「岸田続投」か「高市登板」か…「実績」で読む現政権
岸田文雄首相という人物は、是々非々で判断すると、なかなかに評価が難しい政治家です。対韓外交の分野で非常に悪い決断をしている反面、たとえば今回の能登半島地震では、非常に素晴らしい動きをしているためです。ただ、現実問題として考えるならば、岸田首相の後継者となり得る人材が限られていることも事実でしょう。敢えて可能性を挙げるならば、「政治とカネ」問題で「無傷」だった高市早苗氏が、閣僚職を辞して岸田首相に挑戦するかどうか、といったところではないでしょうか。
目次
是々非々で見る岸田政権
日韓関係でしでかした岸田首相
当ウェブサイトに「モットー」のようなものがあるとすれば、それは、「良いものは良い、悪いものは悪い」と是々非々で判断することだと考えています。
これについては、たとえば現在の岸田文雄政権、あるいは岸田首相本人についても成り立ちます。
岸田首相は対韓外交において、致命的ともいえるミスをしでかしています。韓国が2023年3月に打ち出した自称元徴用工問題の「解決策」(※「解決」になっていない)を「評価する」などと述べてしまったからです。
この自称元徴用工問題、その本質は韓国による日本に対する一方的な不法行為です。もともと存在しない問題をでっち上げたうえ、日韓請求権協定という国際条約で最終的かつ完全に解決している請求権の問題を転覆させようとしているからです。
当ウェブサイトでは、日韓諸懸案の多くが「①ウソ・捏造に従い」、「②法律、条約、約束などを破ろうとする」という意味で、「韓国による日本に対する二重の不法行為」であり、「日韓問題」ではなく「韓国問題」であると指摘してきました。
韓国の司法府が下した国際法違反の判決を放置したままで日韓諸懸案が「解決」した、などとは笑わせます。
国益をドブに捨てた岸田首相
しかも、あろうことか岸田首相はその韓国に対し、2018年12月に韓国海軍がしでかした火器管制レーダー照射問題を事実上、不問に付すとともに、韓国の輸出管理の不備から2019年に発動した対韓輸出管理適正化措置を再不適正化。あろうことか日韓通貨スワップで追い銭まで与える始末です。
「国益をドブに捨てた」、とでもいえばわかりやすいでしょうか。
ちなみに昨日の『鈴置論考、異次元少子化データに基づき韓国消滅を予言』などでも取り上げたとおり、韓国の専門家である鈴置高史氏は、岸田首相が「異次元の少子化」に直面し苦悩している韓国との間で、量子や宇宙などの先端分野で共同研究に乗り出すと表明したことについて、こう指摘しています。
「国の生き残りをかけて開発した先端技術の成果を平気で競争国に教えるのは、『衰退する日本、躍進する韓国』との世界観からだろう」。
本当に、残念です。
岸田首相が前任者である菅義偉総理大臣、そのまたさらに前任者である故・安倍晋三総理大臣の例にならって、官僚だけでなく外部有識者からも情報を取る癖をつけていたならば、このように無様な対韓外交の失敗をしでかしていなかったかもしれないからです。
いずれにせよ、対韓外交「だけ」で見るならば、岸田首相はもう今すぐ辞職すべきレベルのミスでしょう。
素晴らしい地震対応
迅速だった、能登半島地震での初動
ただ、その岸田首相を巡っては、「すべての政策が悪い」とは断言できないのが、現実の政治の難しいところでもあります。
その最たるものが、現在の能登半島地震への対応でしょう。
『「岸田首相と日本政府の初動が遅かった」は事実なのか』などを含め、当ウェブサイトではこれまで繰り返し指摘してきたとおり、岸田首相を筆頭に、今回の政府・自治体の対応は、少なくとも東日本大震災などと比べれば極めて迅速でした。
もちろん、一部の集落などでは支援が遅れたことは事実ですが、それは岸田首相のせいというよりは、災害が発生したのが能登半島という、地形的に非常に支援がし辛い場所だったというせいであり、しかも災害発生が冬季で、雪が降りしきるなか、自衛隊などが懸命の復旧作業をしながらの支援とならざるをえなかったせいです。
道路が各地で寸断され、平野部が少なく、飛行機、ヘリコプターなどの空中の輸送手段が使える地点も限られており、岸壁を含めた海岸の各所で隆起が発生し、多くの港湾施設が使えなくなっているという事情を考慮すれば、あれだけの規模の災害にしては、むしろ被害をかなり抑え込んだ方です。
