メガソーラー発電量はパチンコ屋1店舗分の消費電力?

電力の安定供給という観点から、ちょっと気になるテーマがあるとしたら、それはパチンコ業界かもしれません。全日本遊技事業協同組合連合会が2007年以降、ほぼ毎年公表している電気使用量調査によると、2007年以降、2022年までの間にパチンコ店などの数が半数近くに減り、電力使用量も79.9億kWhから47.8億kWh(カバー率ベースでは104.0億kWhから53.9億kWh)に減ったのだそうです。減ったとはいえ、パチンコ・パチスロ業界の電気使用量はなかなかのものですが、計算上、大雑把にいえば、パチンコ1店舗あたりの年間電力はメガソーラー1つで生み出せそうです(あくまでも「計算上は」、ですが)。

パチンコ等の電力使用量は2022年実績で47.8億kWh

ちょっと気になる話題がありました。

少し古い話題で恐縮ですが、パチンコ等の業界団体である「全日本遊技事業協同組合連合会」が公表した『「2022年度分 ホールにおける電気使用量等調査」結果(概要)』と題したPDFファイルによると、「ホール」の総電気使用量実数値は47億8274万9916kWhだったというのです。

PDFファイルが公表されている親ページの日付はなぜか2024年1月23日付となっていて、PDFファイル本体に記載されている公表日は2023年12月28日となっているなど、なにかと謎が多いファイルでもあります。

また、「総電気使用量実数値」といいながら、現実に集計されているのは調査に回答した店舗のものに限定されているようであるため、パチンコ・パチスロ等の業界全体における電気使用量は、これよりは少し多くなるはずです。

実際、2022年時点における「ホール数」は6,646店舗で、調査の有効回答数は5,902店舗分でしたので、カバー率は88.81%と計算され、総電気使用量4,782,749,916kWhをこの「カバー率」で割ると、5,385,658,411kWhという数値が出てきます。

若干雑ではありますが、調査に回答しなかった店舗も含めた業界全体の電気使用量については、これでだいたい推計することができます。

パチンコ店は2007年と比べ、半数近くに減少

この調査自体は2006年分以降、実施されているようですが、同じ形式で入手できる比較可能な最も古いデータは2007年のもので(※なぜか2008年分は見当たりません)、過去のデータをすべて打ち込み、グラフ化してみました。

まずは、各年末時点における組合員のホール(パチンコ屋、パチスロ屋など)の数を示したものが、図表2です。

図表1 組合員ホール数と調査の有効回答数

(【出所】全日本遊技事業協同組合連合会・過年度『ホールにおける電気使用量等調査』を参考に作成)

これによると、2007年に12,298店舗だった組合員数は、2022年において6,646店舗と、だいたい半分強に減りました。

電力使用量は半減したとはいえ約54億kWh

なお、総組合員数に対し、調査に有効な回答を寄せた割合(有効回答率)を計算してみると、2007年は76.83%(=12,298店舗中9,449店舗)、2022年は88.81%(=6,646店舗中5,902店舗)と、調査実施年により大きな差異があります。

よって、本当の意味での電気使用量を比較するならば、やはり有効回答率を使って割り戻してあげる必要がありそうです。そのうえで、総電気使用量実数値と、それを「カバー率(=有効回答数÷組合員ホール数)」で割ったものを確認してみましょう(図表2)。

図表2 総電気使用量実数値

(【出所】全日本遊技事業協同組合連合会・過年度『ホールにおける電気使用量等調査』を参考に作成)

これによると、2007年の電気使用量(回答ベース)は79.9億kWhですが、これをカバー率で割ってみると、業界全体の電力使用量は、なんと100億kWhを超えていたことがわかります。

これに対し、2022年における電気使用量は回答ベースで47.8億kWh、カバー率ベースで53.9億kWhで、とくにカバー率ベースで見ればだいたい半数近くに減っていることが確認できます。

