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「資産現金化だけ解決すれば関係正常化」=韓国大統領

尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領が韓国紙『朝鮮日報』に対し、「徴用問題、とくに日本企業に対する現金化問題だけが解決されれば、両国首脳相互訪問を通じて多方面にわたる韓日関係正常化に扉を開くことができると思う」と述べたそうです。事実ならとんでもない認識です。日韓諸懸案はべつに自称元徴用工問題に限られるものではないからです。

自称元徴用工判決から5年

早いもので、自称元徴用工判決問題が発生してから、今年10月で5年が経過します。

これ自体、昨日の『韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する』でも確認したとおり、その本質は「韓国の日本に対する二重の不法行為」――、つまり韓国側が「①ウソや捏造、歪曲などに基づき」、「②法的な根拠のないこと(たとえば謝罪や賠償)を要求している」問題だと位置付けることができます。

年末に韓国観察者・鈴置高史氏が、「尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権の総集編」ともいうべき記事を公表しています。これがまた大変に面白いのです。鈴置氏といえば、過去に「日本が韓国に譲歩したところで意味がない」という点をわかりやすく説き明かした人物でもありますが、今回の論考もそれとまったく同じ文脈に位置付けることができそうです。課題は解決しなくても良いこともある「課題山積」なら「解決法」は――?「新年から、内外ともに課題は山積している」――。こんなことを述べると、必ず帰ってくる反応のひとつが、「では、そ...
韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する - 新宿会計士の政治経済評論

つまり、この問題をきれいに解決するためには、韓国がウソをつくことを直ちに止めるとともに、法をきちんと守り、そのうえで自分たちが日本に与えた損害を賠償し、謝罪しなければなりません。逆に、それ以外の解決方法は、もはやあり得ないのです。

このあたり、日本では岸田文雄・現首相の昨年10月3日の第210回国会の所信表明演説が、あたかも韓国に対して譲歩するかのような文言であることについては、大変に気になる点でもあります。

菅義偉総理の2020年10月26日の第203回国会の所信表明演説と比べると、「(韓国に)適切な対応を強く求めていく」という文言がスッポリと抜け落ち、代わって「韓国政府と緊密に意思疎通」という表現がシレッと付け加わっているからです。

岸田首相の対韓外交姿勢は「(菅総理や故・安倍晋三総理の頃の)従来の日本政府の姿勢と比べ、何もブレていない」、などと強弁する人もいないわけではありませんが、正直、そのような理解には無理があります。岸田首相の対韓外交姿勢は前任者らのそれと比べ、明らかに弱腰になっているからです。

日本の譲歩が「あり得ない」理由

日韓諸懸案はあまりにも複雑で多岐にわたり過ぎている

もっとも、著者自身がこの問題を巡って、「日本政府が韓国に対し、妙な譲歩をしたりしない」という意味で、非常に楽観的になる理由はいくつかありますが、その最たるものは、韓国が発生させた諸懸案があまりにも複雑すぎ、多岐にわたり過ぎていることにあります。

あらためて、韓国が日本に対して発生させている無法行為・違法行為などをリストアップしておくと、これが強烈です(図表1)。

図表1 韓国の日本に対する無法行為の一覧(※引用・転載歓迎)

(【出所】著者作成)

この図表自体、「日韓関係が『悪化』したのは文在寅(ウェン・ツァイイン)政権のせいだ」、などと主張する人たちのために作ったようなものです。

これで見て明らかなとおり、諸懸案は文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に発生したものが多いのかもしれませんが、実際にはそれ以前、すなわち朴槿恵(ぼく・きんけい)、李明博(り・めいはく)の各政権時代、あるいはそれ以前に発生したものなども含まれています。

(※余談ですが、「韓国で保守政権が誕生すれば、日韓諸懸案も解決するに違いない」、などとシンプルに考えていた人もいますが、こうした認識自体が大間違いであることは、朴槿恵、李明博の両元大統領が「保守派」とされていたことを思い出していただければ、すぐに理解できるでしょう。)

「日本が譲歩すれば良いじゃないか」

そして、これらの諸懸案の多くも、基本的には先ほど指摘した「二重の不法行為」の問題と似たような構造にあります。要するに、どれも韓国の日本に対する一方的な不法行為であり、謝罪したうえで賠償しなければならないのは、むしろ韓国の側である、という事実です。

