政府は節電ではなく電力安定供給にこそ全力で取り組め
今度は「節電ポイント」だそうです。報道によると岸田首相は昨日の「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合で、今年の予算で確保した予備費5.5兆円を原資に「節電を実施した家庭にポイントを付与する新制度」を創設するなどの方針を示したのだそうです。何を甘ったれたことを言っているのでしょうか。政府がいま全身全霊でなすべきは、「節電のお願い」ではありません。「電力の安定供給」です。
岸田政権はステルス安倍政権?
円安が進むなか、日本経済が必要としているのは原発の再稼働と電力の安定供給である、という点については、『韓国紙の「円安でアジア通貨危機が再来か」という珍説』を含め、これまでに当ウェブサイトでは何度も主張してきましたし、これからも主張するつもりです。
ただ、一部からは「無策」「検討使」だのと揶揄されることもある岸田政権ですが、先日の『じつは岸田政権下でひそかに進み始めている原発再稼働』でもふれたとおり、その岸田政権下で、原発の再稼働が(少しずつではありますが)進み始めています。
安倍晋三総理や菅義偉総理のころだと、政府が原発再稼働を持ち出した瞬間、新聞、テレビを中心とするオールドメディアや立憲民主党・日本共産党を中心とする特定野党が烈火のごとく大騒ぎするなどし、結果として原発再稼働がなかなか進みませんでした。
しかし、不思議なことに、オールドメディアや特定野党は、岸田文雄・現首相に対してはさほど批判の声が強くなく、しかも岸田首相自身は衆院第5派閥である宏池会の出身でもあるため、党内基盤が大変に弱く、最近だと「ステルス安倍政権」の様相を呈してきました(『骨太方針に見る安倍総理「院政」』等参照)。
そういえば、岸田首相自身はシャングリラ会合という大舞台にたち、世界の聴衆を前に、いきなり「私は宏池会の出身です」などと言い放った人物でもあります(『政治家は鈴置氏「韓国の謝罪利権復活」警告を熟読せよ』参照)。
しかし、そのシャングリラ会合で岸田首相が示した「岸田ビジョン」とやらは、「核廃絶」などのよくわからない目標を除くと、いずれも麻生太郎総理や安倍総理、菅総理らが育ててきた構想をそのまま引き継いだものでもあります。
まさに、現在の岸田政権は「ステルス安倍政権」のようなものでしょう(「岸田首相本人」という「不純物」は混じっていますが…)。
宏池会は衆院第5派閥に転落済み
ちなみに女性問題が報じられた吉川赳・衆議院議員が自民党を離党したことで、岸田派は現在、衆院で第5派閥に転落しています。
著者自身が調査したところによれば、自民党の5大派閥に関しては、安倍派の議員が94人と抜きんでており、これに茂木派、麻生派、岸田派、二会派が続いています。しかし、衆議院議員でいえば、残念ながら岸田派は32人で第5派閥に転落した格好です。
自民主要5派閥
- 安倍派…94議員(衆60/参34)
- 茂木派…54議員(衆33/参21)
- 麻生派…50議員(衆38/参12)
- 岸田派…44議員(衆32/参12)
- 二階派…43議員(衆35/参8)
(【出所】著者調べ)
また、小選挙区で落選しながら比例で復活した衆議院議員を便宜上「比例ゾンビ」とでも称するならば、その比例ゾンビ率が最も高いのは安倍派です。
比例ゾンビ率
- 安倍派…60議席中15人(比例ゾンビ率25.00%)
- 茂木派…33議席中7人(比例ゾンビ率21.21%)
- 麻生派…38議席中5人(比例ゾンビ率13.16%)
- 岸田派…32議席中7人(比例ゾンビ率21.88%)
- 二階派…35議席中8人(比例ゾンビ率22.86%)
(【出所】著者調べ)
しかし、吉川氏が離党する前の状態だと、岸田派の「比例ゾンビ」は25%で安倍派と並んでいました。議員の絶対数が少ないのにゾンビ議員が現在でも7人も在籍している、というわけです。ゾンビ率が13%と低い麻生派と比べると、微妙に派閥の発言力も影響を受けるでしょう。
岸田首相自身、自民党の総裁ではありますが、そもそも党総裁が党の運営をほしいままにするということはできません。某政党の場合、創業者であり実質的な「オーナー」でもある人物が、民間人となって以降も事実上支配しているのではないかとされていますが、自民党は、そのような某政党とはわけが違うのです。
