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首脳会談発表受け岸田首相「それなら逆に会わねえぞ」

やっぱり日韓首脳会談は行われないのでしょうか。韓国メディア『中央日報』が本日、日本の朝日新聞の報道を引用するかたちで、岸田文雄首相が「それなら逆に会わねえぞ」と話した、と報じました。これについて中央日報は「首脳会談開催の事実が確定する場合、両国が同時に発表するのが通常の外交慣例だが、韓国がこれを先に発表したことに対し不快感を示したということだ」と分析するのですが、それならなぜ中央日報自身も日本政府の裏付けを取らずにあたかも日韓首脳会談が確定したかのように報じたのでしょうか?

最初から不自然だった韓国政府側の発表

「ニューヨークの国連総会の機会を利用して、岸田文雄首相と尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領の首脳会談が行われる」と韓国政府が発表した、とする話題については、当ウェブサイトでは先週木曜日の『韓国政府高官「韓日は首脳会談の開催で快く合意した」』で「第一報」として取り上げました。

韓国政府高官が15日、今月下旬の国連総会に合わせて日韓首脳会談が開かれると発表したようです。ただ、これに関しては日本政府側からの発表が現時点で見当たらないほか、報じられた韓国政府高官らの発言にも不自然な箇所が多いことから、現時点ではとりあえず「韓国側の一方的発表」としか見ることができません。2022/09/15 17:30追記本稿で取り上げた韓国側の「首脳会談」とする話題をめぐり、松野博一官房長官は本日午後の会見で、岸田首相が「諸般の事情が許せば国連総会に出席する方向で調整をしている」としつつも、もしニューヨ...
韓国政府高官「韓日は首脳会談の開催で快く合意した」 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、当ウェブサイトではその当初から指摘してきたとおり、この韓国政府・韓国大統領室の金泰孝(きん・たいこう)国家安保室第1次長による15日の発表には、不自然な点が多々ありました。

いわく、「日本とは(首脳)会談を行うことで早くから合意し、日程を調整している」はずなのに、「具体的な日程はまだ決まっていない」。

いわく、「双方が今回会うことが良いと快く合意した」はずなのに、「どのような話をするかはまだ決まっていない」。

いわく、「30分ほど顔を合わせて行う会談になる」が日韓諸懸案は「韓国が自主的にプロセスを進め、日本とも内々に意見交換しているため、首脳が会って確認する必要もない状態で会うことになった」…。

正直、まともな判断力がある人ならば、この金泰孝氏の発言を見て、こうした不自然な点が多々あることにはすぐに気づくでしょう。

松野長官が速攻で否定

当ウェブサイトとしては、「本件についても日本側の発表を見ないことには何とも判断できない」ものの、「虚偽の発表が大変に多い韓国政府のことでもあるため、この発表を無条件に信じるべきではない」し、「現時点では単なる韓国側の一方的発表と見るしかない」、という趣旨のことを申し上げました。

結論的には、もっと踏み込んで「韓国政府の発表はウソだった」と述べても良かったのかもしれませんが、ただ、長年コリア・ウォッチングをしていると、「どう考えてもウソっぽい」話題であっても、「その場で(ウソと)断定することはしない」、というクセがついているのです。

もっとも、当ウェブサイトでこの話題を取り上げた直後に首相官邸ウェブサイトにアップロードされた松野博一官房長官の15日午後の会見を視聴すると、即座に韓国政府の発表が虚偽であるとの裏付が事実上取れました。松野長官自身が具体的な日程については「現時点で何ら決まっていない」と明言したからです。

これに加えて日本側では、たとえば日テレが「岸田首相周辺は不快感を抱いている」と報じたほか、産経新聞が「韓国側の一方的発表に抗議して正式な階段を見送る方針だ」と報じるなど、日韓首脳会談に対して否定的な報道が相次ぎました。

もちろん、現時点において「プル・アサイド」、つまり略式での会談が実現される可能性がゼロというわけではありませんが(※というよりも岸田首相の滞在日程はもうほとんど残っていませんが…)、基本的には正式な日韓首脳会談の可能性は立ち消えたと考えて良いでしょう。

