朝日新聞の世論調査でさえ、憲法改正に「賛成過半数」

内閣支持率が上昇に転じた一方、政党支持率にもかなりの「地殻変動」が生じているようです。当ウェブサイトで「定点観測」しているいくつかの調査について、現時点で入手できるものを調べたところ、興味深い現象が観察されました。また、もうひとつ気になる話題があるとしたら、「あの」朝日新聞社の調査ですら、改憲に賛同する人が過半数に達した、という事実です。

内閣支持率の状況

内閣支持率の観測と「限界」

当ウェブサイトでは以前から6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、共同通信、時事通信の4社の調査と、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)のうち、内閣支持率や政党支持率を「定点観測」しています。

ただし、政党支持率などについては有料会員限定記事にしか情報が出ていないケースも多く、「誰でも確認できるオープンソース」を重視している当ウェブサイトとしては、それらの情報を拾うことはしていません。したがって、政党支持率のデータについては網羅性に欠けるきらいがあります。

さらに、内閣支持率や政党支持率については、月2回以上公表されるときもある一方で公表されない月もありますし(たとえば朝日新聞は2022年6月の世論調査を公表していないようです)、さらには公表されるタイミングも、月初のときもあれば月末のときもあるなど、各社てんでバラバラです。

いずれにせよ、そもそも世論調査自体、質問の仕方、順序などに応じて回答内容はいかようにも変化すると考えられるため、当ウェブサイトとしては、内閣支持率調査などについては「同じメディアの異時点の調査」、「同じ時点の他メディアの調査」などと照らし合わせて判断せざるを得ない、などと考えている次第です。

最新調査だと上昇に転じた支持率

こうした限界を踏まえたうえで、現時点において著者自身が確認した、最新の内閣支持率の一覧を紹介しておきましょう(図表1)。

図表1 内閣支持率(2022年6月~7月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日支持率不支持率
共同通信(6/11~13)56.9%(▲4.6)26.9%(+5.1)
日経・テレ東(6/17~19)60.0%(▲6.0)32.0%(+9.0)
産経・FNN(6月)63.7%(▲5.2)30.2%(+5.6)
読売新聞(7/11~12)65.0%(+8.0)24.0%(▲4.0)
時事通信(7/15~18)49.9%(+1.2)20.0%(▲2.0)
朝日新聞(7/16~17)57.0%(▲2.0)25.0%(▲1.0)

(【出所】各社報道より著者作成。ただし、朝日新聞の調査のカッコ内の数値に関しては2022年5月と比較したもの。産経・FNNについては調査日不明)

これで見ると、6月までは退潮だった岸田内閣の支持率が、少なくとも読売新聞の7月11日~12日の調査では大きなプラスに転じ、不支持率については7月の3つの調査ではいずれも減少に転じています。

また、平素より他メディアと比べて支持率が低めに出る時事通信の調査を除けば、どの調査でも支持率は50%を超えており、読売、産経・FNN、日経・テレ東の調査では60%台に達しています。

菅義偉内閣と比べると支持率の高さは明らか

内閣発足から9ヵ月少々というタイミングであると考えるならば、前任の菅義偉内閣と比べ、支持率は高く、不支持率は低いでしょう。参考までに、菅内閣についての発足から9ヵ月が経過した2021年6月時点の支持率・不支持率についても確認しておきましょう(図表2)。

図表2 菅義偉内閣の支持率(2021年6月カッコ内は前回比)
メディアと調査日支持率不支持率
読売新聞(6/4~6)37.0%(▲6.0)50.0%(+4.0)
時事通信(6/11~14)33.1%(+0.9)44.2%(▲0.4)
共同通信(6/19~20)44.0%(+2.9)42.2%(▲5.1)
朝日新聞(6/19~20)34.0%(+1.0)42.0%(▲5.0)
産経・FNN(6/19~20)43.4%(+0.4)51.6%(▲1.2)
日経・テレ東(6/25~27)43.0%(+3.0)50.0%(±0)

(【出所】各社報道より著者作成)