店舗当たり電力使用量はほとんど変わらず

ただ、店舗当たりの電力使用量は、ほとんど変わっていません。カバー率ベースで見た電気使用量を組合員ホール数で割ってみると、2007年は845,525kWhでしたが、2022年は810,361kWhであることがわかります(図表3)。

図表3 店舗当たり電気使用量

(【出所】全日本遊技事業協同組合連合会・過年度『ホールにおける電気使用量等調査』を参考に作成)

約80万kWhということは、メガソーラー(1時間あたり最大出力が1メガワット=1000kWh)の太陽光発電施設1つが年間に生み出す電力とだいたい似ています。

メガソーラーの設備利用率を10%と仮定したら、このメガソーラーが年間に生み出す電力量は876,000kWhです(ただし、利用率を15%と置くと1,314,000kWhに増えます)。

最近は家電でも何でも、省エネ性能が向上している、という印象がありますが、パチンコ業界に関してはあまり「省エネ」は関係ない、ということでしょうか。それとも小型店舗が続々倒産・廃業するなか、店舗が大型化しているために、店舗当たりで割った電力消費量が増えているのでしょうか。

このあたりについては、正直、よくわかりません。

日本全体の年間発電量は1兆kWh少々

ただ、業界全体で見て、2022年実績では年間54億kWh(※カバー率ベース)という膨大な電力が使用されているであろうことは、なかなかに興味深い点です。

この点、資源エネルギー庁のウェブサイトに公表されている『電源構成(発電量)』というデータによると、2022年における発電量は1兆0082億kWhで、内訳は▼火力7333億kWh、▼太陽光926億kWh、▼水力769億kWh、▼原子力561億kWh――などとなっています。

これに対し、2010年の発電量は1兆1494億kWhで、内訳は▼火力7521億kWh、▼原子力2882億kWh、▼水力838億kWh、▼再エネ253億kWh(うち太陽光35億kWh)で、この10年あまりでずいぶんと太陽光発電がシェアを伸ばしたことがわかります(図表4)。

図表4 電源構成(発電量)2022年vs2010年
電源2010年2022年増減
原子力2882億kWh561億kWh▲2322億kWh(▲80.55%)
火力7521億kWh7333億kWh▲188億kWh(▲2.49%)
水力838億kWh769億kWh▲69億kWh(▲8.27%)
再エネ253億kWh1420億kWh+1166億kWh(+460.09%)
 うち太陽光35億kWh926億kWh+891億kWh(+2613.99%)
合計1兆1494億kWh1兆0082億kWh▲1412億kWh(▲12.29%)

(【出所】資源エネルギー庁データをもとに作成)

こうやって見ると、やはり原発再稼働がなかなか進まないなかで、私たちの国にとって貴重な電力の圧倒的な量は、火力によって生み出されていることがわかります。

パチンコ・パチスロ業界の電力使用量はかなり減った(そしてこれからも減っていくと見込まれる)とはいえ、依然として50億kWh前後という電力を浪費(失礼!)しているわけですから、パチンコ業界については電力の安定供給という観点からも、わが国と地球環境に大きな負荷をかけている格好です。

「パチンコと太陽光のちょっと良い関係」という夢

こうしたなかで、個人的に報告しておきたいのが、先日見た、ちょっとした「夢」です。先日の『パチンコ業界が本当に恐れるのは「初心者の流入減少」』でも少しだけ触れた、『太陽光とパチンコ業界のちょっと良い関係』、です(夢にタイトルがつくというのも、我ながら、なかなか強烈ですね)。

20XX年のニッポンでは、パチンコ店は電力系統から隔絶された太陽光発電施設から、直接、電力の供給を受けているようなのです。

先ほども述べたとおり、パチンコ店の平均電力使用量を年間80万kWhと仮定すると、理屈のうえでは、メガソーラー(※出力1メガワット=1,000kWの発電施設)が1つあれば、パチンコ店の電力をほぼ賄うことができるはずです。

太陽光発電施設の利用率は地域、季節、天候などにより異なりますが、少なくとも10%と置くと、年間発電量は876,000kWhであり、また、施設利用率を15%とすると、1つのメガソーラーが年間に生み出す電力は、パチンコ店の年間消費電力を大きく上回る131万kWhに達する計算だからです。

