「GSOMIAを正常化させる必要がある」=韓国外相
「北朝鮮問題に対応するため、韓日GSOMIAを正常化させる必要がある」――。これは、訪米中の韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官がアントニー・ブリンケン米国務長官との会談で発した内容だそうです。なかなかに驚く発言です。そもそもGSOMIAの運用を「不安定化」させたのは韓国の一方的な措置であり、日本としてこれにできることは何もないからです。
輸出管理適正化措置とGSOMIA、WTO
以前の『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』では、「韓国による日本に対する不法行為」のなかの主なものを、思いつく限り列挙しました。
もちろん、「韓国の日本に対する不法行為」という意味では、ここに列挙したもの以外にもいくつかご指摘もいただきましたが、いずれにせよここで重要なことは、「韓国の対日不法行為がひとつやふたつではない」、という事実でしょう。
こうしたなか、列挙した不法行為のなかに、こんなものが含まれていたことを思い出していただきたいと思います。
- 日本が講じた対韓輸出管理適正化措置を「輸出規制」と呼び、日本を批判(2019年7月)
- 日本政府の輸出管理適正化措置に対するWTO提訴(2020年6月)
- 日韓GSOMIA破棄通告(2020年8月)とその撤回(2020年11月)
このあたり、輸出管理の仕組みとも密接に関わり合う論点でもあります。
当ウェブサイトでは過去に何度となく触れたとおり、そもそも論としてこの「輸出管理」の仕組みは、戦略物資の軍事転用を防ぐための国際的な合意のことです。
対韓輸出管理適正化措置は韓国の輸出不正に対応したもの
日本政府が発動した輸出管理適正化措置は、大きく①韓国を輸出管理上の「ホワイト国」(現在の「グループA」)から除外することと、②フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目を包括許可の対象から外し、個別許可の対象に含めること、の2点からなります。
韓国メディアなどは、この3品目について「日本が半導体を作るための原料を狙い撃ちにした」などと大騒ぎしましたが、それと同時に、これらの品目は軍需品・武器などにも使用され、軍事転用が可能でもあります。
2019年12月18日付でロイターに掲載された『韓国の輸出管理を分析する vol.1 日本の対韓輸出規制は安保上の懸念から【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】』という記事によれば、こんな趣旨のことが指摘されています。
「従来は、いわゆる『ホワイト国(『グループA』が正式名称)』と呼ばれる特別な待遇で韓国を優遇していたため、包括的に許可を得て、まとめて輸出できるという簡便さがあった。しかし、2015年から2019年3月にかけて、韓国で軍事転用可能な戦略物資の不正輸出摘発が計156件もあったことなどを理由に日本政府は韓国を『グループA』の適用から除外したのである」。
「フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素は戦闘機、レーダー、化学兵器などに使用され、軍事的にも重要な材料だ。日本政府は、韓国が軍事転用もできる技術をしっかり管理していない(中国、北朝鮮など敵対国と共有する)とみているのかもしれない」。
この記述、法令的には若干の事実誤認もあるのですが、大した問題ではないのでここではスルーしたいと思います。
それよりも、韓国における輸出管理がかなり不適切であるという点に加え、日本政府が要求した輸出管理に関する政策対話についても、2016年6月に行われたのを最後に、2019年7月時点でじつに3年間、開催されずに無視されていたという事情を忘れてはなりません。
そもそも対抗措置ではないのに…
いずれにせよ、日本政府が韓国に対し「信頼関係に基づいて輸出管理を実施することができなくなった」ことと、この輸出管理適正化措置は無関係ではありません。
また、韓国側や一部の日本のメディアが主張する「輸出『規制』」は、今回の措置とは無関係です。そもそも「輸出『規制』」と「輸出『管理』」は、根拠条文自体が異なります(輸出規制は外為法第48条第3項、輸出管理は同第1項)。
それなのに、韓国は日本のこの措置を、2018年10月と11月の「強制徴用判決」(※自称元徴用工判決の誤り)への「対抗措置」だと決めつけ、『秘密軍事情報保護協定』(日韓GSOMIA)を破棄しようとしたり、これを世界貿易機関(WTO)に提訴したりしているのです。
