内閣支持率上昇は「小西文書」「しゃもじ」効果なのか

特定野党や特定メディアが「小西文書問題」や「必勝しゃもじ問題」を一生懸命に追及した結果、内閣支持率が上昇してしまったのだとしたら、これ以上ない皮肉と言わざるを得ません。主要メディアが今月発表した内閣支持率は、どの調査でも軒並み上昇し、日経・テレ東の調査では、不支持率との再逆転が生じています。これをどう見るべきでしょうか。

内閣支持率がいっせいに上昇

新聞、テレビといったメディア各社が実施した内閣支持率が、いっせいに上昇しています。

内閣支持29.9% 2カ月連続上昇―時事世論調査

―――2023年03月16日17時02分付 時事通信より

内閣支持率42%で横ばい、不支持率43%…読売世論調査

―――2023/03/19 22:00付 読売新聞オンラインより

内閣支持率回復傾向45・9% 日韓関係「良くなる」54・5%

―――2023/3/20 11:38付 産経ニュースより

岸田内閣支持率40% 高齢層で上昇、18~30代で低下 世論調査

―――2023年3月19日 22時45分付 朝日新聞デジタル日本語版より

内閣支持48%、5ポイント上昇 7カ月ぶり不支持を上回る

―――2023年3月26日 20:00付 日本経済新聞電子版より

時事通信、読売新聞、産経・FNN、朝日新聞、日経・テレ東の5つの世論調査で見ると、どの調査でも前回対比で支持率は上昇し、不支持率は低下。このうち産経・FNN、読売新聞では支持、不支持がほぼ拮抗しており、日経・テレ東の調査では支持率が不支持率と再逆転しました(図表)。

図表 内閣支持率(2023年3月)
メディアと調査日支持率(前回比)不支持率(前回比)
時事通信(3/10~13)29.9%(+2.1)40.9%(▲1.3)
産経・FNN(3/18~19)45.9%(+5.3)47.7%(▲4.9)
読売新聞(3/17~19)42.0%(+1.0)43.0%(▲4.0)
朝日新聞(3/18~19)40.0%(+5.0)50.0%(▲3.0)
日経・テレ東(3/24~26)48.0%(+5.0)44.0%(▲5.0)

(【出所】各社報道)

対韓譲歩は支持率を引き下げなかったのか

このあたり、当ウェブサイトの『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』などでも指摘したとおり、正直、著者自身は岸田首相の「実務能力」がさほど高いとは考えておらず、それどころか、外国に対し「やってはならない譲歩」をする人物であるという点を深く危惧しています。

ただ、現実の世論調査結果は、必ずしも当ウェブサイトの予想通りとはなっていない格好であり、むしろ日韓関係については産経・FNNの調査では好意的な結果が表示されているほどです。

このあたり、「メディアの世論調査結果を妄信すべきでない」というお叱りを受けそうですが、それでも各社の報道を信じるならば、統計学に従って正しいサンプリングがなされているはずであり、したがって、これらの結果はある程度、世論を示していると考えてよさそうです。

(※もっとも、一部のメディアが世論調査結果を「調整」しているとの指摘もあるようですが、この点についてはとりあえず本稿では問題視しないことにします。)

ではいったい何が岸田内閣の支持率を押し上げたのでしょうか。

先ほどの日韓首脳会談以外にも、「メディアによる世論操作」という「陰謀論」ももちろん成り立ちます。たとえば、こんな具合です。

日本のメディアは反自民の傾向を持っていて、世論調査結果も自民党政権にはネガティブに出るように調整を加えているが、統一地方選が近づきつつあるため、メディアは世論調査結果を一時的に元に戻し始めたからだ」。

「立憲民主党」で検索してみると…?

ただ、それ以外にも考えられる仮説を挙げてみると、「野党があまりにも情けないから」、というのが最も自然な回答のひとつではないでしょうか。

じっさい、この1ヵ月間、「立憲民主党」というキーワードで検索してみると、選挙区における候補者調整や選挙協力などに関する話題を除けば、やはりいわゆる「小西文書」に関する報道が多いようです。

「小西文書」とは、立憲民主党の小西洋之・参議院議員が3月2日に公開した、礒崎陽輔・首相補佐官(※当時)が総務省に対し、放送法の解釈を問い質すなどしたやり取りが記録されているとされる、合計78ページからなる「総務省の行政文書」です。

