「首脳会談が自己目的化」と政権批判=徴用工側弁護士
「弁護士・社会学者」と名乗り、自称元徴用工の代理人を務める人物が、韓国紙に尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領による日韓首脳会談至上主義を批判する記事を寄稿しています。国際法違反の判決を「国際法の問題ではない」と言ってのけるあたりの発想は理解に苦しみますが、尹錫悦政権の「首脳会談自体が自己目的化している」との批判には、同意できる部分もあるのかもしれません。
目次
自称元徴用工問題の3つの落としどころ
自称元徴用工問題は、韓国が発生させた懸案のなかでも、いわば「一丁目一番地」ともいえるものであり、これについてその中心となる論点が、その「最終的な落としどころ」にあることは、当ウェブサイトとしてもこれまで何度も指摘してきた点です。これが、「3つの落としどころ」です。
この「3つの落としどころ」とは、①韓国が国際法に照らして妥当といえる解決案を策定して実行すること、②日本が韓国に譲歩して落としどころを探ること、③韓国による国際法違反の結果、日韓関係が最終的に破綻すること、という3つのことを意味します。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や国際約束を誠実かつ完全に履行することで、日韓関係の破綻を回避する
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- ③韓国が国際法や国際約束を守らかったことの結果として、日韓関係が破綻する
(【出所】著者作成)
諸懸案が多すぎる&①の解決が図られる可能性が低すぎる
もっとも、この「3つの落としどころ」については、べつに自称元徴用工問題に限った話ではありません。
というよりも、この自称元徴用工問題を巡っては数ある日韓懸案のひとつに過ぎず、百歩譲って韓国が自称元徴用工問題を解決したとしても、それ以外にもいくらでも懸案は残っています。
大きなものでいえば自称元慰安婦問題、竹島不法占拠問題がありますが、ほかにも2018年に発生した火器管制レーダー照射事件、日本海呼称問題、仏像窃盗問題、対韓輸出管理適正化措置に対するWTO提訴など、大小取り混ぜいくらでも懸案は残っています。
正直、上記①の解決が図られる可能性は、ほぼゼロと考えて良いでしょう。そして、おそらく日韓関係改善論者の多くが暗黙の裡に前提としているのは、選択肢の②でしょう。つまり、国際法の原理原則から逸脱するよな「妥協案」を、日本から何とかして引っ張ろう、という考え方です。
実際、自称元徴用工問題に関しても、とくに原告側は、明らかにこの「妥協案」の実現を目指していることは明らかでしょう。その実例が、裁判の進め方にあります。
自称元徴用工問題は、すでに2018年10月と11月、韓国の最高裁に相当する「大法院」が原告側勝訴の判決を下しているのですが、その一方で、日本企業が損害賠償を拒んでいるという事情もあり、いまだに賠償金が支払われていません。
『個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」』などでも述べたとおり、このようなケースにおいては通常、相手から強制的に損害賠償金を取り立てる手続を踏むことが一般的です。
損賠訴訟の目的のひとつが、「相手に対し、法律の許しを得て強制的にカネを支払わせること」にあるわけですから、裁判で勝ったのなら、相手の都合など考えず、換金しやすい資産をさっさと差し押さえて換金するのが鉄則です。
無限に細分化されるチャーハン工程
とくに今回の被告は、2018年10月の判決が日本製鉄(旧社名:新日鐵住金)、11月の判決が三菱重工という、どちらも大手企業です。両社やそのグループ会社としても、韓国企業ともそれなりの取引を行っていることが予想されることから、金銭債権(とくに売掛金など)を差し押さえるのが最も手っ取り早いはず。
それなのに、原告側が差し押さえているのは、換金が非常に難しい資産(たとえば商標権や特許権、非上場株式)であり、これらの売却に向けた手続は一向に進む気配がありません。