もっとも、日韓GSOMIA破棄の件については、韓国政府側は日本の輸出「規制」への対抗措置として取り出したものの、日本政府は微動だにせず、結局、GSOMIA終了の候力が生じる数時間前になって、韓国政府は事実上、この措置の撤回に追い込まれます。
【参考】GSOMIAについての会見に応じる安倍総理
「北朝鮮への対応のために、日韓、また日米韓の連携協力は、極めて重要であります。それは、私も繰り返し申し上げてきたことであります。今回、韓国もそうした戦略的観点から判断をしたのだろうと、こう思います。」
(【出所】首相官邸HP・2019/11/22付『GSOMIAについての会見』)
詳しくは『あれから1年:いまだにGSOMIA破棄できない韓国』などでも詳しく触れたとおり、韓国政府が持ち出したロジックは「日本が輸出規制撤回に応じるならば、終了通告の効力を一時中断する」というものです。もちろん、国際法に照らしても「終了通告の効力を一時中断する」などとするルールなど存在しません。
ついでにいえば、日本側は「輸出規制を撤回する」などとはヒトコトも述べていません。あくまでも「日本が要求した政策対話に韓国が復帰する」ことを、韓国側が勝手に「輸出規制の撤回に向けた協議が始まる」、と受け止めたに過ぎません。
結局、政策対話自体は2019年12月になって、3年半ぶりに開催され、翌・2020年3月にはコロナのためにリモートでもう1回開催されたものの、韓国側は6月になって政策対話を打ち切り、対日WTO提訴に踏み切ってしまいました。
こうした状況を客観的に評価するならば、韓国の行動自体、「日本から行方不明の戦略物資の所在を尋ねられ、逆ギレしてWTO提訴することで政策対話から逃げた」ようにしか見えません。
いずれにせよ、GSOMIAの「破棄スルスル詐欺」にせよ、対日WTO提訴にせよ、明らかに一方的に悪い韓国の側が不法行為をさらに積み重ねているようなものであり、日本としては、もういかんともしがたいところがあります。
朴振氏が「GSOMIA安定運用」に言及したが…
こうした経緯を踏まえたうえで、本稿では韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に今朝掲載されたこんな記事を紹介しておきたいと思います。
韓米外相「北朝鮮核実験なら断固対応」 韓国は日本との軍事協力に期待も
―――2022.06.14 08:57付 聯合ニュース日本語版より
これは、米ワシントンを訪問中の朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官がアントニー・ブリンケン米国務長官と会談したとする話題で、米韓外相は北核・ミサイル問題での米韓・日米韓連携や中露への牽制などについて話し合ったというものです。
ただ、この記事の末尾には、こんな記述もあります。
「朴氏は北朝鮮を説得するため、中国が前向きな役割を果たすべきだと強調。北朝鮮問題に対応するため、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化させる必要があると言及した」。
「GSOMIAを正常化させる」、とありますが、そもそも勝手に終了通告を発したのは韓国政府の側ですし、その「効力を停止している」と騙っているのも韓国の側です。
朴振氏の内心を忖度(そんたく)するならば、「韓国としてはGSOMIAを『正常化』したい」という発言の含意は、「日本が輸出規制を解除してほしい」、つまりは「GSOMIA『正常化』のボールは日本にある」とでも言いたいのかもしれません。
しかし、くどいようですが、本件を巡って日本の側にできることはなにもありません。
そもそも自分の国が「不適切な事案」を発生させたという事実を無視し、しかもそれをごまかすためにGSOMIA破棄やWTO提訴などで「逆ギレ」してきたという事情を踏まえるならば、本件に関してもボールは完全に韓国側にあると断言して良いでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
素朴な疑問ですが、日本は、射撃用レーザー照射で、いつ攻撃してくるか分からない韓国と、軍事的な協力が出来るのでしょうか。
すみません。追加です。
次期参議院選挙で、社民党は「平和を守るために、日韓GSOMIAは破棄しろ」と、言わないのでしょうか。狙いはさておき、案外、支持を集めるかもしれません。
レーザーとレーダーは違う。これマメな。
ターゲッティング用のレーザーというのもあるからややこしい。
