「徴用工早期解決」や「解決済み」がトレンドに上がる

ツイッターのトレンドで今朝、「徴用工早期解決」や「解決済み」というものが表示されているようです。また、とある「まとめサイト」は「売国奴の岸田文雄が韓国に土下座外交を開始した」、「解決済みの徴用工問題で韓国に金を払い続けると表明した」、などとする記事を出しているようです。さすがに「岸田(首相)が韓国に土下座した」は事実に反しますが、ただ、こうしたトレンドが出てくること自体、日本が再び韓国に譲歩するのではないかと人々が懸念しているという証拠のひとつでしょう。

「解決済み」がトレンドに!

今朝の『徴用工問題「両国の協議で」早期解決を図る=首脳会談』では、外務省のウェブサイトに日曜日時点で掲載されたいくつかの報道発表をもとに、岸田首相と尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領との首脳会談などに関する話題を取り上げました。

これについてはツイッターなどを確認してみたところ、一般人によるものと思われるツイートの多くは岸田首相に非常に批判的であるように見えます。なぜこれに気づいたのかといえば、例のツイッターの『いまどうしてる?』欄に、「日韓首脳会談」、「徴用工問題の早期解決」、「解決済み」などが表示されていたからです。

このうち「解決済み」を検索してみると、たとえばとある「まとめサイト」の『【売国奴】岸田文雄、韓国に土下座外交開始…解決済みの徴用工問題で韓国に金を払い続けると表明』、といった記事に関するツイートなどが引っかかってきます。

「徴用工問題」という用語

このあたり、外務省の昨日の『日韓首脳会談』というページを見ても、岸田首相が「韓国に土下座した」、「解決済みの徴用工問題で韓国に金を払い続けると表明した」という事実は確認できません。さすがにこれは記事のタイトルが行き過ぎであり、「フェイクニューズ」と言われても仕方がありません。

ただ、それと同時に、いくつかのメディアの報道を眺めていて気になることがあるとすれば、まさにこの「徴用工問題」ないし「徴用工訴訟問題」などの用語にあります。たとえば産経系のメディア『zakzak』に昨日掲載された次の記事でも、「いわゆる徴用工訴訟問題」という表現が用いられています。

日韓首脳、徴用工問題の早期解決で一致 3年ぶりに正式会談

―――2022/11/13 20:56付 zakzakより

これについては政府の公式の用語は「旧朝鮮半島出身労働者問題」であり、外務省の昨日の報道発表でもこの点については維持されていますので、むしろ後退しているのはメディアの報道なのかもしれない、という懸念はあります。

それに、一部の「まとめサイト」が「岸田(首相)は『売国奴』だ」、「岸田(首相)は韓国に延々カネを払い続けることを表明した」などとフェイクニューズじみた記事を出している背景には、やはり、この問題でまた日本が譲歩させられるのではないか、といった懸念が広く共有されていることにあるのかもしれません。

日本が韓国に譲歩できるものなのか

もっとも、当ウェブサイトの「悪い癖」かもしれませんが、個人的には日本が今すぐ自称元徴用工問題で韓国に譲歩するという可能性は、さほど高くないと考えています。今度また韓国に「譲歩」しようものなら、日本の世論の反発に自民党が耐えられるのか、という論点があるからです。

昨日の『事実関係の確認:岸田首相は過去に韓国に2回騙された』でも指摘しましたが、2015年12月の「慰安婦合意」のときにも、岸田文雄氏個人のフェイスブックが「炎上」したほか、(朝日新聞の報道ベースですが)首相官邸にも抗議のメールが殺到したという事態も発生したからです。

2015年の時点でこうだったのですから、それからまた7年が経過し、社会のインターネット化がさらに進むなかで、韓国に対して下手な譲歩をすれば、一般人の抗議に岸田首相や自民党の議員らが、「政治家として」耐えられなくなる可能性があります。

韓国の側では調整が難航中=産経

話はそれだけではありません。

韓国の側では、状況はさらに切実であるようです。

「徴用工」具体策示されず 日韓会談 韓国内の調整停滞

―――2022/11/13 22:35付 産経ニュースより

産経新聞の時吉達也氏が昨夜、ソウルから配信した記事によれば、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権はこの「徴用工問題」を巡り、「年内決着を視野に対日協議を急」いでいるのだそうですが、これに対し野党や支持者は「日本に片思いしているのか」などと強く反発。

「事態の打開に向けた国内調整は停滞しており、なお一定の時間がかかりそう」、などとしています。

これについて産経は、「韓国最高裁判決に従い、差し押さえられた日本企業の韓国内資産の『現金化』が目前に迫る中、韓国政府は日本企業の賠償金を韓国の財団が肩代わりする案を軸に、最終調整を進めている」、などと指摘。

日韓首脳会談が約3年ぶりに実現したことを受け、「韓国の専門家などからは『年内解決に一歩近づいた』との観測も浮上していた」などとしていますが、「解決案に強く反発する訴訟原告らを韓国政府が説得できるかは不透明なまま」だ、などとしています。

これについては当ウェブサイトでも『徴用工「解決」案、肝心の韓国政府の対応がグダグダに』などで指摘しましたが、韓国政府・外交部が主催した官民協議会もたった4回で「空中分解」するなど、実際に韓国側では自称元徴用工側の説得に難航しているのが実情でしょう。

また、当たり前の話ですが、自称元徴用工問題を「基金案」で「解決」させようとしたとしても、韓国は将来、必ず約束を破ります。そもそも外務省も、「基金案」などの寝言を述べる以前に、自称元慰安婦問題に関する2015年12月の慰安婦合意の復元を要求するのが筋でしょう。