とくに、小西氏が安倍政権下で当時、総務大臣を務めていた高市早苗氏(現・経済安全保障担当相)を追及したところ、高市氏は自身について記載された箇所が「捏造だ」と主張し、小西氏から「捏造出なかった場合には議員辞職するか」と問われ、自身の進退を賭けるようになったという代物です。

ただ、これについては『勝負あり:高市氏が小西文書「捏造」を説明してしまう』でも指摘したとおり、総務省が公表した精査結果や高市氏が公表した説明資料に目を通すと、事実上、高市氏の説明に圧倒的な分があることがわかります。

これに関し、一部メディア(とくに特定の新聞社やテレビ局)は、依然として「高市氏の疑いは晴れていない」などと怪気炎を上げているようですが、このインターネット時代において、「高市は怪しい!」といった印象操作だけで高市氏の「クビ」を取るには、やや無理があります。

各社の調査で内閣支持率が上向いた理由は、日韓首脳会談ではなく、この「小西文書問題」が寄与したのではないか、というのが著者自身の感想ではあります。

しゃもじ追及で

さらに、冒頭に示した5社の調査の中で、最も新しい日経・テレ東の調査で、支持率、不支持率の逆転が生じたのは、もしかすると岸田首相のウクライナ訪問と「しゃもじ贈答」が関わっている、という可能性はあるかもしれません。

立民・泉代表、しゃもじ贈呈を批判「緊張感なさ露呈」

―――2023/3/24 16:52付 産経ニュースより

産経などの報道によると、立憲民主党の泉健太代表は24日の記者会見で、岸田文雄首相がウクライナのゼレンスキー大統領に地元・広島県名産の「必勝しゃもじ」を贈ったことについて、「戦争中の緊迫した国家の元首に必勝しゃもじを贈るのは違和感がぬぐえない」、「緊張感のなさを露呈した」などと批判したそうです。

ただ、岸田首相のウクライナ訪問は現地時間21日ですが、日経・テレ東の合同調査は24日から26日にかけて実施されています。一部の野党やメディアが「小西文書」を追及し、さらには「しゃもじ」を批判した結果、内閣支持率が上向いたのだとしたら、皮肉としては、これ以上のものはありません。

実際、一部のネットのニューズ・サイト等では、「緊張感を欠いているのはむしろ立憲民主党の方ではないか」といった書き込みも見られるのですが、内外に課題が山積している日本において、国会の貴重な審議時間を「放送法の解釈」で潰す立憲民主党の姿勢にこそ、違和感を覚える国民が多いことは間違いなさそうです。

ちなみに今朝の『外国メディアが岸田首相ウクライナ訪問に注目する理由』でも取りあげたとおり、岸田首相のキーウ訪問という話題は、外国メディアもかなり大きく取り上げました。習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の訪露とタイミングが重なったからです。

アジアの2大国の首脳が同時に、片や侵略した側、片や侵略された側を訪問するというのは、なかなか狙ってできるようなものではありません。岸田首相がこのタイミングを「狙った」のだとしたら相当な策士でしょう(もちろん、「単なる偶然」という可能性もありますが)。

いずれにせよ、主要メディアでいっせいに内閣支持率が上昇したことが、特定野党とオールドメディアが結託した「怪文書追求型政治」に有権者が踊らされなくなっている証拠なのだとしたら、本当に興味深い話と言わざるを得ないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    内閣支持率が10から30代で下がってるのは心強いね
    団塊の世代もしっかりしよう!

  2. sey g より:

    二大政党制て、国民の半分が立憲支持者になるって事?

    冗談はさておき、まともな二大政党制に日本がなるのは無理です。
    1割くらいの立憲支持者がキャスティングボードを持つからです。

    そう考えると、自民党内で政権交代するシステムは、まぁうまくいってるのかも。

    1. データマン より:

      いいえ、支持者の大半が老人ですので、これからは維新や国民が伸びてきて、立憲共産はもう沈没するだけです

  3. 7shi より:

    マスコミ自身が世論調査の数字をいじらなくても、電話世論調査の精度は、昔と比べて明らかに下がりましたね。固定電話は置いてない世帯が増えたし、携帯電話は知らない番号からだと出ない人も多いですから。

    おととしの衆院選の時は、ネット調査を組み合わせた世論調査をもとに議席を予想した朝日新聞が一番近くて、産経・FNN (フジテレビ) は、開票特番の中でも 「自公、過半数割れへ」 と言ってしまうほどハズしました。(期日前投票が増えたから、投票日当日の出口調査もアテにならないみたいですね。)

    ここにある5社の世論調査は、時事通信が 「個別面接方式」、朝日新聞が 「RDD方式 (電話世論調査)」 で、その他の社は調査方法が書いてないですね。(有料部分に書いてある?)