これまた、韓国の国内問題なので、外交の取引材料にはならない事案ですね。
そもそも、米国の同盟国なら、円滑に回す責務があるわけで。
韓国が言いたいことは
「GSOMIAを正常化するから日本は輸出規制を解除しろ」
もちろんこんなこと聞く必要はない。
https://japanese.joins.com/JArticle/292081?sectcode=A10&servcode=A00
>朝鮮人「戦犯」被害者団体「尹大統領、日本に問題解決を求めるべき」
またこんなのが出てきた。
日本が保守政権に慰安婦、徴用工で譲歩したとする。
まず、韓国は日本が非を認めたと世界中で喧伝する。
次に、国内の市民団体が「これでは不十分」として再協議を要求。
次の革新政権で保守の合意を破棄し慰安婦、徴用工で「おかわり」を要求。
併せて韓国人被爆者、韓国人樺太残留者、「BC級戦犯」被害者の謝罪と補償も要求。
やり方は相変わらずの日本企業資産の差し押さえ売却詐欺。
革新政権で日本と断絶する。
次の保守政権で「関係改善ガー」となり以下繰り返し。
これが千年続く。
日本は毅然とした態度で臨むべきだ。
誰か教えてください。何故韓国は、事あるごとに「(韓国の言う)輸出規制の撤廃」を要求してくるのですか。実際、ポリイミドやレジストリの対日依存度は輸出規制前より高まっているし(=輸出規制などしていない証拠)、フッ化水素では韓国報道によると国産品の開発に成功したみたいだし、とにかく実質的に韓国の半導体生産に影響を与えていない(輸出規制ではなく輸出管理の強化だから当たり前のこと)のに、何でことあるごとに論うのか、プライドの問題ですか?
現行の管理体制だと自家消費する(予定)分しか買えないから
多分プライドを傷つけられてるから。
管理出来てない韓国に日本が指導する形が耐えられないんですよ。
私もGさまの説に一票
メンツの問題として、結局日本に輸出するしないの決定権があり、韓国はワンオブゼムの輸出先で、謂わば「生徒の一人」。不出来な生徒は罰を受ける。それが日本の責任、という関係性が何が何でも韓国が上という韓国には許せないのだと思います。
今は半導体製造に限っては問題のない量の輸出がされているにも関わらず、しつこく言ってくるのはこれしか考えられません。
輸出管理の強化前は北朝鮮やイランに横流ししていたとか?
核開発に必要なものじゃなかったかな。
イランには原油代金の代わりに流していたとかも聞きます。
実際、輸出管理後に北朝鮮から使えない犬呼ばわりされたり、イランと揉めてたような。
政権が代わっても執拗にホワイト国に戻すように要求してくるのは、実利も絡んでくるからでしょう。
韓国は面子と利益が全てですから。
イランへ石油輸入の代金をフッ化水素で支払っていたから。
イランは核開発で超高純度フッ化水素を必要としていた。
そこで韓国は石油輸入の代金を日本から輸入したフッ化水素で支払っていた。
日本が韓国への輸出管理が発動。
すると程なくしてイランから韓国へ石油代金の支払いの声が上がり始める。
現在、韓国は必死になってもう少し待ってくれとイランを説得している。
だから韓国は日本に対して輸出規制の撤廃を求めている。
(1)韓国側の管理が不適切で起こった事案であることを認め、韓国側で是正措置をとるとプライドが大いに傷つく。ーー>日本の政治報復であることにしてしまいたい。
(2)日本が報復手段を持つことは、それが何であっても許せない。
(1)か(2)のどちらかでは。
フッ化水素については日本が管理強化して以来、韓国のフッ化水素総輸入量は半減していますね。日本からの輸入が減った分、管理強化が効いて輸入総量も3000トン以上減った形です。韓国国内で蛍石などの鉱物から国産するようになったという話も蛍石の輸入量が急増したという話も聞かないです。要は不正使用・目的外使用を指摘されたくないということですね。
>「北朝鮮問題に対応するため、韓日GSOMIAを正常化させる必要がある」
2018年に韓国が「GSOMIAを継続しない」と宣言して、結局期限ぎりぎりになって「終了通告の効力を一時中断する」とかルールにないことを持ち出して独り相撲を取った結果、継続はされたものと思ってました。しかし上記のような発言が出るということは正常に働いていないということですね。知らなかった。
韓国人の言うことですよ。
3日も経てば正反対のことを言うだけなので真に受ける必要もありませんし
会計士さんの記事にもあるように日本にできることはないので生暖かく注視するしかないです。
すっかり忘れてましたが、この件で韓国がWTOに提訴するという話は、その後どうなったのでしょう?
