ISDSという「国際的手続」で韓国の不法行為を認定
ローンスターのISDSの件で投資紛争解決国際センター(ICSID)は韓国政府に損害賠償を命じたようです。韓国メディアは「認定された損害賠償額がローンスター側の請求額の4.6%だったからローンスター側の主張の大部分は退けられた」、などと主張しているようですが、重要なのは金額の多寡ではなく、「イランのダヤニ家の事例に続き、国際社会の手続に従い、韓国政府の不法行為が認められた」という事実です。
国際社会のルールから逸脱する韓国
韓国ではしばしば、国際社会の法秩序やルール、常識から逸脱した判定が下されることがある、という点については、いまや私たち日本人の多くが認識するようになったと考えて良いでしょう。
日韓の歴史問題にあまり詳しくない人であっても、2018年10月と11月に相次いで下された自称元徴用工判決が1965年の日韓請求権協定に違反する法的状態を作り出していることを、さすがに「まずい」と感じている人は多いはずです。
また、自称元慰安婦が日本政府を相手取って損害賠償を求めた訴訟で、韓国の地裁は2021年1月にに穗政府に対して損害賠償を命じる判決を言い渡しましたが、これなど、いわゆる「主権免除」原則を中心とする国際秩序に正面から挑戦するような行為です。
こうした一連の異常判決などを見ても、韓国が国際法を守らない国であるという点については、もはや事実と認定しても過言ではないでしょう。
日本以外の国に対しても不法行為が行われる
ただ、非常に興味深いことに、韓国の国際法違反行為は、日本に対してのみ向けられているのではありません。
もちろん、日本が「被害者」となるケースが多いことは事実ですが、その韓国は国際社会に対しても同様に、さまざまな挑戦をしているのです。
今から2年前、当ウェブサイト宛に、当時は「韓国在住日本人」様と名乗っていたコメント主様(※帰国されたため、現在のハンドル名は「元韓国在住日本人」様です)からご寄稿をいただいた、『【読者投稿】在韓日本人「韓国さん、お達者で!」』の記述など、非常に参考になります。
「たとえば東南アジアではパラオの橋の崩落(SOCIO)、インドネシアの溶鉱炉事故(POSCO)、ベトナムでの建設現場崩落事故(三星物産)、ラオスのダム崩壊(SK建設)、インドのガス漏れ事故等(LG化学)、韓国企業が東南アジアで起こした事故が数多くあります」。
そして、これらの事故に対する対応が、決して誠実なものであるとは限らなかったという点については、当ウェブサイトでも過去に何度となく指摘してきたところでもあります(『韓国にはラオスダム決壊の加害者という意識があるのか』等参照)。
さらには『イランによる韓国船拿捕の裏にある両国の浅からぬ因縁』などでも触れたとおり、韓国とイランは浅からぬ因縁を抱えています。米制裁逃れの一環として、韓国側とウォン資金口座を開設したところ、その資金口座が凍結され、イランの求めにも関わらず、凍結状態が解除されていない、という問題があるからです。
経済規模が小さかった時代ならともかく、世界10位圏内をうかがう経済大国となった韓国が、世界中でさまざまな不誠実さ、国際法違反行為などを働いていれば、「元韓国在住日本人」様が指摘されるとおり、韓国の「孤立化」は避けられません。
ISDSという国際社会の手続
こうしたなか、先週の『ISDSで韓国は国際社会のルールに照らして裁かれる』でも取り上げたのが、イランのダヤニ家に続き、今度は米投資ファンドの「ローンスター」が韓国政府を訴えているという「ISDS」の話題です。
ISDSとは、 “Investor-State Dispute Settlement” 、つまり「投資家・国家間の紛争解決手続」のことで、外国人投資家が相手国に投資を行う際、その相手国政府の不法行為などによって外国人投資家の利益が侵害された場合に、国際的な仲裁手続を使って問題の解決を図るものです。
具体的な紛争解決手続は個別の投資協定などに定められているのですが、ローンスター側は韓国の「外換銀行」を2007年に香港上海銀行(HSBC)に売却しようとしたところ、韓国金融委員会が正当な理由なく売却承認を遅延し、韓国国税庁が恣意的で矛盾した課税を行ったと主張。
ローンスターが米ワシントンに設置された「投資紛争解決国際センター(ICSID)」に対し、ISDSの申し立てを行った、とするのがこれまでの経緯です。
投資紛争解決国際センター(ICSID)の仲裁規則
世銀が1965年に設立した、米・ワシントンD.C.に所在する「投資紛争解決国際センター」(International Center for Settlement of Investment Disputes, ICSID)で行われる仲裁。設立条約締約国は150ヵ国
ISDSの続報:韓国は賠償命じられる
これに、続報が出てきました。
『聯合ニュース』(日本語版)などの報道によれば、韓国政府・法務部が31日、ICSIDが韓国政府に2億1650万ドルの損害賠償を命じる裁定を出したと明らかにしたのだそうです。
米ファンドへの約300億円賠償 世銀仲裁機関が韓国政府に命じる
―――2022.08.31 12:35付 聯合ニュース日本語版より
2億1650万ドルといえば、ローンスターが当時請求していた46億7950万ドルの約4.6%に相当する金額に過ぎませんが、これに2011年12月3日からの遅延利息の支払いもあわせて求められるため、実際の韓国政府の支払額は3億ドル前後、といったところでしょうか。
これについて聯合ニュースは次のように述べています。
「ICSIDの裁定は請求額の4.6%の賠償だったことから、ローンスターの主張の大部分を退けたとの見方ができる」。
…。
はて、そうでしょうか?