首相のXポストで「メディア要らず」
しかも、岸田首相の災害発生以降の動きも適切であり、その一例が、Xを使った情報発信です。
たとえば、岸田首相は29日も、こんな内容をXにポストしています。
先日、緊急に対応すべき施策を「被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ」として発表しました。
財政的制約で対応を躊躇することがあってはならず、令和6年度予備費を1兆円に倍増するとともに、1500億円を超える予備費使用の閣議決定を行いました。 pic.twitter.com/ZAM74ZGKdC— 岸田文雄 (@kishida230) January 29, 2024
このパッケージ、A4サイズの用紙にぎっしりと書き込まれていますが、大きく分けて①生活の再建、②生業の再建、③災害復旧等、という3項目に分かれ、たとえばホテル・旅館等への二次避難の利用限度額を、特例的に7,000円から10,000円に引き上げる、各種融資・助成事業を始める、などが含まれています。
【参考】岸田首相の打ち出した「パッケージ」
正直、この手の情報は岸田首相が自ら発信すべき代物なのかは疑問です。本来ならば、まずは関係各省庁からメディアに向けて発信することが一般的であり、また、メディアの役割は、それらをわかりやすく噛み砕いて国民に伝えることにあるはずです。
ただでさえメディアは「記者クラブ」などの特権組織を通じ、情報を優先的に入手できる立場にあるのですから、そのメディアがその特権に見合った働きをしていれば、メディア自身が「政府がこんな支援を打ち出してきた」と報じているはずだからです。
大災害にかこつけて自社の主張をゴリ押しするメディアも!
ところが、その肝心のメディアといえば、残念ながらこうした情報発信を積極的に行っているとは到底言い難いですし、酷いケースでは、メディア自身が積極的にデマを振りまいているケースもあります(すべてのメディアがそうだとはいいませんが)。
先週の『もし珠洲原発があれば今回の災害支援に役立ったかも?』でも取り上げましたが、一部の新聞は、実際には存在しない「珠洲原発」を持ち出し、「もし建設されていたら原発の配管などが壊れて冷却がまったくできなくなり、大事故となっていた可能性は否定できない」、などと批判したほどです。
大災害にかこつけて「反原発」という自社の主義・主張(?)を広めようとする姿勢もどうかと思いますが、それ以上に「地震だと必ず原発事故が発生する」かのような誤解を世の中に広めようとする科学的根拠のなさ、専門性のなさには驚きます。
そういえば、『例の記者「孤立集落へパラシュート投下は可能と思う」』などでも取り上げたとおり、なかには官房長官記者会見の場に押し掛け、林芳正官房長官に「物資の空中投下、救助部隊の空中降下をさせたのか」、などのムチャクチャな質問(というか主張?)をする人物もいたほどです。
すなわち、今回の地震では、メディアが本来自分たちに期待されているはずの社会的役割をろくに果たそうとせず、それどころか一部のメディアはこの災害にかこつけて自社の主張(というかデマ)を社会に広めようとしているフシがあるなど、正直、メディアそのものがこの社会に必要なのかという疑問を抱かせています。
少なくとも今回の地震に関しては、新聞を解約し、テレビを捨てたとしても、岸田首相のXアカウントさえフォローしておけば、かなり正確な情報が入ってくることは間違いありません。
その意味では、岸田首相の災害対策は、間違いなく「合格点以上」なのです。
どうして同じ人物が、対韓外交では致命的な大ポカをやらかし、災害対策では「合格点」を遥かに超える成果をあげているのかについては、現代に生きる私たちには、正直、よくわかりません。
ただ、岸田首相を100%礼賛するのも、100%否定するのも、どちらも正しい行動とはいえない、という点については間違いありません。結局、可能な限り公正中立な目で、良いことは良い、悪いことは悪いと、是々非々で判断し、評価するしかないのです。
岸田首相をどう評価するか…経済政策、とりわけ原発政策は?