日韓関係が本格的に「改善」されるためには、まずは韓国自身がすべての行いを真摯に反省しなければなりませんし、それができない以上は、韓国が望む「韓日関係改善」など、遠い未来の話です。そして、こうした状態が長続きすれば、いずれ日韓関係は破綻するでしょう。

ただし、こんなことを述べると、「日韓関係の破綻を防ぐのならば、日本が国際法の原理原則を捻じ曲げて韓国に譲歩すれば良いじゃないか」、などと言い出す人が必ず出てきます。これが当ウェブサイトでいうところの、いわゆる「3つの落としどころ」の②です。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法などを誠実に守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が国際法などの原理原則を捻じ曲げて譲歩することで、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法などを守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

「3つの落としどころ」の②は、「国際法や国際謝意の常識に照らし、日本が100%正しく、韓国が100%間違っている」ということを踏まえたうえで、それでも「日本が今度ばかりはちょっとだけ韓国に譲歩し、日韓関係の破綻を回避する」、といった考え方のことです。

日本政府はこれまでずいぶんとこの②の選択肢を取ってきましたし、安倍総理の差し金で外相時代の岸田首相が2015年12月に韓国に出掛けて行って取り交わした日韓慰安婦合意など、日本政府がこの②の選択肢を選んだという、典型的な事例でしょう。

(※ただし、『慰安婦は「これ以上相手にしない」ことも有効な対処法』などを含め、これまでも論じてきたとおり、この慰安婦合意については、「日本にとって100%悪いものだった」とまでは言い切れません。その意味で、物事の見方は多面的であるべきでしょう。)

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また、こうした「日本が譲歩する」式の解決法を韓国側も願っているフシがあります。「自分たちが100%悪い」ということを理解・認識しつつも、「それでも日本が韓国に対し譲歩してほしい」とする韓国政府元高官の発言(『韓国元高官「日本が100%正しいが譲歩してほしい」』等参照)など、その典型例でしょう。

「日本が100%正しい。けれども現実問題として、日本が何もしない形では韓国国民は受け入れがたい」。これは、時事通信が今朝の記事で報じた「韓国政府元高官」の発言だそうです。しかし、韓国によるウソ、捏造、国際法破りを前提として日本が譲歩することはあり得ませんし、あってはなりません。もしかすると、そろそろ日本は「諦める」べきときなのかもしれません。自称元徴用工問題は二重の不法行為の典型例韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官は18日、「日韓関係を改善する」として、満を持して日本を訪れて林芳正外相と会談をした...
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「日本の譲歩」は年々難しくなっている

もっとも、こうした「日本が譲歩する」式の解決、年を経るごとに難しくなってきていることもまた事実です。

そもそも世論を作るのが、新聞社・テレビ局など、限られた数のオールドメディアの特権だった時代はネットの出現とともに終わりを告げ、官庁が記者クラブを通じて支配しているオールドメディアの社会的影響力は、日を経るごとに低下しているからです。

また、昨年の「1兆円増税」騒動でも明らかになった通り、岸田首相やその取り巻き(あるいは「オヤジに叱られた」とされる例の長男など)程度の政治力では、国民世論を突破するどころか、自民党を押し切ることすらできません。

以前の『慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」』でも取り上げましたが、安倍晋三総理でさえ、あの慰安婦合意に対しては官邸に対し、抗議の声が殺到していたことに困惑していた、などと報じられているのです(※もっとも、報じたメディアが朝日新聞であるという点には注意は必要ですが…)。

「慰安婦合意の当時、官邸には抗議が殺到していた」=朝日新聞当ウェブサイトで数日前、姜昌一(きょう・しょういち)氏の駐日韓国大使としての信任状捧呈式を話題として取り上げました。この問題点は、日本の国民感情に照らし、この人物を天皇陛下の御前に立たせることの是非にあったわけであり、こんなことを続けていれば、菅義偉政権に対する岩盤支持層が離反していく事態も懸念されます。ただし、似たような事例は安倍政権下でもありました。それが、2015年の日韓慰安婦合意です。総合的な見方こそが大事安倍政権の2822日をどう見...
慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」 - 新宿会計士の政治経済評論

あの安倍総理ですら「国民の厳しい声にたじろいだ」という報道が事実なのだとしたら、岸田首相が自称元徴用工問題で韓国に変な譲歩をしたときには、政権が持たないでしょう。国民の失望と落胆、そして怒りの声は、当時の比ではないと想像されるからです。