金額的に見ればローンスター側の請求が満額認められたわけではありませんが、ただ、イランのダヤニ家に続き、ISDSという「国際的な判断手続」を通じた結果、韓国政府側に支払いが命じられたという事実が重要なのです。
(おそらくローンスターも投資ファンドなので、請求額自体が過大であったという可能性はあるでしょう。)
ここで思い出すのが、韓国政府は日韓諸懸案のなかの竹島不法占拠問題などを巡り、日本政府による国際司法裁判所(ICJ)付託提案を、3度も拒否したという事実でしょう。
この事実自体、国際社会のルールに従った裁定が下るのを韓国が極端に嫌がっているという証拠であり、間接的には韓国が国際社会のルールを恐れているという証拠でもあります。
いずれにせよ、今回のISDSの件も、とにかく日韓2国間の関係に陥りがちな日韓関係を巡っても、「国際社会のルールで判断すること」が大切だという教訓を、改めて思い出させるものではないでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
空気圧バルブの件で是正勧告を受けてなお「韓国判定勝ち」との最終報告を採択したWTOでの一件を思い出しました。是正勧告を受けたってことは負けなのに・・。
盗人(ぬすびと)にも三分(さんぶ)の理(り)
悪事を働くにも相応の理屈はある。どんなことにでも理屈はつけられるということ。泥棒にも三分の道理。
「3%が盗人でないなら、もはや 盗人と呼ぶのは差別。」
とか考えてるとか普通思わないですよね。
この場合の”三分”は「十分の三」 30%のことです
※「分」の使い方は難しい
デール・カーネギーは、著書「人を動かす」の中で
「盗人にも五分の理を認める」と言ってます
たとえ相手が窃盗をした犯罪人でも、理解を示すという意味になってしまいます
【朝鮮日報】2022.08.31. 14:04
ハン·ドンフン法務部長官 『血のような税金、一銭も払わない』… ローンスター訴訟、異議申し立てへ
韓国は強くなった。強大になった。
だから相手の言いなりにはならない。
逆に韓国の言い分を他国は唯々諾々と聞かなければならない。
此でしょう。韓国民の思っていることは。
とにかく私のためにみんな働け~ でしょうねえ
韓国の認識と意識の根底には「規則や法規、約束は強者が弱者に押し付けるモノ」という固定観念がありそうです。
即ち、「強くなった韓国」には国際的な決まり事や条約は守る必要は無く、それどころか、特別な特権階級としての扱いをされるべきだと思っているのでしょう。
糞だな。借りたカネは返さない。受けた恩は知らんぷり。日本が他国の為に支援したのち、建立された記念碑のネームや国旗をなんにも貢献していない韓国のものに書き換えるという恥知らず、、それが韓国。もうじき厳しい冬が来る。イランのカネを泥棒した韓国に原油を供給してくれる産油国はあるのかな?おい、おい、、、先に言っておくが、こっちは見るなよ。
海外資本のキャピタルフライトに拍車をかける判決結果であると思います。益々通貨&金融危機の現実味が増したのでは。
さらに、この裁定に対する韓国政府の態度(韓国国民の感性)も韓国への投資リスクの算定に影響を与えそうです。
もしこれで韓国政府が金を払わなければ。
貸した金が韓国政府の一存で帰ってこない可能性があると言う事ですよね。
なら、新規借り入れが難しくなりますよね。
さすがに韓国政府も馬鹿じゃないので、払わない事はないでしょう。
いまごろ、みづほ銀行の韓国への融資担当は顔面真っ青じゃないの?貸したカネを返さない国、、、そこへカネを貸してしまった!さぁどうするの?それからさ、イランのカネ、慰安婦合意の10億円、1965年に日本からガメた巨額の賠償金、、、返さなくてはならない事態になったらどーすんの?韓国終了だな。
返さなくてはならない事態、、、
大丈夫ですよたろうちゃん様
それを考えられるようなら韓国人をやってないですから。
長年韓国人にとって外国とは日本のこと。日本、日本人にしてよいことは、他の外国人にしてもいいと思っている。また根底にゼノフォビア(外国人嫌い)がある。
