自公関係が選挙区調整で冷え込むなかの「国民民主党」

果たして国民民主党は「台風の目」になり得るのか――。3ヵ月前、時事通信が「自公国」あるいは「自国」連立政権に関する観測を報道しましたが、これについてはしばらく続報はありませんでした。しかし、もしかすると再びこの「自国連立構想」が日の目を見るのかもしれません。TBSは自公両党の関係が冷え込んでいると報じているのですが、さて。

昨年の『国民民主党が「台風の目」に?連立観測報道を考察する』では、「国民民主党の玉木雄一郎代表が入閣するかもしれない」という時事通信の観測報道をもとに、「国民民主党が日本の政治を良い方向に変える『バケツの水』となるのか」、と論じました。

結論からいえば、この観測報道から3ヵ月が経過しましたが、現時点において「自国連立政権」ないし「自公国連立政権」は、まだ誕生していません。

ただ、これは「時事通信の報道が単なる虚報だったからだ」、などと短絡的に決めつけるべきではないでしょう。政界では常にさまざまな立場の人々がさまざまな思惑でさまざまな動きをしているのが常だからです。

著者自身、おそらく時事通信の報道は「虚報」ではなく、政界におけるさまざまな動きのひとつを反映させたものだったのではないかと見ています。

こうしたなかで、TBSが日曜日に配信したこんな記事が目に留まりました。

「組むメリットがなくなってきている」連立与党の冷え込む関係 “10増10減”選挙区調整めぐり不満続出

―――2023/03/12 8:01付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG配信】

自公両党の連立は1999年以降、20年以上続いていますが、TBSによると選挙区の区割り変更(いわゆる『10増10減』)にともない、候補者調整で自公両党の関係が「年明けから異常なほどにギクシャクしている」というのです。

TBSにしては長い記事ですが、記事タイトルにもある「公明と組むメリットがなくなってきている」とは、「自民党幹部」の「国民民主と組めばいいんだよ」という発言から来ています。TBSはこの「自民党幹部」の発言を、次のように解読します。

この幹部は、公明党から選挙応援を受けても、かつてほどの集票は期待できず、むしろ“逃げる”票があるのだと解説する。他方、連合という魅力的な支援団体を持つ国民民主党が連立政権に入れば、民間の労働組合の票が手に入るという皮算用だ」。

この点、自公両党が連立を組んでいる理由は選挙協力以外にもいくつかあるのですが(たとえば参議院だと自民党は単独過半数に達していません)、それと同時に、自民党が公明党と連立を組み続けることは、自民党にとっても「諸刃の剣」です。

そもそも公明党は改憲に積極的ではありません。

これに対し、国民民主党は、憲法改正議論自体は必要との立場を示しており、その一例として、先週は国民民主党が日本維新の会と「緊急事態条項」の条文案で「実務者による協議入りで合意する」と産経ニュースが報じています。

維新・国民民主、改憲の「緊急事態条項」条文案で協議へ

―――2023/3/6 17:32付 産経ニュースより

「改憲」という論点だけで見れば、公明党よりも国民民主党の方が、よほど与党に相応しいといえるかもしれません。

いずれにせよ、「公明党との連立関係の見直し」、「国民民主党との連立」という議論が自民党内で出てくること自体、国内政治に新鮮な緊張関係をもたらすものです。

とりわけ、内外に差し迫った課題が山積するなか、最大野党である立憲民主党が「行政文書の信頼性」などをもとに国会質疑を空転させている状況は、危機的です。

こうした状況で、国民民主党が「現実路線」に舵を切り、将来的な自民党との連立の可能性にも含みが生じてくれば、私たち有権者にとっての選択肢が拡大することにもつながるかもしれません。

じっさい、国民民主党は安保政策においても現実的ですし、経済政策においてはむしろ宏池会に乗っ取られた自民党よりも強く、アベノミクス的な政策を唱えていたりもします。

著者自身、国民民主党という組織に全幅の信頼を置くべきではないと考えている人間のひとりですが、それでも国民民主党は引き続き、政界における「台風の目」のひとつとなり得るのかもしれないという意味では、注目に値するといえるでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 農民 より:

