韓国の密室外交封じる多国間会合:「AP4」は大成功

日本、豪州、ニュージーランド、そして韓国の「AP4」が日本時間の昨日、スペインで会談しました。予想通り、議題には日韓諸懸案など一切含まれておらず、それどころか「ロシアのウクライナ侵略を非難する」、「インド太平洋と欧州の安全保障は不可分である」、といった認識でも一致した、などと発表されています。日本、そして岸田文雄首相にとっては、非常に大きな得点だったといわざるを得ません。

二国間より多国間で

以前の『韓国との二国間会談ではなく「多国間会談」のメリット』では、話が通じない国との二国間会談については可能な限り避けるべきだとしつつも、そのような国との会合でも無関係の第三国を介在させることについては非常に有益だ、とする趣旨の議論を紹介しました。

具体的には、今回のG7やNATO首脳会合にあわせて岸田文雄首相がさまざまな国との二国間首脳会談を持っているのですが、そのなかで、韓国との「二国間の」首脳会談については予定されていない、とする話題があります。

異例の「AP4会合」

しかし、それと同時に今回のNATO会合では(※韓国は今年はG7に呼ばれていません)、日米韓3ヵ国会合に加え、岸田文雄首相が呼び掛けたとされる日豪NZ+韓国の4ヵ国(いわゆるAP4)の会合も実施されています。

NATOアジア太平洋パートナー(AP4)首脳会合
  1. 現地時間6月29日午後0時8分(日本時間同日午後7時8分)から約1時間、スペイン・マドリードにおいて、北大西洋条約機構(NATO)のアジア太平洋パートナー(AP4)である日本、オーストラリア、ニュージーランド及び韓国の4か国による初の首脳会合が行われました。NATO首脳会合に出席するため現地訪問中の岸田文雄内閣総理大臣が主催し、アンソニー・アルバニージー・オーストラリア連邦首相(The Hon. Anthony Albanese, MP, Prime Minister of the Commonwealth of Australia)、ジャシンダ・アーダーン・ニュージーランド首相(Rt. Hon. Jacinda Ardern, Prime Minister of New Zealand)及び尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領(H.E. Mr. Yoon Suk Yeol, President of the Republic of Korea)が出席しました。
  2. 4か国の首脳は、NATO首脳会合に先立ち、インド太平洋地域から見たウクライナ情勢と国際社会への影響について認識の摺り合わせを行いました。その中で、岸田総理からは、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり断じて許されない、力による一方的な現状変更は世界のどこであっても認められない旨を述べました。また、4か国の首脳は、インド太平洋を含む国際情勢についても意見交換を行いました。
  3. 4か国の首脳は、ロシアのウクライナ侵略を非難することで一致したほか、インド太平洋と欧州の安全保障は不可分であるとの認識に基づき、4か国が緊密に連携しつつ、各国の特性を活かした上でNATOのパートナーとして協力を進めていくこと、4か国が主導し、インド太平洋とNATOとの意思疎通を深めていくことで認識の一致がありました。また、4か国の首脳は、インド太平洋地域の平和と安定のため、引き続き4か国で緊密に意思疎通を図っていくこととなりました。

―――2022年6月29日付 外務省HPより

これは、大変に有意義なものです。この4ヵ国が一堂に会するというのはあまり例がない話でしょうし、NATO域外の協力国が結束することは、それだけでロシア、中国、北朝鮮への強い牽制にもつながります。

二国間会談が実施されない理由

ではなぜ、多国間会談が実施されているのに二国間会談が実施されていないのでしょうか。

その理由は、韓国が日韓諸懸案の有効な解決策をほとんど示していない点に求められるのでしょう。

正直、『徴用工「300億ウォン韓日共同基金案」浮上=韓国紙』などでも議論したとおり、自称元徴用工問題ひとつとっても、日韓間では話がまったく通じていません。日本側が3年前に拒絶した案をめぐり、韓国が今さら持ち出してきているフシがあるからです。

このあたり、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏は、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』への6月23日付での寄稿で、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が日韓関係を「安倍以前」に戻すことを画策していると指摘します。