岸田首相「それなら会わない」

こうした視点で興味深いのが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載された、こんな記事です。

岸田首相「それなら会わない」…韓国の「首脳会談」先行発表に不快感

―――2022.09.21 12:06付 中央日報日本語版より

中央日報は朝日新聞の記事を引用するかたちで、韓国側が日韓首脳会談開催を一方的に発表したことに対し、岸田首相自身が「強い不快感を示した」うえで、「それなら逆に会わねえぞ」と話したことを、日本政府の話として報じたと伝えています。

(※なお、当ウェブサイトの方針として、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の3紙の記事については、必要がない限り、極力リンクを示さないことにしていますので、朝日新聞の原文を確認してみたいという方は、申し訳ないのですが直接お調べください。)

この記事を読んで真っ先に浮かぶのは、「もし韓国側の一方的発表がなければ、岸田首相は首脳会談に応じていたのか?」という疑問点ではありますが、この点についてはとりあえず脇に置きます。もっと強い違和感を抱く箇所があるからです。中央日報はこの朝日新聞の報道について、こう述べています

首脳会談開催の事実が確定する場合、両国が同時に発表するのが通常の外交慣例だが、韓国がこれを先に発表したことに対し不快感を示したということだ」。

もし中央日報自身がそのことを理解しているのならば、なぜ中央日報自身が日本政府の発表を確認せず、あたかも日韓首脳会談が確定したかのように報じた(『韓国紙、首脳会談開催を前提に勝手に日本の謝罪を議論』参照)のでしょうか?

さすがに驚きました。韓国紙に今朝、日韓が首脳会談を行うことが「確定した」ことを前提に置いた記事が掲載されていたからです。この話題、すでに昨日の段階で、松野官房長官が「まだ何も決まっていない」と否定していたものです。それなのに、日本側の発表を完全に無視したうえで、自称元徴用工問題を巡っても「日本が譲歩すること」を勝手に議論しているのです。これは驚く!虚報を事実であるかのごとく決めつけた記事長年、コリア・ウォッチングをしていると、たいていのことには驚かなくなります。しかし、さすがに韓国メディア『...
韓国紙、首脳会談開催を前提に勝手に日本の謝罪を議論 - 新宿会計士の政治経済評論

本当に不思議なメディアです。

「保守政権なら関係改善」という幻想

さて、ここから先は、個人的な感想です。

現在の日韓関係は(というよりも韓国政府・外交部は)、首脳会談に限らず、外交では多くの場合、双方が合意した場合にすりあわせたうえで同時に発表する、といった外交上の基本から逸脱するという事例が多すぎます。

もちろん、日本の外務省内では、おそらくは「コリア・スクール」と思しき勢力が、たとえば岸田文雄首相にウソを吹き込んでまで日韓関係の「改善」を演じようとしている(『ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」』等参照)点については注意が必要です。

「佐渡金山の世界遺産登録に動けば韓国や米国との関係が悪化する」。こういうウソを岸田首相に吹き込んでいたのは、やっぱり外務省だったようです。これは韓国観察者の鈴置高史氏が以前から指摘してきた問題点ですが、時事通信に今朝掲載された記事にも同じ趣旨の記載が含まれているのです。2022/07/29 17:46追記記事ジャンルが誤っていましたので修正しています。ウソつき外務省日本政府が佐渡金山の2023年におけるユネスコ世界文化遺産登録を断念したとする話題については、『佐渡金山世界遺産登録断念に「落胆」すべきでない理由』...
ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、韓国側の動きがあまりにも稚拙すぎるためでしょうか、最近だと明らかに日本側で「日韓関係『改善』」に向けて積極的に動こうとしている勢力(とくに日韓議連関係者や外務省のコリア・スクールなど)の立場が悪くなっていることは間違いないでしょう。

ちなみに今年3月10日の『韓国大統領選:尹錫悦政権発足へ』を含め、当ウェブサイトでは一貫して申し上げてきたとおり、そもそも「韓国で保守政権が発足したら日韓関係が良くなる」というものではありません。

韓国大統領選を、大接戦の末に尹錫悦氏が制したようです。これにより、おそらく日本のメディアは、「韓国側から日韓関係『改善』に推力が働くだろう」、などとする分析を掲載すると思います。しかし、あらかじめ申し上げておきますが、韓国が日本との約束を誠実に守る方向に舵を切るかどうかは微妙です。同氏が「保守派」なのかという点もさることながら、むしろ過去の事例に照らせば、「保守政権」下で日韓関係がギクシャクしていたという事実を思い出しておく必要もあるでしょう。尹錫悦氏が大統領選制する大接戦となった韓国の大統...
韓国大統領選:尹錫悦政権発足へ - 新宿会計士の政治経済評論

