小西問題で共闘凍結の維新・立憲、入管法対応で亀裂も

「サル・蛮族」発言などで知られる小西洋之・参議院議員は、じつは、日本にとって大変良い仕事をしたのかもしれません。立憲民主党と日本維新の会の共闘を凍結させたからです。こうしたなか、例の「入管法改正案」を巡り、維新が現実路線を歩む一方、立憲は「対決路線」に回帰したようです。時事通信によると両党内では共闘の解消を求める声も漏れているそうですが、その可能性は高いでしょう。

小西問題

小西洋之・参議院議員が総務省の内部文書(小西文書)をもとに高市早苗・経済安保担当相を追及した問題、衆院憲法審査会メンバーを「サル・蛮族」などと侮辱した問題、これらに関連し小西氏自身がメディアや一般人をネットで恫喝した問題を、当ウェブサイトでは「小西問題」と呼ぶことにしています。

正直、小西氏という人物が国会議員として適格な人物なのかどうか、という論点もさることながら、この一連の騒動を見ていて改めて痛感するのは、小西氏が属する立憲民主党という組織自体、「マネジメント」が根本からできていない、という問題点でしょう。

なにせ、小西文書に関しては、立憲民主党の小西氏以外の議員も高市氏らを舌鋒鋭く追及しようとしましたが、これについては『勝負あり:高市氏が小西文書「捏造」を説明してしまう』などでも指摘したとおり、「主張の一貫性」という意味では、すでに高市氏の側に軍配が上がったと考えて間違いないでしょう。

また、「サル・蛮族」発言問題を巡っては、立憲民主党の小西氏に対する処分が遅すぎ、かつ、甘すぎます。

たとえば、小西の発言が報じられたのが3月29日のことですが、党はその直後、小西氏を参院憲法審の野党筆頭幹事から更迭する処分などを行ったものの、それ以上の処分はありませんでしたし、小西氏はその後も参院憲法審には出席していたようです。

ツイッター印刷・投函事件で維新は激怒:共闘凍結

その小西氏が発生させたのが、「ツイッター印刷・投函事件」です。

小西氏はしばらくツイッター活動を休んでいたのですが、4月11日になってやっと「幹事長注意処分」(※処分として最も軽いものだそうです)を受け、ツイッターで発言を「謝罪」(?)しています。

しかし、このツイートをカラー印刷したものを、自身の名刺とともに、議員会館にある衆院憲法審査会メンバーの各部屋をノーアポで訪問し、不在の場合はポストに投函したらしく、これを受け取った日本維新の会の馬場伸幸代表が激怒(『小西氏、今度は「謝罪ツイート」を印刷して相手に渡す』等参照)。

これを受けて馬場氏は立憲民主党との政策共闘を「凍結」すると表明し、その凍結は現時点においても継続しています(『「小西問題」は立憲民主党「組織マネジメント」の失敗』等参照)。まさに、組織マネジメントの失敗例そのものといえるでしょう。

補選で獲得議席がゼロだった立憲民主党

このあたり、憲政史上、「最大野党」というものは、「与党になにかあり、政権交代が発生したときに備えて、いつでも政権を担当することができる政党」であることが期待されるはずですが(とくに「二大政党制」ならばなおさらそうでしょう)、残念ながら、現在の立憲民主党が政権を担い得る状況にはありません。

というよりも、今後の国内政治シーンにおける焦点のひとつは、おそらく、「自民党が下野する可能性≒立憲民主党が政権を奪取する可能性」ではありません。「立憲民主党が最大野党の地位から転落するかどうか」、ではないでしょうか。

ちなみに立憲民主党は4月の統一地方選後半戦にあわせて執行された5つの衆参議員補選のうち、候補者を立てた3選挙区で全滅していますが(『補選ゼロ議席の立民・岡田幹事長、執行部の引責を否定』等参照)、これも「小西問題」が微妙な影を投げかけた可能性はありそうです。

(※ただし、『自民党が4議席制するも、うち3議席で「薄氷の勝利」』でも指摘したとおり、正直、自民党候補者の勝利は「薄氷を踏むようなもの」だったことは間違いありません。)

入管法で維新・立憲の共闘に亀裂

こうしたなか、今後の「台風の目」となり得る政党が、日本維新の会です。

著者自身としては、日本維新の会のことを盲目的に信頼すべきではないとの立場ではありますが、それと同時に昨今の立憲民主党のていたらくを見ていると、この政党が野党第1党であるという状況が消滅することは、日本の国会の在り方を変え、与党にも健全な緊張感をもたらし得ることは間違いありません。