日米韓連携は必要かもしれないが対韓譲歩は無意味

いずれにせよ、北朝鮮による核開発・ミサイル発射などの脅威に加え、台湾海峡危機も迫っているなかで、韓国とは当面、日米韓軍事協力を優先させるというのは、現時点においてはやむを得ない話ではあります。

ただ、それと同時に韓国観察者の鈴置高史氏が指摘する通り、日本が韓国に譲歩しようがしまいが、「日米韓3ヵ国軍事協力」の進展にまったく影響は生じないという事実もあります(『対韓譲歩は無駄!鈴置氏「日本に韓国を動かす力なし」』等参照)。

したがって、日韓諸懸案については、日本の側が無理して解決を図るべき筋合いのものではなく、無理な解決を図らずに棚上げし、その間に日本が「韓国がなくても大丈夫な国造り」を急ぐというのが筋ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 通りすがり より:

    ここで岸田が変に日和れば第二次安倍政権から綿々と積み上げたものが水泡に帰す。
    万一そんなことをしたら、遠からず発足するであろう岸田の次の政権で一方的に反故にしましょうw

  2. 朝日新聞縮小団 より:

    この問題を韓国側が進んで解決する気が一切無いのが彼らの行動で見て取れます。
    解決を急いでいるのであればとっくの昔に日本企業に対して戦犯企業などと侮辱する表現を政治家やメディアが使わなくなっていることでしょう。
    一般国民がそうした悪口を言い続けるのは仕方ないですし中々止めようもないとは思いますが。
    相手が一切譲歩せずに自らの主張を通し続ける姿勢を崩さないなかでどうやって早期解決する気なのでしょうか。
    私は岸田氏を強い政治力を持ったしたたかなパヨク人だと思っていますので大変危惧しております。

  3. taku より:

     松野官房長官は、本日午前の記者会見で「今回の会談で、両首脳は外交当局間の協議の加速を踏まえ、懸案の早期解決を図ることで改めて一致した。これを受け、引き続き、わが国の一貫した立場に基づき韓国側と緊密に意思疎通を図っていく」と述べたようです。
     ネット等での不評を受けて、韓国の嫌がる「一貫した立場」というワードを使ったようです。
     そういう意味では、ネットの反響も、効果があったと言えるんですかね。

    1. 元ジェネラリスト より:

      官房長官の発言が答えなのかも知れませんね。

      麻生氏訪問時も首脳会談の地ならしと自ら発言していましたし、首脳会談を開催しなければならない理由があった、の線から読み解いた方が早いかもと思いました。
      ウッカリや出来心で政権がバカな妥協をしないように、厳しい目で見なければならないのは変わらないと思いますが。

  4. 名前 より:

    Twitter社員が解雇されたからトレンドにのるようになったのかな?

  5. ホワイト国 より:

    今回の日韓首脳会談で・・・
    「韓国内の問題」を「日韓問題」にすり替えられた。
    また、韓国の罠にハマった岸田首相。。。間抜けとしか言いようがない。。
    岸田政権の大失敗だ!!

  6. 名無しの権兵衛 より:

     韓国政府が「財団方式」を軸に最終調整を進める中で、日本政府が「譲歩する」というのは、「被告企業2社(日本製鉄・三菱重工業)が原告に謝罪するとともに、財団に対して賠償額と同額を寄付する」ことを意味すると思いますが、日本政府が被告企業2社に対してどのように働きかけても、被告企業2社は拒否すると思います。
     何故なら、被告企業2社は、いずれも韓国の自称元徴用工から日本の裁判所で「戦時中の強制労働に対する損害賠償請求訴訟」を提起され、最高裁判所で「日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決された」という理由で勝訴し、相応の訴訟費用も負担しているからです。
     また、韓国でも全く同じ内容の訴訟を提起され、韓国大法院で敗訴はしましたが、相当額の訴訟費用や渡航旅費・滞在費などを負担してきています。
     このように、これまで日本政府の「日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決された」という方針に基づいて対応してきたのに、この期に及んで日本政府から「謝罪および賠償額と同額の寄付」を要請されても、「日本政府は、日本の最高裁判所判決よりも韓国大法院判決に従えというのか。一体どこの国の政府なんだ。」と拒否することは誰の目にも明らかだと思います。

  7. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

    日本政府が韓国と和解せねばと焦るのは、このところの北朝鮮のミサイル大量発射の影響が大きいと考えられます。日本の安全保障上は韓国との連携が欠かせないと誰かがしきりに岸田首相に吹き込んでいるのでしょう。G20前に日米韓の協議を行い、韓国は米国と共に北朝鮮が核実験を行えば重大な結果を生むと脅迫じみたことを宣言しています。
    しかし、よく考えて欲しいのは、たった6ヵ月前までは韓国は文在寅大統領のもとで北朝鮮と連携していました。北朝鮮側でなく、第三者から見ても、よくもそんなに急に手のひら返しができるものだと、或る意味で感心します。現政権が何らかの理由で倒れて左派政権に戻れば急転直下、また文在寅前大統領時代と同じになることは明らかです。
    こんな国とまともに話し合おうだの、節を曲げて和解しようなどとするのは、どう考えても合理的な行動とは思えません。自分の主張を曲げずに、距離を取って関わらないことが最良の選択と言えます(実際はそうもゆきませんが)。目先のことで手一杯の岸田首相には明日の事しか考えられないほど余裕がなくなっているようでもあり、また岸田政権のみならず、日本全体がミサイル発射を見て少し浮足立って、マスコミの言い分に流されているようにも思えます。

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