またスルスル詐欺ですかね?
>日韓GSOMIA破棄通告(2020年8月)とその撤回(2020年11月)
細かい話で申し訳ないのですが、GSOMIA破棄決定は2019年8月22日で通欲が翌23日、同年11月22日に撤回であったはずです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48873830S9A820C1MM8000/
>日本政府の輸出管理適正化措置に対するWTO提訴(2020年6月)
WTO提訴は2019年9月11日ではないかと。
https://www.wto.org/english/tratop_e/dispu_e/cases_e/ds590_e.htm
結局はジーソミアの破棄云々も相手にしなかったら、勝手に自爆しましたよね。
これからは歴史問題含めた韓国が生み出す架空の問題提起というのは通用しないことを、学習してもらわないといけません。
GSOMIA正常化を協議するために日本に訪問したいとか言ってきそうですね。
別にあんたらが勝手に宣言したの撤回すれば良いだけなんですけどね。
てっ事を日本も発信すれば良いのですけどね。
GSOMIAの正常化を妨げるものは日本側にはない、正常化を歓迎する。
とか、、、、
ブリンケン国務長官との米韓外相会談後の共同記者会見の場における、朴振外交部長官の「日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化させる必要がある」という発言は、日本政府に向けたものというよりは、アメリカ政府に対する告げ口外交です。これでは、文在寅政権と何も変わりません。
先日の「韓日の過去の問題は包括的に解決を図るべき」という発言も併せて考えると、日韓外相会談の開催は、まだまだ先の話になりそうですね。
あらあら?
「GSOMIA正常化してあげるニダ」
ですか(笑)
GSOMIAは
日本のためにお願いしたものでは
ないのでそんなの交渉材料に
ならしまへんわ。
もうすでに文ちゃんが
『GSOMIA破棄 文在寅の乱』で
ひとりチキンレースの果に
米国に睨まれてヘタレ敗走した
というのに滑稽です。
またぞろ破棄とか言い出したら
なんせ韓国はかつての通貨崩壊後は
財閥資本の過半を握られる
経済植民地状態なのですから
さすがに米国が業を煮やして
古代中国に習っての
経済三跪九叩頭の展開も
それはそれで見ものです。
文政権の不始末の尻拭いとして「積弊清算」すれば良いのに、なかなかしませんね。
文在寅を吊るした後に始めるんですかねぇ。。。
あれ?日韓GSOMIAはちゃんと運用されていないんですか?一体どんな問題が・・・_
楽韓さんの見立てでは、今回の韓国外相発言はアメリカに言わされたものだとのこと。
元々日韓GSOMIAはアメリカにとって必要なものだったので、当然と言えば当然な話です。ただ、韓国前政権が日韓GSOMIAを日韓間の外交カードに使える(はずだ/に違いない)という致命的な勘違いをしたため、ドタバタが起こったように見えるだけの話です。
おそらく、ブリンケン長官に「日韓GSOMIAの破棄、あるいは機能不全は、米韓同盟を揺るがすものだ」とでも脅されたんでしょう。でも、まだ、THAADの運用正常化という大きなハードルが残っています。これをクリアできるまでは、アメリカは韓国をまともに遇しようとはしないでしょう。さて、韓国新政権は中国様の不興を買うこと必至なそこまで踏み込めるでしょうか。