米国人識者「日韓共同宣言の時代に戻ることは不可能」
10月20日付の鈴置論考では、日本が韓国に譲歩したとしてもまったく意味がないことが証明されてしまいました。その意味で、この鈴置論考はじつに画期的なものだと言わざるを得ないのですが、相変わらず米国人あたりは「日本が韓国に譲歩すればすべてがうまくいく」式の安易な解決策が提起されています。ただ、米国人のなかにも、ある程度は韓国に厳しい見方をする人もいるようです。
目次
いつにもまして秀逸な鈴置論考は日本人必読!
昨日の『対韓譲歩は無駄!鈴置氏「日本に韓国を動かす力なし」』でも取り上げたとおり、韓国観察者である鈴置高史氏が執筆した最新論考には、極めて重要な点が指摘されています。
それは、「日本が韓国に譲歩すれば万事うまくいく」式の解決策が、何ら意味をなさないことを、鈴置氏が証明してしまった点にあります。原文のリンクを再掲しておきますので、もしまだ読んでいないという方がいらっしゃれば、是非ともご一読ください。いつにもまして秀逸な鈴置論考は、日本人必読です。
日米韓共同訓練で韓国の国論は真っ二つに… 迷走の本質は「恐中病」
韓国が「親日か従北か」で迷走する。日米との3カ国共同軍事訓練を左派が「日本の再侵略を誘う」と批判。すると保守は「北朝鮮の核ミサイル開発を座視するのか」と反撃した。韓国観察者の鈴置高史氏は「反日騒ぎの本質は中国への恐怖感」と見切る。<<…続きを読む>>
―――2022年10月20日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
今回の鈴置論考も、相変わらずの長文ですが、簡潔にして明瞭な文体に大量の証拠付きで議論が展開されており、日本の将来に関心がある方からすれば、あっという間に読めてしまいます。いや、むしろ「もっと読みたい」、「続きが見たい」、といった、逆の意味での不満を抱くことは間違いないでしょう。
そして、「北朝鮮のミサイルという安全保障上の懸念が強まるなかで、日米韓3ヵ国連携が重要だ」、などとする議論が出ていることは事実ですが、「だからこそ日本が韓国に対し、手を差し出さなければならない」、といった主張が出てきた際に、この鈴置論考を持ち出せば、一発でその考えが間違いであることが証明できます。
ダニエル・スナイダー氏のインチキ論考
ただ、本稿で議論しておきたいのは、この鈴置論考そのものではありません。
この手の「日本が韓国に譲歩すれば丸く収まる」式の主張が、あとからあとから出てきているという事実です。
たとえば東洋経済オンラインを眺めていたら、10月14日付で、こんな記事が掲載されているのを発見しました。
日韓”急接近”でも「徴用工問題」が解決しない真因/韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している
―――2022/10/14 05:40付 東洋経済オンラインより
執筆したのはスタンフォード大学講師で同大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めているダニエル・スナイダー氏で、おおざっぱに言えば、北朝鮮のミサイル問題などへの脅威が高まるなか、日本も韓国に対し歩み寄り、「徴用工問題」の解決で協力すべきだ、とする主張です。
このスナイダー氏という人物の主張、かつての日本であれば、「この主張にも一理ある」、などと共感する人もそれなりに多かったはずです。安保上の問題を巡っては、「歴史問題」で多少日本が韓国に譲ってでも最優先すべきだ、とする認識が一般的だったからです。
(※韓国と協力したところで、北朝鮮の脅威が薄まるわけではないのではないか、という疑問点については、ここではとりあえず脇に置きます。)
それに、北朝鮮がミサイルを何発も発射しているという事実、そして北朝鮮が核弾頭の小型化に成功したとする観測などに照らし、北朝鮮の核ミサイル問題は現実の脅威と化しています。日米韓が協力して北朝鮮の脅威に備えなければならない、とする主張には、それなりの説得力があるのです。
日本に対韓譲歩求めるのはウクライナに譲歩求めるようなもの