なにせ、2015年にも「韓日歴史問題(※当時は自称元慰安婦問題)を財団方式で解決する」などと韓国に騙されていながら、自称元徴用工問題で再び「財団方式で解決」などと積極的に騙されに行くのだとしたら、国民の怒りが韓国に対してではなく、宏池会と外務省に向かうことは、まず間違いありません。

新聞・テレビの情報支配力は弱まる一方

しかも、2015年当時と比べ、現在では新聞の発行部数もテレビの視聴時間もますます減っています。

年初の『数字で見る新聞業界の現状と未来』でも取り上げたとおり、1年前と比べ、新聞の発行部数は朝刊が207万部減って3033万部に、夕刊が67万部減って645万部になりましたが、こうした部数の減少は加速していくことが見込まれます(※これについては時間があれば近日中に再度議論したいと思っています)。

新聞の部数はこの20年余りで半分近くに減りました。当たり前です。紙媒体自体の不便さもさることながら、ネットの普及によりブログサイト、ウェブ評論サイトなどが無数に出現し始めたことで、新聞社が提供する情報の相対的な価値が極端に下がったからです。新聞業界はこれまで「第四の権力」を自称し、驕り高ぶって来ましたが、ネット上のライバルサイトとのレベルの差は、これからは広がることはあっても縮まることはないでしょう。謹賀新年新年、あけましておめでとうございます。本年が読者の皆さまにとって素晴らしい年であります...
数字で見る新聞業界の現状と未来 - 新宿会計士の政治経済評論

また、総務省『令和4年版情報通信白書』などによれば、近年、インターネットの利用時間が徐々に増える一方で、テレビの利用時間については、どの年代でも一様に減っていることが確認できます。

もともとテレビ視聴者は高齢層に偏り、若年層に行くほどテレビを見ないという傾向がみられたのですが、どの年代でもテレビ視聴時間が減り、ネット利用時間が上昇するなかで、2021年にはちょうど全年代でテレビ視聴時間をネット利用時間が上回りました(図表2。なお、以下のデータはいずれも平日のもの)。

図表2 全世代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)

(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)

この調子でいけば、早ければ今年の調査で、遅くとも2~3年後の調査で、ネット利用時間はテレビ、新聞、ラジオのすべてを合わせたものを上回るのはほぼ確実です。

裏を返して言えば、2015年当時だと安倍総理の政治力に加え、官僚機構がガッチリ抑え込んでいる新聞、テレビに世論支配力があったことで辛うじて国民の反発を免れることができたのですが、現在では岸田首相の政治力の問題もさることながら、新聞、テレビの世論支配力は急速に失われているのです。

おそらく、岸田首相を中心とする「宏池会政権」が対韓譲歩を強行しようとしたとしても、昨年の「10兆円増税」と同様、岸田首相らが抑え込まれておしまいでしょう(あるいは岸田首相には解散総選挙に踏み切るという選択肢もありますが、たかが日韓関係ごときで解散総選挙をするとも考え辛いところです)。

よって、日韓諸懸案を巡っては、日本の側で「政治的なデッドロック状況」を動かせない以上、少なくとも岸田政権のうちに妙な譲歩が図られる可能性については、(十分な警戒が必要とはいえども)さほどは高くないと考えておいて良いのかもしれません。

韓国大統領の驚異的な認識

尹錫悦氏の朝鮮日報インタビュー記事

ただし、韓国政府側は、そうは考えていないようです。

韓国メディア『朝鮮日報』に昨日、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領とのインタビューが掲載されていましたが、そのなかで日韓関係についても言及があったのです。

尹大統領「中国と経済・文化で創出することが多い/日本とは首脳間の定期相互訪問で扉を開く」【※韓国語】

――― 2023.01.02 03:00付 朝鮮日報より

ここで紹介しておきたいやり取りは、2箇所あります。ひとつめは、これです。

(朝鮮日報)「強制徴用など韓日間懸案がまだ解決していない。

(尹錫悦氏)「私たちはもちろん、日本も、過去とてもよかった韓日関係に戻ろうとしている。日本は徴用と慰安婦合意に対して相変わらず強硬な立場だが、いまや日本国内の雰囲気も、強制徴用と関連した自国企業に対する現金化問題だけ解決すれば問題が解決すると判断しているようだ。だからいま、各界の意見を聞き、この問題を解決しようとしている。肯定的に見ている」(下線部は引用者による加工)。