ただし、太陽光発電の欠点は、出力を人為的に調整することが難しい、という点にあります。

太陽光発電は(天候や季節にもよりますが、諸条件が同じだとすれば)基本的には日の出とともに発電を始め、太陽が南中した時点で最も発電量が多くなり、日没とともに発電量がゼロになります。

そこで20XX年のニッポンでは風営法に例外を設け、パチンコ店に限定していえば、日の出から日没までの営業を認め、お日さまが沈んだら営業を終えてしまうという形にしているようなのです。パチンコに興じる人たちは早朝に起き、南中時間に最も盛り上がり、日の入りとともに帰宅する、健康な暮らしを送っていると聞きます。

ただし、天気が悪いと発電量が十分でなく、台が稼働しないこともある一方で、天気が良すぎたら発電量が増え過ぎ、稀にパチンコ台がショートすることもあるようであり、パチンコファンの皆さんは今日の天気を極端に気にされているとのことです。

…、というあたりで夢から目覚めたのですが、なんとも微妙な夢でもあります。

いずれにせよ、「節電が必要だ」という局面に入った際、「真っ先に止めるべきはパチンコとテレビ局ではないか」、といった指摘を耳にすることも増えている気がします(あるいは「日本に必要なのか」という意味では、パチンコ屋もメガソーラーも似たようなものなのかもしれませんが…)。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. カズ より:

    座席下に自転車ペダルを設置して、「回転率シンクロシステム?」でも構築すればいい。
    出玉タイムが可変すれば、パチンコ店も『健康ランド』と化すのではないのだろうか?

    *いつの世も「イ(ヒト)の夢は、イ夢(ハカナ)い」としたものです・・。

    1. はにわファクトリー より:

      環境に優しいシクロという乗りものがあったはず。ついつい誘惑に負けて画像検索してしまいました。ほのぼの。漕ぐほどに出玉が良くなる、パチンコ稼業は老人向け健康ランドで決まりや。

      1. いねむり猫 より:

        そういえば、○○会計士さんもパチンコが好きなの?
        よく話題に出てくるような(~~);

    2. KN より:

      パチンコ台の消費電力は諸説ありますが、遊戯中で平均すると60~70W、ビッグボーナス時で100W程度のようです。
      ビックボーナス時に必死にペダルを漕ぐ姿もシュールですが、素人だとこの出力で5分も継続できないと思います。

      https://www.hinodeya-ecolife.com/post/20140708145853776/

    3. はにわファクトリー より:

      来てますね、有限会社ひのでやエコライフ

      >「まだ発電できますか?」と声掛けをしながら、つないだ電球のスイッチを少しずつ増やしていき、45秒間で最大110Wによる発電での積算発電量を競ってもらいました。

      系列会社で夕暮れ炊飯ライフってのもやって欲しいものです。スタッフコラム、読み応えありそう。

      今はもう有限会社は作れないから、名乗りを続けるのはかっこいいとされています。本当です。

  2. 田舎の一市民 より:

    パチンコ屋の存在の是否については
    ・節度を守ってれば他の娯楽支出と比較して、規制すべきとも言えない(キャバクラ通いなどの方がより社会的問題となりかねない)とする視点
    ・存在することで、他のアンダーグラウンドなギャンブルにのめりこむリスクを減退させているという視点
    ・一方、身近にギャンブルできる環境があるのはいたずらにギャンブル愛好者を増やしかねないという視点
    などあると思っています。

    個人的には「あってもよい」「しかし多すぎる、減らした方がよい」と思ってます。
    三点方式については、グレーであることによって大手資本等の参入ができない状況は良くないと思ってます(代案は難しいですが)。
    特にスロットは10機種産業廃棄物と揶揄される「ク●ゲー」的な機種を排出しても、時折目を瞠るようなアイデアで規制の中でも素晴らしい開発力、企画力を窺わせる「神台」が産み出されることがあり、一種の天才的な人間が関与してるんだと思いますが、これは「スロットを作らせておくには惜しい」人材だと感じます。
    もっと社会の役に立つクリエーティブな仕事に活かした方がよい。だからメーカーは今の半分以下でよいと思ってます。

