「いまどきの若者」はなぜ「定時で帰ってしまう」のか

なぜ、イマドキの新人は、定時になるとすぐに帰ってしまうのでしょうか。これについては「最近の若者はなっていない」、「見た目は溌剌(はつらつ)としているが、内心では何を考えているかわからない」、などと若者に不満を持つ人もいるかもしれませんが、結論からいえば、「定時になるとすぐに帰ってしまう」のは「若者の問題」ではありません。「定時に帰らせない会社の問題」でしょう。

「最近の若者はなっていない!」

まったく、最近の若者はなっていない。

先日、僕の職場にも新人たちが入ってきたのだが、どの子も今どきの若者らしく、見た目は溌剌(はつらつ)としているが、実際、内心では何を考えているかわからない。最近の若者は定時が来たらさっさと帰ることが多いからだ。

僕たちが若いころ、新人は率先して居残りをしたものだ。学校を出たばかりの新人には仕事ができないわけだから、少しでも会社に居残りし、先輩や上司に「何か仕事はないですか」と呼び掛けて回ったものだ。

それなのに、「働き方改革」などの会社の方針もあってか、最近だと上司が率先して、新人らに対しては「仕事がなければ帰れ」と言っているらしいが、それを真に受けてさっさと帰る新人を見ていて呆れてしまう。

こないだ、学生時代の友人と久しぶりに呑んだのだが、やはりどちらともなく、話題は最近の若者の非常識さに移った。その友人も、若者たちには手を焼いているのだそうだ。というのも、飲み会に誘っても、あまり一緒に飲みに来てくれないからだ。

「最近の若者は」は古代からある文句

気が付いたら世間的には「若者」とは言い難い年齢となり、気が付いたら世間的には「オッサン」と呼ばれる年齢となり、気が付いたら「初老」に近い年齢となる――。

人間、本当にあっという間に年を取ってしまいます。

冒頭の「僕」が誰なのかについては伏せます。

ただ、本稿の読者の皆さまの間でも、この「僕」の発言を読んで、「あぁ、たしかにそうだね」と共感する方もいらっしゃるかもしれませんが、若い人ならば「なんだ、このオジサンは?」などと反発を覚える人もいることは間違いないでしょう。

ちなみに一説によると、人間というものは若者を見ると粗探しをしたくなるものらしく、「まったく、最近の若者は…」、といった愚痴は、古代ギリシャ時代、あるいは古代エジプト時代・ギリシャ時代などから見られたものだそうですが、どうしてこんな心理が出てくるのでしょうか。

著者自身の考えで恐縮ですが、これは人間の認知の歪みにあると考えています。

人間、誰しも自分自身については高く評価し、他人については低く評価するという認知の歪みがあるのですが(私見)、自分自身の若いころの経験が美化され、しかも時間が経過する間に都合が悪いことは削ぎ落され、「自分はこんなに頑張ってきた」という記憶だけが自分の中で純化されていくのかもしれません。

つまり、「自分が若いころにこうだった」という(美化された)イメージと、現実に自分の目の前にいる若い人たちを見比べて、「僕たち・私たちは若いころにこうだったのに、なんで最近の若者はこうなのか」、というバイアスがかかり、いつのまにか「若者」を「彼らはこうだ」、などと決めつけて眺めてしまっているのかもしれません。

なぜイマドキの若者は定時で帰ってしまうのか

こうしたなかで、少し前の記事ですが、こんな話題を発見しました。

なぜイマドキ新入社員は定時で即帰ってしまうのか

―――2016.08.10 05:00付 ダイヤモンドオンラインより

記事が公開されたのは8年前の2016年8月10日のことで、記事を執筆したのは「キャリアコンサルタント」という方だそうですが、記事の中では次のように問題提起されています。

なぜ彼らは定時で帰ってしまうのでしょうか。一方で、そもそも新入社員が定時で帰ってしまうのは悪いことなのでしょうか」。

長々議論する必要はありません。

結論からいえば、「彼らが定時で帰ってしまう」のは、「定時だから」です(笑)

つまり、定時で帰ってしまう若者が問題なのではなく、定時で帰らせない会社の側に問題があると考えるのが自然です。

これについては働き方改革総合研究所株式会社代表取締役の新田龍氏が1日、自身のX(旧ツイッター)に、こんなことをポストしています。

…。

まったくの正論と言わざるを得ません。

新田氏の指摘に賛同コメント多数!