なかなかに、強烈な認識です。

資産現金化問題とは、自称元徴用工側が日本企業の「在韓資産」(といっても三菱重工については知的財産権、日本製鉄については合弁会社株式)を差し押さえていて、「売却するぞ、売却するぞ」と脅している問題のことでしょう。

正直、知的財産権だの、非上場株式だのといった資産自体、換金の前提となる「資産評価」が大変に難しいことでも知られていますが、こうした換金が著しく困難な資産(『自称元徴用工が「加害企業に代償を支払わせる」と宣言』等参照)をどうやって売却するつもりなのか、見てみたい気もします。

代償を支払うことになるのはどちらの方でしょうか?自称元徴用工判決のうち三菱重工の件から4年が経過しました。これについて韓国政府関係者は「解決」策について、「さらに絞られた」などと発言したのだそうですが、その内容を見るとまったく代わり映えがしません。相変わらず自分たちが加害者であるという事実から目を背けているからです。その一方、自称元徴用工側は「チャーハン工程」の継続を叫んだようです。徴用工判決から4年著者としてはうっかりしていましたが、昨日、つまり11月29日は、韓国の最高裁に相当する「大法院」...
自称元徴用工が「加害企業に代償を支払わせる」と宣言 - 新宿会計士の政治経済評論

もっとも、正直言えば、これも永遠に完成しない「資産売却チャーハン」のようなものなのかもしれませんが…。

また、この「資産売却チャーハン」問題が解決すれば「問題解決」、とはなりませんし、1965年の日韓請求権協定に根底から違反する判決を下しておきながら、判決はそのままで「解決でござい」などと宣言すること自体、日本に対して「極めて無礼」(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)です。

先ほど「速報」として、河野太郎外務大臣の談話を紹介しましたが、その続きとして、談話、記者会見、河野氏と駐日韓国大使との面談についても紹介しておきます。とくに、河野氏と駐日韓国大使の面談については、産経ニュースが動画サイト『YouTube』にアップロードしているのですが、その内容を確認すると、河野氏がカメラの前であるにも関わらず、韓国側の「基金案」に対し、通訳を遮り、「ちょっと待っていただきたい」などと激高するなど、さまざまな面で異例ずくめです。河野大臣の発言河野大臣の談話河野太郎外相は先ほど、韓国の...
「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論

「現金化問題さえ解決されれば韓日関係正常化」

こうしたなかで、もうひとつ取り上げておきたいのが、これです。

(朝鮮日報)「韓日首脳の相互訪問は可能か?

(尹錫悦氏)「徴用問題、とくに日本企業に対する現金化問題だけが解決されれば、両国首脳相互訪問を通じて多方面にわたる韓日関係正常化に扉を開くことができると思う」(※下線部は引用者による加工)。

これも、年初から驚く発言と言わざるを得ません。

尹錫悦氏自身に状況を「上奏」しているのが誰なのかは知りませんが、尹錫悦氏のなかでは自称元徴用工問題が「現金化問題」にすり替わっているようにも見受けられるからです。

というよりも、山積する課題のうちのほんの一分野である自称元徴用工問題の、さらにそのごく一部分である「資産現金化問題」だけ解決したら、それで日韓関係がすべてうまくいくという認識自体、とんでもない勘違いです(誰か忠告しなかったのでしょうか?)。

こう見えても尹錫悦氏、長年、検事として法の世界に携わってきた方だそうですが、自称元徴用工判決自体が国際法(というよりもサンフランシスコ講和条約による戦後秩序そのもの)を破壊しようとする行動であるという点に、まさか気付いていらっしゃらないのでしょうか?