    1. はにわファクトリー より:

      電子産業界も潤っている、ただし過去形です。
      準大手電子部品商社へ転職し名古屋事務所にはるばる単身赴任していった元日ノ本電気準幹部殿に挨拶に行ったことがあります。そしたらオフィスデスクの足元に分解状態のパチンコ台が転がしてあって、名古屋だからね、へへへ、と言われました。
      有望なデバイス&テクノロジーを萌芽段階で見出して有望顧客に取り次ぎ三方善しを目指すのが商社さんの本分です。新しい活躍の場を得て張り切っておられましたが、活躍を評価されたのでしょう、年季奉公を終えたあと彼はポイされずに新横浜へ異動になりました。
      もっと社会の役に立つクリエーティブな仕事に復帰できたのかは知りません。

  3. 田舎の一市民 より:

    スロットの型式検査は公安の指定機関である「保通協」が行なっており、検査に適合した機種以外は世に出ることはありません。
    意射幸性が高すぎる機種などを排除する意味合いがあり、風営法の規則で定める基準に適合してるか検査してるのですが変遷があり、大体の流れで言うと
    通称0号機…黎明期、ほぼ無規制
    1号機…基準を定め規制開始
    1.5号機…1号機でバグによるゴト行為が多発したためプログラム改良を認め再認定
    2号機…ウェイト機能搭載(1ゲーム3.1秒以上)→投資コイン抑制
    吸い込み方式の廃止など
    3号機…リプレイ機能搭載、ウェイト規制強化(4.1秒)
    4号機…規制緩和により多様な機種が登場、特にリプレイタイムを悪用?したストック機能の登場が今につながる諸悪の元凶
    5号機…大幅なもろもろの規制強化
    ノーマル機のビッグ獲得枚数も300枚強に規制(元は基本が400枚前後の通称A-400でA-711の大量獲得機まであった)
    6号機…さらなる規制強化
    ノーマル機のビッグ獲得枚数は260枚位に
    →これは出玉試験の短期出玉率の基準が厳しくなったことなどの影響
    のようになっており、業界から見ると「コ●しにきてる」客からみると「つまらんから止めるわ」という状況になってます。
    この規制に至るトリガーとなったのは、上に書いたストック機のほか、一番は某メーカーの「ミリオンゴッド」という機種であり、これは本気で一日30万くらい負けることもありえる機種でした。
    狂乱の時代が終わったのさユーザーからすると「そらそうだよな」と思いますが、その後一向に規制を緩める気配がないので、このまま尻すぼみかなという気がします。

  4. 三門建介 より:

    毎日の更新ありがとうございます。

    遊技機業界ネタがでたので少々データを出したいと思います。

    2000年のちょっとまえまではパチンコホールの設置できる遊技機の数は決まってました。
    2000年ごろのパチスロの爆裂機の規則改正の頃に撤廃された覚えがあります。
    過去データから店舗ごとの設置台数を拾ってみました。
    爆裂機販売の少し前、技術介入要素が多くなってきた時代と2007年と2022年ですね。

    1997年: 268台
    2007年: 338台
    2022年: 458台

    設置台数に縛りがあった時代と比べて、設置台数は1.7倍になっています。
    2007年と比べた場合は、1.35倍になってます。
    ただ、自分の記憶ですと、2007年には多くのパチンコ、パチスロメーカーは遊技機の電飾をLEDに切り替えて販売していたと思います。電飾の消費電力が十分の一になったと記憶します。

    3.11の後は店舗の電飾もおとなしい方向へ変わっていますね。
    昔の基準の店舗が小型扱いになっていて、大半の店舗が規模的には倍以上になっていますから省エネに貢献しようとしている業界といってよいかもしれません。
    太陽光パネルを屋上に置いている郊外店は多そうですけどね。

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