図表1と図表2を見比べていただければわかりますが、この6つのうち共同通信のものを除けば、菅内閣は支持率が不支持率を下回ってしまっています。

いったい何が両内閣の明暗を分けたのか。

ひとつの客観的な違いがあるとしたら、菅内閣は発足から総辞職までの384日間、大型国政選挙(衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙)を1回も経験しませんでしたが、岸田内閣は現時点までにすでに2回の大型国政選挙を経ています。

2021年10月31日の衆院選については、自民党は公示前勢力を15議席減らしたとはいえ、絶対安定多数といわれる261議席に達したという意味では、「勝利した」と評価して差し支えないでしょう。

また、2022年7月10日の参院選では、自民党は改選124議席(プラス補選1議席)のうち半数以上の63議席を占め、非改選と合わせた勢力も、単独過半数には満たないにせよ、119議席に増えました。これも議席数だけで見れば、間違いなく「勝利」とみて良いでしょう。

(※ただし、『少数政党の出現:自民党は比例でむしろ議席を減らした』でもふれたとおり、当ウェブサイトとしては、今回の参院選を「自民党の手放しでの勝利」とみるべきではないとは考えているのですが、この点についてはまた別の論点です。)

政党支持率の状況

政党支持率は「維新>立憲」

こうしたなか、内閣支持率だけでなく、「周辺論点」についても、興味深い点に2つほど気づきます。

ひとつめは、政党支持率です(図表3)。

図表3 政党支持率(2022年6月~7月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日自民立憲維新
日経・テレ東(6/17~19)45.0%(▲6.0)7.0%(±0)8.0%(+2.0)
読売新聞(7/11~12)44.0%(+7.0)6.0%(±0)8.0%(+2.0)
時事通信(7/15~18)26.5%(▲0.7)4.1%(+0.2)4.5%(+1.4)

(【出所】各社報道より著者作成)

昨年秋の衆院選後、日本維新の会が最大野党であるはずの立憲民主党を政党支持率で上回ることが増えているのですが、読売新聞と時事通信の2社の調査では、参院選後に再び両政党の支持率が明確に逆転したようです。

実際、『過去7回分の参院選比例で振り返る「民主党系の凋落」』でも取り上げましたが、民主党の系譜を受け継ぐ政党(民主党→民進党→立憲民主党)の比例代表における得票数・得票率は、凋落の一途を辿っています。

そして、それと反比例するように、日本維新の会(あるいは「おおさか維新の会」)の得票数・得票率は順調に積みあがっており、今回の参院選では初めて、比例代表における獲得議席数で、維新・立憲の逆転が生じています(といっても両者の差は1議席ですが)。

立憲民主党に対する「失望」?

これが「日本維新の会に対する期待」なのか、「立憲民主党に対する失望」なのかはよくわかりませんが、少なくとも各メディアの世論調査と客観的な選挙結果の双方において、「立憲民主党の凋落」が明らかになりつつあることは間違いないでしょう。

そういえば、最近も立憲民主党といえば、安倍総理の国葬をめぐって、泉健太代表が当初は容認する姿勢を示していたのに、途中で反対に転じた、とする話題もありました(『安倍総理の国葬を阻止しようとする市民団体に負けるな』等参照)。

どうせ反対するなら最初から反対していればまだわかりやすくて良いのですが、途中でコロコロと意見を変えるような姿勢が有権者の不信感を招いているのかもしれません。

そういえば、立憲民主党といえば先週、神奈川県小田原市議の俵鋼太郎容疑者が静岡県三島市内を走行する電車内で下半身を露出したとして、公然猥褻の疑いで逮捕されるという「事件」も発生させています。

立憲民主党“人糞放置事件”の次は電車で下半身露出…身内の不祥事には“だんまり”に疑問続出

―――2022/7/22 18:46付 Yahoo!ニュースより【※女性自身配信】

他党の不祥事については、「もりかけ問題」のように、ときとして捏造・歪曲してまで舌鋒鋭く追及しようとするわりに、自党の不祥事についてはダンマリを決め込むという姿勢については、どうも理解に苦しむものといわざるを得ないでしょう。

