されるが、本稿では当年の所得に連動するものと仮定する
  • 基礎控除は合計所得金額が2400万円までの場合、所得税が48万円、住民税が43万円とし、以降2450万円まで、2500万円まででそれぞれ基礎控除が逓減し、2500万円超の場合はゼロとする
  • 増加額と増加率は、単純に、基礎控除を合計所得金額が2400万円以下の場合は75万円、2450万円以下の場合は50万円、2500万円以下の場合は25万円、それぞれ現行よりも加算した場合で試算

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. taku より:

     私は、減税には賛成しますが、「亭主がフルタイムで働きメインの家計を支え、女房がパートで働き小遣い稼ぎをする」昭和の残滓のような家庭モデルを”拡充する”国民党案には、反対です(配偶者控除を廃止せよ、ではなく、これ以上の拡充は不要、との意見)。それくらいなら、一律10万円の税額控除にした方が、景気回復にも役立つと、考えています。
     折しも、もうひとつの専業主婦優遇策であるの国民年金の「第3号被保険者制度」解消の提言が、日本商工会議所から出ました。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/221dfffb8ce7bd4f8d7e0d7cee947a39acc09565
     税金の制度も、社会の変化に伴い変えていくべき。その方向感からずれた改正には、反対です(自分の手取りが増えるから、それでいいと考えるのは、どうですかね)。

    1. 匿名 より:

      流石、現実の経済を知らない人は凄いことを言うよね。この人、コメントぶりからして公務員経験者か何かだと思うけど、ちょっと民間経済の事を知らなすぎる。

    2. sqsq より:

      ここ40-50年でずいぶん変わったんじゃないかな。
      「会社を辞めたいがどうしたらいいだろうか」などというのが雑誌の人生相談の定番だった時代があった。答えは決まっていた「決して会社をやめてはいけません」
      今はテレビで転職支援サービスのコマーシャルが流れる時代。
      1980年代まで女性で25歳をすぎて会社に残っているというのは極めて居心地が悪かった。
      「どうせ25で辞めるんだから、女性は短大でいいんだよ」といわれ実際短大卒の就職はよかった。今は短大は人気がなく、有名短大が募集停止に追い込まれる時代。
      1980年代まで、大学を卒業しても就職しない女性はたくさんいた。同級生の女性に卒業後の進路をたずねると「家事手伝いなの」という返事。別に恥ずかしいことではなかった。
      よくアメリカではと言う出羽の守がいるが、ハルバースタムという作家が「50年代」というノンフィクションの中で50年代はアメリカでも結婚、出産を機に会社を辞める女性は珍しくなかったと書いている。
      私は製造業の現場で103万円までしか働かない女性を実際に見てきたが、彼女たちは損得を考えてその働き方を選んでいる。子供が私立高校に通うようになった、家を建て増したとなれば倍以上働くこともある。
      103万の壁は、要するに扶養家族の定義のこと。妻に限らず子供も103万円以上働けば扶養ではいられない。
      収入金額で扶養家族を決めているのは日本だけか?そんなことはない金額が違うだけのことでどこの国にもあるはず。確かアメリカはもっと下の金額だったはず。(ただしアメリカは配偶者との合算申告が選択できる)

      1. taku より:

        SQSQさま
        コメントありがとうございます。
         私は、米国の2分2乗方式(夫婦の年収を合算し2で割って、それぞれの階層の税率をかけて、2倍するやりかた)は賛成です。これなら年収の壁は生じない。
         国民民主党案は、単にその壁を103→178万円に引き上げる(当然、扶養対象者の年収制限も引き上げる)だけで、本源的な解決になっていない。
         年金の3号被保険者もそうですが、専業主婦モデルが崩壊しつつあるなかに、どうしてそこを拡充するの?ということなんです。
         付け加えれば、配偶者控除を今すぐ廃止せよとも、考えていません。それにはもう少し社会の納得が必要です。ただ配偶者控除の要件である配偶者の年収制限を、引き上げて今更このやり方を拡充するのは、賛成できない、ということです。

        1. sqsq より:

          米国では夫婦合算申告(Joint tax return )は選択制だったと思う。
          日本でもやってみたらいいと思うが、どのようなことが起こるかは想像がつく。

          現在もっと働けるのに103万円で働くのをやめている配偶者は:

          夫婦の手取り総額が (1)今まで通りの個別申告、(2)今まで通りの103万円で合算申告
          (3)103万円以上働いた場合の合算申告、(4)働くのをやめてしまった場合の合算申告
          等々を比べて決めるのだろう。
          そこに社会保険加入の問題も入って来るという「連立方程式」を解くことになる。
          雑誌では特集が組まれ、ガイドブックも出るかもしれない。