そうでなくても自民党の首相は派閥の均衡の上に成り立っています。
もちろん、安倍総理のころは、自身が最初の登板のときの失敗を謙虚に研究し、2度目の登板でその失敗を繰り返さないように努力したことに加え、麻生総理を副総理兼財相として任命するなどガッチリ組み、さらに菅総理が当時の官房長官として実務を取り仕切るなど、人材に恵まれたという側面もありました。
しかし、それと同時に安倍総理が党内の主要派閥をうまく抑えていたことを忘れてはなりません。
今度は節電ポイントだそうですよ
ただし、岸田首相が最近になって派閥の均衡を意識するようになったように見受けられる反面、その岸田首相も、なんだか理解に苦しむことを提唱するという癖は治っていないようです。
それが、「節電ポイント」制度の創設という話題です。
政府が家庭に節電ポイント 事業者には買い取り制度
―――2022年6月21日 13:35付 日本経済新聞電子版より
日経などのメディアの報道によると、岸田首相は「節電を実施した家庭にポイントを付与する新制度」を創設し、それに2022年度予算で確保した5.5兆円の予備費を充てる方針を示したのだそうです。
参考:『物価・賃金・生活総合対策本部』会合
(【出所】首相官邸HP)
この首相、いったい何を甘ったれたことを言っているのでしょう。そもそも政府がいま全力で取り組まねばならないことは、「節電のお願い」ではありません。「電力の安定供給」です。
それに、普段から電気を節約している家庭よりも、普段から電気を無駄遣いしている家庭の方がより多くのポイントを付与される可能性が高いというのも理解に苦しみます。せっかく5.5兆円の予備費の一部を充てるというのなら、ポイント還元などによるのではなく、減税により還元すれば済む話でしょう。
贅沢品であろうが、赤ちゃんのおむつであろうが、一律に10%という異常に強欲な税率を課し、消費を大きく委縮させ、日本経済を疲弊させている現状がおかしいと、どうして気づかないのでしょうか。
あるいは、消費税の減税ができないと言い張るのなら、とりあえず電気代を下げることで各家庭の負担を軽減するという意味において、まずは再生可能エネルギー発電促進賦課金の制度を凍結・廃止する方が手っ取り早いでしょう。
岸田首相の「柔軟性」(?)に期待したい
そういえば、昨年の「子供給付金」の件でも、岸田首相は前言撤回が相次ぎました(『岸田首相「年内現金一括給付も選択肢」と言及か=国会』等参照)。
このように考えていくと、岸田首相は批判されるとすぐに方針を変えるという「柔軟性」(あるいは「軟弱性」)をお持ちであるようにも見受けられます。
もちろん、「そんな首相で大丈夫か」、などと言いたい気持ちもないではないのですが、とりあえず今回の「ポイント制度」についても、自民党内で議論が生じることを期待したいところです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
岸田首相は相変わらず評価に困りますね。やるべき事はやっているけれど、
いまいち頼りなさがどうしても付きまとってしまうのはなぜなのか。
「岸田ビジョン」などと言い出した割に、中身は安倍路線・菅路線とほぼ変わらないせいか?
もしかしたら岸田首相は「俺は安倍元首相の傀儡じゃない!」と言いたいのでしょうか?
もしかしたら”岸田オリジナル”に拘っていて、そのせいで「節電ポイント」などと
言い出しているのでは……と疑い出した今日この頃です。
しかし以前言った通り、「ふらふらしている様でやるべき事はやっている」ので
もしかしたら「のらりくらり」の達人なのでは、と言う気もするので……
う~ん、やっぱりこの人は評価が難しい。
>政府がいま全身全霊でなすべきは、「節電のお願い」ではありません。「電力の安定供給」です。
おっしゃるとおりだと思うのです♪
先日の北電の裁判でも判決理由に津波対策があったと思うのです♪
5.5兆円もあれば、防潮堤の嵩上げとかできるだろうし、そういったことにお金を使って欲しいと思うのです♪
はぁ、、、ほんと中抜きシステム好きだなぁ。またポイント事業運営団体とか作りたいんだろうな。金のムダだよ。微々たるポイントくれたって電気止まったら全く意味なしなのにね。
>またポイント事業運営団体とか作りたいんだろうな。
そう勘ぐってしまいますよね。
知恵の無い(悪知恵はあるが)自民党!