政党支持率巡る「地殻変動」

ちなみに政党支持率に関しては、時事通信の次の記事が非常に詳しく触れられています。

内閣支持横ばい49% 政党支持率、維新2位に―時事世論調査

―――2022年07月21日17時01分付 時事通信より

時事通信によると、自民、維新、立憲の3党以外で見ると、支持率が最も高かったのは公明党(3.8%)で、続いて国民民主党(1.9%)、れいわ新選組(1.6%)と続き、今回の選挙で政党要件を満たした参政党が日本共産党と並ぶ1.3%、これに社民党(0.5%)、NHK党(0.2%)が続いたのだそうです。

「組織票」を誇るはずの公明党が維新に抜き去られたこともさることながら、同じく「組織票」を誇るはずの日本共産党が国民民主党やれいわ新選組に抜かれ、さらには新興政党である参政党に並ばれてしまったというのは、大変に興味深い変化でもあるのです。

憲法改正

憲法改正に向けた機運は?

ところで、政治という話題に関連していえば、安倍晋三総理が突如として暗殺されたことで、社会の雰囲気が変わった可能性はあるでしょう。

保守的な政治志向を持つ有権者のなかには、「自民党の支持者」ではあるけれども「宏池会出身の岸田首相は気に入らない」という人もいるのかもしれませんが、安倍総理の遺志である憲法改正を成し遂げようとする機運が自民党内に盛り上がれば、結果として内閣支持率を高めるという推力が働くかもしれません。

もちろん、国会が改憲発議に成功するかどうかは衆参両院で3分の2の議員が賛同するかどうかにかかっていますし、もし改憲発議に成功したとしても、実際に憲法を改正するかどうかは、最終的には私たち国民自身が決めることでもあります。

したがって、「今後3年以内に憲法改正が実現する」、などと決めつけるべきものではありません。ただ、国民の間で憲法改正への支持は、間違いなく広まっています。

世論調査をめぐる話題で、もうひとつ、重要なものがあるとしたら、次の記事ではないでしょうか。

9条改正、自衛隊明記「賛成」が51% 朝日新聞世論調査

―――2022年7月18日 18時03分付 朝日新聞デジタル日本語版より

これは、素直に驚くべき調査結果です。

「あの」朝日新聞社の世論調査で、「岸田政権のもとで憲法第9条を改正し、自衛隊の存在を明記すること」に対し、51%と過半数が賛成したからです。

幅広い層が改憲を支持

リンク先記事は有料会員限定版ですが、無料で閲覧できる部分に限定して記事を紹介すると、次のとおりです。

  • 男性では賛成59%・反対30%、女性では賛成44%・反対37%
  • 18~29歳では賛成57%・反対33%、70歳以上では賛成50%・反対32%
  • 反撃能力を自衛隊が持つことについては賛成50%・反対40%
  • 防衛費は「今のままがよい」が46%、「増やすほうがよい」が34%

…。

世論もずいぶんと変わったものです。

朝日新聞を含めたこれらのメディアの調査自体、質問が公正中立といえるのか、あるいは質問のなかに特定の結果を誘導するかのバイアスがかかっていないといえるのかどうかをめぐっては疑問に感じるものが多いのも事実ですが、そうだとしても、朝日新聞の調査で「すら」改憲賛成が過半数だったというのは驚きです。

また、防衛費増額については現状維持の方が多数派だったようですが、それでも反撃能力を自衛隊が持つことに50%が賛成したということであり、それだけ日本の安全保障環境の厳しさが(多くのメディアの偏向報道をものともせず)国民に浸透しているということは間違いなさそうです。

こうしたなか、米メディア『CNN』は安倍晋三総理の最大の遺産が「軍備ではなく言葉である」と指摘しました(『安倍総理の「FOIP」が米国を動かした=CNN指摘』参照)。