今年8月には三菱重工の知的財産権の売却に向けた確定判決が出るとの観測も見られたのですが、正直、それをやってしまえば日本政府が対抗措置を講じてくることは目に見えているためか、韓国の裁判所自身も腰が砕けてしまったように見受けられます。
このあたりは自称元徴用工判決の現金化に向けた工程を限りなく細分化するという、例の「チャーハン理論」そのものです(『徴用工巡る韓国政府による「新たなチャーハン工程」?』等参照)。
自称元徴用工代理人による寄稿記事
ではなぜ、原告側や韓国の裁判所、韓国政府などが「チャーハン化」を図っているのでしょうか。
そのヒントのひとつとなるかもしれないのが、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に今朝掲載されていた、こんな記事です。
[寄稿]何のための「韓日首脳会談」なのか
―――2022-10-05 07:31付 ハンギョレ新聞日本語版より
「寄稿」とあるとおり、この記事を執筆した人物はハンギョレ新聞の記者ではありません。「弁護士・社会学者」と名乗る人物であり、もっといえば、自称元徴用工問題において、自称元徴用工である原告側の代理人を務めている人物です。
また、この人物は「社会学者」と名乗っていますが、文章を読む限り、少なくとも非上場株式や知的財産権の鑑定評価に通暁しているようには見えません(※余談ですが、このこと自体、自称元徴用工側が本気で日本製鉄や三菱重工の資産を売却するつもりがないという状況証拠でもあります)。
それはさておき、この人物は冒頭で、次のように指摘します。
「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の対日政策の最優先目標は明らかなようにみえる。韓日首脳会談の開催」。
「岸田文雄首相と尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領の首脳会談なら、先月ニューヨークで開かれたではないか」、と疑問を感じる人もいるかもしれません。
しかし、この記事の執筆者によると、これはあくまでも「懇談」(日本政府)ないし「略式会談」(韓国政府)に過ぎず、「議題、合意文、儀典という首脳会談の要件が満たされた(正式な)韓日首脳会談」は「依然とて開かれていない」、としています。
珍しく同意できる部分があった!
そのうえでこの人物は日韓首脳会談を開くことを目的化している尹錫悦政権に対し、次のように批判します。
「首脳会談が手段ではなく目標そのものになっている」。
「首脳会談は両国が争点を議論し、合意を導き出すための『手段』だ。ところが尹錫悦政権は、前政権との違いとともに政権の成就を示すため、首脳会談そのものにしがみついている。ニューヨークでの奇妙な対面は、主客転倒した外交の方向性が生んだ事故の一つだ」。
このあたり、珍しくこの人物の主張に同意してしまいます。「首脳会談さえやれば諸懸案が解決」というものではないからです(※あるいは「脇の甘い首相」ならば「うまく騙せる」という自信でもあるのかもしれませんが…)。
ちなみにこの人物は、韓国政府が7月初頭から始めた、自称元徴用工問題に関する官民協議会に、「被害者側の代理人の資格で何度か参加した」としたうえで、こうも指摘します。
- 被害者の方々が高齢であることは昨日今日にはじまった問題ではない。強制執行手続きもやはり、少し綿密に調べさえすれば裁判所による判断後も競売手続きなどに少なからぬ時間がかかることが分かる
- 年内の首脳会談の実現のために、強制動員被害者が数十年にわたって続けてきた訴訟と判決を迅速に「処理」しようとしているのではないかと疑われた
「裁判所における競売を通じて『被害者の方々』を救うつもりがない」という意味では、そもそもろくに換金もできない資産を差し押さえようとしている時点で、この人物も同罪だとは思いますが、ただ、韓国政府が日韓首脳会談の実現のために、この問題の処理ないし棚上げを図っているという指摘は、そのとおりでしょう。
韓国も一枚岩ではない:ならば…!?