ちなみに著者自身は岸田首相が掲げている(あるいは掲げて「いた」)「新しい資本主義」なる概念についてはまったく評価していませんし、むしろ岸田首相は経済政策についての芯がないから、官僚の跳梁跋扈を許し、アベノミクスが骨抜きになっているフシがあるとすら危惧しています。
ただ、その岸田首相が現実にやったことといえば、正しいことが多いのも事実です。
たとえば電力政策の分野では、日本経済の重しになっている電力供給の逼迫という状況を打開するために、▼再稼働できる原発については極力再稼働する、▼次世代型原子炉の開発・新増設などを急ぐ――、という、原子力政策の再起動を打ち出しました。
資源エネルギー庁『総合エネルギー統計』によると、2022年における日本国内全体の総発電量は1兆0082億kWhでしたが、このうち原子力が占めているのは約6%、561億kWhに過ぎず、しかし再生エネルギーだと発電量は1420億kWhに過ぎず、結局、火力で7333億kWhを生み出しています。
しかし、『関電が美浜3号機再開…原発の効率性と安全性を考える』でも指摘したとおり、2023年8月時点で今すぐ再稼働可能な「停止中(定期検査中)」の原子炉は24基、認可出力は2450万kWに達しています。
もしこれらの原子炉がすべて運転を開始したとしたら、年間発電量は、稼働率が9割という前提を置けば約1932億kWh、稼働率が7割だったとしても1502億kWhという電力を生み出し始めます。
メガソーラーが現在、日本全国で環境を破壊しまくっているなどの問題を発生させているにもかかわらず、その太陽光発電全体が生み出しているのは926億kWh(2022年実績)であるという事実を踏まえると、いろいろと考えさせられます。
正直、再稼働可能な原発をすべて運転し、さらに新増設することで、火力発電だけでなく、地球環境に負荷をかけている太陽光発電を全廃する、といったことも、「物理的には」可能です(「政治的に」可能かどうかは別として)。
このように考えていくと、エネルギー政策だけに関していえば、岸田首相が続投してくれた方が正解かもしれません。岸田首相自身が原発の再稼働・新増設を推進する意向を示しているからです。
派閥解散がどうなるか
ほかにも防衛費の増額、ウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領との数次にわたる会談やキーウ・ブチャ訪問、(中途半端ではあるにせよ)定額での所得税・住民税の減税など、外交・内政・財政などの分野で岸田首相のイニシアティブが働いている部分はいくつもあります。
なにより、岸田首相の減税が中途半端なものに終わったのは、岸田首相の従兄でもある宮沢洋一税調会長、あるいは鈴木俊一財相の義兄で、岸田首相の事実上の「後見人」のひとりである麻生太郎総理大臣(※現・自民党副総裁)らの意向、という側面があります(※著者私見)。
岸田首相が打ち出した「宏池会解散」が政治学的にどう動くのか、その最終的な着地は読み辛いところですが、うまく麻生総理や宮沢税調会長らを抑え込み、結果的に財務省の権力を抑える方向に働くならば、岸田首相も意外と後世に名を遺す「名宰相」となるかもしれません(ならないかもしれませんが…)。
いずれにせよ、現在の選挙制度が続く限りにおいては、そして「自民党一強」体制が続く限りにおいては、少なくとも岸田内閣は今年9月まで続きます。
また、岸田首相自身が(日程的にタイトかもしれませんが)今年6月の通常国会終了後あたりに衆院解散し、自民党が(圧勝できないにせよ)単独過半数を維持するなど、そこそこの勝利を収めれば、9月の総裁選で再任の可能性も出て来るでしょう。
高市氏は今のところ「無傷」だが…
また、日本にとって良いことかどうかはともかくとして、現実の政局の話からすれば、岸田首相の後継者として適任な人材が出て来る保証がないこともまた事実です。たとえば「安倍派5人衆」、なかでも西村康稔・前経産相らは「政治とカネ」の問題で、今すぐは動きが取り辛いからです。
もちろん、現実的なところで岸田首相の後継者として、可能性がある人物は複数います。
たとえばそのひとりは、有力派閥のひとつ・茂木派(平成研)の会長でもある茂木敏充幹事長ですが、(あくまでも政界のうわさベースですが)その茂木氏には人望のなさなどがネックとなっている、といった指摘もあるようです。余談ですが、産経ニュースによると、その茂木氏は29日、自派閥の解消に言及したそうです。