しかも、興味深いことに、この新田氏のポストに対しては、こんな趣旨のコメントも寄せられているのです。

  • そもそも残業が本来のスケジュールに組み込まれてるのは、業務計画を組み立ててる側がおかしいという話でもある
  • 新入社員のうちに定時で帰らないと一生定時では帰れない。というよりも新入社員に残業させるような仕事があるのがおかしい。DX化できていない証拠
  • いまだに「残業して会社に貢献するのが社会人の一番の幸せ」という時代遅れの考え方の人もいるようだ
  • 定時で帰るようにしてない会社の方がおかしい
  • なぜ定時で帰ってはいけないと思うのか

…。

いかがでしょうか。

案外、この手の「新人が定時だから帰るのはおかしい」とする風潮にも、変化が生じているのかもしれません。もしそうだとしたら、これは個人的には「好ましい変化」だと思います。

そもそも論として、以前の『「お客様は神様」論と配送業者「過剰サービス」の弊害』や『「お客様は神様」の弊害?乗客が駅員に道案内など要求』などでも指摘したとおり、著者自身、本来は労働者と使用者は対等な立場にあると考えている人間のひとりです。

労働の世界では、もらう対価以上に働く必要などありませんし、ましてやサービス残業などもってのほかだと思うのですが、いかがでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 青い鳥 より:

    社員は家族と表現されていた昭和時代の会社と社員の関係性があってこそ、就業規則を越えた貢献が成り立っていたように思う
    終身雇用が崩壊しリストラも当たり前になり、所得が下がり続けた数十年、この状況で残業してまで貢献しろなんて話は理不尽の類だろう
    定時帰りに眉を顰めるのは主に経営側、管理職につくいている世代、人間だと思うが、その考えは社員に対し甘えているだけだと自覚せねばならない

  2. sqsq より:

    定時になって、その日のうちにやらなければならない業務がないのに帰らない理由は何なのか?

  3. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    テレビ局:「こんなオジサン社員を応援し、近頃の若者を批判するドラマをつくろう」
    ありそうだな。

    1. 引きこもり中年 より:

      もし、そんなドラマができれば、テレビ局とスポンサー企業のオジサン社員が応援してくれるでしょう。

  4. 匿名 より:

    責任感や後工程に迷惑をかけてはいけない、等で自ら定時で帰らないこともあります。
    このことの是非はここでは述べませんがこのことが高度成長を支えた側面もあると考えます。
    もちろんの事ですが会社はあくまでも定時で帰れるような業務配分、環境づくりをすべきです。
    と、同時に労働者側も前向きなスタンスが必要かと思います。

    似たような事例に
    「お客様は神様です」
    これは提供する側の心構えであって客の権利ではありません。
    サービスを受けた側が勘違いして感謝やねぎらいの気持ちはいらない、ましてやわがままを無理強いさせるということではありません。

    勘違いする若者が増えないことを懸念いたします。

  5. 引っ掛かったオタク より:

    物流業界、トラック運転者不足云々のモンダイも辿れば同根
    960時間を週休2日制月20日稼働で案分すると1日あたり4時間を上限…
    「計上できる4時間」残業を毎日やって「生活がシンドク」なる賃金水準のがモンダイ(モチロン運送現業で完全週休2日制はまあ聞かないのでホワイトカラーズに理解してもらいやすく、なんだが)だし、1人の労働者をソコマデ長時間拘束しないと廻せない産業構造にしてしまった(「失われた30年()」を外して考えるコトはでけへんでも、人口減少は早くから云われ人員確保の要を理解していてもいなくても、「人の集まらない業界」にした)のは他でもナイ我々日本人だもんで…
    太平洋から日は昇るが日本海に日は沈むワ

  6. 引っ掛かったオタク より:

    何ニセヨ、当記事タイトルに「?」を付けてアタマを捻るor慨嘆するげなろうguyずは、もう「奴隷待遇のスーパーマン求人がアタリマエに通用した時代」を懐かしむのも止めないと退場する企業に捲き込まれますわナ

    まーまだ「移民導入に望みを繋ごう」とする(ワリカシ強力な)一団は健在の御様子デスカラ…ドッチミチ先は無いカモシレマセンな(悲観)

  7. 匿名 より:

    この言葉、
    a.「今どきの若者」と
    b.「定時に帰る」
    に分けられる。
    これは、aを問題にしているのか、bを問題にしているのか。
    表現の仕方の雰囲気から見れば、今どきの若者のやること全般、または、若者自体を、批判したいという感情を感じる。
    これに続く言葉が、「それに引き換え、我々の若い頃」は、という対照の言葉になりがちなことが多いし、bの言葉は、様々なことになり得る。よくあるのは、「挨拶もしない」など。
    また、aが、「隣の部署の連中は」、bが、「定時になれば直ぐに帰る」になり、「こちらは残業しなければならないのに」と続くということもある。これには、同じ気分が感じられる。
    この気分は、やっかみなのか、単に愚痴なのか、単に何かを批判非難したいだけなのか?
    このように見ると、「定時に帰る」ということよりも、単に、何かを非難批判したいだけのようも感じられる。

  8. はるちゃん より:

    毎月一定の時間残業する事が前提で基本給が設定されている会社もまだまだ多い様な気がします。
    定時で帰れば生活が苦しくなるので残業せざるを得ない仕組みですね。
    所謂「生活残業」というやつですが、労働時間の規制が厳しくなれば収入減になる人も多いのではないかと思います。
    幸い労働力不足という労働者にとっては追い風が吹いていますので転職するには良い環境です。
    賃上げ出来ない会社は大変ですが。

  9. 七味 より:

    ㈹なぜイマドキの若者は定時で帰ってしまうのか

    記事が対象にしてる読者によっても書き方が変わる気がします

    年輩の方向けだと、新宿会計士様も言うとおり「定時だから」でしょう。そこから、そういう今の状況に適応すべきだと続けるのでしょうか。
    若い人向けだったら、そういう疑問を持つ人がいるという事実の提示に続いて、そういう人にも配慮しながら上手く渡って処世術に言及するのでしょうか。

    どんな話が展開されてるのかと思ったけど、有料記事で読めなくて、残念だったのです♪

    1. 新宿会計士 より:

      >どんな話が展開されてるのかと思ったけど、有料記事で読めなくて、残念だったのです♪

      そもそも、読む価値あるんかいな♪

      1. 匿名 より:

        全くその通りです。
        有料記事、そもそも、題材選びが有料に値していない、ということに気付く必要がある!

      2. 七味 より:

        新宿会計士様

        読んでないので読む価値があるかどうかはわかんないのです♪

        ただ興味を持ったのは事実で、そんでお金を払ってまで読みたいと思わなかったのも事実なのです♪

  10. 匿名 より:

    上司「新人はサービス残業だ!」
    Lv99i 新人「はい!」(オンラインゲームする)
    ちなみに実話

    1. 新宿会計士 より:

      とても良いと思います。

    2. 匿名 より:

      この上司は偉い!
      仕事とは何かが分かっている。
      仕事とは、その本質はゲームだし、自分の仕事をゲームだと思えた人が、仕事を楽しめる。
      仕事は、達成感を感じた時に面白さが分かる。
      これって、ゲームの売りの本質と同じですよね。
      だから、仕事の面白さを知った人は、ゲームにのめり込まないように思う。
      この上司の部下達、その内、仕事の楽しさとゲームの楽しさは同じだと気付いて、ゲームをしなくなるかもしれない。

  11. 日本人です より:

    実際「定時に帰る」をしても業務に支障は無い。のですよ。
    支障があるなら「残業手当」を出せばいいだけで。
    まあ、家に帰りずらい人もいるのは認めます

  12. 人工知能の中の人 より:

    手持ちの仕事終わったら帰っても良いでしょう。できる社員がつぶれない程度に仕事の量と質を調整するのが良い上司の仕事(責任)です。

  13. 通りすがり より:

    法律的には「定時に帰る」のが当然で,定時以降も仕事させるなら残業手当を払わないといけませんね。これは常識。
    私自身は60超で若者ではないのですが,フレックスタイムなので,気が向いた時間に仕事にいって,さっそと仕事をすませて帰ってます。クビにならないコツは,他の誰もできない仕事ができて,仕事の速さが普通の人の3倍くらいなこと。
    日本では少ないですが,海外には,少数の秀才・天才を破格の待遇で雇用して,1人当たりの利益が十億円を超す会社もあります(名前をだしていいかどうか)。その対極が人海戦術ですね。

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