「5年で政権交代」を修正…発言に一貫性がない泉代表

「5年で政権交代」。この「5年」という目標ですら、非現実的なものに見えますが、それだけではありません。泉健太・立憲民主党代表は、この「5年」発言で批判されたためか、さっそくに軌道修正を余儀なくされ、昨日は「1日でも早く」、などと発言したようです。党代表の発言自体、本当に一貫性がありません。発言がコロコロ変わります。自民党に対する逆風が吹いているなかで、立憲民主党の支持が伸びないのは、旧民主党への2009年の政権交代以降、有権者の期待を裏切り続けたことの帰結ではないでしょうか。

衆参補選を振り返る

ケース①4月の衆参補選

2023年4月に実施された衆参5つの補選では、自民党候補者が4選挙区を、日本維新の会の候補者が1選挙区を、それぞれ制した。

自民党候補者が当選した4選挙区のうち3選挙区については「圧勝だった」とは言い難く、とりわけ衆院千葉第5区、参院大分選挙区は、それぞれ本当に際どい勝負だったことは見逃せない(『自民党が4議席制するも、うち3議席で「薄氷の勝利」』等参照)。

しかし、結果論として、最大野党である立憲民主党は3人の公認候補を立てた(※山口第2区で無所属で出馬した候補者を含めれば4人)が、ただの1議席も取れなかったことは、注目に値する。

ケース②10月の衆参補選

一方、10月に実施された衆参2つの補選では、自民党が1議席、立憲民主党が1議席をそれぞれ分け合う格好となった。

ただし、このうち参院・徳島・高知合区は自民党の前職が私設秘書に対する暴行事件で議員辞職したことに伴う補選であり、最初から自民党の苦戦が予想されていたことに加え、立憲民主党候補者はもともと参議院議員を2期、衆議院議員を1期務めた実力者であり、他の野党3党からも支援を受けていたものだ。

また、自民党が勝利した長崎第4区の場合、現職議員が癌のため死去したことに伴う補選だが、もともと2021年の総選挙では自民党側がたったの391票差で辛勝していたが、補選では得票差が前回と比べて7,016票に拡大している。

「増税メガネ」としての岸田文雄首相

岸田文雄首相に「逆風」が止まりません。

故・安倍晋三総理大臣が再登板して以降、新聞、テレビを中心とするオールドメディアが安倍総理やその後継者である菅義偉総理大臣をせっせと批判するなか、インターネット空間では安倍、菅両総理を高く評価する声が聞かれていたように思います。

しかし、岸田首相に対しては、オールドメディアだけでなく、一部の保守系インフルエンサーなどからも、舌鋒鋭い批判が飛んできます。おそらくはネット空間が発祥と思われる、岸田首相に対する「増税メガネ」というあだ名は、その典型例でしょう。

これに関し、ネット空間の岸田首相に対する批判の雰囲気を、うまくまとめた記事が、ウェブ評論サイト『ダイヤモンドオンライン』に掲載されていました。

岸田首相の「メガネ」は何を見間違えているのか?

―――2023.11.01 05:55付 ダイヤモンドオンライン『山崎元のマルチスコープ』より

経済評論家の山崎元氏は10月18日付の前稿『岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか』に続き、岸田首相が打ち出した減税を含めた経済対策について「誰か悪意のある人がアドバイスしたのではないかと思うくらい多方面にダメだ」と、容赦なく斬って捨てます。

何がどう「ダメ」なのかについてはリンク先記事を確認していただきたいと思いますが、自身の長男を秘書官に就任させ(て更迭し)た件や、「『新しい資本主義』を巡るぐずぐず具合」などにも言及があり、これはこれで大変参考になります。

いずれにせよ、せっかく外交・国防などにおいて頑張っていても、国内の経済対策のダメっぷりが際立っていることは間違いありません(※なお、著者自身は岸田首相の外交については必ずしも高く評価するものではなく、とりわけ対韓外交に関しては「ダメ」だと考えていますが、この論点については本稿では割愛します。)