尹錫悦はなぜ「キシダ・フミオ」を舐めるのか 「宏池会なら騙せる」と小躍りする中韓

見え透いた罠を相次ぎ日本に仕掛ける尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権。サル芝居で騙せると韓国人が信じるのはなぜか。『韓国民主政治の自壊』(新潮新書)を上梓した鈴置高史氏の答は簡単だ。岸田文雄首相を舐めまくっているから――である。<<続きを読む>>
―――2022/06/23付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より

そのためにはあの手この手で日本を「騙す」ことが必要なのですが、正直、「脇の甘い首相」が下手に韓国との首脳会談に臨めば、言質を取られてしまいかねません。

このように考えると、とりあえず今回のNATO首脳会談のサイドラインで日韓首脳会談が実施されない見通しである、という点については、賢明な判断だったといえるかもしれません。

韓国の「密室外交」を封殺する「毒饅頭」多国間会合

そして、それと同時に、多国間で韓国と対話することは、決して悪いことではありません。

とくに、今回のように「ウクライナに対するロシアの違法な戦争」、「ロシアの行動を中国が真似する危険性」といったテーマがあるときに、NATO諸国やゲスト国などが強固な団結を示すことは重要ですし、また、そのような目的の会合で韓国が日本に対して譲歩を迫ることは不可能でもあるからです。

韓国が狙っているのは「密室外交」ですが、それを逆手に取り、「決して密室で韓国と1対1にならない」ということに注意すれば、むしろ、韓国を自由・民主主義国の共通目標に対しコミットさせることができます。

そして、韓国が国際的な合意を守るならば、結果として中国、ロシア、北朝鮮に対する強い牽制として有益ですし、韓国がいつも通りに国際的な合意を反故にするならば、そのことは日本だけでなく、NATO全体に韓国への失望が生じることになります。

つまり、韓国が国際合意を守ったら守ったで、守らなかったら守らなかったで、それなりの効果が生じる、というわけです。いわば、「毒饅頭」のようなものでしょう。

実際、日豪NZ+韓国の「AP4会合」でも、日韓諸懸案についてはいっさい議論に出ていませんでしたし、それどころかこの4ヵ国が一堂に会したことで、結果的に韓国はロシア、中国を強く牽制することにもなってしまいました。

これまでの韓国の行動パターンから判断するに、おそらく今後、韓国は中国に対し、このAP4会合についての「申し開き」を余儀なくされるのだと思いますが、それについては私たちの国・日本が関知する話ではありません。

いずれにせよ、(誰の入れ知恵なのかはわかりませんが)岸田首相にとっては今回のAP4会合は大きな得点だったことは間違いないと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    日本に成功して欲しくない勢力が、新聞およびNHKを使って社会混乱を拡大すべく工作することを警戒しないといけませんね。媚中媚韓の経済人や政治家、メディア、出版社あたりでしょうか。

    1. 匿名 より:

      NHKはほんと気持ち悪いよ。日米韓会談も、アメリカが日本に韓国との関係改善を迫った圧力の一環って解説してたよ。あと、韓国映画界サイコーみたいな番組もやってた。

      1. 匿名隊員 より:

        朝耳に入ってきたどこぞの民放の番組でも、日韓首相が初めて会談を行って、これは関係改善がうんたらと時間を取って言ってましたね。
        わざわざ取り上げるレベルの話はしてないだろと思って聞き流しましたが。

  2. カオナシ より:

    立ち話だけでも、韓国の都合の良いように発表するあたり、1対1の会談は無理。
    産経新聞にも、”「解決策示さない」首相、尹氏との会談見送り”の記事がありました。

    <外務省関係者は「会談での相手の発言は言わないのがルールだが、あまりに事実関係に反しているので発表した」と説明する。> 上記の記事より引用

    害む省も、お怒りのようです。

    1. 匿名 より:

      その怒りが「ごく」短時間「簡単な」挨拶という外務省発表に繋がったのでしょうかね
      他の首脳に関しては「短時間挨拶」という表現ですからね

      1. 匿名 より:

        でもNHKでは関係改善の一歩ですってすごい嬉しそうにニュースにしててまじヤバかった。

  3. 犬HK より:

    「韓国が国際合意を守ったら守ったで、守らなかったら守らなかったで、それなりの効果が生じる、というわけです。いわば、「毒饅頭」のようなものでしょう。」

    毒まんじゅうの用い方が違うような…

  4. カズ より:

    日米韓首脳会談の後だったら、参加しなかったんじゃないだろうか?