一部のノイジー・マイノリティの人たちを除けば、私たちが暮らす日本という「自由で民主主義が貫徹し、法が支配し、人権が尊重される社会」を守り、この価値観を広めようとする安倍総理の遺志は、間違いなく日本国民の多数には支持されているとみて良いでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 通りすがり より:

    例の脱糞民主党事変では、また不穏な事実が発覚したようで。
    当初この焼肉会に参加したのは県議会と市議会の議員のみと言われていたが、どうやら参議院当選議員の斎藤嘉隆(59)も参加していたことがわかった模様。焼き肉店店主もこの参院議員が参加していたことを認めている。

    発覚当初は菓子折りを持って謝罪に来るなどしていたが、党内の箝口令によりシラを切る方針に舵を切られたことに憤慨した焼肉店店主が警察に捜査を急ぐようせっついたところ、『本格的な捜査をするまで時間をください』と。下手に動くと選挙妨害に当たるらしく、『参院選が終わるまで待ってくれ』の一点ばり。参院選後に刑事に連絡したら、『選挙が終わったので捜査を再開します。会合参加者に順次事情を聞いていきます』と言ってきたとのこと。(NEWSポストセブンより一部引用:https://www.news-postseven.com/archives/20220723_1776582.html?DETAIL)

    今回箝口令がなかったら、斉藤は落選していたかも知れない程度の薄氷当選だった模様。
    本当はCLPやブルージャパンについてもっと追及すべきと思うが、こんな便臭漂う事件も放っておけない。

  2. より:

    先の総選挙や参院選における立憲民主党の得票率と政党支持率との乖離から見えてくるのは、国政選挙で立憲民主党に票を投じた人の内で、かなりの割合が「非自民」だという理由でのみ立憲民主党に票を投じたものであり、立憲民主党の「政策(そもそもそんなもんあったっけ?)」や「公約」を支持するがゆえに票を投じたわけではないということです。単に「非自民」というだけなのであれば、立憲民主党でなければならない理由などありません。他にも選択肢があるならば、そちらにも票が流れるのは、ある意味当然のことでしかありません。実際、「宗教政党(ではないと自称)」である公明党や、20世紀の遺物である共産党を避けても、まだ他に選択肢があるのです。

    実はこのような傾向は55年体制の頃からあまり変わってないと考えています。当時だって、一部の真面目な支持者以外は、ただ「非自民党」というだけの理由で社会党に投票していただけなんじゃないかと睨んでいます。
    ここで問題となるのは、当時の日本社会党も、現在の立憲民主党も、自分たちが単に「非自民党」であるという理由だけで票を得ていたという「事実」から目を背け、そのレベルで「勝った、敗けた」とはしゃいだり、沈んだりしていただけだということです。

    先の参院選の選挙期間中、立憲民主党の福山前幹事長は「日本には強い野党が必要なんです!」と叫んでいました。そのこと自体は正しい発言だと思います。しかし、「非自民党」以外に何一つ汲むべき点がない政党がどれほど議席を得ても「強い野党」になど決してなれません。ただ「枯れ木」の割合が増え、雑音が喧しくなるだけです。
    日本社会党は最後までその錯覚から覚めないまま崩壊しましたが、立憲民主党は同じ轍を踏もうとしています。いずれにしても、日本の民主主義にとって不幸な状況は変わりそうもありません。

    1. 匿名 より:

      強い野党が必要なら、国民を分裂さえせるのが手っ取り早いと思うんですが、労使ですらそんなに対立してないですからね。というか、労組が離れていっているようでは・・・

    2. 裏縦貫線 より:

      「日本には強い野党が必要なんです!」→”与党内野党”で十分ではないかと….

  3. ミナミ より:

    左傾マスゴミに目の敵にされリンチされ、非業の死にまで追いやられたのが安倍氏でしたが、
    その様な妨害を受けていない、意外と宏池会の岸田政権が、防衛費増や改憲を達成するかも知れません

    そんな願望をしてしまいますが、世の中はそんなに思ったようにはいかないもので、
    今後もしっかりとした監視が必要ですね

  4. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    自民党憲法案は九条以外の部分が割と噴飯ものだった印象ある

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告