自民・茂木敏充幹事長、派閥解消に言及 政治団体の解散は明言避ける
―――2024/1/29 19:30付 産経ニュースより
また、前回の自民党総裁選で岸田首相と争った高市早苗・経済安保担当相、河野太郎・デジタル相の両名が考えられ、とりわけ高市氏に関しては派閥に所属していなかったという事情もあり、今回の「政治とカネ」騒動からは比較的無傷です。
ただ、有力候補者がメディアから取り沙汰されているなかではありますが、自民党の慣例上、現職閣僚や党三役は自民党総裁選に出馬できないという事情があるようです(※ただし、党三役の場合は過去に在職中に総裁選に出馬したケースがあるようです)。
このように考えると、現職閣僚(たとえば高市氏など)が閣僚を辞してまで自民党総裁選に打って出る可能性があるのかについては、依然として流動的です。
ただし、とりわけ高市氏は2024年中にセキュリティ・クリアランスの法制化という課題を達成すれば、岸田首相に挑戦するという選択肢も出てくるかもしれません(それが日本にとって良いことかどうかは別として)。
その意味では、これから半年の政界の動きは注目に値することだけは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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*岸田首相の是々非々
本来、岸田首相は「その”働きアリ”としての実務能力」を買われての登板だったのかもですね。
今回の災害対策然り、「先人の遺した教本?」に沿った決断には、目を見張るものがあります。
惜しむべくは安倍氏(外交でのイニシアティブ)を失い、米国に足元を掬われたことなのかと。
「地元での功(サミットでの宣言)」と引換えにゴリ押しされた対韓宥和とLGBTを飲んだこと。
禍根を残したのは、蟻道を外れた働きアリがレガシーを求めて欲張った末の悪いバーターです。
不思議なのが高市さんほどの人が何故派閥に属していなかったのか。
それにも関わらず、高い発言力を持ち合わせているのか。そのせいで雑魚と喧嘩する羽目になってましたが。
「他は全て賛同するが、あの問題があるので支持しない」、あるいは「他は全て反対するが、あの問題があるので支持する」、さらには「嫌いなあいつに勝たせるぐらいなら、応援する」もあるのではないでしょうか。
青山参議院議員は、総裁選出馬を断言し注目していたのですが盛り上がりませんね。尊厳を守る会として70名以上のグループの代表も務めているようですし。
青山繁晴参議院議員は普通にネットを見ていてもほとんど出てこないのですが、話している内容等はすごく良いしパーティ券を販売して選挙活動をしなくても当選しているようですし、もっと広まると応援する人は増えるのではないかと思います、若干話し方に癖があるように思うのは私だけかもしれませんが総裁選に出馬すると面白いことになると思います
本当の意味で派閥がなくなるわけではないので自由に自民党の政治家は投票できないだろと思うので首相になるのは難しいように思いますが党員票は多く集めそうです、高市さんの為に前回の総裁選はやめたと言っているのでやはり高市さんと両方出馬すると票が割れるのではないかとも思います、話し合って高市さんを味方につける形になれば強いと思います
消費税減税をうたっているので応援したいですが財務省が邪魔するでしょう
それでもこの人が総理大臣になると色々変わると思います
それを自民党の議員が認めるかどうかですね
もう少し話題になっていけば流れが変わるかもしれません
個人的には是2非8位ですね。決めた事の大半は菅前首相で決まっていた事の追認ですし岸田内閣
>どうして同じ人物が、対韓外交では致命的な大ポカをやらかし、災害対策では「合格点」を遥かに超える成果をあげているのかについては、現代に生きる私たちには、正直、よくわかりません。
昔ねんごろになったアガシへの未練でもあるのか、あるいは、岸田文雄に判断や決断をさせなければ良いって事なのか。
決められた事をやる分には向いていて、決まってない事を決めるのは向いてない、みたいな。