          要するに「壁」の高さが変わるだけのこと。人は収入と手取りを比べながら行動している。
          その意味で日本人はリテラシーが高いのだと思う。

          このような例はほかにもある。相続税を安くするために孫を養子にしてしまうとか、発泡酒の例とか。

    3. 匿名 より:

      >「亭主がフルタイムで働きメインの家計を支え、女房がパートで働き小遣い稼ぎをする」昭和の残滓のような家庭モデル

      来年は昭和100年らしいですが、仮に楽隠居の団塊世代でも余程の世間知らず以外はそんな家庭モデルの実在はこの30年で絵空事か歴史の遺物扱いになっていることを理解しているのではないでしょうか。
      以前のどこかの書き込みでもこの方は子育ての現実も見えていないようでしたし、
      もしかすると「金だけ渡して子育てに不参加、熟年離婚された元モーレツ会社員」とか「実生活では家族と疎遠で老境孤独に陥った雲上人」みたいなweb漫画の登場人物に近似した方なのでは?

    4. CRUSH より:

      どちらか選ぶ必要なんかなくて、どちらもやればいいじゃん。

      ①178万円案は、物価スライドを29年間サボってたのを、とりあえず元に戻す考え方。
       考えるまでもなく、まずやれ。(Just do it.)

      ②その上で今の時代に合わせて負担率の累進度合いはどうあるべきか?を、29年前と同じレベルで議論して国民合意を形成して定める。

      takuさんはなぜ二者択一みたいに誘導するのかなぁ。
      どちらもやればよろしい。

  2. Sky より:

    今回提示いただいた国民民主党のアンケート結果。このような意識感のある方々が国民民主党を支持された、ということでしょう。まぁバイアスが掛かっているわけですが、今まで赤化した老人民主主義のアンケート結果ばかり見せられていたので新鮮に感じます。私自身の肌感覚にも近いです。
    これで自民党の今回表舞台から引きずり降ろされた方々が奮起して、国民民主党とお互いに高めあって存在感を出していかないといけないわけですが、どのタイミング、どんな政策をきっかけに、どんな方法で、行動するのか、綿密に戦略を立ててほしい。勿論戦略に長けたその道のプロの知恵を借りても良いが、くれぐれも広告代理店丸投げとかはしないでいただきたいものです。

  3. KN より:

    >(一部のメディアがアジェンダセッティングしていた)「政治改革(政治とカネ含む)」については、なんとたった3.5%

    「ジェンダー・選択的夫婦別姓」に至っては、ハナから選択肢から割愛されていた。
    やはり、自分たちのお金のことが切実で関心がありますね。

  4. 簿記3級 より:

    マスコミ組織論で言えば
    有能な清貧 最高だ!
    有能な裏金 ⚪︎してしまえ!
    無能な清貧 最高だ!
    無能な裏金 ⚪︎してしまえ!

    裏金1番仕事は2番3時のおやつはふんふんふん〜♩という価値観らしいです。

  5. 匿名 より:

    自民党より水面下で醜聞が渦巻いている野党にカネ問題を指弾されたところで微塵も説得力がありません。だったら実務能力の有るところに負託するだけで、カネ問題はその後です。

  6. 雪だんご より:

    「モリカケサクラであれ程騒いだのに結局何も証明されなかった」
    「自民党なら裏金、野党なら不記載のダブスタが周知された」

    この2つが要因として大きそうな気がします。

    「多少金の流れが怪しくっても良いからとにかく経済を!暮らしを楽に!」

    オールドメディアが嫌がりそうな世論ですねえ。

  7. Masuo より:

    「政治とカネ」を争点にしてたのはオールドメディアだったと思うし。
    それに便乗して立憲は演説の8割が「政治とカネ」で自民党の悪口でした。

    メディアの神通力が本当に通用しなくなったことの1つの証明なのかもしれません。いくらオールドメディアが「政治とカネ」を煽っても有権者は騙されなくなった(扇動されなくなった)のだと思います。そう結論付けるのは尚早かもしれませんが、良い傾向だと思います。

  8. 元雑用係 より:

    国民民主党のアンケートですが、個人的に思ったのは首相に問いただしたいことは外交安保なんですが、「国民民主党として」首相に聞いて欲しいことであれば経済政策になりますね。
    しかしまあ今まで、これほどまでに注目を集める政策がありながら全く世間の主要アジェンダになってこなかったのは、財務省とそのポチたるマスコミの罪じゃないかと思います。
    ズレてんすよね。社会から乖離してしまってる。

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