もっとも、記事を読んでいると、やはり理解に苦しむ記述が多々あることも事実でしょう。
たとえばこの人物は、この事案を「国際法は争点とならない」、「歴史的・客観的事実を犠牲にし、韓国の被害者までをも清算することでようやく実現する首脳会談において、我々が得るものは何なのか」、などと問題提起しています。
正直、自称元徴用工判決という明らかな国際法違反判決を議論するうえで、「国際法は争点とならない」などと言い放ち、また、自称元徴用工問題という明確な虚偽の主張を行っている本人が「歴史的・客観的」などと述べている時点で、ちょっと意味がわかりません。
そして、それ以上に重要な点があるとすれば、この記事を読む限り、韓国は自称元徴用工問題を巡っても一枚岩ではない、ということです。
そして、もしも韓国国内で、自称元徴用工側をどうしても説得することができないのであれば、いっそのこと、「韓国が国際法を守る」方向に舵を切った方がやり易いような気がします。
すなわち、2018年10月と11月の大法院判決は将来に向けて無効としたうえで、自国が主張する自称元徴用工問題のすべてが虚偽であると潔く認め、日本企業や日本政府、そして日本国民に対して真摯に謝罪するのです。
もちろん、国際法的に見れば違法であるとはいえ、韓国国内法的には合法な大法院判決を、どうやって無効にするのかは知りません。特別立法措置を講じるのか、自称元徴用工やその代理人、2018年の判決を下した判事らを詐欺罪かなにかで逮捕するのかも含め、すべては韓国政府が考えるべき論点です。
しかし、もしも韓国政府がそれをやり遂げたならば、「約束破り国家」を脱却する一歩となることは間違いありません(もちろん、それをやってやっと「一歩」ですが)。
その意味で、韓国政府がどう出るかについては、(あまり期待せずに)興味深く見守るべき論点のひとつといえるのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>「裁判所における競売を通じて『被害者の方々』を救うつもりがない」という意味では、そもそもろくに換金もできない資産を差し押さえようとしている時点で、この人物も同罪だとは思いますが、
同罪どころか、弁護人として依頼者の利益を無視してる点で罪が思い気がするのです♪
それはそうと、韓国政府も自称被害者実質加害者も、解決を目指してるわけじゃないし、放置でいいんじゃないかな♪
で、現金化とかしたら、してなくてもいいけど、細々と制裁すれば良いと思うのです♪
それで互いの国民感情が悪化して交流が激減したとしても、万一北朝鮮とかロシアとか中国が韓国に攻め込んだりしたときには、それなりに助けたりするんじゃないかな?
(日本が攻め込まれたときは、尖兵と化しているとは思うけど・・・・・)
何故、こんなにいつまで騒ぐのかわからないですね。
以下の2層で考える必要があります。
1.はっきりしていることは、例の判決は、かの国の国内判決であって、こちらには何の関係もない。
ただし、それによってコチラに損害が発生すれば、その報復において何をするかは、コチラは、完全にフリーハンドである。つまり、何をやってもいい。何倍返しにするかは、コチラの裁量に依る。
2.そもそも、国際法に反したことを平気でやる相手だから、そんな相手とは、通常の友好的な関係を持つことは、不可能と考えるのが当たり前のこと。
よって、直ちに関係の縮小もしくは、断絶を考えるのが、普通。
これを、しっかりやって無いし、相手にも断固たる姿勢で伝えていない、これが、問題の本質です。
はっきりしている事を、何故、いつも、いつまでも、騒ぐのか?
リンク記事は韓国式論調の最たるもので、あれこれもっともらしい批判を連ねていても、結局肝心の結論としてどうするべきか方向さえ示していません。
批判相手も尹錫悦韓国大統領なのか日本なのかもはっきりせず、これでは昨日韓国軍が発射した弾道ミサイル「玄武」のように、こっちに打ったと思ったら真逆に飛んで行ってしまい民家の近くに”着弾”したのと同じですね。何を標的としていたのだろう。
自称元徴用工である原告側の代理人は、フレンドリーファイアをかますという意味では最適なのではないでしょうか?