もちろん、このスナイダー氏なる人物の主張には詭弁が多々紛れていることもまた間違いありません。『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』を含め、当ウェブサイトではこれまで何度も繰り返し論じてきたとおり、日韓諸懸案の正体は「韓国の日本に対する二重の不法行為」だからです。
もしも日本が韓国に対して譲歩せよ、などと主張するのであれば、それは日本に対して「国際法の原理・原則をかなぐり捨てるべき」と主張しているのと同じであり、もし本気でそれを主張するならば、ウクライナに対しても同様に、「ロシアに対して譲歩せよ」と主張しなければおかしいことになります。
当たり前の話ですが、ウクライナがロシアに譲歩するというのはありえない話です。
なぜなら、ロシアは国際法を破っている無法国家だからであり、もしもウクライナがロシアに屈して領土などを譲歩しようものなら、ロシアは次から次へと理不尽な要求を加速させてくることは目に見えているからです。
そして、「国際法をないがしろにしている無法国家」という意味では、じつはロシアも韓国も、まったく同じなのであり、その意味で、このスナイダー氏なる人物の主張は、自由、民主主義、法の支配、人権などの普遍的価値を愛する私たち西側諸国の国民にとっては絶対に受け入れられない、とんでもない主張なのです。
シーラ・スミス氏は「小渕政権時代には戻れない」
ただ、米国側の識者の中には、韓国側に対して厳しい見方をする人もいないわけではないようです。
韓国メディア『文化日報』に今月8日付で掲載された次の記事は、なかなかに興味深いものです。
「韓日関係改善?」… 米専門家「歴史問題を組んで解くためには…」【※韓国語】
―――2022-10-08 23:39付 文化日報より
リンク先記事はモバイル端末用のためか、PCの画面からだと若干読み辛いからもしれませんのでご注意ください。
それはともかく、「米専門家」とは、米国の外交問題評議会(CFR)シニアフェローのシーラ・スミス氏のことです。
記事によるとスミス氏は9月16日、韓国の記者らと会って、日韓関係を巡り、1998年の小渕恵三首相・金大中(きん・だいちゅう)大統領(いずれも当時)による「日韓共同宣言」のころに戻ることは「不可能だと思う」と述べたのだそうです。
ちなみに9月16日といえば、日韓首脳「会談」が開かれるかどうかがまだわからなかったタイミングですが(※現実の「会談」ないし「懇談」は、現地時間の9月21日にニューヨークで開かれました)、スミス氏はもし会談が行われたらという前提で、次のように述べたのだそうです。
「これまでの日韓関係があまりにも悪かったため、両国の首脳が会うだけでも、ずいぶんと良いことだと感じられる。小渕時代を再現したいという感情もあるかもしれないが、過去に戻ることはできないだろう」。
すなわち、長期間にわたって「悪化」した日韓関係が短期間で改善されることは難しい、というのがスミス氏の見立てです。
記事によるとスミス氏は記者団に対し、日韓両国ともに「関係を改善しようとする意志はある」としつつも、過去と比べて「両国間の失望感が大きく、お互いを許さないという感じを受ける」としたうえで、次のように指摘したそうです。
「岸田文雄政権、尹錫悦政権ともに日韓関係で失敗したときのリスク負担は大きくなるしかない」。
スミス氏は日韓関係について、「過去のようによくなるかもしれない」という期待感を示すとともに、「これ以上悪化しないようにすべきだ」との認識も付け加えたのだそうですが、これについて文化日報は、次のように述べます。
「スミス研究員の発言は、韓日関係改善に対する米国内の期待感が低下していることを反映したものと解釈される。過去、米国政府は韓米日三角協力が米国安保に与える影響を強調し、韓日関係が悪化するたびに積極的な仲裁努力を傾けてきた」。
米国国内では、日韓「歴史問題」などが解決する可能性に対する期待が低下している、というのです。この見方は、なかなかに興味深いところです。
日本も建前論を重視しつつ、「脱韓」を急げ!
