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    Categories: 金融

1ドル=1430ウォン直前で通貨防衛を検討か=韓国

ドル・ウォンレートが本日午前中に、1ドル=1430ウォン直前にまで下落しているようです。果たして為替介入があるのかどうかは気になるところですが、それ以上に気になるのは、韓国側で現在、「通貨安定措置」、あるいは「通貨防衛」に対する議論が進み始めている、ということでしょう。とくに韓国メディア『中央日報』(日本語版)は、韓国政府が現在、一種のリパトリエーション税制などの優遇措置を検討している、などと報じています。

ウォン安:ついに1430ウォン台直前に!

今朝の『韓国紙、「ウォン市場の問題点」に言及も解決提案なし』を含め、当ウェブサイトにてしばしば取り上げている話題のひとつが、隣国の通貨の急落という論点です。

米国がスワップ締結に応じることは考え辛いのだが…隣国の通貨・ウォンは場外で1ドル=1420ウォン台と、じつに13年半ぶりの安値水準にまで下落しています。こうしたなか、韓国メディアには週末、韓国の為替市場が抱える「4つの課題」について言及された記事が掲載されていました。正直、韓国の家計債務問題などに言及がない時点で不十分と言わざるを得ないものですが、ただ、その記事を通して見えるのは、さすがに現在の状況が非常にまずいという点を、韓国メディア自身も認識しているという事実です(もっとも、「処方箋のなさ」はい...
韓国紙、「ウォン市場の問題点」に言及も解決提案なし - 新宿会計士の政治経済評論

これについては、「先週金曜日の終値が1ドル=1409.3ウォンだったが、夜間の(おそらくはNDFの)取引で1ドル=1420ウォンを突破した」、とするところまで言及していたのですが、その「続報」があります。

韓国メディア『聯合ニュース』の記事によれば、本日の韓国時間の寄り付きは1ドル=1419.0ウォンだったのですが、WSJのマーケット欄などを眺めていると、本日の午前11時半の時点で1ドル=1429.67ウォンにまでウォン安が進んでいます。すなわち、一気に10ウォン以上も通貨安が進んだ格好です。

リパトリエーション税制

本日午後以降、為替介入(通貨防衛)がなされるのかどうかが気になるところですが、それだけではありません。先日の「年金基金との為替スワップ」という話題に加え、韓国国内でもいくつかの動きが出てきたようです。そのうちのひとつが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された、こんな記事です。

ウォン相場防衛へ…企業の海外資金、国内に持ってくれば恩恵

―――2022.09.26 08:29付 中央日報日本語版より

中央日報によると、韓国政府は急落するウォンの価値を防衛するために、造船企業など輸出企業に対する先物為替売りを支援し、民間金の海外金融資産を韓国国内に持ち込んだ場合のインセンティブについても提供する、といった案を検討しているのだそうです。

具体的には、企画財政部が25日、外国為替当局は民間が保有している米国株などの海外金融資産(6月末基準で2兆1235億ドル、負債を差し引いた純額で7441億ドル)を国内に持ってくるための制度として、金融・税制優遇などの検討に着手した、としています。

むしろ個人がウォン売りを主導しているのでは?

このあたり、正直、外から見るよりも状況は逼迫しているのかもしれません。自然に考えたら、通貨安を防衛するためのリパトリエーション税制というのも、「なりふり構っていられない」という事情が存在することを示唆しているからです。

しかも、韓国の場合は外貨預金の割合がもともと日本よりも高いことで知られていますが、『「個人のウォン売り」はらむ問題点を指摘する鈴置論考』でも紹介したとおり、韓国観察者の鈴置高史氏は、むしろ現在のウォン安は個人が主導している可能性を指摘しています。

日本円が大好きな私たち日本人からすれば信じられないことかもしれませんが、韓国を含めたアジア諸国では、得てして自国通貨を信頼しない人も多く、その分、外貨預金などもさかんに行われているようです。こうしたなか、もしもその国の個人が自国通貨への信頼を失い、通貨売りを始めたら、ヘッジファンドが売り崩すよりもさらに大きなインパクトが生じる――。こんな指摘が出てきました。韓国観察者・鈴置高史氏の論考です。ドル高と通貨危機個人的に最近の関心事は何かと問われれば、そのひとつは金融市場の混乱に伴い、通貨危機がごく...
「個人のウォン売り」はらむ問題点を指摘する鈴置論考 - 新宿会計士の政治経済評論

そういえば、ここ数日に関しては、為替チャート上、韓国の通貨当局による明らかなウォン売りと思しきフローはあまり確認できません。

これが米国による「為替介入をするな」という牽制の結果なのか、それとも何か別の理由(たとえば外貨準備の枯渇など)によるものなのかはよくわかりません。

また、尹錫悦(イン・シャクエツ)韓国大統領が訪米した際、ジョー・バイデン大統領と48秒間の「立ち話」をしたということですが、果たしてこの48秒間で米韓「通貨」スワップの再開について合意することは、物理的に可能なのか、正直よくわかりません。

この点、隣国で何らかの金融危機や通貨危機が発生したとしても、現在の日韓関係に照らせば、正直、日本経済にとっての金額的インパクトは、そこまで大きいとはいえません(『数字で見る「意外に小さい」日韓関係破綻のインパクト』等参照)。