昨年、文在寅大統領は、東京五輪にかこつけて来日し、首脳会談開催をいろいろと画策しておりました。単に「平昌五輪の答礼」とだけ言っていれば問題なく来日できたでしょうし、時間や内容はともかく、とりあえず首脳会談と呼べるものは開催できたでしょう。ところが、文大統領は「成果が確約されなければならない。確約されなければ訪日してやらない」などという〇鹿丸出しの条件を付けて自らハードルを上げ捲り、首脳会談どころか来日すらできないという状況に陥りました。「成果」とは要するに「日本が原理原則を枉げて妥協すること」を意味していましたので、当然と言えば当然の結果でしかありません。当時、韓国政府が何を考えていたのかはよくわかりませんが、「成果もなしに首脳会談などしたら土下座外交と非難される」と考えていたのか、はたまた「偉大なる文大統領様がわざわざ日本を訪問してやるのだから、それなりの誠意(=お土産)を用意するのは当然だ」と考えていたのか、まあ、おそらくはそんなもんでしょう。
上記の失敗を見ていた尹大統領は、事前に成果の確約を求めるなどという愚行はせず、かなり無礼な形で呼びつけられても応じるというやり方で、どうにか岸田総理に対面で”懇談”してもらうことには成功しましたが、これまた当然のことながら、何一つとして具体的な成果はありませんでした。なにしろ、アノ韓国政府が、”会談の成功”を華々しく発表しなかった、できなかったことからみても、本当に会ったというだけだったことは確かでしょう。
その意味で、「”会談”開催自体が自己目的化していた」という批判はごく妥当なものです。会うことすらできなかった文前大統領と較べれば、会えただけマシとも言えますし、呼びつけられた上に成果もなしだなんて屈辱だとも言えるでしょうが、どのような評価が下されようと、それは韓国国内の問題であって、日本の関知するところではありません。
まあ、左右を問わず、韓国は自らが置いた石に盛大に蹴躓くのが大得意なのだということが良くわかる話であると思います。
新宿会計士さんが言う所の「落とし所②」を画策している国賊は誰でしょうか。鳩山、カンチョクト、ミズポは妥当として、岸田首相の本心はどうなのでしょうか。岸田首相は仲良き事は良き事かな、が外交と思っている感じがします。今回の北のミサイル発射でユンに電話してましたが、電話すべきは米国大統領でしょう。あまりにも安倍さんと違い過ぎて、媚中親韓派では無いかと、どうも疑心暗鬼で岸田首相を見てしまいます。
話しを戻しますが、私は国賊は外務省と朝日毎日共同は間違いないと思ってます。後、玉川。根拠はありません。今、私の頭に浮かんで来ました。環境大臣もそれを根拠に国連で発言したので、理由としては間違えて無いと思います。
> 今回の北のミサイル発射でユンに電話してましたが、電話すべきは米国大統領でしょう。
???
日本を飛び越えたミサイル発射後に、直ちにバイデン大統領と電話会談を行ったそうですが? 確かに2日連続での電話会談は行ってないようですが。
> 媚中親韓派では無いかと、どうも疑心暗鬼で岸田首相を見てしまいます。
最初からそう言う先入観を持って物事を見れば、そのように見えるかもしれませんね。
私も「先入観」を持っているので参入。
1. 所信表明演説から岸田首相が戻したい日韓「友好」は1965年から2016年の間のいずれかの「友好」関係であることが分かる。
その間に発生した非友好関係(実際は韓国の難癖)から友好関係への修復はすべて日本の譲歩や援助であったことは異論ないでしょう。
2. 首脳懇談からルールベースの二国間秩序の厳守は目的としないことが分かる。
少なくとも請求権協定第三条違反を不問としたことは確定。
わたしも親韓派と見ます。
おまけ:
2017年の制裁のひとつに日韓ハイレベル協議の中断があるけど、この協議は1998年の日韓共同宣言にもとづき開催されているもので、形としては
「お前が2015合意を守らないのでこちらも1998宣言を守らない」
という体になってる。
で、その「日韓共同宣言-21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ-」の内容がヒドイ(名前からしてキモイ)。
>金大中大統領は、かかる小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯に受けとめ、これを評価する
>定期的に、この日韓パートナーシップに基づく協力の進捗状況を確認し、必要に応じこれを更に強化していく
>金大中大統領は、日本によるこれまでの金融、投資、技術移転等の多岐にわたる対韓国経済支援を評価する
>金大中大統領は、韓国において日本文化を開放していくとの方針を伝達し、小渕総理大臣…歓迎した。
(附属書)21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップのための行動計画
>日本は…総額30億ドル相当円程度の日本輸出入銀行による融資の実現を図ること
実にエラそうで韓国にとって虫のいい話だ。
しかもこれが通貨危機の翌年だってんだからどんだけツラの皮が厚いのやら。
そりゃ用日派や媚韓派は
「国交正常化以来築いてきた友好協力関係」
って表現が好きなわけだわ(*)。
こんなおいしい共同宣言は捨てられないわな。
逆に言えば自称慰安婦さまさま、自称徴用工さまさまでもある。
もっとがんばりましょう。
これを機会に日本だけが律儀に守る偏努的な「友好」宣言から解放されたいので。
(*)この表現は他に日韓首脳懇談、日韓外相会談、林外相のユン大統領表敬でも使われている。