そのうえでスミス氏は、「慰安婦問題や強制徴用賠償問題は、たんに政府が交渉して解決策を出せば良いというのではなく、お互いの国民感情も絡み合っている」とも指摘し、「大胆な解決策を期待している人もいるが、それは難しいようだ」、などと述べたのだとか。
米国人でもこのように厳しい見方をする人がいるというのには、少し意外な感じはします。
いちおうスミス氏は、日韓歴史問題については「解決が難しいという点を認めたうえで、両国関係をこれ以上悪化させることなく、経済、外交などさまざまな分野で関係を発展させていくことが重要」、などとしているのですが、これもあくまでも建前論でしょう。
米国の立場からすれば、とりあえず日米韓3ヵ国軍事連携がそこそこうまくいけば良いのであって、極端な話、日韓「歴史」問題とやらが3ヵ国連携に影響をもたらさなければ、どうでも良いのではないでしょうか。
もっとも、韓国が同盟国として信頼に値する相手であるかどうかについては、米国自身が最もよく理解しているところでしょうし、米韓同盟についても、時期が来れば、いずれ破綻せざるを得ないのではないかと思います。
日本としても、米韓同盟がなくなる日までは、表面上は「日米韓3ヵ国連携」を継続しつつも、韓国の国際法違反の問題などに対しては絶対に譲歩せず、裏側で「韓国がなくても大丈夫な国造り」をしっかりと進めていくことが重要ではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
日本はとっくに、建前では「日韓関係は重要」と言いながら、彼らと距離を取る方向に舵を切ってますな。
岸田総理になってもそれは継続してます。
口では何を言おうと、何一つとして実のある成果を韓国側に与えていません。
法秩序を上位の価値観とする日本としては当然。
また、韓国抜きの防衛体制を築いたのだから、それ以前のように韓国を甘やかしてやる必要も無くなった。
単なる建前に対して、日韓ともに「岸田総理は日韓関係改善に前のめり」と考えている人達がいるようですが。
アメリカにも韓国を動かす力がないことを理解すべき
韓国が言うことを聞くのは中国だけ
>日本としても、米韓同盟がなくなる日までは、表面上は「日米韓3ヵ国連携」を継続しつつも、韓国の国際法違反の問題などに対しては絶対に譲歩せず、裏側で「韓国がなくても大丈夫な国造り」をしっかりと進めていく
そうですね。諸懸案が平行線のままでも「来るべきとき」にはしっかりと備えて欲しいですね。 備えることに ”やりすぎ” はありません。
♩せんろは つづくよ どこまでも~(本当は⊠終点マークまで)
正・常・軌よ永遠なれ。米韓の血盟が欠盟と化すその日まで・・。
韓国の行動をみるといまだに「日本は騙せる」と思ってるのでしょう。
日本人からみると、韓国の嘘はバレバレで一部の影響力の失くなった左翼が韓国かわいそうなどと言ってるだけで、政府の役人も政治家も もう騙されないと思います。
彼らは自らついた嘘に自家中毒になり、ヤク中ならぬウソ中からもう抜けられないのです。
ヤク中の人が何を言っても信用されないように、韓国の信用をなくすように ゆっくり そして静かに 韓国の行動を世界に宣伝する事こそ 日韓関係解決策なのかもしれません。
もちろん解決とは、日韓関係がなくなり疎遠になる事です。
「日韓関係は重要」はポリコレになってるんじゃないのかな?
このダニエル・スナイダー氏は、これまで日韓の歴史問題では韓国側の主張を支持し、日本には厳しい態度を示すことで知られる学者ですし、まあ無視して良い人かと思います(さすがに、2018年の徴用工判決には批判的ではありますが)。
米国は、5月に岸田首相がバイデン大統領に「あなたも副大統領の時、日韓合意に賛成したが、その後に何が起こったのか知っているではないか」と話した以降、日韓問題については、日本に圧力をかけてくることはありませんでしたし、今後もなかろうと推測されます。
日本が検討できる条件での日韓和解案につき、韓国内の合意形成に失敗した尹錫悦を、米国がどう遇するかですが、まあ前政権よりはマシということで、それなりの対応でしょう。(露骨に韓国を責めはしない)
日本としては、引き続き「一貫した立場」で、問題を一方的に起こした韓国が、日本が検討可能な対案を提示すべき、それまでは首脳会談も行わないし、新たな関係構築も行わない、で良いと思います。段階的に関係は縮小していくと思います。
ウクライナとロシアの関係を台湾と中国の関係に見立てる人はおおいですが、韓国を東のアフガンに見立てる事も出来るのではないでしょうか?
ロシア〜タリバン〜アフガンの関係は、中国〜北朝鮮〜韓国の関係に似て見えます。
(別記事のコメント欄に間違って投稿したコメント…一部修正…をこちらに投稿し直させて頂きますので,御了承下されば幸いです)
>ところが、話が日韓関係となると、とたんに「韓国の国際法違反を容認せよ」、という主張が出てくるのは、不可解であり不可思議です。
別に不可解でも不思議でもありません.
スナイダー氏は恐らくスタンフォード大というアメリカの大学に勤務している(そして恐らくはアメリカの政府機関から研究費を得ている)だけでなく,国籍もアメリカつまりアメリカ人でしょう.