「日韓関係が破綻したら日本経済にも深刻な打撃がある」――。こんな言説がこれから増えてくる可能性があると思うのですが、あらかじめ申し上げておくなら、日韓関係破綻、あるいは日韓断交、日本企業の資産没収といった極端なケースが生じたとしても、それは日本経済にとっては十分にコントロール可能です。なぜなら、日韓貿易を除くと、「ヒト・モノ・カネ」などの面から見た日韓間の経済的関係は、隣国同士という関係性を踏まえると、驚くほど希薄だからです。2022/08/16 08:45追記本文中に誤植がありました。図表1を修正しています...
数字で見る「意外に小さい」日韓関係破綻のインパクト - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、隣国の通貨危機がアジア全体に広がる場合には、わが国にも何らかの影響が生じてくる可能性もあるので、引き続き、警戒は必要でしょう。

新宿会計士:

View Comments (14)

  • [為替チャート上、韓国の通貨当局による明らかなウォン売り]
    日本も、民主党時代にかなりの円売りを行ったようで。
    今になって、100円以下で購入したドルを140円以上で売りさばく。
    さすがにZ省は、阿漕に金をあつめますな。

  • >鈴置高史氏は、むしろ現在のウォン安は個人が主導している可能性を指摘しています。

    これが始まったら末期症状。
    自国通貨への信認をなくしてつつあるということ。

  • 毎度、ばかばかしいおしを。
    韓国政府が、財閥トップを逮捕して、保釈と引き換えに、韓国政府が決めた米ドルー韓国ウォン相場になるように、通貨防衛への協力を義務付けたんだって。
    おまけに、韓国裁判所も、これが合法であると認めたんだって。
    この話は、2022年9月26日時点では、笑い話である。

  • 26日13:25現在、既に1431KRW/USDですね。
    何をやっても加速するKRW、やはり外貨準備高の中身がいい加減なのでしょう。

    • >>JJ朝日 様
      チャートを見るといわゆるワロス曲線も描けてないので、ほとんど介入など出来ていない状態、と言うことなんでしょう。
      為替上韓国の産業で儲けを出せる範囲が極めて狭い、と言うことを考えると、介入したくても出来ない、と言う事になり、使えるような外貨真水はほとんど無い、と導けるかと思います。
      この先「ドル寄こせ~」の呪文はますますうるさくなるでしょうけど、その割に、日米欧他に喧嘩売り続けるのって、なんなんでしょうね。
      韓国が出せるモノが何も無い状態で、さらに心証悪くしてたら出るはずの助けも出ないでしょうに

      • そこでですね、
        >韓国の尹錫悦大統領は26日、歴史問題で悪化した日韓関係について「いかなる困難があっても、関係の正常化は強力に推進していく」と述べた。

        なんて記事が出てくるわけです。
        これは『日本にすり寄ります』っていう宣言なんじゃないかな?
        気を付けなければ。
        防虫スプレーも用意しよう。

      • hallo様

        ワロス曲線の発現頻度は少ないものの、少しは抵抗しているように見受けられます。しかし、同時に株式市場に回す勢力は不足してしまうようですね。
        なんとなく来年かと思っていた1500KRW/USDが年内にも・・?

  • 外貨流出を防ぐため 日本への渡航制限を発令してほしいですよ。
    ウォンは せいぜい新大久保で通用するのかな?
    貧乏客は 迷惑。

  • 1430防衛どころか、今週中に1450を突破する可能性が高いです。
    一部韓国メディアは年内に1500突破の恐れとか書いていますが、今週、来週末に1500まで見えてくる可能性さえあると思っています。

    レビル将軍風なら、
    韓国には、すでにドルはない!キャッシュもなければ、米国債、ドルスワップもない!
    というところですかね。

    もともと外貨準備内の(実際に使えるかどうかは別として)ドルキャッシュは4%程度と言われています。
    為替管理ができていた状態ならまだしも、今の韓国には日銀のような為替介入は到底無理な話で、マスコミを使って少しでも効果をあげようとしていますが、焼け石に水です。
    ウォン安防衛…韓国通貨当局、年内に80億ドルを市場に供給へ(朝鮮日報))
    https://news.yahoo.co.jp/articles/90de52af99d6e578ae06e0558453f8bce4f5779d
    ⇒80億ドルは今年第1四半期の1日平均売買代金(639億5000万ドル)の13%にすぎないが、政府として可能な対策を全て動員することにした。

    まあ、韓国の場合、自己都合でトラブルを起こして、最終的に外国(主に日本)に助けてもらうことがほとんどですが。。。

  • 個人的には円ウォンレートを気にしています。あと少しで0.1円/ウォンを下回りそうです。

  • 劣る日本が 日銀砲(財務省砲)で ハゲタカをぶん殴ったくらいですから、韓国さんも 韓銀砲 ぶっぱなせばいいのに。
    撃った途端 砲身爆裂で 致命傷になるかもね。

  • >むしろ個人がウォン売りを主導している

    株・不動産のきな臭さを為替でリスクヘッジしてるんじゃないのでしょうか?
    *自国政策への信頼の無さは抜群!ですね。

  • 例の国民年金との「スワップ」が実は合法的な介入なんですよね。外貨準備を使って国民年金が外為市場にアクセスするのを防ぐ役割。

    中銀同士のスワップではないから、多分デリバティブのカレンシースワップですよね。
    これってば事実上為替予約とおんなじ。
    外債投資に為替予約なりカレンシースワップをつかうと、外債償還時の為替レートが確定して為替リスクは負わなくなる。ただ、為替リスクを負わない分実質金利もウォン並みになって、せっかく逆転したドルの高い運用利回りを受け取れなくなる。

    一般的に韓国人や日本人が認識している通貨スワップ」とはかけ離れた経済効果なんだよね

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