こうしたなか、先日の『入管法改正案で「子供在留資格検討」はとんでもない話』でも取り上げた話題が、入管法改正案に関するものです。

これは、政府・与党が立憲民主党に配慮する形で、法案に穴を開けようとしているのではないか、といった点を議論したものですが、これに関し、こんな「続報」が出てきました。

入管法、共闘亀裂深める 維新協議前のめり、立民対決回帰

―――2023年04月28日07時07分付 時事通信より

時事通信によると、この入管法改正案を巡り、立憲民主党と日本維新の会の「国会共闘の亀裂が深まりつつある」としています。というのも、日本維新の会が自民党、公明党、国民民主党などの各党と入管法改正案の修正で合意する一方、立憲民主党が協議の枠組みから離脱したからです。

「亀裂が深まりつつある」もなにも、馬場氏はすでに立憲民主党に対し、「共闘凍結」を宣告しているため、「何をいまさら」という感は否めません。

ただ、時事通信によると、今回の提案の背景には「将来の野党第1党争いを見据え、国会対応の主導権を立民から奪いたい思惑もあった」のだそうです。

実際、日本維新の会が自民党側に要求したのは、法案のなかに難民調査官の人材育成を盛り込むなど、「受け入れられる内容(政府関係者)」ばかりだったそうであり、また、立憲民主党に配慮した条項についても、もしも同党が法案反対に回るならすべて撤回されるのだとか。

小西氏は良い仕事をした…のかもしれない

正直、この入管法改正案がきっかけとなり、両党の共闘が「凍結」から「終了」に変わることもあり得るでしょう。

そして、これらに関し、日本維新の会を全面的に信頼すべきではありませんが、少なくとも日本維新の会が「何でも反対し、国政を停滞させる」スタイルの立憲民主党からは距離を置き、「現実路線」を取ることは、間違いなく国民の利益でもあります。

次の衆議院議員総選挙がいつになるかわからないにせよ、著者個人的には、まだ立憲民主党は「最大野党」の地位を維持するとは思っています。しかし、それもおそらく、あと1~2回が限度でしょう。

その意味で、立憲民主党と日本維新の会の共闘を終わらせるきっかけを作った小西氏こそ、日本にとって本当の意味で良い仕事をしたといえるのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. Masuo より:

    文在寅大統領が日韓関係を正常なものとした、最大かつ最高の功績があるのと同じく、小西も、日本の政治を正常化するための同じような功績に向けて万進していると思います。
    もう少し仕事をすべく、立憲民主党の党首になり、逢坂あたりを幹事長にしてくれれば、偉業間違いなしと考えます。是非お願いしたい。(誉め言葉です)

    1. 門外漢 より:

      褒め殺し ですね

  2. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話しを。
    立民:「小西問題を過去のことにするために、うな丼で騒ごう」
    これって、笑い話ですよね。

    1. 元ジェネラリスト より:

      早く上書きしたいけどネタが無い
      しょうがない、うな丼で行こう

      1. 元ジェネラリスト より:

        訂正です。

        しょうがない、うな丼で行こう

        うな丼でたー とつげきー

        しょうもなくてすみません

        1. オタク歴40年の会社員です、よろしくお願いいたします より:

          また…ウナギですか…
          もうウナギネタありませんよ…
          許してください…。

          1. 世相マンボウ* より:

            THE小西追求、
            反撃したいが、
            今、与党批判のネタがない。

            しゃーない、
            とりあえず
            つなぎ で ウナギ ネタじゃあ!

          2. ビトウ より:

             コメント失礼します。

             拳奴死闘伝セスタスで、古代ローマの鰻の蒲焼が紹介されてました。
             えげれすはなんであんな不味そうな調理をしたんだろう?

            https://karamato.livedoor.blog/archives/21191790.html

             安倍カツカレー、菅パンケーキ、うな丼…反日連中は贅沢禁止令でも求めてるのかな?金持ちが高い物食ってくれるのは有難いです。貧乏人では難しいので。
             そういえば、えの素で、尻から鰻、米、山椒出して作ったうな丼も有ったなぁ。美味しいらしいけど…。

      2. CRUSH より:

        異世界の便利屋斉藤さんで、ウナギを焼いてるシーンがありましたな。

        異世界のウナギは、皮の下の脂が臭くて食べられないから、よく焙って除去すれば美味しく食べられる由。

        ○憲民主党も幹部が臭くて煮ても焼いても食べられないから、そこをどうにかして除去すれば美味しく食べられるのかも。

  3. WindKnight.jp より:

    こういうときは、良くも悪くも、党議拘束でまとまらないと、政党として不味いのですが。
    そこは、立憲民主党、地の選挙互助会体質が丸出しになったようで。

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