アメリカ人ならばアメリカの国益を最優先に考えるのは当たり前であり,アメリカの極東戦略にとって日韓が上手くやっていてくれるほうがベターだからです.
つまり,アメリカの国益を増大するには日韓に仲直りさせる必要があり,それには譲歩させやういほうを譲歩させるのが手っ取り早いからです.
アメリカにおける極東外交の専門家の多くが「現状の日韓対立状態を改善するには日本が譲歩すべきだ」と発言するのは至極当然です.従来の日本は韓国のようにアメリカに対して「相手を譲歩させないとお前の言うことも聞かないぞ」と反発したりしなかったからです.
アメリカの極東外交専門家に馬鹿なこと(日本への譲歩要求)を言わせたくないのならば,まず日本がアメリカに対して「韓国が悪いのだから韓国を折れさせろ.さもなければ日本はアメリカの従順な同盟国であり続けられないぞ.日本と韓国とどちらがアメリカにとって本当に重要かをちゃんと考えて選択しろ」と反発することは不可欠です.少なくとも日本に理があるケースではね.
韓国は自分に理がなく日本のほうに理がある時でさえ厚かましくアメリカに「日本を折れさせろ.俺は絶対に折れないからな!」と要求し続け,その結果として日本に譲歩を強要するしか仕方のない状況にアメリカ政府を追い込むのに繰り返し成功して来た(そして日本は嫌々ながらも仕方なく韓国に譲歩して来た)からこそ,アメリカの極東専門家の殆どが「韓国よりも日本のほうがずっと簡単に譲歩させられるから日本に圧力をかける提案を繰り返せば良い」と条件付けされてしまったのです.だから現在の日韓対立に際しても正しいのがどちらかの検討を無視して条件反射のように「日本が譲歩すべきだ」論をスナイダー氏らは発言するのですよ.
悪いのはスナイダー氏ら筋論を無視して「日本は譲歩すべきだ」論を延々と吐き続けるアメリカの極東専門家たちではなく,日本自身なのですよ.
依然、日韓関係は重要だと思うけど、時々で適度な距離を取る、
という方向で重要な時代になりました。
ま、経済安保の観点で、韓国が中国に吸収されつつある状況では、
日韓共同宣言の時代に戻ることは不可能でしょうね。
>文化日報
いやいやいやいやいや、歴史問題じゃないだろ。
自国の歴史認識を相手に押し付けているのは韓国であって日本は「問題」になどしていない。
韓国の歴史認識で自称徴用工に賠償金を払うのは韓国の勝手であって、その金は既に韓国政府へ支払い済みだ。
韓国の歴史認識がどうあろうと請求権協定第三条の手続きには無関係だ。
韓国の歴史認識がどうあろうと釜山慰安婦像は国際法違反だ。
レーダー照射があったかどうか、低空飛行があったかどうか、再発防止策もまとまらないのは歴史問題ではない。
日韓漁業協定がまとまらないのは歴史問題ではない。
お互いにホワイト国除外で誰も困らない(ハズ)なのに、自国を優遇しないのはけしからんと韓国が日本を非難するのは歴史問題ではない。
GSOMIA破棄騒動は歴史問題ではない。
通貨スワップを韓国が欲しがるのも日本が与えないのも歴史問題ではない。
つまり文化日報は、
日韓関係が悪いのはどっちも引かない歴史問題のせいだ、どっちもどっちだ!
ということにしたいのだろう(スミス氏の口を借りて)。
いつもの ゼロ-100 を 50-50 に持ち込む理論だな。
まあ国民感情の問題と言えばそうなのだろうが、しかし
「俺様は中華の一の子分韓国だぞ。東夷たる日本は黙って従え」
という小中華思想=華夷秩序を求める韓国と、国際法秩序を求める日本とじゃ折り合わないよ。
人治の韓国と法治の日本とじゃ折り合わないよ。
そういう意味では「歴史」問題かもしれないが、韓国を国際法秩序下に「開国」させるのは、「経済や外交で発展させろ」とか日本に頼らずアメリカさんにやってもらいたい。
もっともそうして主権国家の権利と自由貿易の利益を享受したところで彼らは「冊封から開国『させられた』、国際法を『守らされた』」と逆恨みして義務は果たさないけどね。
助けない、教えない、関わらない。
ゼロ-100 を ゼロ-50 に持ち込む理論ですね。
「冊封から開国『させられた』、国際法を『守らされた』」は、その通りだと思います。