  5. 咫丘酔 より:

    つまり、信用できない相手(嘘つきで約束破りの)と「話し合い」をするときは、「信頼のおける第三者」がその場にいる事が必須になる訳ですよね。 そうでなければ後に「言った言わない」の水掛論になるだけで、百害あって一利なし。

  6. クロワッサン より:

    韓国にとってのAP4会合参加のメリットは、日韓関係の改善が何も進んでいなくても対露対中で西側諸国と歩調を合わせている、条約を守っている側のフリが出来る、という部分かもですね。

    で、米国だけで無く欧州の国も、韓国のはフリだと知りつつ、騙されているフリをする、みたいな。

  7. 伊江太 より:

    韓国はよくこのAP4会合に参加しましたね。

    欧州から遠く離れ、従来はNATOそのものとの接点はなかった国でありながら、今般の情勢を受けて、わざわざ招待を受けたAP4カ国。約1カ国を除き、NATOと共同歩調を取ることは予め決まっていたわけですから、直前になって現地で複雑な意見の擦り合わせなんぞをやる必要はないはず。会議でのNATO首脳間の意見調整の結果がどういうものになるかも、それはもう事前に把握されてたでしょうから、AP4共同の意見として、NATOの新方針に対してどの程度の表現でコミットするか、打ち合わせるとしたら、それくらいのことでしょう。それでもNATOとの協調をアピールする上で、AP4会合をやって見せるのはごく自然。

    態度を曖昧にすることこそ国益、なんて考えてる国にとってば、この流れに棹さすくらいしかAP4会合の場で出来ることはないでしょう。その結果、後で内心はどうだった、こうだったと言い訳をしてみたところで、AP4の方針にその場で同調したという事実はもう変えようがない。

    なんのかんのと理屈を付けて、この会合には参加しないんじゃないかと思っていたのですが、出てきたところを見ると、最近の情勢から推して、下手をすると西側同盟の輪から省かれかねないという、危機感をいよいよ抱き始めたんでしょうかね。

    ひょっとすると、韓国をNATO会合に招待することからして、後のこういう流れを想定してのものだったのかも知れませんね。筋書きを書いたのは米国でしょうが、その意図を理解した上で、旨く役を演じて見せたのが岸田首相ということだったとしたら、なんだかんだ言われつつも、結構やるな、ということになるんでしょうか。

    1. 匿名 より:

      まったくの邪推ですが韓国を除くAP3の会合実施を日本がそれとなく匂わせたんじゃないですかね。国格大好き韓国人としては孤高のAP1は受け入れがたくAP4に与したと。中国にはあとでこっそり詫びればいいですかりね、いつものごとく。

  8. 元ジェネラリスト より:

    信用できないしアテにもできない韓国ですが、敢えて捨てる必要もないので、せいぜい可動域を狭めておくのは合理的ですね。
    ひょっとしたら化けるかも知れないし。(ナイナイ)

  9. Padme Hum より:

    韓国は直前まで逃げ回っていました。韓国側の報道によると韓国は直前まで、そして到着後も、
    (1)北朝鮮の話をしに行くのであって、中国やロシアの話をしに行くのではない
    (2)日本が仕切って日韓豪NZ首脳会議をするのは認められない、
    (3)日韓豪NZ会議がこれから定期的に開かれるのは認められない、
    (4)日韓豪NZに参加はするけれども挨拶だけで、具体的なことを話すことは認められない
    と言っていました。蓋を開けてみれば、韓国は完敗、全部、日本の主張通りになりました。これは日本だけで圧力をかけたのではなく、米国とNATO事務総長から直接、相当な圧力があったのだと思います。
    日韓豪NZ首脳会議は日本の単独のイニシャティブではなく、日本はNATOと最初からグルだった可能性もあります。先日、NATO事務総長が来日していましたが、あの時に取り決めた可能性があると思います。

  10. はるちゃん より:

    西側主要国の会議に招待されたのですから、天にも昇る気持ちで参加したのでしょうね。
    ところが、AP4でロシアと中国非難に付き合わされたという落ちでした。
    二股外交もそろそろ限界では無いかと…。
    習近平皇帝のお仕置きが気になりますね。

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