いっそ、弱者救済を唱える岸田さんならば、”最低レベルの電力使用家庭の電気代無料”と
やった方がお願いやポイントより節電効果があると思うのだが。
日本人でも目の前のことしか見えていない、という人も多くいるのでしょう。でも人ひとり一票で違いはない、となれば、その割合に応じて目の前のことしか見ない人への対応も与党で居続けるためにはせざるを得ない、というのもあるのでしょう。
でも、エネルギー資源の政府備蓄にも手をつけてしまいましたし、電力会社も老朽火力発電所はこれからも閉鎖していくでしょう。国民生活基盤たる経済安全保障分野は票になろうがなるまいが最高優先度で対応していただきたいです。
>岸田首相の「柔軟性」
高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に
ですかね
要するに、行き当たりばったりということではないかな
と言われなけいだけの実績が出せれば成功なのですが……
危機的円安を乗り切る為に、原発を積極的に再稼働させ、電力の安定かつ低廉化での提供により企業の努力を助けて、日本の経済再生を図っていただきたいものです。
岸田氏は4月末に原発再稼働を進めるって宣言をしましたけど、続報が無くてよくわからないんですよね。具体的に何をしているのか。
夏に間に合うのか(ムリでしょうけど)、冬にも間に合わないのか、サッパリわかりません。
首相「できるだけ可能な原発は動かしていきたい」…再稼働に前向きな考え(4/26)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220426-OYT1T50305/
「原子力規制委員会の審査の合理化・効率化を図り、審査体制も強化しながら、できるだけ可能な原発は動かしていきたい」と述べ、
萩生田経済産業大臣の閣議後記者会見の概要(4/28)
https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2022/20220428001.html
原子力規制委員会において体制面では審査内容が共通する案件を同じチームで担当するなど、審査官の機動的な配置を行うことに加え、新たに過去の審査における主な論点などを公表することで事業者の予見性を向上させ、今後の審査を効率化させることや審査すべき項目の趣旨の明確化にも着手
私は岸田氏の「審査体制も強化しながら」に注目していたんですが、原子力規制委員会からは人事などの体制強化の発表などは見られませんし、続報の少なさから、荻生田氏の「共通する案件を同じチームで担当するなど」を言っていた「だけ」だったと、今は思っています。
だとするとつまり、「効率悪いところを見つけたので治します」という、平時にやってしかるべき程度のことしか、していないと言うことでしょう。
政府がやれることをマジメに考えてほしいですね。ほんとに。
節電要請はその後でしょう。
各家庭で、テレビを見ないで節電するために、テレビ電波を停止するのはどうでしょうか。なにしろ、公共の電波を公共のために止めるのですし、テレビをとめても(冷房と違って)熱中症にはなりませんし、各家庭を見張る(?)より各テレビ局を見る方が簡単ですし、NHKも放送しなければNHK受信料を払う必要もありませんし、テレビで自民党の悪口が見れなくなった高齢者は、執念でネットの使い方を覚えるでしょう。
これは、2022年6月22日時点では、フェイクニュースである。
電力の安定供給を求めるべき。原発の再稼働を進めるべき。
それはそう思いますが、では何が足枷になっているんでしょうね?
政府? 民意? 利権団体? あるいは、技術的な壁? 法律? 予算?