    時事通信だけが数字が低く出ていますが、今も面接方式による世論調査の精度が高ければ、時事通信の数字が一番現実に近くて、ほかの社は全部ハズレている可能性もありますね。

    1. 7shi より:

      付け加えると、固定電話なら 「市外局番」 によって住んでいる地域がわかるので、ランダムに電話をかけた後に、地域的な偏りを補正することもできるし、地方選挙の前には 「地域限定」 で電話世論調査を行うこともできますが、携帯電話だと、それもできません。

      今年のように統一地方選挙がある年は、今までなら地方紙や地方局も 「地域限定の世論調査」 を盛んに実施していたように思いますが、今年はあまり見かけない気がします。

      地方紙や地方局に体力があれば、カネと手間暇のかかる面接方式や郵送方式による世論調査を実施すればよいだけだけど、体力がないと、それもできないのでしょう。

      そういえば、ちょっと前に 「ネットのアンケート結果」 を、まるで 「世論調査の結果」 であるかのように報じて、ネット民からツッコまれていた地方紙がありましたね。

  4. 世相マンボウ* より:

    まあ、日本のマスコミの
    世論調査なるものは
    その偏向度合いが知られた今、
    TVショッピングや流行らない店の
    人気商品ランキング発表程度のものだと
    位置づけるのが妥当と考えます。
    なんせ、先の国政選挙での
    出口調査での野党勝利の誤報は
    政権転覆に息巻くデスクの剣幕に忖度して
    部下がしてもしょうがない
    出口調査の結果までいじってしまった(?)
    と考えると納得がいくものです。

    総理の座保身したさから
    韓流と手を組んでしまった岸田ですが
    日本のメディアが連日誘導する

     日本国民は
     (嘘捏造で謝罪と金品要求されてもきにせずに)
     若い世代(笑)を中心に大多数の国民が
     K-POP文化の素晴らしさに惹きつけられ(笑)
     (ほかのまともな国を差し置いて、日本が譲歩しての)
     韓日友好を望んでいる(笑)

    という定義に従うと、
    日本の多数派国民良識層に背を向けて
    韓流の詰まったパンドラの箱を開けてしまった
    岸田の支持率は、上昇したことにしないと
    ジャーナリズムを忘れての彼らのおかしな目的と
    齟齬が生じることになってしまいます。

  5. asimov より:

    更新ありがとうございます。

    必勝しゃもじは立憲が追及し始めてから、逆に擁護コメントが増えた印象です。立憲の支持率の低さから考えて、逆の意見の方が正しく感じられるような雰囲気があるのかも知れません。

    ウクライナ訪問自体は意味があったと、自分も捉えています。

    枝葉のことばかり、大した根拠もなく追及し続ける立憲に対する、一種のアレルギーにも似た反応でしょうか。

    そういった謂わば「立憲に対する忌避感」や「立憲疲れ」が、主にネットでは更に強固になったように感じます。

  6. がみ より:

    小西議員は東大卒で元郵政省の官僚だった非常に優秀で余人をもって代えがたい一騎当千の秀才であるらしい。

    個人を誹謗中傷で訴えた裁判では負けたことが無いくらい法律にも明るく神童がそのまま成長したような方で千葉県選挙区が選び抜いた逸材だそうです。

    なぜ国会の議論では勝った事が無いのか不思議なくらい優秀な人物を国会議員などという小さな世界に閉じ込めておくのは日本国の損失かも知れませんしひいては現世人類の損失と言えるかもしれません。
    それぐらい優秀な方だと聞いています。

    元郵政省にいながらなぜ電話盗聴の口述筆記で差し込んだ文書が厳然たる証拠となり、当時国務大臣だった議員に自…じゃない辞職を迫るような歪んだ発言になったのでしょう。

    私が思いますに、立憲民主党の優秀な重鎮の小西議員や日本の官庁の頂点とも噂される総務省を貶めるなんらかの力なり圧力が天才小西議員に働いたのではないでしょうか?

    そんな地下からのダークな力に操られた気の毒な被害者の一人があの素晴らしい小西議員なのかも知れません…ね

  7. 元ジェネラリスト より:

    >岸田首相がこのタイミングを「狙った」のだとしたら相当な策士でしょう

    習近平のナイスアシストだと思います。裏でつながっているかも。
    (ナイナイ)

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