SF講和条約の交渉過程で韓国は竹島の領有権を主張し、一時期は韓国領となる可能性が高かったのですが、日本側が提出した領有権の根拠が決め手となって日本領となりました。
で、それに納得しない李承晩韓国は、一方的に李承晩ラインを宣言し、領有権を主張し、軍隊を持たない日本相手だから武力で侵略し、不法占拠を続けています。
今回の裁判でも、韓国政府は国際的な判断に従わない可能性が高いと考えます。
その結果、韓国はロシアや中国と同じ陣営に属するならず者国家なのだとの理解が広まれば、韓国からの嫌がらせを受ける日本にとっては国際社会の理解を得やすくなるのメリットではないかと。
異議申し立てなどで抵抗を試みはするでしょうけど、最終的に韓国政府は支払わざるを得ないでしょうね。いくら「国民感情が支払いを許さない」と吠えたところで、ICSIDの裁定を無視したりなんぞしたら、いよいよ国際金融の世界で生きていけなくなりますから。
もっとも、ローンスターが受けた仕打ちは、OINKという言葉を産むくらいに、世界中の金融関係者にはよく知られた話(のはず)なので、すでに韓国相手に大規模な投資をしようなどという金融機関はほとんどないでしょう。以前に新宿会計士様が指摘された邦銀の韓国相手の与信額の異常ともいえるほどの低さは、その表れと言うべきなのかもしれません。たかだか1000億円単位でしかありませんから。
でも、きっと韓国世論は沸騰するでしょうねえ。
【連合ニュース】
政府「ISDSローンスター賠償判断受け入れられない」…判定取り消し申請をする
【NEWSIS】
「食い逃げ」ローンスターに3千億ウォン賠償?…1年後の血税投入の可能性
【NEWS1】
韓東勳「国民の血のような税金」…「ローンスター訴訟」判定取り消し申請提起
【ファイナンシャルニュース】
ローンスター賠償に前現職の政治的責任論が提起
【連合ニュース】
(ローンスター判定)買収·売却関与の官僚の責任論が責任論が再燃する見通し
【NEWSIS】
韓首相「外為銀行 ローンスター売却当時、全く介入したことはない」
【連合ニュース】
[ローンスター判定] 外為、売却遅延認定…「株価操作」ローンスターの責任も50%ある
【NEWS1】
政府、ローンスターに「4千億ウォンを払わなければ…」財政緊縮の中、「血税」困難
【毎日経済】
5兆食い逃げローンスター…20年間不正·株価操作のシミ
【朝鮮日報】
一銭もあげるな」少数意見も…ローンスター、株価操作で賠償金が削られた
【NEWS1】
政府「ローンスターに2800億ウォン賠償」受け入れ不可…取り消し·執行停止を積極的に推進」
【NEWSIS】
法務部「ローンスターに2900億ウォンの賠償判定は誤り」…執行停止申請検討
【YTN】
「食い逃げ」でも足りず、6兆訴訟…政府·ローンスター「20年悪縁」
【連合ニューステレビ】
10年ぶりに「ローンスター紛争」結論…政府「受け入れられない」
【国民日報゙】
韓東勳「ローンスター少数意見では賠償額0…」最後まで争う
【TV CHOSUN】
安値買収から食い逃げ論議まで…政府·ローンスター「20年悪縁」
【Chosun Biz】
法務部、ローンスターと2回戦に行く… 「2800億ウォンも取り消さなければならない」
韓国政府としては、「違法認定」のままでは、都合が悪いので、
再戦が可能なら、仕掛けてくると思います。
さて、ローンスターは、どうするんでしょうか?
韓国政府が再戦を仕掛けてくるなら、上積みを狙うのかな。
『money1』お金を増やすための情報サイトでも指摘されていますが
そもそも事件の発端である
ローンスターを捜査という名目で営業妨害した検察チームに、
尹錫悦大統領と韓東勳法務部長官がいた
という情報がありました。
この件のポイントは、以下の2つかな。
・商習慣として、韓国政府の介入は問題無いか?
・韓国政府の介入に問題があった、としての被害額は幾らか?
満額ではないしろ、判決で支払い命令が出たわけだから、
最初のポイントで、「問題有り」と見なされ、
韓国政府の介入は駄目な事例だと認定されたわけです。
負けには違いないですね。
間違いなく格下げ要因なので、Koria Premium が蔓延するかな。