何が本当の問題なのか? それをどうすれば解決出来るのかを整理するのが先決だと思います。
それもやらずに、取り敢えずで何でもかんでも政府がー、総理がーと問題と責任を丸投げするのは違うかなと。
法治国家である以上、仮に原発再稼働に世論と法律が問題だというのなら。我々はまず、世論として再稼働賛成の声を上げ、政府に伝えるべきかと思います。
>法治国家である以上、仮に原発再稼働に世論と法律が問題だというのなら。我々はまず、世論として再稼働賛成の声を上げ、政府に伝えるべきかと思います。
総理には、率先して国の方針転換を宣言して、世論形成をリードするという選択肢もあります。
世の中の人が政治に無関心過ぎじゃね?あとはゼロリスク大好き国民性が足枷だよね。
今原発動かそうとしたら岸田さんはマスコミ&野党にガンガン吊るし上げられるだろうね。何しろマスコミは不安を煽る偏向報道が大好きだし、煽られると無条件にビビっちゃう人多いだろうし。
ここに集う皆様はリスクとリターンを考慮して行動できるだろうから、信じられないかもしれないけど、世の中考えることすら拒否して「変わらない、変えない」のが大好きな人が本当に多いよ。
でも多くの人が変わるの待ってたら流石に今回は間に合わないんで、政治家が吊るし上げ覚悟でも、もしくは吊るし上げられないように根回しなりなんなりで決断してくださいって話だよね。
内外の環境団体を前面に立てて、原発再稼働を妨害し、ベースロード電源足り得ない再エネ導入の圧力をかけ、CO2排出削減をたてに火力発電(特に石炭)を攻撃している勢力と、これに呼応して再エネ推しと火力発電叩きを続けて経産省を後から撃ち続けてきた環境省連合軍の勝利。
昨年はじめの寒波による再エネ発電量の激減と火力発電用天然ガスの在庫払底による停電危機の時点で、日本の電力基盤が既に脆弱化していたのは明らかで、経産省は昨年(2021年)の夏と今年はじめの冬に電力供給が逼迫する見通しを明らかにしていた。
直近5年(2016~2012)で廃止された火力発電所は1,600万kW相当で、経産省はその後も毎年200万kW以上の火力発電所が廃止されるとの見通しを公表している。一方で、執拗な火力叩きもあり、新規の火力発電所建設計画は次々中止に追い込まれていて、今後、原発再稼働が見込まれない状況では電力需給はさらに悪化する。
岸田総理にできることは、ポイント使って停電を呼びかけるくらいしかない。原発再稼働も火力発電所の新設もできない(しない)のだから。
原子力・火力を叩き再エネを推してる勢力が何を目指していたのか、一番電力が必要な真夏真冬に節電を強いられ停電してやっと広く国民の知るところとなる。民主党政権と同じく痛い目に遭わされ高い授業料を払うことになる。
電力供給は国の安全保障の根幹だと、大上段に構える気はないですが、停電の不安なく電気を使えることが、市民の偽らざる望みです。今の日本は民生の種々の機器が省エネ仕様になっているので、どうすりゃいいんだが本音です。政権が保てばいいのですが・・・
自民で総裁選勝利のために決定的に重要なのが「議員票」
その意味で麻生と盟友関係にある安倍が一番の影響力を持っている。
最近、永田町界隈で茂木ががぜん張り切っていると評判だ。
茂木は次期首相を公言して幹事長として辣腕を振るっている。
定期的に安倍や麻生と会合を重ねてもいる。
現在の自民は麻生ー茂木ラインで運営されている。
言うまでもなく麻生と安倍は盟友関係。
そして安倍に忖度した政策を実行しているのは茂木である。
「あなたの望む政策を行っていくから次期総裁選で私を支持してくれ。
もちろん首相になってからもそれは継続する」
これが茂木の嘘偽りのない本心だ。
それを苦々しく見ているのが岸田。
岸田は去年「河野よりはマシ」の1点だけで総裁に選ばれた。
本来なら自派に麻生派、谷垣派を加え大宏池会を実現させる必要がある。
その盤石な基盤があれば安倍に遠慮せず自由に人事や政策が行われる。
だが岸田にそれをやる能力や気概はない。
岸田は傀儡のうちは利用されるが独自の動きをするなら用済みとなる。
これらのことは安倍が「キングメーカー」になったことを意味する。
自らの手を汚さず大所高所からの発言を実現させることができる。
安倍は首相時代に派閥の力学を抑えて「安倍1強」の長期政権を築いた。
まったく同じ理由でキングメーカーとしても長く君臨するだろう。
月末のG7でエネルギー問題は議題になるんじゃないかな。そして、動かせる原発を動かせ、なんて合意が出ないものかな。ロシアに対しての経済制裁を少しでも有効にするには、もうその策しか残っていないので、あくまで希望的観測ですが。
そしていかに行動力の無い(無さそうに見える)岸田氏でも、その外圧があれば動きやすくなるはず。
エネルギーの輸入量を減らして貿易赤字を減らせれば、急激な円安対策にもなって一石二鳥どころか一石三鳥くらいの効果があるんだけどなぁ。