野党は何をしているのか

ただ、古今東西を問わず、常識的に考えれば、首相に対する支持率が低下している局面では、最大野党が勢いづくものです。議会制民主主義国では多くの場合、最大野党はいつでも政権を担い得るよう、党内で「影の内閣」ないし「次の内閣」が作られ、それぞれに「閣僚」が任命されているケースがあります。

そのうえで、「次の閣僚」が国会の場で、現職閣僚と激論を交わすことで、政策をよりブラッシュアップしていく、という工夫がなされているのです。

日本の場合は、どうでしょうか。

いちおう、立憲民主党のウェブサイトによると、『立憲民主党・泉「次の内閣」』の2023年3月11日付の「閣僚名簿」が公表されていますが、どうも存在感がありません。

フィリップス曲線、理解してますか?

いや、もう少し踏み込んでいえば、専門知識などが決定的に不足している可能性があるのです。

たとえば、ネクスト財務金融大臣の階猛(しな・たけし)氏は10月31日付で、日銀のイールドカーブコントロール政策を批判する声明を出しています(『【コメント】日本銀行の金融政策再修正について』参照)が、「YCCが為替相場、財政規律、国債市場などに様々な弊害をもたらしている」と主張しています。

まるで財務省あたりの難癖を聞いている気分にもなりますが、そもそも立憲民主党の2月3日付『「新しい金融政策」の実現に向けて』などを読んでも、フィリップス曲線(インフレ率と失業率の相関関係)に関する議論も出てこないなど、正直、立憲民主党が金融政策の目的を理解しているのか疑わしいところです。

いずれにせよ、今この瞬間、岸田首相が解散総選挙を決断したとして、「泉健太・ネクスト内閣」が発足すると思う人は少数派でしょう。

「5年」発言、それは「永遠に来ない5年後」?

だからこそ、泉氏の「5年で政権交代目指す」、という発言が出て来たのではないでしょうか。

これは、『立民・泉代表「次回選で基盤、5年で政権交代目指す」』でも紹介した、泉氏が講演会で、「次期衆院選での政権交代は目指さない」としつつも「次の総選挙で基盤を築き、5年で政権交代を目指す」、などと述べた、とする話題です。

正直、「次期衆院選での政権交代」は「目指さない」のではなく、「目指せない」の間違いではないか、という気がしてなりませんが、ただ、現実問題として立憲民主党が政権を担い得るためには、現在の議席をほぼ2.5倍に増やさなければなりません。

いや、自民党を追い落とすどころか、立憲民主党に代わって最大野党になろうとしている日本維新の会の追撃をどうかわすかを考えなければならず、態勢を立て直し、有権者の信頼を得ることを考えれば、果たして5年という目標ですら現実的なものといえるかは疑問です。

すなわち、泉氏のいう「5年」は、「永遠に訪れない5年」、なのかもしれません。

泉氏、さっそくに軌道修正

しかも、この「5年」発言は早くも修正を余儀なくされたようです。

立民・泉代表「一日も早く政権交代」 「5年」発言の批判に反論

―――2023/11/06 21:45付 産経ニュースより

産経ニュースによると泉氏は6日、都内で開かれた立憲民主党議員のパーティで、「1日も早く政権交代を目指す。当たり前だ」、などと述べたのだそうです。そのうえで、「次の衆院選がいつあるかわからない」とし、「政権交代を目指さないということはない」と語った、としています。

本当に発言の一貫性がありません。

泉氏といえば、以前、「次の衆院選で150議席が取れなければ代表を辞職する」と述べたこともありました(『辞任宣言?立民・泉氏「150議席下回ると代表辞任」』等参照)。「150議席」と言ってみたり、「次の選挙で基盤を作って5年で政権交代」と言ってみたり、本当にコロコロと発言が変わります。

いずれにせよ、現在の立憲民主党は、2009年の政権交代以降、有権者の期待を裏切り続けて来た民主党の成れの果てのようなものであり、ここまで自民党に対する逆風が吹いているなかでも党勢の拡大が期待できないというのは、旧民主党政権時代からの「実績」がもたらしたものでしょう。

その意味で、次の総選挙では、立憲民主党が現在より党勢を拡大するか、縮小させるかという観点からも、見逃せない論点となりそうです。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    立憲の泉代表:「5年で政権与党になろうとおもったら、すぐに党内で改革を始めなくてはならない、しかし、党内の空気が改革をすることを許さない。(5年たったら、日本社会が立憲が政権をとれるように変わるに違いない)」
    日本の組織の典型かな。