尹錫悦氏が保守政治家なのかどうかという論点はとりあえず脇に置くとして、日韓関係が「悪化」するきっかけを作ったのは、別に文在寅(ぶん・ざいいん)前大統領だけではないからです。

朴槿恵(ぼく・きんけい)、李明博(り・めいはく)という両元大統領の時代に関しても、それこそ日本を苛立たせるような国際法違反行為、国際合意違反行為はいくらでも発生していますし、それらの不法行為を巡って韓国側はまったく片付けていませんし、日本に対する適切な謝罪も賠償も行っていません。

だいいち、尹錫悦政権発足直後にも、竹島近海の日本の排他的経済水域(EEZ)などの海域で、韓国側が無断で測量などを行っていた事実も発覚しており(『竹島不法調査受け、日本政府は韓国外相来日を拒否せよ』等参照)、韓国側に対日不法行為をやめる意思があるとも思えません。

抗議では済まされません。韓国が日本の排他的経済水域(EEZ)で日本の許可なく勝手に調査を行っていたとして、日本政府が韓国政府に抗議したそうです。しかし、韓国が新政権になってもこの手の不法行為を日本に仕掛けてきたという事実は、日本が求める「国と国との約束を守る」かたちでの日韓関係正常化があり得ないことを意味します。とりあえず、日本政府は韓国国民に対するビザ免除措置再開を見送るとともに、韓国外相の訪日受入を拒否すべきです。韓国の二重の不法行為とゼロ対100理論日韓諸懸案といえば、基本的には韓国の日本...
竹島不法調査受け、日本政府は韓国外相来日を拒否せよ - 新宿会計士の政治経済評論

いずれにせよ、日本もそろそろ日韓関係「改善」ありきの議論から抜け出し、韓国が「ともに手を取り合い、未来に向けて歩むべき友好国」であるとの認識が正しいのかどうかを真剣に検討すべきではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 首脳会談の件もそうですが
    ユン大統領と天皇陛下の合成写真を遅ればせながら今日知りました
    とにかく嘘つきですね

    • 匿名様
      昨日の、この記事ですね。
      https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71927?page=2

      韓国のマスコミにとって、「日本に勝った、日本が謝罪した、日本側から韓国側にすり寄ってきた」という記事は、韓国国民が喜ぶ、よい記事です。
      だから、捏造してでも、天皇陛下が笑顔で尹大統領に話しかけたように見せて、自分たちの自己肯定感を鼓舞させようとするのでしょう。しかし、事実はそうではないので、すぐに暴露されてしまう、これはマスコミとして他国から見れば恥ずかしいことです。

      結局、韓国という国が持っている日本に対する劣等の裏返しでしかないのですけれども。

  • あれ?

    議論するのが『友好国』かどうかなんですね?汗

    韓国は日本を敵性国家とみているのはレーダー照射事件からも明らかで、日本で議論するのは韓国が敵性国家かどうかだと思ってましたが。

    もちろん、無理に敵を増やす必要はないので、議論はひっそりこっそりやっておけばいいと思いますが。

  • 駐日韓国大使を合意も無しに一方的に発表する国ですから、この位のことは当たり前のことでしょう。驚いたり論評の必要性もありません。
    あ、またやってるなと思っていればよろしいかと。
    本当に国も国だけど、マスコミもマスコミ。マスコミは日本についても同様ですが。

  • 報道内容的に会うことが決まっていてその内容を一方的に報道したから不快を示したように書いてますが、会うことも何も決まってないのに適当な報道をしたことに不快を示したのではないでしょうか?
    これを見るとまた変な報道のせいで不快感を示して決まっていた会談予定を日本側が一方的に断ったみたいなことを後から言われそうな感じがしますね。

  • 日本政府はそろそろ何らかの対応をしないと、強制徴用工などというありもしない問題が、いつの間にかあったこととして世界各国に認識されてしまうのではないかと思います。
    日本のマスコミも、この問題を解決するためには、日本も解決に協力すべきだみたいなことを言っています。
    問題など元々無いにも拘らずです。

    制裁発動の前に、まずは、この問題は韓国の言いがかりであることを世界各国に向けて発信する必要があるのではないでしょうか?