     今回で自民党を見限ったと表明される方はかなり見受けられましたが、その票が国民民主に流れれば、自民へお灸+まともな要素の多い国民民主連立の後押し+公明の追い出し+他ゴミ野党に利さず、という一石多鳥が有り得るでしょうか。
     個人的には民主時代にあまりに無様だった玉木氏を信用しきれぬままではあるものの、寄稿記事はまとも、賛同する政策があり致命的な政策が無い現在であれば、次回では投票するかもしれません。森ゆうこのようなのも居なくなってきているし。個別で問題のある議員が所属しているのは、自民党にしろ同じですしね。

    1. 匿名 より:

      最近の玉木さんは別人のようにまとも

      今回は国民民主に入れて様子を見ようと考えている一人です

  2. 匿名 より:

    20代ですが、応援してるのは国民民主党が一番で次は維新の会って感じです
    オールドメディアが衰退するにつれ、野党に関しても
    国民民主党やれいわ新撰組、N国党などの金融緩和派が強くなるでしょうね(れいわは全く応援してませんが、N国党の立花さんや濱田聡議員は応援してます)

  3. 愛知県東部在住 より:

    私には公明党支持者、つまりは創価学会員の友人がいるのですが、これが俗に言うところの二世信者なのです。

    普段はそうした宗教関係の話をする間柄ではないのですが、昨年彼が退職したということで私の地元の祭にきたことき、何かの拍子に「公明党が自民党と連立してるのは憲法改正問題などで自民党が暴走しないよう歯止めをしいるんだよ」等と言い出したたことがありました。

    思わず、憲法改正のどこが悪いの?と問い質したくなりましたが、他の友人らもいる席だったので、その場では、ふぅ~ん、そうなの、ぐらいで収めておきましたが、これは公明党が学会員向けに説明している自公連立継続に対する言い訳なのだろう、程度には理解できました。

    因みに彼の身内には、同じく創価学会で某大学の法学部教授(専門は憲法学)がいます。無論護憲派ですし、在日韓国人並びに朝鮮人等への外国人参政権容認派でもあります。まぁ云ってみれば創価学会の主張通りの、ある意味御用学者とも云える人物でしょうね。

    公明党支持者即ち創価学会信者の殆どの人たちは、こうした信条を決して放棄することはないと思います。

    憲法改正を支持する立場からすれば、公明党は獅子身中の虫でしかないと見えますし、それに成り変わる政党があるのならば連立するのは致し方ないとは思えます。

    但し、やはり民主党時代の玉木氏の言動が、今でも私の脳裏に焼き付いているので、まだまだこの人を100%信用できないでいるというのも、また偽らざる本音ではありますが。

  4. DEEPBLUE より:

    TikTokは危険だから官公庁での使用を禁止しようとか、立憲共産党や維新よりはまともな事も言ってはいるんですよね。ただ、とにかく党勢が無い。

  5. クロワッサン より:

    いよいよカルト宗教の創価学会を“ぶっ壊す”機会が来るのですかね?

    日蓮宗も結構なカルト臭ですが、日蓮正宗はそれ以上のカルト臭で、紛い物と本物の違いってところですかね。

    取り敢えず、自民党には「岸田文雄では選挙を戦えない!」って強く認識し、G7を待たずに岸田文雄を総理の職から蹴飛ばして貰いたいものです。

  6. けつなあな確定 より:

    国民民主党の地方の集まりに行ってきましたが、連合などの労組系の出席者が多かったですね。
    それと来賓として居た立憲の幹部がしょーもないアジテーションしてましたが、流して景気回復の為の賃金の上がる政治をすると言ってましたね。
    信頼するにはまだまだ足りませんし、野盗とは完全に切れていません。ですがこいつらよりマシな事言っている所が無いという感じです。
    賃金を上がる政治と言いますが、具体的な経済政策としての大規模な財政出動による雇用創出と需要拡大を地方県連などでは理解できていないのだと思います。
    所詮は元々木っ端の集まりが玉木代表に寄りかかってなんとか自分の専門以外では口出ししないという最低限の集まりなんでしょう。
    ですが、野盗はそれ以下しかいないから何とか党員として意識向上をさせていきたいです。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

匿名 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告