  2. 七味 より:

    >「150議席」と言ってみたり、「次の選挙で基盤を作って5年で政権交代」と言ってみたり、本当にコロコロと発言が変わります。

    なんとなくで、間違ってたらごめんなさいだけど・・・

    政権を取るために、今はこうで、あとどれくらい議席が必要で、それをどこでとって、そのためにどんな努力をするのかって、道筋もなく言ってるように思うのです♪

    つまり、ただ言ってみただけか、良くて内部向けのリップサービスで、本気で政権を取るつもりはないんだと思うのです♪

    まぁ、政権を取らなくてもそこそこの議席があれば、法案審議とかを通じて、支援者が欲しがる文言を入れたりできるから、それはそれで良いのかな?って思うのです♪

  3. haduki より:

    記事中にある岸田首相の評価については
    安倍政権では叶わなかった法案をステルス通過させていたりと
    一概に駄目な人物では無いと思いますが

    強圧的な国に対して及び腰姿勢
    性急すぎるLGBT法案
    財務省と公明党の人気取り色の強い経済政策等々
    声の大きい者の圧力に対してトコトン弱い

    仕事している感を出すのに躍起な性格から

    やはり一国の宰相としての器ではない
    というのが個人的な評価です。

  4. ねこ大好き より:

    立憲民主党の党綱領と基本政策を初めて見てみました。普遍的な今日的な社会問題を羅列しています。一つ一つ吟味すると、今の岸田政権の施策と多くの部分が一致している気がしたのは私だけでしょうか。
    立憲が無理して政権取らなくても、岸田自民党が実現させているのだから、立憲支持者にとっては今の状況が良いのではないかと思った次第です。

  5. 普通の日本人 より:

    この人(岸田総理)の長男が言ってるそうな。
    「俺は政治家になる運命なんだ」
    これ、悪い冗談で済まないよ。

  6. たろうちゃん より:

    軽い、軽すぎる。これが野党第一党の党首の姿か。自民党スキャンダルがもちあがってもこんな姿勢に終始する、、うん、これが立憲批判的だけの政党。岸田があれだけやらかしても、国民が支持率を押し下げバックアップしても泉があれじゃ話にならない。ま、風貌からしてとっさんボーヤだもんな。オレの選挙区には前IT大臣の牧島かれん女史がいるが立憲は神山なんだっけな、、あとは誰がでるんだろう。とにかく自民党、公明党、立憲民主党、共産党にだけは入れない。絶対に入れない。

     

    蘭❗

     

     

     
           

     

    1. たろうちゃん より:

      ううっ、、また押し間違えた。は、ら、蘭❗ってなんだぁ。ごめんなさい。

  7. 名前 より:

    財務真理教信者のしなたけしには、ウンザリするわ!

  8. 世相マンボウ_ より:

    うーん この迷走はあきまへんなあ。
    もとより相手にされてない多数派国民良識層に
    鼻で笑われてしまうだけでなく
    頼みとするコアな鬱憤層支持者や韓流にも
    「はっきりせいや!」と叱られそうです。
    泉代表の誤魔化しに腐心するご苦労も
    同情してしまうぐらいのありさまですが
    もはやこの期に及んではいっそ腹をくくって
    党の本来のありように正直に
    正面突破しか無いと思います。

    私は人も政党もそのありように
    正直なのが一番と考えており
    立憲民主党は今こそ、竦んでしまってないで
    THE小西議員(以下、略称:ザコニシ)さんを
    党首に推し立てて蓮舫辻元を従えて
    さらにはどっかの国と風評被害拡散する阿部知子らで
    日本の社会の秩序と常識に今こそ
    一大決戦を挑む勝負時だと思います。
    人呼んでDr.スラップことハッピーさんを慕って
    ついてきたメール会員の加勢も得て
    今こそ立ち上がるべき時なのです。

    ~党風と支持者の生きザマを体現した~
    #ザコニシ立憲民主党党首実現を応援します (^^)/

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告