    • 韓国以外の世界の人達が皆、他人の事に常に真剣な関心を持ち、常に客観的で理性的な判断をできるのであれば、このやり方も功を奏するかもしれません。
      しかし、実際は、関係も関心も無いのに、韓国のロビー活動にのせられて、変な像を自国の公園なんぞに、美的景観を壊しても、設置する国がある世界ですから。

      こういう時の一番の対処は、無視です。
      相手の挑発に乗って、こちらがアタフタするのが、相手の一番喜ぶことです。

      • >こういう時の一番の対処は、無視です。
        相手の挑発に乗って、こちらがアタフタするのが、相手の一番喜ぶことです。

        直ぐアタフタするの無能な小役人や政治屋の言いそうなことですね。

        無視は単なる精神勝利。
        スマートなお仕置きをして、一罰百戒、再発防止に努めるのが一番の対処。
        黙ってやるか、公言するかは相手と観衆次第。

        スワップ交渉棚上げ、漁業交渉無期延期等は良い例。
        次は法令厳格適用、ビザ免除対象国から除外、外為法改正、CPTPP交渉無期延期等

        ペロシ訪韓に対する粗相に対し、米国は暫く米韓首脳会談はしない、と期待しながら注目。

        • 追記しようと思っていました。

          無視とは、全面無視です。
          そもそも、自分の悪口をあらゆるところで、喚き散らす相手と、僅かでも付き合うのは、おかしいです。
          日本は、そのおかしな事をずっとやって来ている、お人よしなのです。

      • >こういう時の一番の対処は、無視です。

        既に外相会談やった時点で、無視していないのでは?
        無視するなら、相手にすべきではありません。

      • 外相会談やってるのに、相手の言いがかりに抗議しない時点で、やったことを黙認しているのではないでしょうか?
        多くの国ではそのように受け取るのが自然だと思います。

        林外務大臣や岸田首相は論理的な思考力が無さそうに思えます。
        毎日何を考えてきているのでしょうかね。

  • 彼らの外交会見が不発に終わってしまうのは仕方のないことなんです・・。
    いつだって、 ”手前勝手な立場(意向)表明” をしてるだけなんですものね。

  • 韓国はもはや後進国だからね
    GDPランキング14位でブラジルやカナダ、ロシアより下
    なのに経済成長率も2年連続で日本に負けそうだから話にならない

  • 「それなら逆に会わねえぞ」
    は岸田首相自身の発言引用の形で書かれてますが
    朝日が本当にそう報じたのか私が
    確かめようとしても見つかりませんでした。
    ・「それなら」
    ・「逆に」
    の2つは、会談を行うことになってたのを
    匂わす表現としてこの一文で作用していますが、
    もし、朝日もしくは中央日報または
    両者のコラボで岸田首相の発言のように捏造したか
    お得意の発言切り取りだとしたら、
    両新聞らしい悪事を重ねただけのことになります。

    ま、詐欺でもM資金話なんかでも、
    嘘だとバレたときの言い逃れの常套句は、
    「いや、嘘だったんじゃない 話が変わったんだ」
    ですから、韓流メディアが、
    日韓首脳会談をすることになった 
    と報じていたのが嘘だったとすると、
    今回の記事もごまかすための画策の可能性があり
    なんせ動機は十分で、過去に幾多の前科もりもりの
    韓流さんですので疑われないほうが不自然でしょう。

  •  韓国には、男性(または女性)が「彼女(または彼)は『俺(私)と結婚する』と快く約束した。」と発表すれば、相手は結婚しなければならないという法律(国民情緒法)があるのかも知れませんが、残念ながら、日本にはそうした法律はありません。
     そこで、韓国政府に提案ですが、この次に尹錫悦大統領が岸田首相と同じ国際会議などに出席する場合には、事前に「尹錫悦大統領は、今回の会議では岸田首相と会談する予定は無い」と発表すれば、天邪鬼(アマノジャク)の岸田首相のことですから「それなら絶対に会う」と言い出すかも知れません。
     一度、試してみる価値はあると思いますよ。

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