謎というほかありません。

日本の対韓譲歩は「無意味」

もっとも、朝鮮日報の記事のなかで、日本が占める割合がさほど多くないというのも興味深い点です。記事タイトルでもわかるとおり、韓国にとっては日本との関係よりも、中国との関係、米国との関係の方が、はるかに重要なのかもしれません。

というよりも、昨日の『韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する』でも確認したとおり、日本が韓国に「譲歩」したとして、それで日本に何らかのメリットがあるというものでもありません。現在の韓国の行動原理は、米中両国との「均衡外交」にあるからです。

年末に韓国観察者・鈴置高史氏が、「尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権の総集編」ともいうべき記事を公表しています。これがまた大変に面白いのです。鈴置氏といえば、過去に「日本が韓国に譲歩したところで意味がない」という点をわかりやすく説き明かした人物でもありますが、今回の論考もそれとまったく同じ文脈に位置付けることができそうです。課題は解決しなくても良いこともある「課題山積」なら「解決法」は――?「新年から、内外ともに課題は山積している」――。こんなことを述べると、必ず帰ってくる反応のひとつが、「では、そ...
韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する - 新宿会計士の政治経済評論

このように考えていくならば、「資産売却」という「永遠に完成しないチャーハン」を眺めつつ、とりあえずは目先の「日韓・日米韓連携」を着実に実施し、長い目で見て「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)という安倍総理の遺産を完成させることを目指すのが、日本にとっては適切な戦略です。

ちなみにこのFOIPに、現在のところ、韓国の姿はありません(図表3)。

図表3 FOIP

(【出所】防衛白書)

このFOIPの姿が次回の防衛白書でどう変わるのかは気になるところですが、韓国はFOIPに参加するより前に、まずは2018年12月に自国の海軍駆逐艦が日本の海自P1哨戒機に対し、何を行ったのかを全世界に対し明らかにするところから始めるべきではないでしょうか。

(逆に、火器管制レーダー照射事件について韓国が罪を認めず開き直り続けている状況で、このFOIPに韓国が付け加えられるようだと、岸田政権を見限る保守層が増えることもまた間違いないと思います。岸田さん、わかっていますね?)

新宿会計士:

View Comments (28)

  • 知恵は提供してもらうもの。
    問題は解決してもらうもの。

    難癖を一部でも追認させることが唯一の無理筋打開(不法国家認定回避)手段。
    賠償請求のための司法手続が不要になる "義援金化" での解決が彼らの望み。

  • おはようございます。
    早朝からの記事更新をありがとうございます。

    韓国の御都合解釈には呆れるばかりです。
    これは、韓国の歴史教育との整合性を取ると、このような解釈をするしかないのではないでしょか?。日本には目茶苦茶と思われる解釈でも、韓国ではこれでも日本に譲歩した解決案と認識していると思います。

    日本と韓国との歴史認識を協議しても、韓国側に都合が悪くなると
    「韓国への愛はないのか!。」
    で紛糾するのは、皆様、御存知の韓国の伝統芸です。

    日本国が譲歩しない限りは日韓関係は現状維持という、日本国にとって都合のいいことです。
    日本側の岸田政権には現状維持の姿勢を堅持して欲しいのですが、不安を感じるのは、何が原因なのでしょうか?。

  • もしかしてですが、韓国の尹大統領と日本の朝日新聞などは、「資産現金化問題だけを解決すれば、他は日本が韓国に譲歩する」と思いたいのではないでしょうか。

    • 引きこもり中年 さん

      同じく、自称元徴用工問題で日本の譲歩なしに韓国が譲歩すれば、他の問題では日本が譲歩するってのが尹大統領の見解なんじゃないかと。

      でも、そうなるといわゆる日本軍慰安婦問題では韓国の嘘捏造歪曲まみれの「正しい歴史認識」を日本側が一部分でも良いから受け入れる、追加の謝罪などを行う譲歩の余地があるっていう見解でしょうから、いや実に韓国だなぁ…と。

      やっぱ韓国人の代表は韓国人なんですね。

    • その中でも今韓国が一番欲しいであろう譲歩はホワイト国復帰だと思われますが、
      これに関してはそもそも管轄の省庁が異なりますし復帰は絶望的でしょうね。
      岸田首相が調整できる力もないでしょうし

  • お疲れさまです。

    証拠の無い裁判での有罪の事実を、日本はうやむやにしてはいけないとおもいます。
    証拠がないのに日本は、韓国では「犯罪者」として最高院で確定しております。
    そんな国と一時的な国交断絶は理解できますが、まとまな国交関係を結ぶのは、日本国民に対する「犯罪」と言っていいと私はおもいます。
    そこは、はっきりさせていただきたく希望いたします。

  •  いわゆる”徴用工問題”を、当面脇に置いて、出来るところから協力して行こうという、「歴史問題論」「棚上げ論」を、日本政府が許容しなかったということでしょうね。徴用工問題が解決しない限り、日韓関係は一歩も進展しないことを、ユンソンニョル大統領が理解したということだと思います(いわゆる”グランドパッケージ”は放棄したんでしょう)。
     その徴用工問題ですが、中央日報の社説とか見ると、まだ併存的債務引受方式だの、日本政府と被告企業の謝罪表明だの、日本企業の基金参加だの、ウリナラ夢物語から覚めていないようです。
     まあ徴用工問題ですら当面解決しそうにもありませんから、それが解決した後どうするかは、今あわてて議論しなくても良いかな、と思います。
     ①「ゼロ対100」理論(どこかの素晴らしい自称会計士が唱えている用語ではありますが)はもはや通用しない②韓国政府もかっては日韓基本協定で解決したと認めていた③未解決のままでは韓国の国益毀損の方が大きい、という至極真っ当な議論が、韓国民の多数派になるには、まだまだ時間がかかりそうです。

  • 明けましておめでとうございます。本年も記事を楽しみに読ませていただき、勉強させていただきたいなと思っています。

    大統領発言が勝手なものであればいいのですが、外務省や鑑定などの態度を見てのものなら怖いですね。

  •  「いまや日本国内の雰囲気も、強制徴用と関連した自国企業に対する現金化問題だけ解決すれば問題が解決すると判断しているようだ。」(尹錫悦大統領)
     日本政府が言うところの「現金化問題の解決」とは、『将来も含めて、自称元徴用工問題で日本企業が損害を受けることが無いことを法的に確定すること』を意味します。
     しかし、自称元徴用工裁判の原告数は延べ1000人超、被告日本企業は計115社にのぼっている状況で、自称元徴用工を含む韓国の国民に『将来も含めて、自称元徴用工問題で日本企業が損害を受けることが無いことを法的に確定すること』を許容する寛容な精神があるとは到底考えられません。
     「現金化問題の解決」が本当に実現できれば、奇跡と言っても過言では無いと思います。

  • サイト主さんの「韓国が日本に対して発生させている無法行為・違法行為などをリストアップした」図表1は強烈ですね。前にもお見かけしたと思いますが、良くまとめられてます。

    講和条約発効前の李承晩による李ラインと竹島不法占拠、自称慰安婦問題及び解決を反故にする韓国政府、偽徴用工訴訟の韓国内での勝訴・日本企業財産の差押え、李大統領による竹島上陸と天皇侮辱発言、朴槿恵のスキャンダル絡みで産経記者逮捕勾留、文大統領の反日侮日行為ーーでもこれは氷山の一角です。まだまだ、数えきれないほどの日本へのヘイト行為、犯罪行為をやらかしてます。日本の取るべき対韓姿勢と関わり方については、私も史実を元に、400字詰め原稿用紙100ページの論考を書けます(^^)V。それほど腹立たしい。

    尹大統領は「日本も、強制徴用と関連した自国企業に対する現金化問題だけ解決すれば問題が解決すると判断している」・・・?何か、凄いボタンの掛け違いをしてますねー。ボタン無いの?いや頭ん中のネジ、飛んでませんか?
    日本政府、日本企業が賠償することは、1円も有りません。逆にインフラ整備などで10兆円ぐらい請求したいぐらいだ。何にしろ韓国との関係は限りなく薄くする。民間交流も勾留になるから、やらない!君たちは人間じゃない!「ひとでなし」だ!

  • これ、韓国大統領の「これ以上は無理なんだよ!これでご褒美ちょうだいよ!」と言う
    ”悲鳴”じゃないですかね?

    現金化を”なんとかする”だけでも韓国大統領にはとてつもなく危険なリスク。
    他の問題を解決するなんて到底出来っこない。

    案外今の大統領も先々代のパククネみたいな末路に到るかも知れませんね。
    先代のムンジェインはどうにかこうにか、まだ生き残っているみたいですが……

  • 韓国は民間大手マスコミどころか、政府すら平気でウソをつくので
    そちらの発言を根拠に
    日本側が否定も肯定もしてないからと言って
    日本政府や岸田を叩くのは良くないかと思います
    むろん手放しで日本政府を信用するわけではないですが
    韓国は韓国憲法・教育・社会・政治・経済のどこを切り取っても日本の敵国です。
    敵国の情報攪乱作戦くらいの目線で対応すべきかと 思っています。

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